140話を投稿させて頂きます。
可奈美が甲斐と言い争っているのを止めることができず、遠巻きに見ているしかできなかった姫和は、可奈美を止めるべく一歩踏み出そうとするが、優を殺してしまったという負い目と、
『違うよ、姫和ちゃんは御当主様、…人に化けた荒魂を斬るそれだけだよ。それ以外は私が斬らせない、それが私の覚悟だよ。だから、姫和ちゃんの重たそうだから、半分私が持つよ。』
私のことを気遣って掛けてくれた言葉。
『……姫和ちゃんの行動が起こした結果なんだから、姫和ちゃんの頑張りは間違いじゃなかったんだよ。……うん。』
そして、可奈美が私を励ましてくれたことを思い出す。
『……刀使は続けようと思う。』
それだけでなく、優のために母の仇を討つことを棄てた。
母の思いを自ら捨ててしまったのだから、最早、彼女に残っている選択肢は優と可奈美を救うことだったことを思い出す。
『……約束しただろう?私は、私はお前を助ける。……だから、可奈美も助けたい。それまで、ずっと一緒にいる。だから、優も何処かへ行かないでくれ。ずっと側に居て、またチョコミントアイスでも食べに行こう。可奈美と一緒に三人で。』
だからこそ姫和は、優と約束していたこと、可奈美と三人と共に平和に過ごそうという約束をした。……だが、もうその約束すら果たせなくなってしまった。ならば、私の中に何が遺るのだろうか?私は可奈美に何が言えるのだろうか?と自問自答していた。
……故に、姫和は何も言えなかった。
東京23区にて発生した維新派のクーデターを鎮圧した後、
「……どうしてだ。どうして、使命なんかで命まで賭けるんだ?」
姫和は、血を流し、地に倒れ伏し、死にゆく冥加刀使の瞳に近づくべく屈むと、ある疑問をぶつけていた。
何故、誰が言ったか分からない使命なんかで命を賭けるのか?捧げるのか?と理由を尋ねていた。
「……どうして?……分からない?」
しかし、冥加刀使は姫和にそう返すと、理由を述べる。
「……本当は…………刀使の使命とか……そんなの……どうでもよかった。……けど……けど、荒魂と……戦うことしか知らないから………私達……刀使じゃ無くなったら……どうなるの?」
荒魂事件に巻き込まれ、親を失ったが、御刀に選ばれたお陰でどうにか刀使となることができたものの、荒魂との戦いしか記憶に無いがために荒魂を討伐し続ける刀使以外の生き方しか知らない子供達。その子供達が、荒魂と戦うことを取り上げられたらどう生きれば良いのか、どのように過ごせば良いのかと姫和に問うのであった。
「……そんなことで……そんなことで命を捨てるのか?……簡単なことだろう?友達を作ったり、好きな人ができたりして……私達は命を紡ぐことができるだろう?」
冥加刀使に、そう問われた姫和は答える。
――――友人を作ったり。――――好きな人ができたり。――――そうして、好きな人と命を育む。
そんなありきたりな言葉を並べていた。……だが、目の前に居る冥加刀使に対して強く言えなかった。
始めは母の仇を討つべく伍箇伝に入学し、刀使となった後も折神紫の暗殺のせいで下手に関係を持った他人を巻き込ませないために徹底してクラスメイトたちと距離を取っていた。……そんな女が友情だの、愛だの、命を育む等と喚くのである。滑稽としか言いようが無かった。適当な嘘を並べ立てているようにしか思えなかった。
「人は人と繋がって……そして、素質や宿命を連綿と受け継いでいく。そんな生き方だって考えられた筈だっ!!!」
それ故に、強く声を出して、大きな声で主張する。
……しかし、声の強さとは裏腹に心は弱まっていることに姫和は自覚していた。自覚していたからこそ、声を張り上げることで心を誤魔化していた。誤魔化すことで、姫和は目の前に居る冥加刀使を……自分の影を説得しようとしていた。
「……荒魂になった私に……この社会に復讐を誓った私の…………幸せはそんなのじゃない。」
しかし、目の前に居る冥加刀使は姫和の説得を拒むのであった。
「貴女なら……分かるでしょう?……復讐しか見出せなかった……貴女なら!!」
