148話を投稿します。
今回は姫和の視点です。
コリントの信徒への手紙 第13章 1節
1 たとえ、人々の異言(いげん)、天使たちの異言を語ろうとも、愛がなければ、わたしは騒がしい銅鑼、やかましいシンバル。
そのビルの頂上には、天にも昇る赤い奔流が流れていることから、そこに大荒魂が居ることは検討が付いた。……そして、冥加刀使となった私は、荒魂を体内に宿した冥加刀使となったソフィアの気配も感じ取れた。
そして私は今、伍箇伝の制服を捨て、可奈美との逃避行の時に羽織っていたパーカーを羽織りながら、その赤い奔流が流れている大きなビルの前に居た。
"私達"ではなく、何故"私は"と言っているのかというと、可奈美が二手に分かれて目標の居るビルに向かうことを提案したからだ………。
理由としては、先ず二手に分かれることで追っ手を分散させられること。そしてもう一つが、もう一方が捕まったとしても、もう一方がソフィアを殺せるからだ。
それ故に、私と可奈美は二手に分かれて、目標の居るビルへと向かった。
そして、その道すがら、荒魂を体内に宿していたせいか、こちらに気付いた荒魂を討伐し、その討伐した荒魂のノロを吸収しながら進んでいたために、私は急激に刀使の力が強まったのだろう。以前可奈美と二人で戦ったあの羽がついた大きい百足のような荒魂でさえもバターを切るかのように容易く両断し、ほぼ一振りだけで簡単に討伐できた。
……そういえば、元親衛隊の寿々花がこんなこと言っていたな。
『……実は私達が御守りする折神家は特別荒魂と近しい者の家系であり、その力を持っていたからこそ荒魂と融合できたのです。その力は柊の家系。つまりは十条さんの母親である篝様も同様の力を持っていたそうです。……つまり、十条さんにも同じ力が流れているということになりますわ。』
自分には柊の力があるから、それ故に荒魂と融合できるということ。
『……ですが、刀使と荒魂の融合は乗算。それに、今は近くに大荒魂に対しても致命傷を与える小烏丸がありますので、近くに居る荒魂を使えば簡単にイチキシマヒメ以上の力を手に入れられるでしょう?』
そして、刀使は荒魂と融合すれば乗算の力を得られるということ。
その力を得ることができれば、ソフィアなんて容易く殺せる。
「フフフ。」
そう思うだけで私は、私が刀使になろうとした理由が"母の仇討ち"だったこと、……つまりは、紫を殺そうとしていたことが始まりだったことを思い出していた。
そう考えれば、何ということはない。昔に戻ってソフィアを殺しに行くだけだ。
「……そうだな。そうだったはずだ。」
私はそう考えるだけで笑みがこぼれた。それだけでなく、私を悩ませる物があった。
『……姫和おねーちゃん。大丈夫?』
私の体内に宿る荒魂が"優"の幻覚を見せてくることだ。
「……ああ、大丈夫だ。」
荒魂が見せてくる幻覚であることは分かっていながら、私は嬉しそうに返事をした。……意味の無い行動だというのは分かっていたが、返事をすれば私の体内に居る荒魂が次の幻覚を見せてくれるのだから、私は返事をする。
『ホント!?姫和おねーちゃんダイスキ!!』
返事をすれば優は朗らかな笑顔を見せてくれる。私に向けて笑ってくれる。大好きとも言ってくれる。それが嬉しかった。だから返事する。
そうすると、優は笑顔でビルの中に入って行き、私もそれに続いて向かう。荒魂が見せる幻覚に乗ってやった。
『そんなダイスキな姫和おねーちゃんのために、僕も手伝いたい。荒魂を倒してくれるそんな姫和おねーちゃんのことを助けたい。こっちに荒魂が居るよ?』
多分、私の中に居る荒魂がノロを求めているからこそ、そんな言葉を私に投げかけ、イチキシマヒメが持つ膨大なノロを奪うように仕向けているのだろう。
だが、それは私にとって好都合なことでしかない。何故なら、イチキシマヒメを探す手間が省けるものだからだ。
そう考えるだけで、まるで、優がアリスを不思議の国か鏡の国かどちらかに通ずるウサギの穴へと導く白ウサギのようにすら思えた。
……となると、私はアリスか。白ウサギに導かれる少女のアリスか。……となると、ここは狂ったの国なのだろうか。
私はそこまで考えると、私が住んでいるこの国は狂っていないのかと考えてしまう。まともな物があるのかと考えてしまう。
私が今まで出会った"物"や"者"は全て、曖昧な"物"かもしくは"者"だった。
人か荒魂なのか立場が判然としない優やタギツヒメ。
刀使なのか荒魂なのか判然としない折神家親衛隊。
米軍兵士であり、傭兵でもあるトーマス達。
戦場なのか荒魂討伐事件なのか不明瞭な戦闘。
刀使は、荒魂は御刀による加害者なのか被害者なのか。
経済のために人も荒魂も殺す社会。
……そんなものばかりだった。
そんなことを考えながら私は、ウサギの穴へと入って行く。……いや、頂上に居るであろうイチキシマヒメとソフィアを目指してビルを上って行く。
そんなときだった。
物音がしたので、ビルの一室……会議室と書かれた部屋に入ったとき、6体の小型の蟲型の荒魂が居た。
それを私は斬った。
斬った斬った斬った斬った斬った斬った斬った斬った!!
