この話に出てくるタギツヒメは2期のタギツヒメ(日高里菜の方)です。
刀剣類管理局内本部の一室――――。
ソフィア、穂積、静と他5名は、親衛隊の真希と夜見両名の負傷により人員に欠員が出たため、局長紫の自衛戦力の増強という理由で出向し、本部内に居た。
「三人で本部に行くことになるなんて、珍しいですね。」
いつもは自分達の所属する
「穂積と静には、…本部内を見て貰う必要があったからな。……今後の…ために。」
「今後のこと……ですか。」
「そうだ、我々は…教訓を与える…ために行く。」
ソフィアは、筋トレしながらの意味深な説明にも、穂積は意図を理解したのか、頷いていた。
「……まあ、本部って行ったことないですし、良いですけど。」
そう言って自分を納得させようとした静は、興味が無いがソフィア達と本部への出向に同行するのであった。
「ところで腕立て伏せをやっている理由は何です?」
そう言った静は、ソフィアの背中に乗って腕立て伏せを手伝い。穂積はストップウォッチを持って、腕立て伏せを何分で何回したかを計測していた。
「やってみるか、……結構引き締まるぞ?」
「いや、流石に隊長みたいにゴリラみたいになりたくないんで……。」
ソフィアの身体はしなやかだが、筋骨隆々である。
「穂積、私達が去った…あとどうした……。」
「御安心を、昔から所属し信頼できる者を綾小路内に数名残らせ、何か有れば連絡するように伝えておきました。」
「それで良い。」
これで、自分達が行ったあとの綾小路内に残っている
「ねえ、おねーさん達、ソフィアっていうおねーさん知らない?」
こんなときに誰だろうと思った静は声のした方へと見る。そこには親衛隊の第四席の燕 結芽が居た。
「あっ、ああ親衛隊第四席の結芽さんじゃありませんか、一体、何の御用でしょうか?」
静は親衛隊の一員燕 結芽から、突然声をかけられた事に驚く。そして、内心はストップウォッチと計測から目を離さない穂積と黙々と腕立てをしているソフィア等が結芽の事を無視するどころか応対すらしないことに心底呆れていた。理由は、心証を悪くする行動は控えて欲しいからだが。
「……ソフィアっていうおねーさんを探しているんだけど?」
しかし、助かったというべきか、二人にことなど気にせずに静に質問を続けてくれた。
「あぁ、ハイ……私が乗っかっているこの人です。」
「……この人?」
「ハイ、そうです。」
「……まあ、良いや。おねーさん、私より強いって噂が本当なら私と試合してくれない?」
タイミング良く穂積が腕立て伏せの終了の合図を出し、静はホッとするとソフィアから降りると、ソフィアは立ち上がり結芽と対面する形となっていた。
(でっかい……。)
「理由を聞かせてもらっても?」
結芽は真希おねーさんより身長が高いのかもと、そんな感想を抱いていたら、ソフィアに話しかけられ、少し驚くがいつも通りに喋っていた。
「して欲しい理由は、…その噂が本当で私がおねーさんを倒したいから。」
「……分かりました。ですが、朝のトレーニングで疲れているので、夕方頃でよろしいでしょうか?」
「良いよ、楽しみにしているから。」
結芽はソフィアと試合をする約束をすると、部屋から退室して行った。
「珍しいですね。隊長がそんな約束をするだなんて。」
「……理由を聞きたいか?」
「はい。」
穂積は不思議に思った。普段からソフィアは御前試合のことを棒ふり選手権等と侮蔑して、出場を辞退するぐらい試合が嫌いなのに、何故結芽とは試合をしようとするのか、疑問に思っていた。
「……理由はだな。そうだな、何故アレに出撃許可があまり出ないか分かるか?」
ソフィアは陰で結芽のことをアレ呼ばわりし、穂積に問い掛けていた。
「……なるほど、治らない物ですね。」
「そうだ。」
「どうやってするんです?」
いつもなら、荒魂との戦闘で死亡したように見せかけたり、犯罪を犯すほど追い詰め自暴自棄となったところを合法的(反撃してきた等。)に殺したりすることといったことをやっていたが、最近は出来ないのでソフィアにどうするのか尋ねていた。
「まあ、後々分かる。ところで穂積、どうだった?」
「2分で80回です。」
「……そんなものか。」
ソフィアは憮然とした顔で言っていた。