すると、冥加刀使は姫和の肩を突然掴み、顔を近づけると、そう述べるのであった。
その鬼気迫る表情を見ながら、姫和は冥加刀使の言っていることが理解できた。
……親と死別したか、親と仲違いしたか、それとも親から逃げ出したかったのかは知らないが、彼女達は自分達の居場所を此処しか、荒魂を討伐する世界にしか見出せなかったのだ。嘗ての両親が突然荒魂のせいで死に、目標も生きる理由も見いだせず、孤独に打ちひしがれていた私の元に来た一通の手紙、折神 紫が荒魂に成り代わられていること、更には母の病因がその荒魂との戦いであったことを知り、母の仇を討つことを目的に生き続けた私のように。
……だが、母を殺した荒魂に取り憑かれた幼子との奇妙な旅の果てに、母の仇よりも幼子の命を優先した結果、母の思いを棄てた。そして、私の中は優と可奈美を助けることを至上の目的として刀使を続けた。
もしも、……もしも、優と可奈美が居なかったら。私は目の前に居る冥加刀使のように理不尽な社会に怒りを向け、刀剣類管理局とこの国の統治機関に対して御刀の刃を向ける冥加刀使となっていたのかもしれない。
そんな冥加刀使の姿を見た姫和は、全てを奪われ、それに深い絶望を抱き、怒りの矛先すらもない状況に追い詰められれば、自分もそうなっていたかもしれないと強く思うのであった。自分も理不尽な社会に対して絶望し、その理不尽な社会に対して復讐するべく刀を振り回したことがあるのだから……。
それ故に、姫和は心の奥底では冥加刀使となった人を否定できないでいた。
……私が冥加刀使にならずに済んだ理由。全てに絶望し、怒りの感情のままに暴れる無敵の人にならずに済んだ理由。
それは全てを失い、激情のままに暴力を振るうあちら側へと境界線を飛び越えずに済んだ理由。優と可奈美を救うという目的があったお陰で、人から脱することは無かったと姫和は述懐し、目の前に居る冥加刀使と私はコインの裏と表の関係のようだとも思ってしまった。
――――しかし、
『本部。本部。維新派を病院付近にて発見。付近に居る刀使は――――』
優の居る病院が維新派に襲われているという通信が流れたことで、姫和は青ざめ、誰も居ない空間に背を向けると、優の居る病院へと、迅移を使ってでも辿り着こうとした。
「嘘だ!……噓だ嘘だ噓だ噓だ噓だ嘘だっ!!!!」
何で?優が居る場所は秘匿されていた筈だっ!?――――そんなことを考えながら、姫和は必死で走り、迅移の使い過ぎで疲れが出ても、友のために走ったメロスの如く、必死で走り続けた。
必死で走り続けたせいで、肺呼吸が上手く出来ず、咽込んだにも関わらず、走ることを辞めなかった。
……だが、疲労によって足がもつれ、倒れてしまう。
「……うっ、……グスッ…………。」
また失ってしまった。また踏み躙られた。また大切な者が理不尽に奪われてしまった。また失ってしまった。また踏み躙られた。また大切な者が理不尽に奪われてしまった。また失ってしまった。また踏み躙られた。また大切な者が理不尽に奪われてしまった。
姫和の中で、そんな考えばかりが木霊していた。
「――――!!」
その後、特別災害予想区域に指定されていたために、ただ一人、孤独な少女の泣き叫ぶ声だけが無音と化した地区に響く。
……何も守ることも、救うこともできなかったと。
「姫和ちゃん!?」
しかし、西田 保二等陸佐の部下である古河 蛍三等陸尉の声が聴こえた姫和は、その声がした方へと顔を向けるのであった。すると、そこには73式中型トラックを新型S装備の指揮統制に特化するように改造した指揮車輛に乗る西田達が居た。
車輛に乗る西田達を見た姫和は一筋の光明を得たかのように思え、開口一番に西田達に頭を下げてお願いした。
「お願いします!!優の……優の居る病院へ急いで行ってください!!!!」
姫和が必死に頭を下げるのを見た沼田 剛一等陸尉は、本心では優の居る病院へと向かいたかったが、西田にどうするべきかを尋ねていた。
「……隊長。」
「……司令部、司令部。病院が襲撃されたという報を受けたため、特別災害予想区域から離れ、民間人の救助に向かう許可を。」
