【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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147話を投稿させて頂きます。

神「やれやれ、私を頼る幼年期から卒業して、やっと反抗期になったのか。」
というような話。
    
    


御刀を持つ意味

     

    

舞衣がタギツヒメ討伐の指令に疑問を抱いたのは、タギツヒメを信用しただけでなく、真希に寿々花が投降した維新派の刀使を過激派……所謂テロリストの仕業というふうに偽装して始末したことを報告したときのことであった。

 

「………ああ、そのことか。」

 

しかし、舞衣の報告を聞いた真希は、何事も無いかのような声色で、妙に落ち着き払った態度で返していた。それに違和感を感じた舞衣は、重ねて真希に寿々花の罪状を話すのであった。

 

「い、……いや、特務警備隊第二席の寿々花隊員の行いは、真希隊員の"刀使が刀使を殺す事態を避けろ"という指示に反していると思われるのですが?」

 

そう指摘して……。しかし、

 

「……そうだな。確かに僕は"刀使が刀使を殺す事態を避けろ"と言った。だが、僕は特務警備隊の職務上、朱音様の宸襟を悩ますのは得策ではないからこそ"刀使が刀使を殺すことが明るみになる様なことは避けろ。"とも僕は言った。」

 

真希は舞衣に冷たい声音で、背中を向けながらそう返すのであった。

 

「それに、維新派に属するように煽った彼女達を帯刀権の剥奪だけで処分したとしても、冥加刀使とこの戦闘の経緯といった情報が彼女達から漏洩する可能性が高い以上、帯刀権を奪って放逐することなどできると思うか?……更に言うとだ。刀使として復職させたとしても、反乱の扇動者を放置すれば、数年後には刀剣類管理局内部を瓦解させる要因にもなりかねない。」

 

それだけでなく真希は、彼女等を始末した理由を述べると、

 

「もし、君が言っていたことが事実だとしても、僕はその点を考慮すれば寿々花は良い仕事をしたと思うが……それに、寿々花が主犯であるという何か物的証拠でもあるのか?」

 

舞衣に刀使が刀使を殺したように見えないように、反乱分子の仕業として始末した寿々花の手腕を評価すると真希は述べると同時に、舞衣に寿々花が主犯であるという確実な証拠があるのかと問われた。

 

「……いえ。ですが、彼女達は冥加刀使でもなかったんですよ?」

 

そのため、舞衣は真希にそう返すしかなかった。それを聞いた真希は、

 

「ああ、そうだ。……だから"テロリスト"に殺されたんだ。違うか?」

 

と冷ややかに返すのであった。それだけでなく、

 

「……それにだ。君には妹さんが二人居るんだろう?今後、そういった過激派とか名乗る"テロリスト"はそういった"子供"といった弱い者をターゲットにするらしい。君としても、刀使がテロリストに殺されたことで特祭隊も対テロ能力が向上した部隊が必要になる。そうなれば、私達が住むこの国は所謂テロリストに対して強い国になるのだから、妹さんも荒魂事件やテロ事件に巻き込まれることなく安心して過ごせるだろう?」

 

真希は遠回しに妹二人を殺されたくなければ、寿々花のことについては黙秘しろ。……と肩に手を置いて舞衣を遠回しに脅迫していた。

 

「それに、明眼と透覚を使え、大企業の柳瀬グループの力を使って衛藤隊員を探し出し、衛藤隊員等を指揮下に置ける君の指揮能力を僕は高く評価している。……いずれは僕の後釜にと考えるほどにね。つまりは、君は刀剣類管理局の対テロ部隊と特祭隊を使ってこの国と君の家族を守ることができるということだ。……悪い話ではないと思うが?」

 

それだけでなく、黙っていれば舞衣を重要なポストに就け、家族を守ることができるようにしてやると囁くのであった。それを聞いた舞衣は、

 

「……分かりました。」

 

 

奥歯を強く噛み締めながら、そう答えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのため、舞衣はタギツヒメを討伐しようとしている刀剣類管理局並びに政府上層部の意思に不信感を抱いていた。

そのとき、歩が呟いていた。

 

「私は……タギツヒメを……衛藤さんも……助けたい。」

 

タギツヒメと可奈美を助けたいと。

静かな車内であったために、その歩の呟いた声は良く響いていた。そのため、舞衣達は一斉に歩の方へと顔を向けるのであった。

 

