154話を投稿させて頂きます。
全否定からの優しい言葉は洗脳の基本。
マタイの福音書22章 37節~39節
37 イエスは言われた、「『心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。
38 これがいちばん大切な、第一のいましめである。
39 第二もこれと同様である、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。
――――そうして、お母さんの声に促されるように意識を手放し、次に目を覚ましたとき、私は……
「……此処は……江ノ島?」
江ノ島に居た。
何故、そう思ったのかと言うと、過去の映像で見た相模湾岸大災厄と瓜二つの形をした大荒魂が江ノ島らしき所に居たから、私はそう判断できた。
そして、お母さんが言っていた"私の内に在る意志と覚悟、そしてお母さんが言っていた『刀使の使命』にも問いかける"ことをすると言っていたことも思い出すと、これは、何かを問いかける物なのだということも理解した。
……けど、江ノ島のことを尋ねてどうするのだろうか?
そんなことを考えていると、
『刀使の使命を継ぐ衛藤 可奈美に問います。……仮として、江ノ島にて死者3千人を超す大荒魂が暴れる大災厄が発生した場合、刀使の可奈美はどうする?』
と私に問う声が聴こえた。……だから、私は、
「……私は刀使だから、荒魂を討伐する!」
そう力強く答えた。……すると、
『貴女がそう決断し、江ノ島へ向かうと荒魂化した人間が3千を超すぐらい居て、何処かの国の暴動のように人々を襲うだけでなく、街を壊して暴れていた。……刀使の使命を継ぐ貴女なら、どうする?』
荒魂化した人間が3千を超す数となっているということを私は突きつけられた。……江ノ島で起きた相模湾岸大災厄の死者は約3千人、となると江ノ島で死んだ人間は荒魂と化した人間なのだと言いたいのだろうか?……だけど、私は否定できなかったそれを聞き、
「……それは。」
狼狽えてしまう。だけど、女の人の悲鳴を聞いた私は慌ててそちらを向いてしまう。……すると、
女の人も男の人も性別も関係なく、子供も老人も年齢も関係なく、赤い血を流して、息絶えているのか死んでいるように倒れていた。
……みんな死んでた。左を見ても死体。右を見ても死体。……みんな、みんなみんなみんな死体になってた。
『刀使の使命を継ぐ可奈美は、荒魂化した人間を全員斬って討伐する。……正解。それが刀使の使命を継ぐ可奈美の取るべき行動。』
……そして、その声が聴こえた瞬間、荒魂化した人間3千人分の肉を裂く感触と呻き声、そして血の匂いが一気に頭の中に入って来る。そう実感したとき、
「……うっ!」
猛烈な吐き気を感じ、胃の中に有った物を地面にぶちまけてしまう。
そうして、胃の中に有った物をぶちまけた後、余りの気分の悪さに息を荒げる自分が居ることを自覚する。……まだ、心は保っている。そう実感しながら、どうにか立ち上がろうとしたら、
『……そうして、刀使の使命を継ぐ可奈美は、折神家の貯蔵施設に穴が開いたことが原因で起こったノロの大量漏洩と漏出事故を発端とした大災厄の解決のために向かう。』
そんな声が聴こえた。そして、私に問いかける。
『折神家の貯蔵施設に着いた貴女は、そこでノロの大量漏洩と漏出事故が原因で荒魂化した刀使含めた人間3千人がまたしても現れてしまう。……さて、刀使の使命を継ぐ可奈美はどうすべきだと思う?』
「……ちょっと、待って!!」
そんな叫びも虚しく、次の光景は……米村 孝子さんと小川 聡美さん、それだけでなくエレンちゃんと薫ちゃん……真希さんと寿々花さん……それだけじゃない、多くの刀使と一般の人が混じった大量の死体がそこにあった。
それを見た瞬間、孝子さんと聡美さん、エレンちゃんと薫ちゃんに真希さんと寿々花さんの苦悶の表情と呻き声、そして見知った人の肉を裂く感触と血が御刀にこびりついて離れない光景が一気に頭の中に入って来る。それを感じた瞬間、もうお腹の中には何も入っていないというのに、吐き気を催して何度も何度も吐いて……そして、えずいてしまう。
『……3千人も居る荒魂化した刀使と人間を全て討伐する。……そう、それが刀使の使命を継ぐ可奈美が取るべき行動。そうでしょう?』
だけど、荒魂化した刀使を含む人間3千人を全て討伐した私は正しいと聞かされる。……でも、これは、