そのため、西田は勝手に動く訳にはいかないので、司令部に優が居る病院へと向かう旨を報告する。
『こちらは、そのような報告は受けていない。西田 保二等陸佐と部下数名は直ぐに現場に戻り給え。』
だが、司令部は、冷酷にも優を見捨てろと命ずるのであった。それを聞いた西田はハンドサインで勝田 亨二等陸尉と鏑木 霞一等陸尉に通信を切るように命じていた。すると、司令部との通信を耳に当てている西田の耳に、ブツンと通信が途絶える音がするのであった。
「司令部、ですが………司令部、司令部?……フム、ドローンが出す電波の影響か、それとも蝶の荒魂が原因かは不明だが、通信が途絶えてしまった。」
「隊長。とすれば、我々は?」
そうして西田は、激しく入り乱れる電波の影響か、それとも蝶の荒魂が原因かは不明とわざとらしく理由を述べて、司令部との通信が途絶えたと周りの部下と姫和に言うのであった。
「となれば、我々は司令部との連絡が取れない以上、各個で動く必要があるだろう。……これより我々は、襲撃されたとされる病院の救援へと向かう。」
その西田の言葉を聞いた姫和は、安堵の表情を浮かべるのであった。
西田達の協力のお陰で、優の居る病院へと辿り着いた姫和は、車から飛び降りると、優の居る病室へと一気に駆け込むのであった。
「あっ!ちょっと姫和ちゃん!!」
トラップや待ち伏せを警戒した蛍の制止も聞かず、姫和は病院内へと駆け込む。不自然なくらいに静かな病院内を気にすることなく、奥へと更に奥へと進む。
そして、姫和は優の居る病室へと辿り着き、病室内に入ると――――、
「お前っ!……何で、何で倒れているんだ!?」
トーマスが血まみれで倒れていた。
そのトーマスを見た姫和は、誰にやられたのかと肩を揺さぶりながら訊いていた。
「……へへ、………維新派のソフィアだよ。…………クソ、俺としたことが……子供如きに……引き金引くのに……躊躇するなんて。……優は……そいつらに……攫われた。」
トーマスは維新派の刀使に斬られただけでなく、護衛対象の優までも維新派に属するソフィアに攫われたと姫和に告げていた。
「……何で!?此処は一般には知られていないハズだろうっ!!?」
優が維新派に攫われたというトーマスの言葉に反応した姫和は、何故優がこの場所に居ることが維新派に嗅ぎつけられたのかとトーマスに迫っていた。
「……ハハ、今まで気付かなかったのか?…………俺は、舞草に協力する前から……アイツラとも繋がってた。」
姫和は、トーマスが舞草に協力する前からソフィアとも繋がっていたということを告げられ、激しく動揺していた。
トーマスはカンパニー(CIA)の工作員であるが、舞草と協力する前にソフィアとかいう維新派の人間と繋がっていたということは、旧折神 紫派……つまりは、大荒魂に取り憑かれていた紫の味方であった変革派とも繋がっていたということになる。
「……不思議に思わなかったか?……舞草の隠れ里の場所………ソフィアが行方の知らない舞草の潜水艦と連絡が取れたこと……全部、俺が段取りした。……優の情報をソフィアに売ってな。」
「……お前!!!!」
姫和は、ソフィアに優の情報を売ったというトーマスの言葉に憤慨し、首元を掴む。
「……ソフィアと繋がったのは……CIA、カンパニーの指示だ。………舞草と刀剣管理局をぶつけて、舞草を勝利させ……刀剣類管理局をアメリカ寄りの組織するためにな。」
「……つまり、舞草というのは。」
「折神 紫を暗殺……そして、刀剣類管理局をアメリカ寄りにし、……隠世技術の独占………及び、この国が………東側に……ならないようにするためだ。」
そして、トーマスから聞かされたのは、アメリカが舞草に潜水艦やトーマスのような兵を送った理由。
当時の刀剣類管理局局長であった折神 紫を排除し、刀剣類管理局をアメリカ寄りにすること。そして、この国が東側、つまりはアメリカと近い将来対立するであろうロシアや中国側にならないようにするための政治工作をしていたと述べていた。
「……それと……ソフィアって女、なんか優に執着してたみたいだ。………そこから考えると、……やっと手に入れた人間は…………直ぐには殺さないハズだ。」
