【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

25 / 167
23話を投稿させていただきます。
今回も特に変哲のない話です……。早く、早く戦闘が書きたい。



戦闘準備

刀剣類管理局本部――――。

夜空と星が輝く空の下で、ソフィアは穂積と何名かの部下の刀使を傍に置き、誰かと電話をしていた。

「そうか、あの子は、あの“刀使”の弟か……。」

電話越しの相手の話を聞き、ソフィアはあからさまに失望したかのような声を上げると、電話越しの相手に失望したかどうか問われるが、そんなことはないと答えていた。

「いいや、俄然興味を抱かせる。重要なのは“戦う姿”だ。」

ソフィアは舞草に居る内通者を通じて山中の戦いで出会った、あの鎌府の制服を着ていた少女、もとい優のことを訊いていた。

特にソフィアは見ることができず、気になっていた親衛隊第三席の夜見を破った戦いはどんなものであったかを内通者に尋ねていた。

「……味方の死体を盾にするとは、それは私でも思いつかなかった。やはり、あの子は素晴らしい。“あの刀使”には勿体無いほどにな。」

“あの刀使”とは可奈美のことであり、どうすれば優をこちら側に引き込めるかを考えていた。やはり、あの子はこちら側であるべきだと……。

ソフィアは“悪逆を尽くした自分”ですら思いつかない戦い方をするあの子はこちら側に居るべきだと強く思い始める。そして、知らない所でソフィアの好感度を上げ続けていることに優は今も気付いていない。

「いいや、こちらこそ。」

親衛隊と刀剣類管理局本部の内部といった有益な情報をありがとう、と電話越しの相手に言われたソフィアはこちらも有益な情報を貰えた(内容;衛藤 優の情報のみ。)ことに感謝の意を述べると、電話を切った。

「……何が気に入ったんです?」

「何が?」

「燕さんをああいう風にして、その子を気に入る理由が解りませんので。」

嬲り殺し同然のことを笑いながらする。さっきまで味方だった者の死体を盾にする。何食わぬ顔で夜見に重傷を負わせる。そんな人の皮を被った鬼のような少年を気に入る理由が穂積は分からず疑問を口にした。

普通に考えれば、燕 結芽は刀使であるが故か、そんな外道染みた戦い方はせず正々堂々と戦うところはあるうえ、まだ12歳であるにも関わらず親衛隊の中ではトップの実力を持つ、ノロが体内に入っているとはいえ、それは優にも同じことが言えるので論外とすれば、残忍な戦い方とノロまみれの少年を味方に加え社会的なダメージを負うよりも、品性も実力も刀使として高い才能がある結芽を味方につける方がまだ良い(演技であったが、ソフィアが結芽と楽しく談笑できたことを鑑みれば可能であると思える。)と思えてならない穂積であった。

「……手負いの獣は苦しませずに処分すべきだろう?それに、親衛隊を見てどう思う?」

穂積は、そういった理論で動いていることを理解しようとしたところ、返す刀で急にソフィアに問い掛けられ、言葉が詰まる。

「まるで、苦楽を共にし、親友や家族といった関係を築き上げていった善人のように見えるだろう?だが、友情、親愛、和解。……そんなものは全て紛い物だ。少しすれ違っただけで互いに刀を取り、斬り合う。しかし、もしもその中に私が見つけられなかった“狼”がいたら、そんな紛い物を捨てさせてやり、鎖を外して解き放つべきではないか?」