「……待って、おかしい。……おかしいよ。だって、だって孝子さんや聡美さん、それにエレンちゃんと薫ちゃんは荒魂化していない!!」
おかしいと答えた。……だって、孝子さんや聡美さん、エレンちゃんと薫ちゃんは自分の身体の中に荒魂を入れることなんてしていなかった!!……そう言うと、
『確かに貴女の記憶の中には彼女等は荒魂化していない。……けれど、孝子さんや聡美さんは"荒魂化した刀使"として対刀使用のボウガンで処分されようとしていたのは事実でしょう?』
この世界は孝子さんや聡美さんを"荒魂化した刀使"として処分するべく、写シ対策のボウガンで始末されそうになった世界だと言われると、
『それに、薫ちゃんやエレンちゃんが真希さん達のようにならない確かな保証があるの?……自分達が刀使のあるべき姿を取り戻すだとか言って相手が本流から外れていると決めつけて舞草だと名乗り、そして折神家にS装備のコンテナを使って勝手に敷地内に発射して、御刀という暴力で解決した貴女達がそれを保証できるの?……実際に荒魂を体内に入れる力を折神家や柊家は昔から持っていたのに?』
薫ちゃんやエレンちゃんが刀使のあるべき姿を取り戻すと言って活動する「舞草」のメンバーであるなら、折神家と柊家に倣って体内に荒魂を入れないといけないでしょ?とも言ってきていた。
『……そんな過去にしがみつく「舞草」が、窮地に陥られれば形振り構わず荒魂を入れた刀使、もしくは荒魂を利用して強化した刀使を戦力に加えるのは、目に見えた結果だと思うけど?……現に、折神 紫を倒すときにトーマスさんは優ちゃんも戦力にしていたよね?』
それに、舞草も同じことをすると言って……。
だから私は、どうにか否定しようとした。
『それに、荒魂に最も近くに居る人間は誰?……それを斬ろうとする刀使だよね?なら、荒魂化した刀使が現れることが絶対に無いと言える?』
だけど、荒魂に最も近くに居る人間は刀使であるという声がして、
「……それに、私は『これから私がやろうとしてることは荒魂退治だ。だが限りなく人斬りに近い。』と言ってた姫和ちゃんに言ってたじゃない?」
そして、私の顔をした人間が何時の間にか傍に居て、私に語り掛けていた。
「……『違うよ、姫和ちゃんは御当主様、…人に化けた荒魂を斬る。それだけだよ。それ以外は私が斬らせない、それが私の覚悟だよ。だから、姫和ちゃんの重たそうだから、半分私が持つよ。』……てね。」
……荒魂化した人間を斬ることを協力することは私が言っていたことだと、そんな私が荒魂化した人間を否定する権利など持ち合わせていないと。
「……なら、荒魂化した刀使を私が斬ること自体、おかしな話じゃないでしょ?」
もう一人の私とも言える私の顔をした人間は、無邪気な笑顔で、そして歪な笑みと思える表情でそう答えた。
「……これが、……これが見せたかったの?」
もう一人の私にそう言われた私は、延々と荒魂化した人間を殺し続けるのが刀使の使命だと言いたいのかともう一人の私に尋ねてしまう。
「そうだよー。私と一つになれたことで、貴女は龍眼を使えるようになった。……そして、私が“こういう可能性”が有ることを囁くだけで、嫌でもその光景が見える。……可能性が有るっていうだけだけど、嘘とは言えないでしょう?ありえない話とは言えないでしょ?」
そう聞いた私に、もう一人の私は答えてくれた。
……これは、龍眼が見せる可能性の一つと言っても、絶対に無いと言えない光景だと。
「それに、大荒魂ほどのノロを入れても貴女は壊れなかった。龍眼が見せてくれた大災厄で幾度も貴女は殺戮を行っているのに壊れないのは、貴女の精神が既に壊れていたから。……今の貴女の精神は限りなく私達大荒魂に限りなく近いんだよ?」
そして、もう一人の私は、私がその光景を見て正常に振る舞えることが既に異常なのだと定義付け、
「荒魂の優ちゃんを守るために刀使になったり。」
荒魂と定義付けてられる優ちゃんを守るために刀使になったという歪な状態を指摘され、
「姫和ちゃんのを半分持つって言ったり、姫和ちゃんに人に化けた荒魂を斬ることを手伝ったりした衛藤 可奈美が言う"刀使の使命"っていうのはそういうことだよね?」
人斬りの手助けをすると決めた私が……異常者が語る"刀使の使命"とは、
「……つまり、私が言う"刀使の使命"とは、荒魂扱いされる生物を斬ることが使命。っていうことでしょ?」