そうして、確認のために次の部屋に入ると、
「ハハハハ!騒がしいと思いましたら、やせ細って飢えた猟犬が騒いでいただけですか?」
そこには、荒魂を周りに囲ませている妙な初老の男性が居た。
「……誰だお前は?」
「私はスレイド博士と申します。」
「!………お前か!!」
「おや?私をお知りで。」
……知っている。お前は、"私の優"をノロの実験台にした男のことは一時たりとも忘れなかった。
「ああ、知ってる。お前が、お前が優にノロを入れたんだ!タギツヒメを入れたんだろう!!……全部、全部お前が悪いんだ!!この世界の禁忌に触れたんだっ!!」
此処は戦争とは無縁の優しい世界だった。それを大人が壊した。だから私は叫んだ。
「あんな良い子をお前が人殺しの兵器に改造したんだろうっ!!?お前があんなふうに変えたんだ!!」
全部お前が悪いのだと。全部お前が変えたんだと叫んだ。
「……変えた?変えたとはどういうことですか?」
だが、この荒魂と人間を融合させることを目的としたマッドサイエンティストは、尚も白を切る積もりだったのか、「どういうことか?」と返してきた。……私はその何食わぬ顔にカチンと来たために怒号する。
「お前が私の優にタギツヒメを入れたんだろうがっ!!しかも、戦闘兵器にするべく殺人の抵抗を無くすように投薬や洗脳もしたと聞いているぞっ!!」
「?……タギツヒメ…タギツヒメ………ああ!あの子のことですか!?しかし、投薬や洗脳ですか?」
私の説明でどうにかこのスレイドという男は、私が何を話しているのかようやく分かったようである。
「……そんな処置をした覚えは無いんですけどねぇ?」
「……まだ、そんなこと言うのかっ!?」
だが、コイツは尚も白を切ろうとしていた。
「いえいえ、本当にそんな記憶が無いのですよ?そんなことをする理由があるのですか?」
「しらばっくれるな!私は確かに聞いたんだ!!優を刀使を殺す兵器として改造したと、可奈美から確かに聞いたんだ!!」
そう、あれは確か私達が舞草の隠れ里にて、朱音様が紫はタギツヒメに取り憑かれているという話をしてくれたとき、可奈美が教えてくれたスレイドという人と荒魂を融合することを至上とするマッドサイエンティストみたいな科学者によって、大荒魂を入れる器にするべく殺人に対する罪悪感と抵抗を無くさせたこと、感情も薄くなったということを語ってくれたことは今も憶えている。
それをお前は忘れたのか!?
「ハハハハそうですかぁ。……でしたら、良い事を教えて差し上げましょう。私はそんなことしておりませんよ?」
……コイツは、まだ白を切る積もりか?そんなことで言い逃れができると思っているのか?
やはり、頭のおかしい人間は人の言葉を解さないということであろう。子供を戦闘員にして、荒魂と人間を一つにすることを至上とする人間は狂っているんだ。
………まともじゃない奴の言葉など、聞く価値も無い。
「お前は嘘吐きだ……!お前はまともじゃない……!まともじゃないから自分のしたことが分からない……!だから、お前の言葉を聞く価値など無い!!」
こんなイカレタ人間の妄言なぞ、もう聞く価値も無い。もう優は殺されたんだ。お前が殺したんだ。
……そう思いながら、私は目の前に居た人の姿に近い特殊廃棄物甲類に類する荒魂を斬った。そのとき、妙に鉄錆臭いノロとは違う赤い液体を撒き散らしたため、新しい荒魂の攻撃かと警戒したが、そんなことはなかった。
「おやおや、まるで獣のように襲い掛かってきますね?」
うるさい外道!!
