【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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18話を投稿させて頂きます。
さやまいに嫉妬する結芽ちゃん。そして沙耶香ちゃんは天使、はっきり分かるんだね。
さやまいも良いよね……。


心が揺れる

話は遡り、舞衣は着信名が沙耶香と表示されていたところを見て、沙耶香からの電話着信だと思い、電話に出る。

「もしもし!?」

『!……あっ、……えっと……。』

しかし、不思議な間ができたことから、沙耶香は何を喋っていいのか困っていることを見抜いた舞衣は沙耶香に優しく声をかける。

「どうしたの、沙耶香ちゃん?」

『あっ、あの……。』

「早速ありがとう、電話をかけてくれて。……夜更かしさん同士、少しお話しよっか?」

良かった、この子とは仲良くできそうだと思い、舞衣は笑みを浮かべる。

夜更かし同士、少し喋りながら、孫六兼元の刀身を布で拭き、その御刀に映る自分自身の姿が酷く歪んで映っているのにも気付かず、純真そうな顔で笑っていた……。

 

 

 

 

「沙耶香ちゃん、見~つけた。」

話しは戻り、沙耶香を見つけた結芽は笑顔でそう答えていた。

「貴女は、親衛隊の?」

舞衣は彼女のことを思い出していた。確か、折神家親衛隊の四席であったろうか?何にせよ、舞衣は結芽を警戒していた。沙耶香に何をするか分からないからでもあるが、

「じゃあ、帰ろっか?高津のおばちゃんが待ってるよ。」

沙耶香は怯えた顔をして、数歩後ろに下がる。

「あれ?もしかして帰りたくない?そっか~困ったな~。…ね、どうすればいいと思う、お姉さんっ?」

舞衣はこの後、どうやってやり過ごすか考えていた。親衛隊相手に真正面から戦って勝てるとは思えないし、何より沙耶香が嫌そうだったので見捨てることができなかった。

「沙耶香ちゃん?」

「私が帰ればそれで済むから…。」

舞衣は沙耶香が自分から離れて行くことに気付き、沙耶香を呼び止めてしまう。

「沙耶香ちゃんはそれで良いの!?」

「!」

舞衣の声に反応し、沙耶香は止まってしまう。

「私、沙耶香ちゃんの事情とか全然知らないけど、本当に良いの?聞かせて、沙耶香ちゃんの気持ち。」

沙耶香は舞衣の言葉を受けて、小刻みに震える。だが、沙耶香は声は小鳥の囀りのように小さかったが、どうにか勇気を振り絞って、素直に本当の自分の気持ちを絞り出した。

「私…嫌……。」

その答えは、拒絶であった。

「嫌……だ……。」

一つ一つは小さかった。だが、確かな、そして強固な意志を沙耶香は絞り出す。

「……うん、分かった。」

舞衣もそれに応えるかのように、強く頷く。

「じゃあさ~、鬼ごっこしよっか?10数えるまで待っててあげる。それまでに私から逃げ切れたら、見なかったことに、知らなかったことにしてあげる。…いーっち。」

「沙耶香ちゃん!」

邪悪な笑顔のまま何事も無く数を数え始めた結芽に、舞衣は八幡力を使って沙耶香を連れて撤退を選択した。

(そうこなっくちゃ、そうじゃなきゃ私の凄いところ、見せられないじゃん。)

心の中で一人そう呟いた結芽は、その後も律儀に10数えるまで待っていた。

一方の舞衣はいつもなら当ても無く逃走するが、今回に限っては冷静に、周囲を見渡し、戦闘を想定し2対1の状況を上手く有利に持ち込める場所を探していた。できれば広い平野であれば良いと思っていた。しかし、

「!」

舞衣は自分が望む戦場に到達する前に結芽に見つかってしまい、数度の打ち合いをしながら後退したため、何処かの神社の境内が刀使同士の真剣勝負の場となってしまった。

「ちっ……。」

しかし、舞衣は口角を上げ笑っていた。心が躍っていた、いつもやっている荒魂を斬ることとは違う興奮が舞衣を更に活力を与える。

「もうお終い?まだまだこれからだよね!?」

口角が上がり笑っている舞衣を見て喜んだ結芽は、得意の平突きで躍りかかるが、沙耶香が払い退けたのでターゲットを沙耶香にする。

「わぁ~~、なんちゃって。」

しかし結芽は追撃を防ぐため、左足を狙った足払いと薙ぎ払いで間合いを空けると、沙耶香からの反撃の上段斬りを薙ぎで軌道を逸らし防御するだけでなく、流れるような薙ぎ払いと突きで沙耶香を退がらせると、沙耶香を追う結芽、そのあとは迅移を交じえた激しい剣戟に移る。

