143話を投稿させて頂きます。
優くんは、アニメ17話で塁さんが言っていた『珠鋼という神性を奪われた喪失感。この餓えにも似た喪失感を埋めるためにノロは本能的に結合を求めます。』という話から、こういう話にしようとした部分はあります。
自分が生まれ育った国にも、所属していた組織にすらも、そして家族の一人である可奈美にも(これは、ソフィアが優を絶望させるための嘘ではあるが。)、優は見捨てられたというのに、ソフィアは優が絶望し、復讐に囚われて大荒魂になると述べるどころか、こちらを見て、見下したかのような笑みを浮かべたことにソフィアは奇妙に思えた……。
……何故、コイツはそんな笑みを浮かべるのか。理解できなかった。
しかし、ソフィアは次の優の言葉で何故こちらを見下した笑みを浮かべたのか理解した。
「何か初めて見た時に気持ち悪いなぁって思ったけど、やっと分かったよ。……何だかんだ理由付けてるけど、結局のところは悪ぶってるだけなんだぁ?」
復讐の意味であるソフィアを馬鹿にしているのだと。
私の指針で志であるソフィアを見下しているのだと。
私の全てで、写し身であるソフィアを愚弄しているのだと。
このガキは、私がやりたかったこと、私が成し遂げたかったこと、私が求めたもの全てを否定したのだ。
「……何がおかしい!?私の全てを否定するな!!」
優の見下した笑みがそういう意味だと理解し、気付いた瞬間にはソフィアは優の首に手を掛けてしまう。
「……う……ぐぅっ!…………」
「だっておかしいじゃない!!みんなあれだけ必死になって生きてたのに、何で私だけ……下水道に生きてた仲間と大好きだったソフィアお姉ちゃんも、私が産むはずだったソフィアという名前の赤ちゃんもこの世に殺されて、ただ漠然と生きてるあなた達が何不自由なくこの世に生きていけるのっ!!?」
そしてソフィアは、優の首に手を掛けながら訴える。
嘗て下水道で共に過ごしていた仲間は都市開発を目的とした掃除部隊によって殺され、私が産むはずだった赤ちゃんも大人達に殺されたにも関わらず、この世にただ漠然と生きている人達はどうして生きていけるのかと。……それが不公平だと思った。無責任だと思った。理不尽だと思った。
「……ハ……ハハハ……僻んでる……。」
「笑うなっ!!!」
"ソフィア"という仮面が剥がれ落ちたソフィアは、年頃の少女のように涙を流し、感情を剥き出しにして優に「笑うなっ!!!」と叫ぶ。そして、優の腹に拳をも振り下ろしていた。
「ゲホ、ゲホッ!!…………だって、笑えるよ。……傷ついてボロボロで……惨めで汚い……!僕はそんな弱い肉細工を見ていると心の底から笑いと……僕はまだ大丈夫だなって思えるんだ。」
優はそう言うと、少女の様に涙を流すソフィアの姿を見て、邪悪な笑みで笑っていた。
「黙れっ!!」
邪悪な笑みを浮かべる優の姿を見たソフィアは不気味で仕方なかった。
首に手を掛けられ、今にも殺されそうになっているのにどうして優はそんなに余裕そうに振舞えるのか?
私はこんなにも心がボロボロになっているのに、殺されかけている優は幸せそうなのか?
ソフィアは、今の優が不気味で仕方なかった。
「……私はっ……私はあ!!やり直すんだ……あの子達のために、絶対に!!……そうして、ソフィアが生きた意味を……この肥え太った成金共が創った世界を、成金共が肥え太るだけの世界に……この世に刻み付けてやるんだっ!!!」
同じ地球という星で生まれ、同じ現世という世界に生きていた。なのに、生まれや育ちが違うというだけで……。
「うっ……、ひっぐ……グス………。」
私の仲間や私のお腹に宿った赤ちゃんはこの世界に見捨てられ、目の前に映る家族や環境に恵まれた人達は……いや、目の前に居る子供は何不自由なく生きている。
そんな理不尽なものを見て、ソフィアだった少女は涙を流し続ける。
どこで差がついたの?どうして、どうして……あの子達ばかりが不幸になるの?