そういうものだったのでしょうと問い詰めてきた。だから、私は、
「違う!!……こうなって欲しくないから、だから私は……私は人を助けたかったから……刀使になったんだ。」
私はこうなって欲しくないから、守りたい者が有ったから、刀使になったと答えた。
「だって!そうしないと、優ちゃんは……お母さんはっ!!」
答えるしかなかった。……それを聞いたもう一人の私は、
「うん?……お母さんにそう言ってもらいたいの?……なら、聞いてみようか?」
私にそう言うと、私の顔からお母さんの顔になり、
「可奈美、アンタは立派だよ。私との約束……アンタがおねーちゃんとして立派にやってきたんだから、私が保証する。」
お母さんの声で語った。
苦痛の顔、無念の顔、恨みが籠もった顔をする私が殺した人達を指差しながら……多くの骸が横たわる世界の中心でお母さんは私にそう語ってくれた。
「……私が教えた剣術でこんなに荒魂を斬ったんだから、剣を通して少しは荒魂が貴女に斬られた気持ちも理解出来たでしょう?」
……剣を通して理解できただろうと。お母さんの声で言っていた。
「でも、みんな……いや、違うよね。この世に生きている人や神様って奴は刀使と荒魂が殺し合ってくれることをきっと望んでいるんだと思うよ?」
だけど、お母さんの顔から私の顔に戻ったもう一人の私は、みんなが刀使はこうあって欲しいと、望んでいると言って答えていた。
それを聞いた私は、
「そんなことない!!」
それを否定した。……それを聞いたもう一人の私は、
「いいや、何も間違っていない。……だって、神性を帯びたとか言われている石ころの珠鋼を刀の形にしたのは誰?」
神様の力が宿る珠鋼を刀にしたのは誰かと問い質してきた。
「誰が御刀を造ったの?……私達が想像できない程の昔の人だよね?」
そしてもう一人の私が御刀を造ったのは誰かと答えていた。……昔の人、遠い祖先だったと。
「本当はさ、みんなみんなみんなみんな……みーんな暴力が大好きだから珠鋼を鞘といった物ではなく、人とかよく切れる刀という武器にしたんでしょう?……こういうのを影、分析心理学で言うところのシャドウって奴だよね?」
そしてもう一人の私は、人の本性はよく切れる刀のような姿であると説くと、
「剣術にのめり込んで、刀使を打ち倒して五箇伝の代表に選ばれたことに喜ぶ私のようにね?」
それは、他の刀使を打ち倒して五箇伝の代表に選ばれたことに喜んだ私の本性と同じであると、もう一人の私は語っていた。
「でも人間とは違う荒魂を斬ることには何ら罪悪感を感じないけど、荒魂化した人間を斬ることには罪悪感を感じるからこそ、その罪悪感を紛らわせるために人は存在するかどうか分からない"神様"を使ったんだよ。……ちょうど、この人達が言っていたようにね。」
もう一人の私は、死体の一つを持ち上げる。……それは、
「刀使たる者、御刀を使い荒魂になってしまったノロを祓い鎮める。その行いはちゃんと人を救ってきたわ。」
累さんの首だった……。それだけじゃなく、
「刀使の起源は社に務める巫女さんだったそうだね。荒魂を斬る以上、その巫女としての務めも君達はちゃんと受け継いでいかないといけないってことさ。」
フリードマンさんの死体も私にそう語り掛けて来た。
「でもこの言葉って誰が造ったの?神様が言ったの?……この珠鋼という石ころを使って刀にして、年若い娘を斬り合わせろって珠鋼が囀ったの?……でも、この人はこう言ってたよね?」
もう一人の私が累さんの首を放り投げ、フリードマンさんの死体を持ちあげると、
「……『ノロは人が御刀を手にするために無理矢理生み出されたいわば犠牲者なんだ。』ってね。」
フリードマンさんが言っていた言葉を復唱させていた。
「これが、社会生活を送るうえで、求められた役割を演じられるよう機能する心……つまりはペルソナでしかない。そして、本性は荒魂も荒魂化した人間という生物を斬る罪悪感を無くすために神様やら受け継がれた物だとかそれっぽい理由を付けて巫女にして斬りやすいようにしたってだけ、そうでしょう?」
そうしてもう一人の私は……私に語る。
私のやって来たことは、神様や受け継がれた物といった崇高な物ではなく、人から求められた物の延長線に過ぎないのだと言う。
「それに、ナポレオンも魔女だったジャンヌを聖女にしたじゃない?……この世の中は人の勝手な都合で出来ているんだよ?」
そしてもう一人の私は……私に語る。