私は裂帛の声を出しながらも、極めて冷静に周りに居る荒魂を斬り殺した。……そうすれば、スレイドは荒魂という自身の攻撃手段を失い、刀使の力がある私に降伏するしかない。……そうなれば、如何に外道と言えど、荒魂化すらしていないただの人間でしかないスレイドを殺さずに済むのだ。
そう思いながら、スレイドの周りに居る荒魂を斬り殺していた。……だが、不思議なことに私が次に斬り殺した特殊廃棄物甲類に類する荒魂は斬った瞬間に何も着ていないマネキンとなった。
「!?」
私はそのことに驚くものの、人間の赤子によく似た荒魂を制作したスレイドのことだから、この荒魂も妙な小細工をしたのだろうと判断し、次の蟲型荒魂を突き殺した。……しかし、又も私が突いて殺した蟲型荒魂は何時の間にかパソコンのモニターへと変わっていた。
「……小賢しい真似をっ!!」
この荒魂は、赤子の荒魂を作ったスレイドによってこのような小賢しいことができる細工でもされているのだろうか?
私はそんな疑念を抱きながら、スレイドの周りに居る荒魂を斬り殺していった。
「諦めろ。……私にそんな小賢しい技など効かない!!」
そうして、斬った瞬間にパソコンのモニターやマネキン、造花へと変わった荒魂を斬り殺し続けた私は、スレイドのみとなったので、スレイドに降伏するように述べた。
「ハハハハハ!でも私を殺せないでしょう?それで、どうやって私を拘束するのですか?峰打ちでも当たった場所が悪ければ死にますよ?」
しかし、スレイドという男は往生際が悪いのか、私がスレイドを殺す気が無いことを知ると、そのようなことを言ってきた。
「……そうだな。だが、周りを見てみろ。」
私にそう言われたスレイドは、ノロの残滓が有る辺りを見て、どういう意味かと首を傾げていた。
「……今、私以外に居るのは、頭が狂った人間と3箇所も有るノロの残滓。……仮に私がお前を斬ったとしても、誰がどう見ても、お前は荒魂に殺されたと思うことだろう。……降伏しなければ、お前を斬る。」
それ故に、私はこの頭のイカレたマッドに説明した。
降伏しなければ、荒魂に殺されたと偽ってお前を殺すと。
「ハハハハハ!……なるほど、それは困りましたねぇ。私はまだまだ研究したいことがあるのですから……。」
スレイドは私にそう言うと、一本のノロのアンプルを見せびらかす。そうして、見せびらかしたノロのアンプルを一度に何本も自らの首筋に刺したのだ。
「……こうすれば、私は貴方を倒セル。こうスレバ荒魂と人間の融合という研究の正しさが証明されるっ!!!!」
不思議な物だが、荒魂化した人間の言葉がハッキリと聞こえた。……だが、ハッキリと聞こえたところで、頭のオカシイ人間の言葉など気にする必要はない。そう私が決意し、御刀を構えると、
「うっ、ぐっ…………が、あぁあぁああぁぁあぁああああっ!!!!」
急にスレイドが苦しみ始め、もがき苦しみ始めた。
その様を私は見る事しかできなかったが、やがてスレイドの口から「クヒュッ」っと空気が抜ける音がしたと思ったら、次の瞬間には痙攣をし、スレイドの口の中から荒魂が這い出て来た。
それを見た私は、きっとスレイドという老いぼれの身体に取り憑くのが苦痛だったから這い出て来たのだろうと理解した。
故に、私は人を殺していないのだと理解した。殺さずに済んだのだと理解した。だからこそ、私は清純なのだと理解した。
「……まともな人間の相手をすることはないな。……この荒魂のように。」
私はそう呟くと、スレイドの身体から這い出て来た荒魂を斬った。まるで霞のように斬れた。斬ったという実感も湧かないほどに軽かった……。
そして、斬った荒魂はノロの残滓となって残っていた。それを私は他のノロと結合して荒魂にならないように吸収し、自分の力に変える。……そうすることで、不思議と力が湧いた。
いや、気の所為ではない。……確かに斬ったという感触がしたのだ。ならば、私が斬ったのは荒魂のはずだ。
『そういう君はまともなのか?』