「それに、おかしいですよ!!あんなふうに……あれだけ友達を大切にしていたタギツヒメが造反するなんて思えません。だって……、」

 

何故なら自分は知っているからだ。……タギツヒメは優だけでなく結芽といった大切な友達が居たこと、その子達が安心して暮らせる社会にする刀使になりたいという夢を叶えるべく歩はタギツヒメを討伐することに反対していた。

……ただ"強さ"を求める刀使ではなく、人から"尊敬"される刀使になると約束したのだと思い出した瞬間、歩はハッとなると、自身の御刀に触れる。

 

(……ああ…わかった気がします…衛藤さん…。)

 

そうだ。……自分が"強さ"ではなく、その人の"在り様"こそが全てであると考えた。ならば、御刀とは、神性を帯びた金属『珠鋼』を精錬して作り出された神器。刀使たる者は、御刀を使い荒魂になってしまったノロを祓い鎮めることを使命とする。……だが、そんな神器や使命に振り回されている人間は本当に強いのか?

歩はそこまで考えたとき、ある考えに至るのであった。

 

(……本当の強さに、刀なんて要らないんだ。)

 

強くなるには、御刀(こんなもの)など要らないのだと。本当に強い人は刀や使命なんかに振り回されないのだと。

……そう考えた瞬間、自分が本当に為さねばならぬことを考え始めた。

 

「……じゃあ、お前どうすんだよ?」

「それに、イチキシマヒメを囮にしてソフィアが逃げているかも知れまセン。」

 

薫とエレンにそう言われた歩は、両者の目を見ながら答える。

 

「……そうですね。イチキシマヒメを囮にして、ソフィアという人は逃げるかもしれません。けど、あの人はイチキシマヒメの近くに居る。……多分、だからこそ舞衣隊長にそういう指示を出したんじゃないか?って思えるんです。」

 

ソフィアはイチキシマヒメの近くに居ると断言できないものの、歩は直感でそこに居ると何故かは分からないが、何となくそう感じた。

 

「ソフィアという人は何で隠世の門を開けたんだと思います?」

「……多分、権力の奪取か何かじゃないかと私達は推測してるけど。」

「もしくは、維新派が言っていた友人達や家族の仇のために荒魂殲滅の理念に共感したとか?」

 

歩のソフィアが隠世の門を開けた理由は何なのかと問われた舞衣は権力を得るために行ったという推測がなされていると答え、美弥は維新派の宣言通りに荒魂の殲滅のために動いたのではないかと答えるのであった。

 

「……ここからは私の推測なんですけど、多分、あの人は権力とか刀使の使命とかに興味は無いんですよ。隠世の門を開ける。その行為自体が目的だったように思えるんです。」

 

しかし、歩は淡々とソフィアの目的が隠世の門を開ける。そのこと自体が目的ではないかと語るのであった。

 

「もし、権力が欲しいだけなら、わざわざクーデターを起こさなくても実力はあった訳ですし、防衛事務次官の娘さんなんですから、クーデターを起こさなくてもそれなりの地位には就けたハズなんですよ。それに、栄誉ある御前試合に出ないのも不可解です。それに出場したという経歴があれば今後の刀使の活動や自分の地位向上に役立つのにそれをしない。」

 

権力の奪取が目的であるならば、防衛事務次官の養女であるという経歴を使ったり、名誉ある御前試合に出ればそれなりの箔が付くのだから、自分の地位向上が目的であるなら、刀剣類管理局内でも防衛省内でもそれなりの地位に就けることができるチャンスを幾つも捨てたという余りにも行動と目的が剥離している点。

 

「荒魂の殲滅が目的なら、イチキシマヒメと協力関係なんて結べるはずがない。……なのに、クーデターを起こすだけでなく、イチキシマヒメと協力している。」

 

維新派の理念に共感したのであれば、そもそもとして隠世の門を開けて荒魂を溢れかえらせる必要が無いし、イチキシマヒメと協力関係を結ぶはずがないという不可解な点。

 

この二点を考慮すれば、ソフィアの目的が権力の奪取や維新派の理念に共感したのではないと結論付けられると歩は舞衣等に話していた。

 