私のやって来たことは、神様や神聖な物といったこととは関係無く、昔っから人が望んだ結果であると。
「……無駄話が長くなってごめんねー。問答を続けよっか?……東京にて大荒魂が隠世の門を開け、空に穴を開けたことにより、荒魂が降り注いたことで……またしても!荒魂化した人間で溢れかえってしまった!!」
そしてもう一人の私は……続けて私に問いかけてきたと同時に力強く声を張り上げると、ある方向に指を指していた。
「さあ、どうする?」
その指した指の先には、
荒魂化した舞衣ちゃんが居た。
「さあ、どうする?」
それを見た私は、
「そんなのできない!」
と答える。すると、
「何を躊躇う必要があるの?……剣を通しての会話がしたいなら、剣で舞衣ちゃんの身体に刀を入れて、血を浴びて、舞衣ちゃんの心と心で語り合えば良いと思うけど?」
もう一人の私はそう言ってきた。
剣を通しての会話がしたいなら、舞衣ちゃんの身体に刀を入れて、血を浴びて語り合えば良いのだと。
「もし人斬りを楽しんでなく、刀使の使命でやっていると言うなら、……親友だからという理由で斬れない訳ないよね?」
もう一人の私はそう言ってきた。
刀使の使命でやっていると言うのなら、親友でも斬れるはずだろうと。
「……さあ、迷っている時間は無いよ。」
そして、もう一人の私がそう言ってくると、荒魂化した舞衣ちゃんが男の子を斬ろうとする場面を見せられた私は、
『凄いなぁ、可奈美ちゃんは……。』
私のことを認めてくれていた舞衣ちゃんを、
『……良いなぁ、上の妹は結構わがままで私を困らせてばっかなんだよ?』
私のことを信頼して、身の上話をしてくれた舞衣ちゃんを、
『……私は、助けるっ!!』
私のことを自分なりの言葉と行動で助けてくれた舞衣ちゃんを、
『『……プッ、アッハハハハハハ!!』』
そして、殴り合って笑い合って仲直りした舞衣ちゃんを、
『最後に、こんな私でも親友で居てくれてありがとう。舞衣ちゃんと一緒に二年生に進級できたり、全国大会に行けてよかった。じゃあ、家族を大切に。』
……私は、荒魂化した舞衣ちゃんに御刀の切っ先を向けて、そして振り下ろしていた。
「正解。……ああ!でも不幸なことに舞衣ちゃんの命を犠牲にしてでも守った男の子も荒魂化しちゃった!……さあ、どうする?」
その男の子にも御刀を振り下ろした。
「その次は姫和ちゃん。」
荒魂と化した姫和ちゃんに御刀を振り下ろした。
「その次は妊婦。」
女の人にも御刀を振り下ろした。
「その次はその女の腹から這い出てきた赤児。」
荒魂にも御刀を振り下ろした。
振り下ろした。振り下ろした。振り下ろした。…………振り下ろし続けた。
何度も何度も人の手による物だったり、或いは国の政府が大荒魂を保護した結果によるものだったり、人と大荒魂が結託して暴れた結果といった様々な理由で大災厄が起こり、その都度その都度に私は荒魂に向けて御刀を振り下ろし続けた。
……荒魂化した人間を何人斬ったかも憶えられない程に。
私との間にどれほどの物を築き上げたとしても、子供も大人も男も女も関係なく、赤児という新しい命の姿をしていようとも、私は関係なく荒魂に向けて御刀を振り下ろし続けた。
そうして振り下ろす度にただ痛い、痛い、痛い想いをしても……何度も何度も荒魂を討伐することを繰り返して、そしてその先には有るのはただ仄暗い、そして深い悲しみがずっと沁みついて離れない痛いと思える世界が広がっていた。
……もう一人の私が私のことを『異常者』であると定義付けていたけど、その通りだったのかもしない。
だって、心が痛い思いをすることになると分かっているのに何度も何度も疑問にも抱かず、ただ同じことを繰り返しているだけなのだから、これが異常でなければ、何なのだろうとすら思える程に酷い行いをしていたと思う。
…………そう考えたとき、仄暗い何かが目の前を真っ暗にして、その闇に瞳が呑まれたかのように目を閉じると、意識を手放していた。
「可奈美おねーちゃん。」
そうして、人も荒魂も殺し尽くして、心も何もかも感じなくなったとき、ある声が聞こえた。
テサロニケの信徒への手紙一2章 15節~16節
15 ユダヤ人たちは主イエスと預言者たちとを殺し、わたしたちを迫害し、神を喜ばせず、すべての人に逆らい、
16 わたしたちが異邦人に救の言を語るのを妨げて、絶えず自分の罪を満たしている。そこで、神の怒りは最も激しく彼らに臨むに至ったのである。