すると、私の耳には誰かの声が聞こえたような気がした。
その声が聞こえた方に顔を向けると、パソコンの画面にもモニターの画面にも鏡にもガラスにもパソコンの画面にもモニターの画面にも鏡にもガラスにもパソコンの画面にもモニターの画面にも鏡にもガラスにもパソコンの画面にもモニターの画面にも鏡にもガラスにもパソコンの画面にもモニターの画面にも鏡にもガラスにもパソコンの画面にもモニターの画面にも鏡にもガラスにも……
スレイドが映っていた。そのスレイドが私に語りかけていた。
『なあ、教えてくれ。刀使じゃない奴が荒魂を斬ったら、それは荒魂なのか?』『誰が言ったんだ?荒魂を殺すのが使命だと。』『君の言う優くんはそれを望んでいたのか?』『人と荒魂の共存を拒むのなら優くんは殺さなきゃいけないだろう?』『荒魂を身に宿した君はまともなのか?』『君は狂っていないとどうして言える?』『君にとっての家族とは何だ?』『君にとっての友人とは何だ?』『そもそも君は何だ?』
私のことを好き勝手言っていた。私のことを好き勝手語っていた。私のことを好き勝手評価していた。私のことについて何か言っていた。私のことについて何か喋っていた。私のことについて何か評価していた。私の使命を語っていた。私の好きな人のことを語っていた。私が狂っているとか言っていた。私のことを刀使かと聞いていた。私のことを荒魂かどうか聞いていた。私のことを友人が居るかどうか聞いていた。
自分のことに悩んだ私は、私の姿が映る鏡を見た。
……いや、そもそも私は何だ?誰だ?私は何だ?誰だ?私は何だ?誰だ?私は何だ?誰だ?私は何だ?誰だ?私は何だ?誰だ?
いや、こんなふざけたことに付き合うから、頭がこんがらがるのだ。頭が狂うのだ。アリス症候群のように文字が大きくなったり、小さくみえたりするのだ。……いや、違う。不思議の国のアリスの世界か鏡の国のアリスに迷い込んだのかもしれない。だが、このビルを上ったということはウサギの穴に入っていないのだから違うだろう。というより、そもそもこの社会……いや、この世界そのものが世も末と言えるほどに狂っているのだから、元々アリスの世界なのだから間違ってはいないだろう。そう思うと、この社会が狂っているように思えた。
そう思ったせいか、街のジオラマを見かけた時に私はスタンフォード監獄実験、ミルグラム実験、サードウェイブ実験、ローゼンハン実験、Universe 25実験のことを思い浮かんでしまった。
この街、いや、この世界はこれら心理学を証明する実験場のようなんじゃないかとすら考えてしまう。
スタンフォード監獄実験やミルグラム実験のようにこの狂った世界、伍箇伝という特殊な環境下に置けば、荒魂を躊躇無く殺す攻撃性の高い人間になるのだろう。
サードウェイブ実験のように、ヒトラーの手法を真似て御刀という権威の象徴を作り、ユダヤ人のように荒魂という敵を作り、ナチズムを確立させたように刀使という優越性を抱かせる存在を作り、そして、荒魂討伐を使命とする思想をセットにすれば、何も知らない子供達はそれに殉ずるだろう。
……そうすれば、子供達はやがて個人主義を放棄し、全体主義に傾倒する。……まるでヒトラーの『民族がすべてであり、個人は無である』という言葉に則る物のように。
狂人のことは狂人しか理解できないことを証明したローゼンハン実験のように、誰も刀使が荒魂と殺し合う異常性に気づくことは無いだろう。……みんな、それに興じる狂人なのだから。
現実に、25回もマウスにとって生存を脅かされることも争いも無い世界を25回も創ったのに、25回もマウスが絶滅したという結果に終わることを証明してしまったUniverse 25実験の過程で存在した"引きこもり"となるマウス。"ストーカー"となるマウス。私のように"児童性愛"に目覚めるマウスが現れたことに対して、誰もその危険性に気付いていないのだから、誰がこの社会が異常であると気付く?
