149話を投稿させて頂きます。
使徒言行録 3章 6節
6 ペトロは言った。「わたしには金や銀はないが、持っているものをあげよう。ナザレの人イエス・キリストの名によって立ち上がり、歩きなさい。」
空は夜なのか朝なのか分からない程に黒くなっていて、朱く染まっている月を見ながら私は今、イチキシマヒメとソフィアの気配がするビルへと向かって行った。
その空を見ていると、まるでこの世界の終わりのように感じた。……いや、私達がイチキシマヒメを止めなければそうなるだろう。
優ちゃんが死んじゃったからお母さんとの約束を果たせなくなって、剣術をする理由が無くなった。
この国の都合によって荒魂にさせられたり荒魂にならなかったりすることを知って、荒魂から人々を守るためになった刀使を続ける理由も無くなった。
私が学んだ剣術がこの国に良いように使われていただけだと知って、国家公務員である刀使で在り続ける理由も無くなった。
だから私は、伍箇伝の制服をビリビリに破いて私服でここまで来ていた。……姫和ちゃんとの逃避行のときに来ていたパーカーをも羽織りながら。
私は、何もかも失った。だから私は……そこへ向かうしかなかった。唯一つの目的、目標に向かって。
それだけが唯一の……荒魂化した人も斬って、刀使である必要が無くなって、お母さんとの約束も出来なかった娘が唯一残った……唯一の刀を振るう理由。荒魂や荒魂化した人間を斬って斬って斬って斬り続けることで私が本当の刀使というものを表現することでお母さんが私に教えてくれた剣術が政治のために使われていたというものではなく荒魂の被害を受ける人達から守るために使われたものなんだと、そう証明することでお母さんの剣は政治のための人斬りをしていないと、人々を守ろうとしていたんだと証明することで……刀使の仕事を誇りに思うって言って死んだお母さんが、私に剣術を教えてくれたお母さんが死ぬまで幸せだったと証明したかった。
だから私は斬り続ける。
それもこれも私の約束と剣術の意味と刀使の誇りも全て奪ったソフィアが悪いんだ。
そう思えば自然と御刀を遭遇してしまった荒魂に向けて騙して荒魂を入れた姫和ちゃんや助けられなかった優ちゃんのことを思い出して震えた……いや、御刀を振るった。
……荒魂と戦っている最中だというのに、震えたと振るったというダジャレの積もりなのか何なのか分からないけど妙に変なことを考えてしまう。
だけど、そんなことを考えているにも関わらず、荒魂は私に向かって来たため、残りの二体の内、一体の狗型荒魂は真っ向から両断することで討伐し、もう残り一体の隠型荒魂を手足を斬って抵抗する手段を奪うと、最後は身体を両断して討伐した。……けれど、荒魂の残骸だったノロの塊が突如として荒魂化した人間となって私に襲い掛かる。
……違う、これは幻覚だ!現実じゃない!!私は荒魂化した人を斬っていない!!!!
「何で殺されるの」
「僕は人間扱いされないの」
………けれど、荒魂化した人達はそう言って私を助けを求めてきた。非難してきた。人殺しと言ってきた。
だから私は叫んだ。……いや、叫ぶしかなかった。
「しょうがないじゃない!!……だって、荒魂化した人は斬るしかないだもん。私は刀使だから、それしかできないじゃない。」
だから斬り続けるしかなかった。じゃないと、この人達が斬られた意味が無くなるからだ。だから私は剣を彼等に向かって振り回した。振り払うように振り回した。けれど、次に現れたのは赤子の荒魂だった。
と私の周りで叫び始めるのであった。
その叫びを聴いただけで吐き気が出てくるほどに不安に駆られ、心臓が早鐘を打ち続ける。
「衛藤さん!!」
……すると、歩ちゃんの声が聴こえた。歩ちゃんが私を抱き締めていた。
だからなのか、赤子の叫び声も止んだ。けれど、
「!…歩ちゃん!片腕がっ!!」
「大丈夫です。……写シを一回斬られただけですから。」
片腕が無い歩ちゃんが居たため、私は動揺して、大丈夫か尋ねた。……すると、歩ちゃんは写シを斬られただけだから大丈夫だと答えていた。
「……私が、私が錯乱していたから……ゴメン。」
「ええ、そうです。貴女に斬られました。……悪いと思うのなら、手伝ってください。」