「……それに、彼女って黒色のベレー帽に灰色のトレンチコート、黒のジャングルブーツといった軍装的な…ちょっと変わった服装をしてたり、筋トレとかやっていたりそているんですよね。……あれって多分、強さのシンボルに惹かれて軍服を纏ったり、筋肉質になったり、……権力とか復讐といった目的を持たないのにそういった"強さ"は求めていた部分があるように見えるんです。」

 

しかし、権力欲でも、報復でもないのに、力だけは求める傾向にあるということに着目した歩は、ある"仮説"を立てるのであった。

 

「恐らく、力強い何かを求めるかのように。……だからこそ、隠世の門を開けることで荒魂と刀使が争い合う世界を築き、自分が欲しかった強さを手に入れた強い何かを創造したかった。そう思えるんです。……そう考えると、彼女はこの荒魂と刀使が戦い続ける世界を一秒でも維持したい。そう考えるはずですから、彼女はイチキシマヒメの近くに居ると思います。であるなら、ソフィアを追っている衛藤さんと十条さん。その二人とタギツヒメと協力してイチキシマヒメを討伐できるはずです。」

 

ソフィアはただ単純に"闘争"しか求めていないということ。

そう歩は、ソフィアの行動を推測していた。

 

「……そう推察して、舞衣隊長に『指示を無視し、イチキシマヒメの元に向かうタギツヒメを先行する姫和隊員と共に討伐せよ。』という命令を下したんじゃないかと思えるんです。なら、私達がすべきことはタギツヒメか衛藤さん達と協力してイチキシマヒメを討伐すべきだと考えています。」

 

歩の推察を薫はニヤつきながら聞いていた。

 

「……可奈美と姫和、そしてイチキシマヒメとソフィアの動向を理解していなければ、そんな指示は出さないよな。だけど、何でそんな回りくどい文面なのかね?元親衛隊サマサマは。」

「多分、上の人達は自分達がタギツヒメの殺害を命じたということが公になれば、タギツヒメに同情的である世論を敵にしてしまうことになって、刀剣類管理局はまた非難の的にされることになるでしょうから、それを避けるために『指示を無視してイチキシマヒメの元へ向かうタギツヒメ』という文面を加えたんでしょう。……討伐した後に"タギツヒメが荒魂のノロを吸収して負の影響を受けて暴走したから止む無く討伐した。"というふうにして、荒魂対策の政府予算を少しでも欲しいのが刀剣類管理局上層部の目的かも知れませんけどね。……もしくは、姫和さんの一つの太刀で犠牲にして、姫和さん諸共口封じっていうところなんでしょうけど……。」

 

薫の回りくどい言い方をしたのか?という問いに対し、歩は吐き捨てるかのように、ノロを吸収したタギツヒメが負の影響を受けて暴走したために、止む無く討伐したと公表することによって、刀剣類管理局上層部は荒魂対策の政府予算を少しでも得ようと考えているのではないか?と答えていた。

 

「……歩?」

 

その様を見た美弥は、今までの刀使の仕事に使命感を持っていたり、可奈美に憧れていた歩とは雰囲気が違うかのように感じられた。

 

「……だから私は、タギツヒメを援護すべきだと思っています。この戦闘を終わらせるにはそれしか無いと思います。」

 

そして歩は、そんな美弥の内心を知ってか知らずか、そう宣言した。……タギツヒメを敵として見るべきではないと。

それを聞いた薫とエレンは、

 

「……まあ、ねねみたいな奴が敵になるわけねーよな。」

「ねね〜。」

「……私も、ねねを信じて来ましたカラ、ヒメヒメのこと信じまスヨ〜〜。」

 

タギツヒメの味方をすると答えていた。

それを聞いた舞衣は、方針を述べるのであった。

 

「……みんなの気持ちは分かったわ。なら、私達は今からイチキシマヒメの討伐に向かいます。……すみませんが、あの赤い奔流があるビルまで移動して下さい。」

 

タギツヒメの援護に向かうと。

 

そう答えた舞衣は、輸送防護車の運転手に裂けた空を創る赤い奔流があるビルに向かうよう指示すると、運転手は「了解しました。」と力強く頷いて答え、随伴する車輌にも舞衣の指示を伝えるのであった。

 

それを聞いた薫達は安堵の表情を浮かべるが、それとは対照的に歩の表情が暗かったことに気付いた美弥に何かあったのかと尋ねる。

 

「……歩、どうしたの?……何か怖い。」

 

美弥にそう言われた歩は、美弥に顔を向けるとそう答えた。

 