「舞衣ちゃーーーーん!!」
舞衣と沙耶香は、柳瀬家の執事柴田の送迎と江麻学長の手引きにより舞草の隠れ里に到着し、可奈美達と合流する。
「えっとね!舞衣ちゃん私えとえと…とにかく私は舞衣ちゃんに話したいこといっぱいあるんだ~!…あっ、沙耶香ちゃんも、聞いた通りだ!本当に沙耶香ちゃんも来てくれた~!」
可奈美は舞衣と沙耶香の二人が来てくれたこと、親友と友人が来てくれたことに心の底から喜んでいたのか、舞衣に飛び掛り、沙耶香を熱烈な握手で歓迎していた。
「…………。」
「……えっと。」
しかし、優は沙耶香をただ見つめていた。そのことに不思議がる沙耶香だったが、
「あっ、優ちゃん紹介するね。友達になった沙耶香ちゃんです。」
「そうなんだ。…こんにちは。」
「あっ、えっと……、う、うん。」
可奈美は何かを感じ取ったのか、とっさに沙耶香のことを友人と紹介し、沙耶香は友達と言われたことに少し照れながらぎこちなく優に挨拶を返してしまった。
「ウェルカ~~ム!舞草は二人を大歓迎しますねー!」
御刀を持っていないエレンとそれに続いて薫、姫和が顔を見せるが、薫の頭の上には、ねねが居るので。
「ねね~~~。」
舞衣の胸元へとダイブし、至福の時を得ようとする。
「少しは自重しろ、このエロ魂。」
しかし、それは叶わず薫にしっぽを掴まれ阻止され、しょぼくれる。
「あっ……十条さん。」
舞衣は姫和に気付くが、理由も聞かずに斬りかかったことを考えれば、どういう風に話しかけるか悩むが、一台の高級車が近付いて来た。そうして、その車から一人の女性、意外な人物が現れた。
「ようこそ舞草へ、若き刀使達。私は、折神 朱音と申します。」
折神家当主で、刀剣類管理局の局長でもあり、姫和の因縁の相手折神 紫の妹折神 朱音であった。
その後、可奈美達は舞草の拠点にて、朱音が語る二十年前の相模湾代災厄の真実を静かに聞いていた。
曰く、大荒魂のタギツヒメを鎮め、後の記録からその存在を抹消された柊篝と藤原美奈都――――。
曰く、藤原 美奈都と柊 篝には、衛藤 可奈美と十条 姫和という娘が居たこと――――。
曰く、藤原 美奈都は当時の折神 紫よりも飛び抜けて強かったこと――――。
そして、二十年前の大荒魂はあの当時よりも強大になっているとのこと朱音は語っていた。
「まさかその大荒魂が可奈美ちゃんが見たって言う…。」
「そう、タギツヒメ。…私の姉だった、折神紫です。」
その後は、美奈都と篝、紫も無事に帰還。政府と刀剣類管理局は、高い知能を有する荒魂の存在は様々な混乱を招くと判断され、奥津宮にいたタギツヒメの存在を隠蔽された。
そして、隠蔽の決定を下した紫は本来8名いたはずの特務隊から柊 篝と藤原 美奈都の名は外し、タギツヒメの鎮め方を語らず、大災厄の2年後折神家の当主の座に就いたあと、篝と美奈都以外の特務隊五名は伍箇伝の各学長に就任し。篝と美奈都の二人は命こそ助かったが、刀使として戻ることもなく、穏やかな家庭を築いていったこと。
ほどなくして、英雄として迎えられた紫の統制の下、刀剣類管理局特別祭祀機動隊の組織はより強化され、荒魂による被害を最小限に抑えると、世論の評価を上げ、他国との協力により次々と新技術が開発されていくといった歴史を語っていた。
「しかし、誰も20年前に置き忘れてきたものに気付く事はありませんでした。」
そして、朱音は美奈都の訃報を報せた篝の反応と言葉を聞き、大荒魂討伐の真実を調べる決心をし、大災厄で紫が用いた方法、折神家の中でも一部の者のみに伝えられてきた鎮めの儀を古い文献を手掛かりに突き止めた。
「それは、柊篝の命と引き換えにタギツヒメを幽世に引きずり込むというものだったのです。」
それを聞き、可奈美と姫和は暗い表情になる。過酷な宿命を知ったからか。
「命と引き換えに、隠世へ……?」
「そんな事が可能なのか?」
舞衣と薫は疑問に思う。そのため、紗南が補足するように迅移の説明をし、可奈美達に問い掛ける。
「可能だ。刀使は御刀の力を使い幽世の様々な層の力を使うが、稀に幽世の深淵にまで到達する力を持つ者もいる。篝先輩の迅移がそれだ、迅移は幽世の層の時間の流れの違いを利用し加速する技だ。深く潜れば潜るほど加速する。だが、理論的な限界値まで突き詰めたら、どうなると思う?」