私が歩ちゃんに謝罪すると、歩ちゃんは冷たい声で私に手伝って欲しいと言っていた。……それだけで、私は目の前に居る歩ちゃんが私の知っている歩ちゃんとは違うような気がした。
「……手伝うって?」
「イチキシマヒメ……いえ、大荒魂の討伐を手伝ってください。」
歩ちゃんは私に大荒魂の討伐を手伝ってほしいと言う。……だけど、私は、
「……だけど、私は「私、決めたんです。」
ソフィアも殺さないといけないといけないと言おうとした瞬間、歩ちゃんが私の言葉を遮って自身が決意したことを話し始めていた。
「あの子達が……優くんやタギツヒメといった子達が帰れる世界にしたいって、……それまでに多くの荒魂や人……いえ、違いますよね。生きている人達の血が多く流れる。……悔しいですけど、それを実現するには、こんな刀の形をした神様に頼らなければならない。だから、それが実現するまでは、こんな物でも使ってやろうと私は決めました。」
剣術が全てだった私にとって、歩ちゃんの御刀をまるで物のように扱う答えは斬新だった。
「私、強くなりたかったんです。……刀使になった以上、強くなる以外無いって思っていました。そのために、真希さんや衛藤さんが剣術を教えてくれたり、美弥にもSNSを使う方法も教えてもらいました。……けれど、どれも強くなった気がしなかったんです。」
歩ちゃんは語ってくれた。色んな人に強くなる方法を教えてもらったが、どれも納得しなかったことを。
「そりゃそうですよね。……私が強くなりたかった理由は、きっとああいう子達や人達を守りたかったんだろうなって、それを忘れてたら、どんなに刀を振っていても強くなんてなれないですよ。……だから、私は剣に振り回されない人間になりたい。」
歩ちゃんは答えてくれた。自分が強くなりたかった理由は、優ちゃんやタギツヒメみたいな子達を守りたかったのだと。そして、剣に振り回されない人間になりたいとも語ってくれた。
「……きっと、今も
そして、歩ちゃんは本当に強い人は御刀なんか要らないと答えていた。御刀に頼って荒魂を斬るしか方法の無い自分は未熟なだけであるとも言っていた。
「だから、あの子達……タギツヒメ達が笑って安心して過ごせる場所を作る。それを築き上げるまで、人であろうと荒魂であろうとこの世界を壊そうとする奴は誰だろうと斬る。そうして、そんな私の戦いが終わって、御刀が要らなくなった時にこう言ってやりたいんです。」
それだけでなく、歩ちゃんは私に語ってくれた。優ちゃんやタギツヒメ達が笑って過ごせる場所を作るために、人も荒魂も関係無くこの世を乱す者は斬り捨てると、そうして斬る者が無くなったときに御刀に対して言ってやることがあると、
「……もう、この世には“神”が居なくても私達は生きていける。そういう世界を自分達の手で築いたと、それを見た神様が私を殺しに来るかも知れないけど、私が……いえ、誰かがその一歩を踏み出すことが重要なんです。……そうすれば、誰かがその足跡を辿ってくれる。それだけで充分です。」
御刀が要らない世の中を自分達の手で築いたと、例え志半ばで倒れたとしても、誰かが自分の轍を見て、その跡に続くはずだと歩ちゃんは真っ直ぐな目で私を見つめて、
「……だから、タギツヒメ達が、あの子達が安心して帰って来れる場所を守るために、イチキシマヒメを倒すことを手伝ってください。……衛藤さん。」
そう答えていた。それを聞いた私は、
「……悪いけど、私はソフィアを殺すことを優先するけど?」
「大荒魂に頼るしか能の無い小物が最も嫌がることは何だと思います。……隠世の門を開けているイチキシマヒメが討伐されてしまうことだと思います。……現に、彼女はイチキシマヒメに協力していたんですから。」
ソフィアを殺すことを優先すると言うが、歩ちゃんはソフィアのことを大荒魂に頼る小物だと評すると、イチキシマヒメを討伐することでソフィアに対する嫌がらせとタギツヒメが帰れる場所を守れることができると私に諭していた。……そして、歩ちゃんは私を通り過ごしてイチキシマヒメの居る所へと向かって行こうとしていた。それを見た私は、慌てて歩ちゃんの後を追う様に走った。