「……美弥、刀使が荒魂を助けることに御刀や神様って奴はどう思ってるんだろうなって、それを許さずに荒魂と殺し合えとか言ってるのかなって、……そんなこと言って、御刀に刀使の力を与えた神様は空高くから、荒魂と私達が戦っている様を眺めて愉しんでいるんだろうなって。」

 

歩は、御刀や神様という奴は刀使という荒魂と戦うことを使命にさせた少女とその荒魂が戦い合う様を見て喜んでいるのだろうと述べていた。

 

「……そう思った瞬間、無性にそんな神とかいうのと御刀とかいうのにムカついてきたんだよね。……いや、許せない。」

 

歩は憤怒の表情を浮かべながら、そんなことを言う御刀や神に対して"怒り"を感じたと美弥に述べる。そんな御刀や神を許せないと。

 

「もし、私が戦うべき荒魂と手を組むことに失望して、戦うことに消極的になったある刀使みたいに御刀が私を見放すんなら、見放して見殺しにすれば?そうして、私の代わりになる奴を捜せば?少子化の時代だから都合良く見つかるかどうか知らないけど見つかるといいね。頑張ってね御刀さん。って言ってやる。……私はもうこんなもの(御刀)に振り回されない。ただそれだけだよ。」

 

そして、歩は自身の決意を語る。

 

「私はタギツヒメやあの子達が帰ることができる世の中にする。……そのためには、荒魂を斬るだけしかない刀使の使命の全てを変える必要がある。……だから私も変わる。荒魂と協力しただけで荒魂扱いされるんなら、荒魂にも鬼にでもなってやる…!ただ、それだけだよ。」

 

タギツヒメや優、結芽達といった生きるために荒魂となったり、された人達が穏やかに過ごせる場所を創ると。

 

「そうして、荒魂と刀使が互いに争うことが無くなった世の中で私は言ってやるんだ。……もう御刀は必要無いって。例え私が死んだとしても、私がその御刀を捨てた道を最初に踏み出したことを知る人間が居ればそれでいいんだよ。」

 

それを成すために様々なものが必要であり、変わる必要があると言うのであれば、躊躇うことなくそれを行うと、自らの死すらも受け入れると歩は美弥に答えていた。

 

それを聞いた美弥は、あの剣術で強くなりたがっていた歩が御刀を侮蔑し、捨てようとするその姿に驚愕していた。

 

そうして美弥と歩が話し合っている内に、輸送防護車の車外で16式機動戦闘車か96式装輪装甲車がドドドと重い重機関銃の音がしたため、近くに荒魂が居ることを舞衣は察知し、周りの刀使達に指示を出す。

 

「みんな!S装備用意!」

 

舞衣は周りの刀使達にそう指示すると、刀使達はS装備の電源を入れ、舞衣が開けた後部ハッチから輸送防護車から出ると、舞衣に言われるまでもなく、彼女達は部隊を展開させるのであった。

すると、眼前には50口径の重機関銃の銃撃を受けて怯んでいる狗型、栗鼠型、熊型の荒魂が居た。

 

「薫ちゃん!お願い!!」

「あいよー!…ねね!?」

 

状況を見た舞衣は、薫の第五段階の八幡力の力が加わった祢々切丸の一撃で道を塞ぐ荒魂達を一掃しようとするが、薫の頭に乗っていたねねが飛び出てくると、ねねは巨大な鵺の姿…いや、元の姿に戻って道を塞ぐ荒魂達を一掃し、舞衣達が通る道を作っていた。

それを見た薫とエレンが、

 

「おい、舞衣!ここは俺たちに任せろ!!」

「私達が此処の荒魂を掃討しマス!!」

 

舞衣に先に行くよう言うのであった。

 

「!!……薫ちゃん!お願い!!」

「私も行きます!!」

「え?……ちょっと!」

 

薫とエレンの決意を聞いた舞衣は、薫とエレンに場所の確保を命じると、歩は舞衣に命じられる前に先行していた。

 

(……御刀になんか頼って、振り回されてばかり居たら、強くなれないじゃないですか!……衛藤さん!!)

 

そんな思いを抱きながら…………。その歩を舞衣と沙耶香、そして美弥も追うのであった。




    
    
エロース
フィリアー
アガペー
ストルゲー

愛というものが人を愛すること、それだけだと思うか?    
   
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