(どうして、……私。)

舞衣は上手く沙耶香を援護できないことに苛立ちを覚えていた。あれほど荒魂(怪物)を斬ってきたのに、まるで上達していないような感覚に陥っていた。

「やるねぇ~、沙耶香ちゃん。でもまだ、そんなもんじゃないよね?」

そう煽られ、沙耶香は目を妖しく輝かせるが、突然の舞衣の居合いに驚き中断する。

「びっくりした~。」

しかし、不意打ちの居合いですらも難なく躱されてしまう。

(お姉さんもちょっとはやる人みたい。けど、本当にちょっとだけね……。)

結芽はそう心の中で感想を零し、舞衣をターゲットに変更し、迅移で一気に間合いを詰め、舞衣の左胸を突く。

「まだまだ行くよっ!!」

そして、舞衣の腹を足蹴りして御刀を抜き、流れる様な剣戟で一気に舞衣を追い詰めていた。

「くぅっ!!」

可奈美との間に隔絶した才能の差、あれほど刀を振るっていても上達しないうえ可奈美との約束を守れそうにない自分自身、それら一つ一つが舞衣を焦らせ、苦悩させた。その証拠に、写しが徐々に剥がれていき、舞衣の顔も口角を上げ笑っていた顔から、鬼のような形相で無理に勝とうとしていた。

「だめ……やめて。」

沙耶香が悲痛な声を出すが、誰も聞いていないのか二人共怖い顔をしながら打ち合っているように沙耶香は見えた。

(痛い…痛いよ……。)

沙耶香は舞衣と結芽の戦いを悲痛な目と悲痛な思いで見ていた。そして、可奈美と舞衣がくれた、あの熱くて、温かい、空っぽの自分を満たしてくれるモノ。それはきっとどんなモノよりも大切で失ってはいけないモノだと解った。

(私は……これを……そして、舞衣にもっ!!)

だから、舞衣にはあの優しさを失って欲しくない。そして、空っぽだった少女は、

「くぅっ!」

舞衣の左腕は肘から斬り飛ばされ、写シが完全に解除される。そのことに舞衣は結芽を強く睨む。

「もうおしまいかな?だったらお休みの時間だよね!」

結芽は峰打ちしようとするが、突然舞衣が消え、空振りに終わる。

「んなっ!?」

何故、そんなことが起きたのか、それは舞衣の上に沙耶香が重なって倒れていることから、沙耶香が舞衣に横から飛びついたからであった。

「沙耶香ちゃん、どうしてそんな危ないことをっ!!」

舞衣は沙耶香が突然飛び出してきたことに危ないからという理由で、怒るが。

「……だって、舞衣が…怖い人になって欲しくないから……。」

「……えっ、えぇ?」

舞衣は驚いた、沙耶香の飛び出した理由がたったそれだけなことに。

「……そんなに怖かった?でも、なんで?」

「私は、貴女に、温かくて、熱くて、空っぽだった私をイッパイにしてくれた。……コレを、私は失いたくない、捨てたくない。」

沙耶香は泣きながら舞衣に自分の正直な気持ちを全てぶつけていた。

「……。」

舞衣は黙って聞いていた。

「だから、だから貴女もコレを失わないで、……捨てないでっ!!」

沙耶香は叫んだ。自分の初めて生まれた感情を――――、

気持ちを――――、

温かさを――――、

優しさを――――、

舞衣も失って欲しくないと叫んだ。沙耶香は目一杯力の限り叫んだ。

「……そっか、ゴメン、沙耶香ちゃん。……ありがとう。」

「うん……私もありがとう。」

舞衣は沙耶香をそっと抱き締め、温かく抱擁した。それを見ていた結芽は――――、

(ナニ……ナンナノ……。)

自分が入学式まで両親に愛情を注いで貰っていた過去、親衛隊の皆と楽しくやっていた今を思い出し、自分の中にドス黒い何かが入ってくるようだった。

(この人達は何をしているの……?)