「……歩ちゃん、何で……御刀を捨てようって思ったの?」
御刀を捨てようとする歩ちゃんを否定したかったのか、それとも御刀を捨てようとする歩ちゃんに惹かれたのか、私はそんなことを聞いてしまった。……それを聞いた歩ちゃんは、
「私、思ったんです。……刀を捨てた先にも道が有るんじゃないかって。そう考え始めたとき、その道の先に有る物こそが優ちゃんやタギツヒメ達が本当に望んでいた物なんじゃないかって思えたんです。」
刀を捨てた先にも道があり、その道の先に優ちゃんとタギツヒメが求めた物が有ると答えてくれた。
「……だから私は、御刀に頼らなくても生きていける強い人間になりたい。……今は、それを目指そうと思います。」
そうして、御刀に頼らなくなった人間が強いと歩ちゃんは言っていた。
……それを聞いた私は、剣術と刀使に固執していた私にとって、その考えは青天の霹靂だった。……そうか、私が本当に求めていた物は……剣術で強くなることじゃなくて……荒魂を多く斬ったことでもなくて……きっと、
「衛藤さん!荒魂です!!」
そう考えていたとき、私達の目の前には巨大なムカデ型の荒魂……私が歩ちゃんと初めて会ったときに最初に出会って、共に討伐した荒魂と同じ類型の荒魂が現れていた。それを見た歩ちゃんは、ムカデ型の荒魂へと突撃して行った。
「歩ちゃん!!」
突撃して行った歩ちゃんを見た私は、まるで親鳥の後に付いて行く雛鳥のように後ろに付いて行った。
だけど、私の心配を他所に、前の時は1機のヘリと銃の援護が有ったから上手くいったにも関わらず、歩ちゃんは恐れることなくムカデ型の荒魂の頭上へと跳躍すると、
「はあああああああ!!」
ムカデ型の角を両断したため、私は足を何本か斬って歩ちゃんの援護に徹していた。
そうして、ムカデ型の荒魂は両断された角から、まるで人間の頭から血が噴き出たかのようにノロを撒き散らし、苦しんでいるのか、動きを止めていたため、私はすかさずにムカデ型の胴体を両断し、それに続いて新型S装備を纏った歩ちゃんも私に続いてムカデ型の荒魂の胴体を両断していた。
……そうして、身体をバラバラにして、抵抗する能力を奪った後に歩ちゃんはムカデ型の荒魂の頭上に跳躍すると、ムカデ型の荒魂の頭部をまるで切腹の介錯のように斬り落とした。
そうして、頭部を斬り落とされたムカデ型の荒魂は命か力を失ったのかは私にはハッキリとはしないけど、そのままムカデ型の荒魂の身体はどうっと倒れ、そのままノロの残滓となっていた。
「…………歩ちゃん。」
それを見た私は、私のように立ち回った歩ちゃんの成長に感動していたのか、それとも私を置いていって先に進んでいるということに頭が理解しないのか、そのまま、言葉を発することなく立ち尽くしていた。
「衛藤さん、このまま――――」
そのためか、歩ちゃんは私に早くイチキシマヒメの元へ向かおうと言うが、
ビルの壁が崩れると、突然、その中から荒魂が現れた。
それに気付かなかっただけでなく、ビルの崩れた壁の石礫に歩ちゃんが頭を受けたこともあり、歩ちゃんは崩れた壁から現れた荒魂への対応が遅れて、そのまま、写シを張ることも出来ないまま、荒魂の突進を受けてしまう。
……普段なら、いや、ムカデ型の荒魂を真正面から倒した歩ちゃんなら、小型の蟲型の荒魂になんか負けなかった。けど、不意を受け、頭に石礫を受けた歩ちゃんは対応が遅れ、そのまま蟲型の荒魂の突進を受け、吹き飛ばされたかのように向かい壁に激突してしまう。
「歩ちゃん!!」
それを見た私は、歩ちゃんを助けようとした。……けど、
「う、がああああああぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
歩ちゃんは腹部を自分の血で、綾小路の白い制服を美濃関の制服の赤色の部分の色のように朱く染め、足と頭から血を流しているにも関わらず、それでも歩ちゃんは声を上げて蟲型の荒魂を斬っていた。
……そうして、歩ちゃんは蟲型の荒魂を討伐すると、仰向けになって倒れるのであった。
「歩ちゃん、……歩ちゃん!!」