この恵まれた人達の幸せそうな顔を見ると殺したくなる。その幸せをぐちゃぐちゃに壊して、私達と同じ目に遭わせてあげたくなる。同じ存在なのだと分からせてやりたくなる。
ソフィアだった少女の心の中はそのような怨嗟と憎悪で渦巻いていた。
それ故に、優の首に掛かっているソフィアの手に力が更に込められる。その力に呼応したのか、それとも死の前に見る走馬灯なのか、優は昔のことを思い出していた――――。
――――優がタギツヒメと融合する前。
優のある行動が異常だと思えた優の父はとある病院へと連れて行き、あるテストを優は敢行することになった。
「それじゃあ優くん。簡単なクイズに答えてもらって良いかな?答えを当てれれば、お菓子を上げよう。」
「ホントに!?」
医師のお菓子を上げようという言葉に反応し、喜色満面の表情を浮かべる優を見て、あどけない子供であると思いながらも、この心理テストには答えを出さないでほしいと願う医師であった。
「それじゃあ優くん。負傷した人の絵があるとして、何処に怪我をしていると思う?」
「頭とか心臓。」
「……うん、正解だ。」
医師はそう言うと、優にお菓子を与える。それに喜ぶ優を見ながら、内心苦悩する医師。
「……次は、そうだな。……クリスマスの夜にある男の子がサンタクロースからのプレゼントがされたんだ。それは何と、サッカーボールと自転車だったんだ。だけど、その男の子はそのプレゼントを貰っても嬉しくなかったんだ。何故だと思う?」
「……足が無かったからかな。」
「……またまた正解だ。凄いな優くんは。」
医師は「凄いな優くんは。」と言いながら、苦悩する顔を見せることなく優にお菓子を上げていた。
「ある少女は自分の父親に殴られたり蹴られたりしていたんだけど、それを見かねた学校の教師が父親に会って少女を殴ったり蹴ったりすることをやめるように説得しようとしたんだけど、父親はその教師に殴りかかってきた。少女も隙を見計らい、父親ではなく教師を包丁で刺した。父親が死んだら虐待されずにすむのにどうして少女は教師を刺したと思う?」
医師は優にかなり過激なことを述べて、優の心の中に少しでも先に、一歩先に進み触れようとした。……すると、
「……その女の子は、殴られたり蹴ったりされることで自分であろうとしたんじゃない?」
優は、少女は自分の存在意義を奪われたくなかったからだと事もなげに答えるのであった。それを聞いた医師は、
「………それも正解だ。凄いな優くんは殆ど正解を答えているね。」
正解を答えて凄いと笑顔で答えるが、内心は暗い気持ちとなっていたが、それを悟られぬよう、努めて表情を崩さないようにしながら、お菓子を渡していた。
お菓子を貰えた優は、嬉しそうに貰いに行く。それを見た医師は更に踏み込んだ質問ができると判断する。
「……それじゃあ、優くん。少し聞きたいんだが、君はお友達とどんな遊びをしていたの?」
「……ビニール袋を被せただけだよ?」
そうして、医師から核心へと迫る質問を受けた優は正直に答える。
ただ単純にぬいぐるみにビニール袋を被せただけだと。
「なら、どうして被せたのかな?」
そう告げられた医師は、優に何故ぬいぐるみにビニール袋を被せたのかを尋ねる。
「うん?顔が見えなければ自分がどう思うかを試してみたかっただけだよ?」
すると優は、医師の問いに事もなげに答えていた。
「…………。」
医師はそれを聞いて一瞬険しい顔をするが、直ぐに表情を笑顔にしていた。
何故なら、目の前に居る子供でしかない優はぬいぐるみにビニール袋を被せ、そのままぬいぐるみの首を紐で締め殺そうとしていたからである。
それを踏まえて、先程の“試したかった”という返答に児童心理学を担当する医師はこの目の前に居る児童に果たして、この結論に至るべきかどうか迷った。
「試したかったていうのはどういうこと?」
「……顔を隠して首を締めれば、自分がどれぐらいで悲しむか分かって、それで自分の心の中にある『優しさ』というものが見つかると思ったの。」
……迷ったが、医師は優に何故ぬいぐるみの首を締めたのか聞き出そうとした。
すると、優は医師がお菓子をくれたことに気を許しているのか、医師の質問に正直に答えていた。
顔が見えなければ、本当に首を締めれば悲しくなくなるのかどうかを。
「それは……何故『優しさ』を見つけたいの?」
そう答えた優に、医師は何故『優しさ』を見つけたいのかと尋ねる。
「……あのね、僕の名前は衛藤 優っていうの。優しい子になって欲しいから『優』っていう名前にしたって可奈ねーちゃんから聞いたの。」
優は答える。
自分の名前の由来が優しい子であれという願いから、付けられたのだと。
「……でもね、優しいってどういうことなんだろ?って思ったから、顔をビニールで隠せばその人に情が湧かなくなるって聞いたから、先ずは大切なぬいぐるみの首を締めてみたの。でも分からなかったから、ぬいぐるみの顔をビニール袋で隠して首を締めてみたの。……でも、顔をビニール袋で隠しても隠さなくても大して変わらなかった。」