戦闘のただ中で、沙耶香は舞衣の胸にうずくまっている所を見て、結芽は子供が親に甘えているように思えた。そのことに、

怒りか――-―、

悲しみか――――、

それとも別の何かの感情かは結芽は分からなかったが、イラついていた。

「何をしている、結芽っ。」

「鎌府の……高津学長?」

突然の雪那の登場に、舞衣と沙耶香は驚く。

「お前如きの出る幕ではないのよ、下がりなさい。」

「……ハイハイ、分っかりました~~。」

それだけ言うと、結芽は早々にこの場から離れようとする。そして、

(……うん。知ってるよ、知ってる、弱いから群れるんだ。はぁ~~、弱い人達を倒しても……、つまんないから帰ろ。無駄な時間を使っちゃったな。)

結芽は胸を押さえながら、そう思うことにした。弱いから群れると、天才刀使だとか誇大広告に釣られたから呆れているのだと。そう思いながら、結芽は舞衣達から離れて行った。

「沙耶香、ワガママはおしまいよ。さぁ鎌府に戻りなさい!」

「沙耶香ちゃん。」

「うん。」

沙耶香は雪那と舞衣の両方に言われ、自分の足で立つ。

「そうよ沙耶香。お前は親衛隊共のような欠陥品とは違う完璧な刀使にな…「私は…、私は……、あなたが望む刀使にはなれない…ううん…なりたくないです。」え…何を…言ってるの?」

沙耶香は雪那を真正面から見て、強く言う。自分の思いを正直に……。

「空っぽのままでいいと思った。でも…私をいっぱいにしてくれるこの熱……温かさを失くしたくない!……だから、この熱をくれた人ともう一度戦いたい。一緒に居たい。」 

「……そう、それで?」

しかし、返って来た返答は冷たい物であった。

「……そう、貴女なの?沙耶香をこうしてくれたのは?」

雪那は舞衣を睨む。

「高津学長、今の言葉は酷過ぎます!」

舞衣は沙耶香の手を握り、雪那に強く言うが、

「どこが?」

それしか返さなかった。

「貴女は……、何処まで、沙耶香ちゃんを何だと思っているんですか!?」

「道具だ。それ以上でも、それ以下でもない。」

「私は、…人を物のように扱うことしかできない貴女を私は認めません。私がいる限り、沙耶香ちゃんをいいようにさせたりはしない!」

「ではお前は何故沙耶香を助けた?」

「私は沙耶香ちゃんは妹みたいで、守らなきゃいけないからです。」

「本当か?沙耶香の力を道具のように利用しようとしただけではないのか?」

かつて、鎌府の学生が沙耶香の力を利用して、荒魂の撃破数を稼いだことを思い出していた。そのことが判明して、沙耶香の面倒をよく見るようになってから『高津学長からえこひいきされている。』などという陰口が言われていたが、雪那としては苦痛ではなかった。

「そんなことは、ありません!ただ、私は沙耶香ちゃんに助けて貰えたから、今度は私が沙耶香ちゃんを守るだけです!」

「はぁ~~?お前にそんなことができるのか?ノロを注入され、ある意味では荒魂に近い沙耶香のことを一生助けてやれるのか!?」

「えっ?」

舞衣は雪那が何を言っているのか分からなかった。

「私は沙耶香を完璧な刀使にするべく、色々なことを実行し、教えていったわ。だからこそ、沙耶香に更にノロを注入しようとした。」

「貴女は……何故そんなことを!」

「……何故?沙耶香を完璧な刀使にするためだけだ。」

「なっ、……何を言っているんですか?」

「刀使になった者はいずれ老い、病、肉体的損傷、才能の優劣、全ての苦悩に苛まれる。もし、このノロを人体に注入し力とする研究が成功し、全ての苦悩から解放されるとどうなる?そうなれば、鎌府のこの悪辣な研究は人類を救う偉大な研究に変わっていく。」

