【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

158 / 167
     
    
151話を投稿させて頂きます。

創世記3章 14節
14 神である主は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で最も呪われる。お前は這いずり回り、生涯にわたって塵を食べることになる。

    
    


灰は灰に塵は塵に

    

     

――――タギツヒメはソフィアと可奈美が戦っている向かいのビルに居た。……そして、

 

「……あそこか。」

 

可奈美とソフィアを確認したタギツヒメは、彼女等が居る場へと八幡力を使って窓ガラスを割りながら突入した。

 

「た、タギツヒメ!?」

 

そして、転びながら室内に入ったタギツヒメはソフィアを見るや否や、そのままソフィアに突っ込むと彼女に向かって走り出し、タギツヒメの進路上に有ったソフィアの御刀を拾ってソフィアに投げると同時にタギツヒメはソフィアに斬り掛かる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

タギツヒメに御刀を投げられたソフィアは御刀を掴み取って、迫るタギツヒメの御刀を自身が先程掴んだ御刀で受け、鍔迫り合いに持ち込む。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

しかし、タギツヒメは尚も薙ぎと突きを流れるように繰り広げることでソフィアを押し続けていた。……そして、

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

ソフィアとタギツヒメは窓を突き破り、そのまま外へ出て行った。

……タギツヒメの激昂の声と表情に臆したのか、それとも気圧されたのか、可奈美はその様を遠目で見ているしかなかった。

 

「……タギツヒメ。……ゴメン。」

 

窓を突き破って外に、そして地上に……いや、このビルよりも低い別のビルの天井に降りて行ったタギツヒメとソフィアを見ながら、可奈美はイチキシマヒメも倒さなければならないことを思い出すと、タギツヒメを援護できないことに歯痒さを感じながら、イチキシマヒメが居るこのビルの天井へと向かって行った――――。

 

 

 

 

 

――――そうして、可奈美達が居たビルよりも高さが低い別のビルの天井に降り立ったタギツヒメとソフィアは互いに構えながら、対峙していた。

 

「……ソフィア、答えろ!何で殺した!!私の友達を、何で殺した!!!!」

 

人とは異なる異形の怪物と言われた荒魂のタギツヒメは憤怒の表情と感情を露にして、ソフィアに何故自分の友人を殺したのかと詰め寄った。すると、ソフィアは、

 

「私が望んだ者とは違うからだ。」

 

自分が望んだ者ではなかったから、ただそれだけの理由で殺したのだと笑いながら答えた。……それが、自身の怒りを隠すための偽りの仮面であり、人間味の無い笑いであったとしても、彼女は笑っていた。

 

感情を露にして全てを曝け出すが、荒魂という怪物と呼ばれているタギツヒメ。

感情を隠して作り笑いを見せるが、御刀を持つことで尊敬される刀使であるソフィア。

 

「あの、慇懃無礼な……我とかの口調はしないんですか?」

「辞めた。痛々しかったから。……お前は、いつも作り笑いを浮かべてるな。」

 

ソフィアはタギツヒメに「我」といった古風な喋り方をしないのかと指摘されるとタギツヒメは、痛々しいから辞めたと答え。

それに対してタギツヒメは、ソフィアにいつも作り笑いをしているなと返すのであった。

 

まるで人間のように感情的となって叫ぶ異形の怪物と呼ばれる荒魂。

機械のように感情を殺して作り笑いを浮かべながら創り物となる刀使。

 

二人が抱えている事情を知らない者からすれば、人とは違う異形の怪物の荒魂とそれを討伐する刀使に見える事だろう。

だが、内情は違い、そんな対照的な二人は何も言わずにお互いに剣を向けながら、ソフィアはタギツヒメにこう述べた。

 

「……そんな狩られて当然の死にかけの子供が使った剣よりも、最強の刀使が使った二刀流にしないのですか?」

 

結芽が使っていた"弱い剣"よりも、折神 紫が使っている"強い剣"にするべきではないのかとタギツヒメを挑発していた。

 

彼女がそう言った理由は、トーマスからタギツヒメが一番情報を持っている技が長年取り憑いていた紫の二天一流であることを知っているからこそ、そのように述べていた。

 

最強と言われている刀使の技を踏み躙り、奪うことで、荒魂と刀使が蔓延るこの世に対して唾を吐くことが出来るような気がしたから、そのように述べたのもあるが……。

 

「……違う。私が知っている"最強の剣"はこの剣だ。」

 

しかし、タギツヒメは挑発されていることに気付き、冷静になっていくと、自分が憶えている最強の剣は――――、

 