「一瞬が永遠に近づき無限になる。戻って来られなくなる。」
沙耶香が紗南の問いに答える。
「そうだ、篝先輩は無限の階層まで到達できる能力の持ち主だった。御刀で相手を刺し貫き理論上最高速での迅移を行う。そして、相手もろとも幽世へ引きずり込む。」
紗南の説明にエレンと薫が「ナント……。」や「心中技ってことか……。」と言って、驚愕の声を上げていた。
「篝先輩は、そんな役目を担わされていた。最初から命を捧げて荒魂を鎮める覚悟だったんだ……。」
「ですが、篝さんは生還されています。それは、美奈都さんがぎりぎりで篝さんを救ったからです。」
「それでも、二人は文字通り命を削ったのだと思う。刀使の力を失いその数年後に命まで……。」
朱音と紗南の話を聞いた舞衣は、それが原因で可奈美の母美奈都は死んだのだと思うと、辛い気持ちを抱いてしまった。
「おかしいデスネ…二人がタギツヒメを幽世へ追いやったなら折神紫は何者なのデス?」
「じゃあ、聞いてみたら良いんじゃない?」
エレンの疑問に優は妙なことを言ってきた。
「……ハイ?」
「だから、タギツヒメっていう名前知ってるよ。僕の中に居る。」
「えっ、そうなんデスカ……?」
エレンはリアクションに困ることを言われ、どうしたものかと思うが。
「だから、ちょっと代わってもらう。」
優はそう言うと、いきなり倒れる。
「ええええええっ!!ちょっと優ちゃん!?」
可奈美の声を聞いたためか、優はすっくと立ち上がると、
「……我は、タギツヒメ。」
そんなことを言い始めた。雰囲気が変わったこととその迫力感から、優の中に居る荒魂と変わったのだろうと気付き、朱音はタギツヒメに何か聞き出せればと思い、訊いてみることにした。
「はっ、拝顔を賜り光栄です。タギツヒメ。」
「ふん、発言を許すぞ。それなりの対価はあるだろうな?…………えーっと、その、紫の妹。」
胸を張って答える優、もといタギツヒメ。しかし、この発言により、先程緊張していた朱音は、心の中で盛大にズッコけていた。
「……私は、折神 朱音と申します。早速ですがお尋ねしたいことが有るのですが、宜しいですか?」
「ふっ、ふん、誰に向かって言っている?我は神ぞ、聞く内容もよく吟味して話せ。つまらん話は許さんぞ。」
9歳児相手に少し頭を下げている朱音というシュールな光景に可奈美達は何とも言えなかったが、しかし、相手は二十年前の大荒魂である。朱音も対応を間違えないよう、考えてから話そうとした。そして、長く沈黙していた朱音に何かを思ったのか、タギツヒメは急にソワソワしだし朱音をチラチラ見ては、話し掛けて欲しそうにしていた。
そんな行動をするタギツヒメを見た者全ては、『この荒魂、何か残念っぽい。』と思ってしまった。
「……それでは、率直にお伺いします。あなたは我々に仇名す者でしょうか?」
朱音は二十年前の大荒魂と比べ、何とも言えない気分になったが、努めて冷静に質問を続けていた。
「……おぉ、やっと何か尋ねる気になったか!…そうだな、我が生涯の伴侶が敵と認識しなければ何もせぬぞ?」
今、何と言っただろうか?生涯の伴侶?誰のことだろうかと思った朱音は。
「……再度お伺いします。生涯の伴侶とは誰のことですか?」
恐る恐る朱音はタギツヒメに尋ねるが、当のタギツヒメは胸に手を当て答える。
「衛藤 優、この者だ。それでか知らんが我はいらない子扱いされて分離させられてしまってな……。」
物哀しい顔になったタギツヒメを見て、朱音はこのタギツヒメも辛いことが遭ったのだろうと思ったが。
「まあ、いつも陰気な後ろ向きの辛気臭いのと、何でも型に嵌めようとする面倒なのと別れることができたし、嫌がらせで鬼丸国綱を盗んで逃げたことができ、伴侶と一緒に暮らせることに何の不満は無いぞ。というより毎日相手してもらって我は嬉しいぞ。今思えば、我が伴侶が3歳のときに一目惚れして良かったと思う。」
「…………そ、そうですか…………。」
タギツヒメの物凄い笑顔の告白にエレンと沙耶香以外の可奈美達も若干引いていたが、特に薫は心の中でねねを見てこう思った。
(……荒魂って、巨乳好きとか、ショタコン…いや、変質者しか居ないのか?)