それを見た私は、必死で歩ちゃんの元へと駆け寄った。そのときには、何故かは分からなかったけど、お母さんの顔が思い浮かんでしまった。だから私は必死で歩ちゃんの元へと駆け寄った。そして、私は抱き上げて、本部に戻って歩ちゃんを医務室へと送ろうとしたら――――。
「衛藤さん……私……謝らないといけないことがあって……。」
意識が朦朧としている歩ちゃんが、私に語りかけて来た。……謝ることがあると言って、でも、
「今はそんなこといいよ!早く傷の「私……はじめて優ちゃんを見た時、……本当は……怖かったんです。」
歩ちゃんは、私に優ちゃんと最初に出会ったときは『怖かった』と言っていた。
「……でも、優ちゃんや……タギツヒメを見ていると……私達と一緒で……悩んだり……内に抱え込んだりしてて……私達と変わらなかった。」
傷だらけで、血を流しているにも関わらず、歩ちゃんは私に語り掛けてくれた。
……荒魂は私達と同じように内に抱え込んだりして、悩んでいたと。
「……そう思ったとき、……衛藤さんもきっと、……それで悩んでいたと思うと……私って、勝手に衛藤さんのことを……そんなふうに見て……自分の理想を押し付けて……迷惑だったんじゃないかなって、……それで苦しめていたんだと思うと、悪い気がしたんです。……だから衛藤さん。ごめんなさい。」
そう考えるうちに、歩ちゃんは私のことを勝手に英雄視し、そして自分勝手な憧れを押し付けて苦しめたことを私に謝罪していた。
「……S装備を……私の近くに……お願いします……。」
それだけでなく、S装備のコンテナを投下するように言っていた。……これから、イチキシマヒメとの戦いに赴く私のために。
……それを聞いた私は視界が滲み、歩ちゃんの顔がよく見えなかった。私は……私の最大の理解者の声を聴いて、そしてその言葉を聞いた瞬間、声を出して泣きたかった。
「……衛藤さん。……泣かないで……涙は……あの子達に取って置いて………それが……私の……贖罪になるから。……だから………歩いて……進んで。」
だけど、歩ちゃんは私に泣かないでと言ってくれた。優ちゃん達のために涙は残して欲しいと言って、優ちゃん達が居る所へ向かって歩いて欲しいと言ってくれた。それと同時に、S装備のコンテナが到着し、地面にぶつかった轟音が鳴り響いていた。……その轟音が、S装備が到着したのだと分かった私は、歩ちゃんを背にして、S装備のコンテナに近付くと新型S装備を身に纏う。
「歩っ!!?」
それと同じぐらい……ううん、違う。少し音量は負けるけど、私にはよく聞こえる声で「歩っ!!?」と叫ぶ人の声が聞こえた。……確か、田辺 美弥っていう人だったと思う。その美弥っていう子が「歩、歩!!」と言って歩ちゃんの名を何度も何度も呼びながら近づいて行く。それを見た私は、
「……田辺 美弥ちゃん、だっけ?……私を捕らえに来たの?」
「そんなことより!!どうして、歩がこうなってるんです!!?」
「荒魂に不意を打たれて大怪我を負ったとき、私に言ってくれたの……イチキシマヒメの元へ向かえって。」
歩ちゃんの友人……いや、親友である美弥ちゃんに何故此処に居るのかを尋ねたら、私は彼女に歩ちゃんが大怪我を負っていることについて罵倒された。……だから、私は簡潔に状況を説明するために、彼女に歩ちゃんが私にイチキシマヒメの元へ向かえと言っていたことを伝えた。
「……だから私は、友達の理想のために、私は行くよ。……イチキシマヒメの所へ。」
そして、彼女に私を止めるなとも言って。それが聞こえたのか、私の背後から足が遠ざかっていく音と気配した。だから、私は最期になるかもしれないから、彼女にあることを伝えようとした。
「……あと、歩ちゃんに伝えておいて、……また、こっちに来たら一緒に戦おうねって。」
「うっさい!!そんぐらい、自分の足で……口で伝えろっ!!」
また、こっちに来たら一緒に戦おうね。って、歩ちゃんに伝えて欲しいと美弥ちゃんに伝えたけど、良くなかったみたい。
……当然、だよね。勝手に刀使を辞めたり、誰にも言わずに行動したり……考えれば考えるほどに、
そんな言葉が思い浮かぶ。
『新型S装備の着用者を確認。……千鳥、所有者は衛藤 可奈美隊員。ナビゲートは私、鏑木 霞がしますのでよろしくお願いします。』