『――――だったらさぁ……親衛隊の中で一番強い私の剣を上げるよ。……そうすれば、最強の剣と神様が組み合わせれば、もう敵う奴は居ないから、一人で外に出ても何も怖くはないでしょ?――――』

 

最強の剣は天然理心流……いや、教えてくれた“結芽の剣”だと思ったから、それを託されたから――――、

 

『ふ、ふはははは。……ま、まあそうであろうな!神である我とお主の最強の剣術が組み合わされば誰も敵わんのは当然のことじゃわ!!……それに、……それに我は時の呪縛を超越しているからな!!お前の凄いことを一生……一生憶えている事ができるぞっ!!』

 

それを誰よりもずっと一生憶えていると約束したから――――、

 

「だからこそ、この剣で勝たせてもらう!!」

 

だからタギツヒメは、……結芽の、貴女の剣は誰よりも強いということを証明するために、目の前に居る人間を倒そうと決意していた。

 

「悪いが、私が知っている最強の剣はこの剣しか知らん!!」

 

そうすれば、彼女は結芽の剣は誰よりも強いと言った私は嘘にならないと思った。……そして、自分を信じてくれたジョニーもミカもニキータも夜見も……優も結芽の剣は誰よりも強いと言っていた。その言葉を真実にすべく、結芽を踏み躙った者であるソフィアを倒すべきだと……心が、そう語っていたような気がした。

 

「そうすれば、私が知っている結芽の剣は……誰よりも強いと証明できる!!」

 

それが、人とは違う異形の怪物と呼ばれた荒魂であるタギツヒメの答えであった。

 

「そうか、……なら私はそれを踏み躙って、踏み潰してやろう!!」

 

その答えを聞いたソフィアは満面の笑みでタギツヒメが語る結芽の剣を踏み躙って、踏み潰してやると答えていた。

 

「そうすることで、私は私が信じた友情や親愛を踏み躙る獣の世界の力こそが真実なのだということを見せてやろう!!」

 

そうすることで、人が信じる友情や親愛を踏み躙ることで、一番強い感情はソフィア達が見せた"獣"の感情であることが証明されると叫んでいた。

 

そうすれば、彼女達が死の間際に見せた物が無価値な物ではないと証明することができる。私が信奉した『獣の世界』こそが真実なのだと、自分が信じた物こそが正しいのだと証明することができると叫びながら。

 

方や自分のせいで犠牲となった子供達のために戦うタギツヒメ。

方や自分のために犠牲となった者達のために戦うソフィア。

 

彼女等は根底は似ているものの、その経緯は違っていた。

 

それ故に、タギツヒメとソフィアはお互いに刃を交え、互いに信ずる友情と力を互いに否定するかのように鍔迫り合いに持ち込むのであった。……だが、

 

「くっ……!?」

 

タギツヒメは次第にソフィアの力に押され始めていた。……つい、先程までは自分が力押しできたというのに、そこから考えられることは、

 

「……誘い込んだのか!?」

「あんな女よりも、貴女の方が私が求める者に近いだろうと思っただけだ!!」

 

可奈美ではなく、タギツヒメと戦うことを選んだということを答えていた。

そうして、力負けしそうだと判断したタギツヒメは後ろに飛び下がって形勢を整えようとするものの、ソフィアはそれを許すことなく更に追撃をする。

 

「くぅっ……!」

 

そのため、タギツヒメは後ろに下がりながら、荒魂を注入したことで刀使の力が乗算化されたソフィアの剛剣をどうにか躱し続けることしかできなかった。……しかし、ソフィアがタギツヒメの足を踏んで、動きを封ずると肩でタックルをして来たと同時に足を離すのであった。そうすることで、ソフィアはタギツヒメとの距離を空けることでタギツヒメが持つ二尺未満のニッカリ青江では刃先が届かない距離で、且つ自身が持つ三尺程ほどある御刀の刃先が届く距離でタギツヒメを斬ることができた。……だが、ソフィアが持つ御刀は数珠丸でもなければ、千鳥や小烏丸でもなかったがために致命傷を与えることはできなかったのである。

 

「……どうも弱いような気がするのですが?龍眼は使っていないのですか?」

 

だが、どこか手ごたえが無いと思ったソフィアはふとそう聞いてしまった。

 

「ああ、使わない。……私が知っている最強の剣は結芽が使っていた剣だ!みんなそう言っていた!!」

 

そのソフィアの問いにタギツヒメは龍眼を使わずに、みんなが強いと認めていた結芽が託してくれた剣のみで戦うと答えていた。

 

「ああ、そうですか。下らない。……なら、もう一度その結芽の剣を砕いてやろう!!」

 