……それを聞いた姫和は、最初に抱いた"母の仇"を仮に実行し、成功したとしても、トーマスみたいな兵とそれを送り込んだ国に利用され尽くされることになるだけで何も変わらないのだということも理解してしまった。
それを実感した姫和は、あれだけ実行しようかどうか悩んでいた"母の仇"に虚しさばかりが埋まっていく。そして、熱も冷めて行った。
そうして、熱の冷めた"母の仇"と入れ替わる形で"優の救出"に熱が籠り始める。
「……あと、これは個人的な願いなんだがな。」
「……何だ?」
立ち上がろうとした姫和を止めて、トーマスはあることを願い出ていた。
「……俺をアメリカでなく………ベトナムに埋めてくれないか…………。」
「何で?……何で自分が生まれ育った国じゃないんだ?」
自分を生まれ育ったアメリカではなく、ベトナムに埋めて欲しいと願い出ていた。
だが、それが姫和には理解できなかった。自分の生まれ育った国よりも、地獄の戦場だったと述べていたベトナムの方を選ぶことに、何一つ理解できなかった。
「……俺がソフィアに協力したのは…………個人的な復讐が理由だった。………あのソフィアが言っていた"獣の世界"っていうのを……見たかったんだ。……戦友が『赤ん坊殺し』とか言われて………馬鹿にされない………ヒッピー紛いのアメリカ人の勝ち誇った顔が見えない…………世界が見たかった。」
しかし、姫和の言葉をトーマスはもう聞き取れていないのか、譫言のようにソフィアに加担した理由を語っていた。
戦友の遺骨を抱きながら、ベトナムから母国であるアメリカへと帰って来たとき、ヒッピー紛いのアメリカ人に『人殺し』、『赤ん坊殺し』と罵られ、侮蔑されない世界が見たかったと答えていた。
「……だけど、どんどん俺の技術を覚える優の姿を見ていたら………別れた女房との……息子みたいに思えて………"獣の世界"を遺すのがバカらしくなって、…………それで、ソフィアに尾けられて……このザマだ。………優を助けてやってくれ…………。」
そして、トーマスは訓練を通して、優のことをまるで自分の息子のように思えてきたことで、ソフィアから離れたと答え。
「………でも今……俺は……俺の戦友を……コケにする国よりも………地獄のような戦場だったあそこには……戦友との……同じ戦いで血を流し兄弟が………居る。……少しでも良い………戦友の居る……あの……場所で………。」
戦友の居る場所で埋もれたい。自分達を冷たく扱う生まれ育った国よりも、あの戦友達が居た場所に同じように眠りたかったとトーマスは答えると、
――――事切れていた。
「…………バカ。」
姫和はそのトーマスの姿を見て、そう返すしかなかった……。
だが、その言葉とは裏腹に姫和は、トーマスを否定できない自分が居ることを自覚していた。
…………姫和はそう考えるだけで、ベトナム帰還兵と鎌倉での出来事以降の刀使は、本質的には似た者同士ではないかと思い始め、トーマスのことを否定できないでいた。
「……ああ、そうか。」
姫和はそこまで考えると、刀使は目の前に居る傷痍軍人と命を賭けてクーデターに参加した冥加刀使達と自分は本質的に同じなのだと。……環境や境遇が少しでも似ていれば、汚れ仕事をするトーマスやクーデターに参加する冥加刀使のようになっていたのかもしれないと考えてしまった。
「おい、大丈夫か!!?」
そうして、姫和は呆然としていると西田が室内に入って来たので、西田にトーマスの思いを伝えるのであった。
「……西田さん。トーマスさんが言っていました。……アメリカじゃなくて、ベトナムに埋めてくれって。……アメリカは『赤ん坊殺し』だとか、『人殺し』だとか言ってくるばかりだから、帰りたくないって……。」
「……分かった。必ずそうする。……我々も、自衛隊も不要だと騒がれていた時期があったから……その気持ちは分かる。」
西田は、この国が自衛隊に対して冷たかった時期があると答えると、トーマスをベトナムの地に埋めれるようにすると答えていた。
「……仲間だったのか?」