そう思うだけで心が沈んだ。争いの無い社会の先には滅ぶ結末しか無い世界に心が沈んだ。
『二次創作という言葉を知っているか?法的にグレーゾーンだとか、何も言ってこないということは合法だとか、プロや法律専門家がこう言っているから二次創作は黒に近いグレーだ!だとか、権利者の著作物を盗んでいるから100%違法だとか、色んな人が好き勝手言っているアレだよ。アレ。』
だが、心が沈んだ私にトーマスが俯きながら二次創作について語っていた。
『だけど私は考えたことがあるんだ。この地球の上に在る自然な社会が大自然に囲まれることだというのなら、この地球の上に在る社会は全て誰かの二次創作なのではないのか?』
ロークが俯きながら二次創作について語っていた。
『誰かが築き上げた社会。誰かが作った規範。誰かが広めた神の御言葉。誰かが認めた社会的正義。……それら全てが誰が創ったか分からない数人で築き上げた二次創作ではないのかと。』
シェパードが俯きながら二次創作について語っていた。
『そう思って、この社会を見たときに思った。……この世界は一部の人間が法律や規範を作って思い描いた通りになる。刀使が居る世界にもできる。苦しい苦しい現実社会にもできる。狂った社会にもできる。Universe 25実験のようなネズミの楽園みたいな世界にもできる。』
マイケルが俯きながら二次創作について語っていた。
『最強の自分や団体を思い描いて悦に入ることもあった。だけど、それは所詮「自分」という限界にやがて行き着くとは思わないか?そして限界が見えたとき、お前はこの社会や世界はどう見える?誰がイカレてる?』
死んだはずのロークが、トーマスが、シェパードが、マイケルが私にそう語りかけてくる。
まるで、この世界に生きる人達は、彼等死人のように俯きながら生きているのだと告げに来たかのように。
まるで、この現実や現世という世界の上にスタンフォード監獄実験、ミルグラム実験、サードウェイブ実験、ローゼンハン実験、Universe 25実験のような妄想、いや、誰かが意図せずにそのような二次創作を創り上げてしまえば、この世は終わるのだと告げに来たかのように。
……死者が生き返るという、まるで出来の悪い妄想……いや、出来の悪い創作物にある異様な展開に憤りしか感じなかった。だからこそ、私は死んだのなら墓の下に埋まっていろ!!と叫んだ。都合が悪くなって勝手に生き返った出来の悪い創作物みたいなことをするなっ!!と叫んだ。
ああ、癒しが欲しい。癒しが無い。
『……姫和。今あなたは幸せ?』
そう思ったとき、母が私にそう告げてくれた。今、幸せなのかと。
「だったら母さん。……一つ聞きたいことがあります。あなたは、悔やんでますか?」
そう言われた私は、衰弱していく母のことを思い出しながら、目の前に現れた母にそう尋ねた。……悔やんでいますか?と。
『そうね。姫和は好きな子が居たんでしょ?……だったら、貴女が幸せだったら、何の悔いもないわ。』
母さんにそう言われたことで、私は決心が付いた。……だから私は求める物を壁に書く。書き続けることで心を鎮めようとした。
……何故だか分からないが、上手く優の字が書けない。だがいつかは上手く書けると思った。だから私は何度も書いた。そうすれば優に会えるような気がしたから。
その願いが叶ったのか、壁から優が生まれ出て来た。
『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』
『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』
『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』
『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』
『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』
『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』
『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』『姫和おねーちゃん』
ああ、やっと会えた。やっと優に会えた。
そうして優が私に言ってくれる。
『ありがとう姫和おねーちゃん。僕に投薬や洗脳をしてくる悪い科学者を殺してくれて、本当にありがとう。』
『……姫和、お母さんは貴女が幸せだったら、何も悔いは無いわ。だから、大荒魂と一つになりましょう?』
こう言って、優は私を認めてくれた。私の幸せを第一に考えろと母は9歳の子供と一緒になることを認めてくれた。
……何が、「ハハハハそうですかぁ。……でしたら、良い事を教えて差し上げましょう。私はそんなことしておりませんよ?」だ。やはり、頭の狂った科学者が言っていた言葉なんて信じる物じゃない。
……頭の狂った奴の言葉なんて、真実味が無い。自分が何をしたのかすら分からないのだろう。
そう思いながら、私は嘗てスレイドが居た何も無い部屋で、綺麗な星空が広がる空を見ながら、笑顔で佇んでいた――――。
冥加刀使(公式サイトより。)
ノロのアンプルを投与することで、人体と荒魂を融合させ、身体能力や特殊能力を大幅に向上させた刀使のこと。冥加とは神仏から受ける恩恵の意味。荒魂研究の一環で治療薬の開発課程で発見された人体強化の技術が用られた。タギツヒメからもたらされた基礎理論を元に、鎌府女学院が研究開発と運用を行い、綾小路武芸学舎がそれを支援した。刀使の身体向上や能力向上などのメリットがある一方、身体面と精神面に負の影響も確認されている。
狂った愛も狂愛と言うから、狂愛も愛のかたちのひとつである。