優は答える。
優は『優しさ』という意味が分からないから、大切な友達であるぬいぐるみの首を先ずビニール袋で顔を隠してから紐で締め、そして次は顔を隠さずに首に締めることで心の動きの違いが有るかどうか、その違いから、情という物が分かり、そこから母が名付けてくれた『優しさ』というものが理解できる気がしたということを年相応な無邪気な笑顔で、自分がいつも思っていることを隠すことなく、素直に述べていた。
素直に述べた理由は先程の医師の質問から同じ悩みを持つ人なのかもしれないと思ったからである。
……素直に答えればどうなるかも分からぬまま、医師に答えていた。
「……ふうん、そうなんだ。………おじさんに教えてくれてありがとうね。」
「ううん、良いよ。おじさん、分かってくれそうだから。」
それを聞いた医師は、この優という子供の父親に診断結果を報告しに行くのであった。
その後、優の診断を終えた医師は、優の父に診断結果を報告すべく、神妙な面持ちで優の父に話し出した。
「お父さん、落ち着いてよく聞いて下さい。児童心理学の医師として、正直に申しますと、この診断はしたくはありませんが……この子は……」
優の父は医師のその神妙な態度にゴクリと唾を呑み込みながら、静かに医師の診断結果を待っていた。
それを聞いた優の父親は、唖然としていた。
しかし、唖然としている父親とは違って、サイコパスの意味を知らない優は父の隣で無邪気に病院にある人形と遊んでいた。
そう言われた医師は、頷きながらサイコパスについて話す。
「……ええ、それに、先天的な反社会性パーソナリティ障害とも言われている症状です――――。」
曰く、サイコパスとは、
良心が異常に欠如している。
他者に冷淡で共感しない。
行動に対する責任が全く取れない。
罪悪感が皆無。
自尊心が過大で自己中心的。
口が達者で表面は魅力的。
といった特徴が見られると医師は優の父に説明していた。……加えて、
「それと、サイコパスは今のところ確立した治療法は……見つかっていません。」
サイコパスは先天性の病であるために、今は確実に治す治療法が無いと優の父に告げるのであった。
しかし、当時の優はサイコパスという意味も知らなかったし、ぬいぐるみの頭に被せて首を絞めることを『異常』と見て取り、騒ぐ医師と父親が不思議で仕方なかった。
だが、ぬいぐるみの首を絞めるだけでなく、そのぬいぐるみの頭にビニール袋を被せるという『異常』な行動をする優を見た父親が優を精神科に連れて行くと言い出したために現在に至るのだが、自分の息子が重大犯罪者になりかねないサイコパスであるという事実に非常に悲しんでいた。
だが、それと同じく父は優のことを非常に恐れていたということが優の目にも伺えていた。
何故なら、優と可奈美の父は、『サイコパス』である自分を避け、『刀使』になった自身の姉である可奈美ばかりを贔屓していたからである。
だから、優は親に認められるように、家族の一員として認められるように勉学に励んだ。
可奈美は母親から『刀使』であることと、母と同じ御刀を扱うのに使う『剣術』を受け継いでいた。
だが、一方の優は、母親から望まれた『優しさ』という思いも、母の取り柄であった『剣術』も受け継ぐことができなかった。
だからこそ、優は唯一の肉親である父親に一つでも認められて、家族の一員になれるように頑張った。放課後、皆が友達と遊んでいる時も何学年も先の教科書を使って勉強していた。
……だが、優自身も同じ人間に思えなかったことと、肉の塊だけでなく頭も悪い人もどきと仲良くしても意義を感じなかったが故に、教科書の世界に没頭していくことができたという部分もある。
――――優は昔からそうだった。
物心が付いたときから、心の何かが欠けているという自覚を持っていた。その自覚を持つが故に、同級生も両親も可奈美も可奈美の親友である舞衣とその妹達も同じ人間に見えなかったし、二本の脚で動く肉の塊という物としか思えなかった。
しかし、そんな心境であったがために、同年代の友達も居らず、何年も先の教科書を使って勉学に励んだ成果もあって、毎年学年一位の成績を取り続け、全国模試も100位以内は抑えることができたのである。
だが、それでも、優と可奈美の父は、可奈美が母と同じ刀使になれたことの方が嬉しかったようである。
それを見た優は、子供心にこう思った。……何で姉が優遇されるのだろうか?自分よりも頭の出来が悪い姉の方がそんなに良いのかと、それほど『刀使』になったことの方が良いのかと思ったからこそ、優は父親に聞いてみたのである。
「良い成績を取ってるのに、何がダメなの?」
すると、優の父親は、
と言われたのである。
「……何が問題なの?」
だが、優は問題を起こした覚えが無いため、何のことなのか一切分からなかった。更に言うと、父親が言う『問題』とは、周りの人間が『問題』だと騒ぎ立て、囃し立てていたものばかりであったと優は記憶している。
だからこそ、優は父親に反論したのだ。何が問題なのかと。