そうして、新型S装備を纏ったとき、箱根山戦でお世話になった霞さんの声が聞こえた。だからこそ、私も、
「……はい。おねがいします!!」
そう言って、イチキシマヒメの居るビルの中へと入っていった。
『私達も貴女に賭けてるの。……ちゃんと帰って来なさいね。ターゲットの居るビルまでの最適ルートを算出し、表示したマップをそちらのバイザーへ転送します。』
霞さんが、私が纏う新型S装備の頭部に有るバイザーにイチキシマヒメが居るビルまでの最適ルートが表示される。
……それを見た私は、このルートなら荒魂と接敵する機会が少なくて済むと思い、私は表示されたルート通りに進んだ。
そして、イチキシマヒメが居ると思うビルの前まで……いや、荒魂の気配が他の荒魂とは桁が違うくらいに強く感じるから、この最上階に必ず居る!!……そう思い、踏み込もうとしたとき、
『ビル内部の構造を表示しますので、そこで待機してください。』
霞さんにそう言われ、私は素直に待ってしまう。
『建築会社からの提供されたビル内部の構造をバイザーに表示、警備会社から提供された監視カメラからの映像を確認しましたが、冥加刀使と荒魂の姿は確認されていないので、そのままビル内部に突入してください。』
そして、霞さんの言葉に従って、私はビルの内部へと突入する。
……霞さんの言葉通り、ビル内部には居なかった。
『階段にはドローンの索敵により、荒魂は検知されていませんので、そのまま右に曲がり、階段で駆け上がってください。』
その言葉に従って私は、階段を駆け上がる。
『……会議室にノロの反応を探知。背後から強襲される恐れがありますので確認してください。』
それを聞いた私は、会議室と書かれている表札の扉の前へ向かうと、そのまま扉を蹴破って、室内に入った。
……そこには、破壊されたモニタと壊された椅子があっただけでなく、何故かは分からないけど、壁の至る所に切り傷があることに私は戦慄した。それだけでなく、
「!?」
ある部屋が不自然に開いていて、その扉がキィキィと音を出していたために、その扉の先に何があるのか気になり、中を見てみた。
『心拍数上昇。衛藤隊員、何かありましたか?』
私は、霞さんが私の体調を気にする声に返答することなく、部屋の中に入る。
すると、そこには、
「……え?」
初老の男性が死んでいた。
死んだ人間を前にしているにも関わらず、私は何故かは分からないけど、その死体を観察してしまう。
『尚も心拍数上昇、衛藤隊員!何かありましたか!?』
霞さんの叫びすら聞こえていないのか、私はその死体を観察する。
……一太刀でバッサリと斬られている。そして、周囲はパソコンのモニタと斬られたマネキン、斬られた造花、そして割れた鏡しか無かったことから、荒魂に殺された訳ではなかった。
……すると、誰がこの初老の男性を斬ったのだろうか?
私は、そんな疑問を抱きつつ、周囲に気を張り巡らせていると、誰かのうめき声が聞こえた。
「!?」
それに気付いた私は、直ぐにそちらへと向かった。
『お願い、衛藤隊員!返事をしてっ!!』
霞さんの声に反応することなく、私はそのうめき声がした方へと向かうと……。
「姫和……ちゃん?」
「あああぁぁぁ、うぅうぅぅぅ……。」
口を半開きさせながら、ふらふらと彷徨う姫和ちゃんが居た。
そして、姫和ちゃんが私に気付くと、
「あ、あらだまああああぁぁあっ!!!!」
私にそう叫んで、斬りかかっていた。
『……だから私は、友達の理想のために、私は行くよ。……イチキシマヒメの所へ。』
その姿を見た私は、不意に歩ちゃんのことを友達と言ったことを思い出してしまっていた。
……そうか、これが、私の罪なんだと。……私は、まともじゃなかったんだと。
……頭の狂った人の言葉なんて、真実味が無い。自分が何をしたのかすら分からないんだ。
さて、誰が正しいことを言っていると思います?
今話を書いていたとき、思いついたこと。
tatararako「せや、歩ちゃんに親近感を湧かせ、友人だと認めさせたあとに自分勝手な理屈で冥加刀使にさせた友人の姫和ちゃんを目の前に投入させたろ!!」