舞衣は絶句していた。自らの悪辣な研究を偉大な研究に変えるために、沙耶香を犠牲にするということに。

「折神家や柊家のように素質や宿命を連綿と受け継がれ、いつしか親の想像を超える力へと到達してくれる。それと同じく私が行った非道な研究もその責任と宿命は連綿と受け継がれていき、偉大な研究へと変えてくれる。だが、ある意味この非道な研究の親として、犠牲になった者が惨い結末を迎えただけなどと、…親としては、そんな悲劇の結末を望んでいない!!」

「……ただ、そのために沙耶香ちゃんを犠牲にして、切り捨てるんですか!?」

「もしも、私や沙耶香が果たせなくとも、鎌府が私の跡を引き継ぎ、悲願を叶えてくれるだろう。…そして、いずれこの研究が成功すれば、荒魂による事故は激減し、殉職する刀使の数も減ることになる。そうなれば、沙耶香のような刀使が新しい刀使としての姿となる……。そして鎌府の子供達、いや私達の末裔達は幸せになり、勝利と敗北の関係も無く私達の大きな財産となるだろう。そのためなら、私はこの研究の踏み台、道具になっても構わない。……私はそれを誇りに思う。」

このときの雪那は死んでいるような、恍惚とした笑みでそれを平然と答える。これで、黒い袋(死体袋)の中にいた実験に使われた“子供達”に少しでも報いることができればと思いながら。

「……貴女は、狂っています。そんなことが許されるハズがない!!」

「……語り聞かせるだけ無駄な話だったな。特に美濃関学院内でも上位の実力者で、温室育ちのお嬢様にはな!!」

「貴女のような人が何を!!」

舞衣と雪那の言い争いは長く続くと思われたが、沙耶香が手で舞衣を制し、雪那に一言だけ伝える。

「……今まで、お世話になりました。」

「そう、なら何処へでも行きなさい。……でもこの子に柳瀬グループのお嬢様に捨てられたときは此方に戻ってらっしゃい。」

「私は、そんな事しません、貴女とは違います!!」

舞衣は大きな声で雪那にそう力強く宣言する。それに続き沙耶香も強く雪那を見据える。

「……わかった、もういい、貴女達に時間を与えるから、納得がいくまで足掻くが良い。忘れるな、お前達が求めるものは此処には無い、何処を探したって見つかるはずがない。それを確かめてきなさいっ!希望を失い、捨てたときにお前達は此処に必ず戻って来る。私はそれを何時でも待つわ。」

「私は決して貴女のように諦めない。自分から逃げたり、沙耶香ちゃんを捨てたりしないっ!!」

「私も舞衣と一緒。この温かい気持ちを捨てない!!」

舞衣と沙耶香は雪那を強く見て、決別の意を叫び、雪那から離れて行った。

「それは楽しみだ。」

雪那の呟きに気付かず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ノーチラス号内にて、姫和は累と少し話していたことを思い出していた。

『姫和ちゃん、私はこうも思うんだけど。……篝さんの本当の望みは姫和ちゃんが無事であれば良いと思っていたんじゃないかな?だから、柊の姓じゃなく十条の姓にしたんだと思うの、だから……。』

勝手な事を言うなと、人が勝手に母の無念を解釈するなと、そして私を理解してくれる者はいないと姫和は強く思ってしまった。

『ありがとうございます。けど、できることからやろうと思います。』

それだけ言って、さっさと姫和は累から離れ、海の中をただぼんやりと見ていたら、優と出合い、何気なく聞いてみた。

「どうした?そんなところで。」

「んっ、海の中が見たいから。」

「そうか、……済まない。嫌じゃなかったか?女物の服を着せられて。」

姫和はトーマスが言っていたシリアルキラーの特徴の一つ、幼少期に女装をさせられたという言葉を思い出しながら、優に聞いてみた。

「そんなことないよ。刀使になったみたいで楽しかった。」

「!」

その発言に、姫和は寒気を感じていた。まるで、トーマスの言っていた通りになっているようだった。

「ねえ?どうしたの姫和おねーちゃん?パーティーのときも元気無さそうだったけど。」

「いや、その……。優は辛くないのか?」

「何で?」

優は不思議そうに視線を泳がす姫和を見つめる。

「……いや、何でもない。」

しかし、姫和は聞けなかった。『荒魂は荒魂だ。』と言ったことに傷付いてないのかと怖くて訊けなかった。

「ねえ、姫和おねーちゃん自分のやってきた事に間違いが有ったと思っている?ならそれは違うよ、何も間違っていない。」

「どうして、そう言える!お前も……。」

荒魂みたいな者なんだぞ、と言えなかった姫和は黙るしかなかった。

「だって、ようやく分かったんだ。昔、可奈ねーちゃんも僕のことを化け物のように見る理由が、……姫和おねーちゃんの言っている通りだよ、荒魂は荒魂なんだって。だから、そのことに気付かせてくれてありがとう、姫和おねーちゃん。」