「同級生と喧嘩して、相手を殴ることは悪いことなの?」
「テストは必ず100点を取っているのも悪い事なの?」
……しかし、父親に、優は相手が謝っても殴り続けるという残忍性があること。授業内容も分かっていて、何学年もの先の勉学をしていて、テストでも必ず100点は取れているのだから、自分の勉学に必要の無い宿題をする必要が無いと言って宿題をしない無神経さを咎めていた。
「………。」
優は父親にそう言われ、黙りこくるしかなかった。……いや、より正確に言えば、何故怒られているのか理解できないからこそ、黙るしかなかったというべきであろうか。
自分は身体が弱いから、相手が殴りかかって来たら容赦せずに徹底的に打ちのめす必要があっただけなのに、身体が弱いからこそ、運動ではなく勉学に励んで家族に認めて貰おうとしたというのに、という不満を抱えながら父の言っていたことにただ黙って頷いていた……。
この他にも、宿題をしないといった性格の悪さが原因で、上靴に画びょうを入れられるというイジメを受けるが、翌日に画びょうを他の人間の靴に入れ替えるという行動取って、イジメて来た人間にその罪を擦り付けたこともしたのだが、それは父親には黙っていた。
そして、優をイジメていた人間は優に画びょうを入れ替えられた人間に靴に画びょうを入れられたことを咎められたのである。
そうして、その次の日には、優をイジメて来た人間はクラス全員からイジメの標的にされたのである。
それだけでなく、そのイジメて来た人間をクラスの皆がイジメる理由が『靴に画びょうを入れるという陰湿なイジメをした悪い奴だから。』ということになったのだが、それが優にとっては不思議であった。
しかし、いい加減画びょうの件でイジメるのは飽きたからか風化したのかは分からないが、その数日後には転んで汚物に触れたという理由だけでその人間を"ウンコマン"と名付け、最終的には穢れているという理由で"荒魂"と名付けられ、それが流行ってしまったこと。それに飽き足らず、その"荒魂"が触った物を病原菌扱いしてぶつけあったりする遊びだったり、雑菌扱いにして触られないようにする遊びという名のイジメが流行ったことも不思議だった。
すると、人を"荒魂"と名付けてイジメているということを知った優の担任は、クラス全員に「イジメは悪い事だ。」という極めて普遍的なことを言って事態を終息させようとしていた。……だが、これでイジメが消えなかった。むしろ、「イジメは悪い事だ。」と教わった生徒達は、"荒魂"が先程の靴に画びょうを入れていた人間をイジメていた過去があったということが発覚したために、その"荒魂"は更にクラス全員から苛烈にイジメられるようになっていった。そして、不思議なことに"荒魂"をイジメている側は担任が言っていたイジメをしているという自覚がないことであった。
それは、何故かと問われれば、イジメをしていた"荒魂"は悪い奴であって、悪い奴は懲らしめないといけないといけないからと、まるで自身が特撮物のヒーローになったかのようにクラス全員が答えるのであった。……これはイジメではなく、先生が、親のように信頼している大人が言っていた「イジメは悪い事だ。」というのを忠実に守り、そして「制裁」や「批判」、「自業自得」、「因果応報」とも言って、"荒魂"に仕立て上げた人間を「荒魂討伐」と言って彼を殴ったり蹴ったりするごっこ遊びをしていたことも優は自身も一緒になって行っていたことを鮮烈に覚えていた。
優がそのイジメに加わった理由は、断ったら断ったで周りの肉細工がうるさいからさっさと終わらせたかったという理由と人を自身の手で可哀想な目に遭わせてやると自分の中にその相手に『情』が湧き、その『情』から『優しさ』が生まれ、自身が理解できなかった『優しさ』が理解できるかもしれないということに興味が湧いただけでしかなかった。そしてイジメが悪いと言っていた者も嘗てはイジメられていた者と一緒になって、その"荒魂"をイジメていたことに不思議だったというのもある。だからこそ優は、その疑問と『優しさ』を得るためにイジメに加わっていた。
そうして、この一連のイジメ騒動から、正義が使う悪という言葉は、病院の入院患者に差し出す流動食のように流動性があるものであり、相手を殴るのに都合の良い道具でしかないということを優は理解したのである。
優くんは、名前の元となった『優しさ』という感情が先天的に欠落した子供。その『優しさ』を埋めるべく彷徨うキャラであり、『珠鋼という神性を奪われた喪失感。この餓えにも似た喪失感を埋めるためにノロは本能的に結合を求めます。』という荒魂の特徴に似た荒魂に近い人間という子供というキャラでもあります。
そして、サイコパスってこんな感じかなあ?とか心が怪物と言われた人間はずっと怪物のままなのか?とか考えながら書いていました。
でもまあ、殺人鬼=サイコパスてのは間違いで殺人をしないサイコパスも居るってことは理解しておいてください。
次は2週間後に更新予定。