薫は『荒魂であっても考えて斬る。』ということを思い出し、何とも言えない気持ちになった。しかし、そんな雰囲気に耐えられなかったのかタギツヒメが赤い顔をしてこう言い放った。
「なっ、何か悪いか!?まだ3歳の子供が好きになって何か悪いかっ!他の人間には無いあの純粋無垢さが良かっただけだ!バーカ!アーホ!!うーつけー!!」
手をブンブン振りながら言うタギツヒメのその行動によって、自身の威厳やらなんやらは今日無くなったことにタギツヒメは気付いていなかった。
「だとシタラ、ヒメヒメは優のことが好きなんデスネ?可愛らしいデース。」
何となく親近感が湧いたエレンが陽気にそんなこと聞き、フレンドリーに接しようとするが。
「黙れホルスタイン。あと、その無駄な脂肪の塊でお前の頭が悪く見える。」
「ナンデそんなに辛辣なこと言うんデーースッ!!」
タギツヒメはエレンを思いっきり睨みつけると、かなり辛辣なことを言っていた。そのことにエレンはショックを受け、薫に慰めてもらった。
エレンは気付いていなかったが、薫と姫和は女の勘でタギツヒメは
「しかし、本当にこいつはタギツヒメか?そうとは思えんが?」
姫和は率直に感じた感想を述べる。
「うるさい貧乳、私の伴侶と少しくらい話して仲良くなったくらいで勘違いするな。あれはどう考えても友愛だ。」
「ハァッ!?貧乳だと、お前も絶壁だろう!!」
「なんだとっ!!」
こうして、口喧嘩の
「お前が言うな!エターナル胸ペッタン!!」
姫和はそれを聞き、タギツヒメを殴ろうとしたが、身体は優のままなので殴れなかった。そのため、暴言でやり返すしかなかった。
「エターナルゥゥッ……!そういうお前はヒメヒメ・ザ・ナイペッタンじゃないかっ!!」
タギツヒメも殴ろうとしたが、身体が優のため傷付けたくなかったので、殴ることが出来なかった。そのため、姫和と同じことをしていた。
「なにを言う、そういう貴様は貧相だろうがっ!!」
「ひんそうっ……!ホライゾン胸が言うなっ!!」
「なんだとっ!薄い胸がっ!!」
「お前に言われたくないっ!ぺったん女っ!!」
「貧乳っ!!」
「絶壁っ!!」
姫和とタギツヒメの口喧嘩は長く続き、段々と貧相な言葉しか出なくなっていくと共に、最終的に冷静になって、両者が自分で言っていた言葉を思い出しては自己嫌悪に陥るまで、このしょうもない戦いは続いていた。
そんな大荒魂のタギツヒメと“胸の大きさ”で喧嘩をしている姫和の姿を見て、朱音は天国にいるであろう篝に言っていた。
(篝さん、……貴女の娘さんは、立派に育ちましたよ……。)
何故か、朱音の目には涙が頬を伝っていた。
タギツヒメ「うぅぅ……また、悪態を、虚勢を張ってしまった。どうしよう。あとで何と言えば良いのか……。」(泣)
ここのタギツヒメの本心はこんな感じ。