「…………ええ、鎌倉での騒動以降、私達は世間から批判されました。……だから、叶えてやってください。」
そして、西田からトーマスは仲間だったのかと尋ねられた姫和は、刀使もベトナム帰還兵や自衛隊のように世間から批判されたのだと、その一点においては同じであり、同じ血の涙を流した者だと返すのであった――――。
その後、姫和は刀剣類管理局と自衛隊の本隊が集う野営地に居る73式中型トラックを改造した指揮車輛内に待機しつつ、維新派のソフィアの行方について西田達と要請応じてくれた警察の協力を借りて、ソフィアの行方を調べていた。(……なお、姫和が指揮車輛内に待機しているのは、ソフィアの居所らしき場所が分かり次第、そこへ急行するためである。)
……時間はまだある。そう信じて姫和は、優を攫ったソフィアを捜索することとなった。
「……西田さん。警察への要請をありがとうございます。」
「構わんさ、今はソフィアという人物を追う方が良いと私も判断している。」
そのため姫和は、居所の手がかりを掴むべく、ソフィアの部屋を家探ししている捜査員が見つけたソフィアの部屋にあった書籍類やインターネットやスマートフォンの検索履歴のリストを眺めていた。……姫和はソフィアの真理が分かれば、居所が分かるかもしれないと思い、書籍も捜査するように要請していた。……そして、意外にもかなりの書籍があったところから、彼女は割りと読書家だったのかもしれないと姫和は思うのであった。
「…………。」
その中で特に姫和が注目したのが、これらの社会心理学や動物行動学に関する実験の内容を記した書物であった。
ミルグラム実験
サードウェイブ実験
ローゼンハン実験
Universe 25実験
何故かは分からないが、これらの書籍がソフィアの行動に即しているのではないかと思ったからだ。――――しかし、
『……諸君。我々は遂に成し遂げた。維新派の栄えある活動の一部を此処に公表する。』
指揮車輛内にあるテレビモニターが突然ソフィアの顔を映し、こう述べて来たのであった。活動の一部を公表すると言って。
「……通信ジャックか?発信元は?」
「今、調べています!!」
西田はそれを見て、通信ジャックであると直ぐ様に看破し、発信元を特定するように部下に指示を出すのであった。
『我々は大荒魂の一人を討伐することに成功した。それは、貴君等が見えている吊るされた者、衛藤 優というものだ。』
すると、ソフィアはそう言うと、首を吊るされ、ピクリとも動かなくなった優を映すのであった。荒魂を討伐したと言って……。
その映像を見た姫和は、
「……は?」
何が起こったのか分からなかった。
「姫和ちゃん!誰か映像止めて!!」
蛍の叫びも聞こえないぐらい、その映像を食い入るように見つめていた。
…………間違いなかった。優だった。見間違えるはずがなかった。心と呼吸と全ての時が止まってしまったかのようであった。
『この荒魂を使って政府は自らの邪魔となる者を排除していた。それは許されざる蛮行だ。故に、我々は処罰を行い。この後は我等の神、イチ子ちゃんに捧げる供物とし、神聖なる者として生まれ変わるのだ。彼もそれを喜んでいることであろう。』
「嘘だっ!!!!」
そして姫和は、ソフィアが述べる優はイチキシマヒメの供物となったことに感謝しているという言葉に憤慨していた。
勝手な言い分だと、勝手な理屈だと、勝手な主張だと心に抱きながら、この映像が現実ではないと願いながら"嘘だ"と騒ぐ。
姫和は怒り狂う。
可奈美と優を救うことができなくなったから、自分の為すべきことを奪われたから、自分の全てを踏み躙ったからこそ、怒り狂う。
「姫和ちゃん!落ち着いて!!」
取り押さえようとした霞を無言で振り払うと車から出て、目の前に居た維新派の刀使を見つけると暴行を加える。
「お前達の頭……ソフィアは何処だっ!!お前達が……優を殺した奴は何処に居る!!!!」
その行為を姫和は、可奈美に真意を問い質されるまで何度も続けるのであった。
ソフィアが優を殺した理由はもう少し後に書くと思います。
あと、これ以降もしぬどんどん