その答えを聞いたソフィアは、それを力で捻じ伏せ、踏み躙ると宣言した。……それを聞いたタギツヒメは、

 

「……絶対に勝つ!一番強いのは託された剣だって証明してやる!!」

 

ソフィアに上段から振り下ろすように斬り掛かる。しかし、ソフィアは刀を横にしてタギツヒメの斬撃を御刀で受けると、自らの刀身を左手の防刃グローブで掴んで左手を後ろに回しながら、タギツヒメの右に回ると右手に持つ柄をタギツヒメの側頭部に目掛けて近付けると柄頭で殴打する。

 

「がっ!……そして、それを証明すれば、もうみんなのことを忘れないから!!」

 

そうして、タギツヒメはソフィアの御刀による柄頭の殴打によって、一瞬よろめくもののどうにか立ち直るのだが、左手で支えて掬い上げるように来るソフィアの斬撃を躱すことが出来ずに又も受けてしまう。

 

「ぐっ!!……だから、それが、私の償いであり、私がしなければならない――――」

 

ソフィアの剛剣を何度も受けながら、息を上げながらもタギツヒメはそう答えていた。

 

必ず、結芽の剣で倒すと。……そうして、タギツヒメは何度もあしらわれるように斬られても諦めることなくソフィアに向かって斬り掛かって行くが、経験の差であろうか、またもいなされ、カウンターの斬撃がタギツヒメに迫っていた。

 

――――そのとき、タギツヒメの耳に誰かの声が聞こえた。

 

『……あんま無理すんなよ。顔に出てんぞ。』

 

死んだジョニーが目の前で熱くなるなと言っていた。……それにより、タギツヒメは幾分か冷静になる。すると、何故かは分からないが、ソフィアの動きが見え始めていた。

 

「何!?」

 

それ故に、タギツヒメはソフィアのカウンターの斬撃を躱すことができた。……そして、タギツヒメは後ろに飛び退き、片膝を付いた体勢となったために、ソフィアは追撃するべく斬り掛かるが、

 

『立てっ!私の剣術を使っておいて、負けんなぁっ!!』

 

タギツヒメはまるで分かっていたかのように……いや、結芽の声に従うかのように、ソフィアの袈裟斬りを完璧に防いでいた。

 

『結芽おねーちゃんは弱くないってこと、証明させてあげてっ!!』

 

そして、何処からか聞こえて来たニキータの声により、タギツヒメは奮起する。……これは、そう。龍眼が見せる幻覚のような物だと分かっていた。

 

(……これは……これは、そう、龍眼が見せてくれる物……。私の心が見せてくる光景だ。)

 

……分かっていたが、タギツヒメは結芽が持っていた御刀ニッカリ青江を見やると、こう思い始めていた。

 

(……みんな、此処に居るんだね。)

 

まだ、みんなは私の中に、この御刀の中に居るということを龍眼に教えてもらった。

結芽の剣が強いというのを私だけが証明することに何をそんなに剣術だけに拘る必要があったのだろうか?

結芽も夜見もジョニーもミカもニキータも優と居たみんなの記憶が私の中に在る。私の中に在る結芽と夜見がソフィアと戦った記憶の中にも、結芽が託してくれたニッカリ青江の中にも、私が使う天然理心流の中にもみんなが生きているというのに。

 

……なら、答えは決まっている。もう自分は一人で戦っていないと。

 

「……ついに、紛い物の剣術を捨て、龍眼を使う気になりましたか?」

 

その姿を見たソフィアは、感嘆としながらタギツヒメにそう述べていた。……しかし、タギツヒメは、

 

「……いや、違う。……これは、私の友人達が教えてくれたものだ!!」

 

そう言って否定した。

 

「何を言うかと思えば、……それらは私が殺したんですよ!?そんな世迷い言で自分が龍眼を使った事実に対して誤魔化そうとでも?」

「そうだ。お前が殺した。……だけど、お前は結芽と何度も戦っただろう?夜見とも戦っただろう?」

 

しかし、ソフィアは納得することが出来ず、タギツヒメに龍眼を使ったことを認め、純粋な暴力こそが全てであると認めろと迫るが、タギツヒメの中にはソフィアと戦った結芽と夜見の記憶が残っていることを話した。

 

「ええ。自分が不幸な人間だと思い込んでる馬鹿が苦しむ姿を見るのは、とても愉快ですからねえ!!それがどうしたって言うんです!?」

「……そのとき、何度も何度も結芽とお前が戦った記憶が私の中に有る。夜見がお前になぶり殺しにされた記憶が私の中に有る。……だからこそ、お前の戦い方が分かり易くなった。」

 