その言葉を聞き、姫和は絶句していた。何でそんなことを言うんだと。

「姫和おねーちゃんは凄いよ、色んなことを知っているし、可奈ねーちゃんに決着を挑まれるくらいだもん。それに、お母さんのために今まで一人で頑張って来たんだから、姫和おねーちゃんの言っている事は何一つ間違っていないよ。……だから、姫和おねーちゃんのことを何も知らない癖に悪く言う奴と邪魔する奴は一匹残らず僕がやっつけてあげる。だから、僕は可奈ねーちゃんと同じくらい姫和おねーちゃんのことが大好きだし、会えて嬉しかったし、少しでも助けになりたい。」

優は屈託無く、無垢で、何の疑いも無く姫和のことを信頼していると答えた。洗脳の影響か、姫和には分からなかった。

「……バカ。お前は荒魂なんだろう?なら、私が斬ってしまうのに、死ぬかも知れないのに怖くないのか?」

姫和は膝を曲げ、優と同じ目線で話す。しかし、

「う~ん、確かに死ぬのは怖いけど、……けど、姫和おねーちゃんがそれだけで強い刀使になれるなら斬られても良いかな。」

それを聞いた姫和は小鳥のように鳴き叫びたかった。それは間違っていると。

「……バカッ!!なんでそんなことを!」

けど、姫和は最後まで言えなかった。亡き母の思いを自ら踏み躙ることなど出来なかった。

「だって姫和おねーちゃんが僕を斬ったら強い刀使になれるんだよね?だったら、可奈ねーちゃんを一人にしないであげて、そうすれば何時か可奈ねーちゃんが強い刀使になって、僕を助けてくれたら、それで充分だよ。」

「何を言っているんだ?そんなこと……。」

「昔、可奈ねーちゃんと約束したんだ。強い刀使になったら僕を助けてくれるって、よく分からないけど、可奈ねーちゃんが強くなったら僕にとっても良い事なんだから。可笑しな話じゃないでしょ。それに、それだけで可奈ねーちゃんが喜ぶならそれで良いと思うんだ。」

優は自らの決意を語ると、姫和を純粋な瞳で見つめていた。姫和はこのとき思った。母の思いを捨てられずに、その考えは間違っていると言えず、教え諭すことが出来ない自分を呪った。

「……ああ、そうだな、…でもまだダメだ、お前は荒魂なんかじゃない。もし、そのときになったら私が斬ってやる。だから、それまでずっと傍に居てくれ、ずっと一緒に居てくれ、そしてチョコミントを一緒に食べよう、約束だ。」

「良いよ、僕はあの味が好きになったから。」

姫和は履行出来そうに無い約束をし、その間にこの子を救うことが出来たらと思っていた。そうしたら、何時か三人で又何処かへ行けると思ったから。

そして、姫和は泣いている自分の顔を見せないように優に抱きつく。

「えっと?姫和おねーちゃんどうしたの?」

「良いだろう少しくらい、……私だって色んな事は有る。だから、このままで甘えさせてくれ……。」

「……変なの。」

「変じゃない。辛くなった人から慰めてもらうものなんだ。……だから、間違っていない。」

ほとんど涙声で姫和はそう答え、顔を見せないように抱擁していた。

この子と可奈美だけがこんな風に私を認めてくれる。純粋に信じてくれている。だから、裏切りたくない。中に居る荒魂から解放して、必ず救う。普通の男の子にすると姫和は心に固く誓っていた。

(だから、ずっと、ずっと一緒に居させてくれ、……神様。)




良し、これで姫和とショタ主人公によるおねショタを書けた、満足。
CIA高官「YES!目論見通りぃっ!!」
トーマス「何故か、寒気が?」

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