だが、タギツヒメの言葉の意味を理解できなかったソフィアは結芽と夜見をなぶり殺し同然に殺せたことが愉快であったと述べることでタギツヒメを更に挑発しようとするが、タギツヒメは怒るどころか、まるで理解していないソフィアに呆れたかのような声音を出して、ソフィアに結芽と夜見の二人と戦ってくれたお陰で、その両人の記憶を持つタギツヒメはソフィアの攻撃に対処出来るようになったと答えた。

 

……それは、嘗て優が紫に取り憑いていた大荒魂との戦いで燕 結芽の記憶から紫の動きを読み取って攻撃を対処していた物と同じ理屈であった。

 

「お前の戦いを見て分かったよ。……お前は、結芽と夜見の二人と戦ったときから"何も変わっていない"ということが、よく分かったよ。」

 

……つまり、それはソフィアが結芽と戦ったときから何一つ変わっていないという指摘でもあり、ソフィアにとってその指摘は、大事にしている“ソフィアという写シ”を意図せずに侮辱していることになってしまった。

故に、激昂したソフィアは無言のままにタギツヒメへと突っ込む。しかし、全ていなされてしまった。……そう、全て。

そのタギツヒメの姿を見るしかないソフィアは自然と自分が歩んだ過去の全てを否定されたかのように感じ、

 

(……何故だ!?何故、通じないっ!?)

 

次第に焦りの感情を出し始めていた。

 

だが、その一方でタギツヒメは自然とみんなが居ると、この自分達荒魂の天敵である御刀の剣戟の音が奏でる場所こそが荒魂である自分の孤独感が埋まっていく感覚がした。

刀使である可奈美は強くなりすぎて孤独を感じるのとは対照的に、常に自身の怒りを理解されることなく暴れるソフィアとは対照的に、タギツヒメは剣を通して孤独感が埋まるということになったのである……。

 

(……ああ、分かっているこれは。)

 

そして、この感情は可奈美に教えてもらった物である。そのときの彼女は私ではなく、優に向けて言っていたのだろうことも分かる。……だけど、だからこそ、ニッカリ青江を託してくれた私がそれを言葉にする。

 

「……そんな魂のこもってない剣じゃ、」

 

それ故に、タギツヒメは述べる。ソフィアは在りもしない幻影を追い続けたことで、貴女自身の中は何も育たなかったのだと。

だから、貴女の剣はどう足掻いても貴女自身の魂がこもっていないのだと。……どんなに足掻いても中身の無い、空っぽでしかない空虚な剣だと。

 

「何も斬れない!!」

 

そんな貴女自身が入っていない空っぽの剣では、貴女自身の敵は何も斬れないのだと、強く反論しながら、ソフィアの身体にニッカリ青江の刃を食い込ませ、ソフィアの身体を引き裂くと、ソフィアの身体から大量の血が流れ出ることになるのであった。

 

「……私が!?……あんな荒魂に負ける!!?」

 

そして、ソフィアは先程の力比べで自身よりも劣ると思っていたタギツヒメに斬られたという事実に驚愕し、自らの信奉する物が完全に否定されたかのような気持ちとなり、地に倒れ伏しそうになったために片膝を地面に付けてしまう。……しかし、その“事実”が彼女に否定する力を与えたのか、ソフィアは渾身の力を出し、タギツヒメから見ると地から這い出た悪魔のように立ち上がるとタギツヒメの首に手を絡めて首を絞め始めていた。……御刀以外の攻撃では荒魂には効果が無いということすら忘れたかのように。

 

「…違う。……チガウッ!!……力こそが……純粋な暴力こそが……獣となった者こそが本当の人の姿だ!!」

 

そして、ソフィアはタギツヒメに語る。力こそが、純粋な暴力こそが、獣のように力を振るう者こそが人の本当の姿だと、まるで今まで見せて来たソフィアではない何かが取り憑いて答えているかのように迫っていた。

 

「……平和?……親愛?……そんな世界が何処に?……そんな下らん理想の下で……私達は理想の消費物として生きて来たよ!!」

 

そして、ソフィアはタギツヒメの首を締めながら、タギツヒメを持ち上げると、フェンスの手摺の所まで持ち上げていき、タギツヒメを転落させようとする所まで追い詰めてから問う。

 

平和や親愛の有る世界が何処に在ると?何処に存在すると?

 

「……責務。……血族。……名誉。……皆、本来の姿を……刀使も荒魂も忘れてる!!」

「……戦のみが、望みだったのか?」

 

そして、ソフィアはタギツヒメの首を絞めながら、タギツヒメの問いに答えた。

 

「望みはただ……お前達に認めさせることだ。……お前達が何で……あるかを……聖人君子のなりそこないだとっ!!」

 

妄執に囚われたかのように、ソフィアは呻くようにタギツヒメに答えていた。

 

お前達は平和主義を標榜する聖人君子ではなく、刀か銃を使う暴力の化身であると……。

聖人君子のように振る舞い、上から見下ろし続け消費という名の暴力を使い続ける者達であると……。

 

「お前達……皆に……子供を残せなくなった私の……私が横須賀湾やこの内乱……私が望んだ大災厄で育てた獣達に……感情を持つ生物は……私のように“ソフィア”になれることをっ!!」

 

お前達は……いや、名誉や血族、責務を抱く刀使も荒魂も……いや、感情を持つ生物は、嘗て無力だった少女である私のように“ソフィア”になれると答えていた。

 

……無力な少女の私を助けたソフィアのように、大人の黒い欲望によって流産したソフィアのように、私が殺したソフィアの憎悪の表情のように、皆がそのソフィアになれる。と地の底から這い出る亡者のように答えていた。……しかし、

 

(……力が弱まった?)

 

自身の首に絡まるソフィアの手の力が弱まったような気がしたタギツヒメは、そのままソフィアの腕を掴むと、そのまま後ろに引っ張って、ソフィアと共に、

 

「う、おおおおおおおおおお!!」

 

落下するのであった。

……落下しながら、タギツヒメはソフィアの腕の力が弱まった理由を理解した。……恐らく、ソフィアは“刀使”の力を失ったのだ。

 

刀使を荒魂と融合させれば、その力は乗算。ならば、刀使の力を失ったソフィアはその乗算の力を失ってしまい。今のソフィアが持つ力は荒魂のみとなった。

 

……だからこそ、ソフィアの腕の力が弱まり、首を締める力が弱まったことで意識がハッキリしたタギツヒメはソフィアと共に落下するという行動が取れた。……そして、タギツヒメは御刀以外の攻撃はダメージを受けないため、落下程度では負傷しなかったので直ぐ様立ち上がれたものの、人であるソフィアは運良くゴミ袋が沢山有るところに落ちたとはいえ、落下のダメージを大きく受け、何本か骨折してしまうのであった。

 

 

「……まだ、まだだ。」

 

……しかし、ソフィアは地の底から這い上がる悪魔……いや、亡者の如く立ち上がるのであった。

 

「まだ……終われない。」

 

体内に宿った荒魂によって強化された身体のお陰で息があるのだろうか?

……タギツヒメの一撃で大量の血が流れ、足が折れ、肋骨も折れていると言うのに立ち上がり、意識が朦朧となっても、御刀を持ってソフィアはタギツヒメに向かって行った。

 

「……私が……目指した世界は……」

 

嘗て無力な少女だった自分を助けてくれたソフィア、大人の黒い欲望によって殺されたソフィア、自分が初めて殺したソフィア、それらを思い出しながら……。

 

「直ぐ其処に……っ!!?」

 

しかし、タギツヒメの元へと辿り着くことはなかった……。後ろから何者かに刺されたから。

 

「……お前がソフィアだな?」

 

その者は……綾小路の制服を着ていることから、確か維新派の人間だったはず。なのに、何故此方に刃を向けるのか?

 

「私の姉さんを殺した報いを受けろ!!」

 

その言葉を発するところから嘗て私が殺した人間の中の親族なのだろう。

その綾小路の制服を着る少女が、私を刺した後、グリっと捻る。……その感触を感じたソフィアは、

 

「……弱者が……私の邪魔をするなぁっ!!!!」

 

と言って、そのまま綾小路の制服を着る少女の首を掴んで持ち上げ、自身が持つ御刀で少女の腹に深々と刺して、捻りながら引き抜くことで大量出血させ、綾小路の少女を出血性ショックに導くことで始末していた。

 

……そして、ソフィアも力尽きたのか倒れるのであった。ゴミ袋の中に有った不快な臭いを嗅ぎながら。

 

しかし、ソフィアにとってその匂いは……、

 

(……ああ、懐かしい。……この匂いは、私が居た下水道の匂いだ。)

 

嘗ての無力であった少女の頃に戻れる物であった。

その匂いを嗅ぎながら、ソフィアであった少女は嘗ての下水道の仲間達と再開していた。

 

(……待ってよ。……みんな、いっしょに。)

 

こうして、ソフィアは死に、少女は嘗ての仲間達と都会のゴミ捨て場で再開するのでした――――。

    

    




     
    
創世記3章 19節
19 土から取られたあなたは土に帰るまで、額に汗して糧を得る。あなたは塵だから、塵に帰る。
    
     
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。