友情、親愛、和解。そんな思想は紛い物であり、鎖でしかないと断言したソフィアは本性を剥き出しにして答えた。

「かつて、刀使は誇り高く何者にも屈しなかった。……だが、今や戦い方も忘れ、権力を前に簡単に跪く。」

ソフィアは刀使に対しての持論を侮蔑の感情を曝け出して語り、

「最も悲惨なのは荒魂だろう。……この獰猛な獣達は一箇所に閉じ込められ、生命の自然な行いたる争いまでをも禁じた。」

そして、貯蔵庫に一箇所に集められた荒魂に対しての持論を語ると、

「皆が皆、臆病過ぎるだけなのだ。紛い物を拭い去り、誰かが背を押し、本性を自覚させ、生まれ変わらせてやらねばなるまい。」

腕を振り上げて、感情的に、ソフィアは自らが抱く思想を熱く語っていた。

「それで、それをするにはどうするんです?」

しかし、穂積はまるで興味がないように冷静に問い掛けていた。

「簡単だ。……火種を、大儀を与えてやればよい。舞草には折神 朱音、折神家には燕 結芽がいる。」

穂積の問いにソフィアは意味深に答えるだけに留まった。

(狼の時代が訪れる。……そのときは、“羊”を“狼”にしてやろう。)

この先、どうなるかも分からず……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可奈美達が舞草の先輩の集団戦の稽古をつけて貰い、フリードマンが可奈美達にS装備と折神 紫についての考察を語っていた頃――――。

とある一室にて、孝子と聡美、トーマスとロークが居た。

「…………つまり、紫様にも龍眼が有るってことですか?」

「ああ、優に訊いたから間違いない。」

ここに集まる前にロークは優に龍眼の弱点と能力を訊いて、集団戦の訓練に役立てればと思い、孝子や聡美にも分かるように説明していたところであった。

「紫、もといタギツヒメは躊躇することなく龍眼を使うだろう。そうなりゃ、一対一だと勝ち目は無いな。」

「……弱点は視る範囲を広げて脳を処理落ちさせることか……、やはり今やっている集団戦の稽古は重要だ。孝子、集団戦はどんな感じだ?」

トーマスは対紫戦では、一騎討ちは厳禁だということを言い、ロークは孝子に可奈美達の集団戦の成績はどうかと尋ねていた。

「一人一人はまずまずですが、集団戦はまだまだです。」

「ですけど、舞衣という子は明眼が使えますので、自信をもって貰えれば優秀な指揮官となり、集団戦も良くなると思います。」

孝子の集団戦はまだ一線級ではないことを伝え、聡美は舞衣の評価と将来について発言し緊張した場を和らげようとした。……つまりは、まだ時間は要るということだろう。ロークはそう理解した。

「……できれば、少々無茶でも良いから、早く一線級にしてほしい。行動を起こすなら、親衛隊の二人が負傷して、防備が薄くなっている今がチャンスだ。」

ロークはエレンという舞草の中でも一線級の実力を持つ刀使が御刀を失った状態のうえ、こちらの兵士も死者が出ているので、親衛隊が四人体制に戻れば、紫に近付ける難度が劇的に上がる。そのため、ロークは焦ってこのような発言をしていた。

「……それは止めた方が良いでしょう。たぶん、舞衣は今自信が無い状態なので、あまり無茶をすると精神がやられると思います。」

しかし、舞衣は可奈美に何らかのコンプレックスを抱いていることに気付いていた孝子はそれに異を唱えていた。

「めんどくせぇな、そんなもん矯正させれば良いだろう。」

「矯正して、折角集団戦のことを教え、明眼と透覚を併せ持つ数少ない刀使を潰して良いならそうしますが。もし、そうなったときトーマスさんは責任を取って、可奈美達に説明してくれますね?」

トーマスは軍隊方式で物を考えて言う。すると聡美はトーマスの言葉通りの矯正をして、矯正に失敗したときの全ての責任をトーマスが持ち、可奈美達の反発と非難を受ける覚悟があるならと言って、微笑んでいるが、目が笑っていない顔で強く抗議していた。

「……という訳です。こちらとしては矯正とスパルタ方式にする気はありません。」

「それにトーマス、舞衣は柳瀬グループのご令嬢だ。精神病になって帰らせたら舞草と刀使のイメージが悪いものになっちまう。」

孝子は集団戦の訓練を監督する立場として発言をしたあとに続いて、ロークも女子中学生に矯正したくないので、それらしい理由を言って孝子達を援護する形の発言をする。

完全に三対一となったトーマスは両手を上げて降参の意思表示をする。

「……しかし、親衛隊もどうしましょうか?真希と夜見という二名が居ないですが、親衛隊最強の結芽、前回と前々回の大会で準優勝をした実力を持つ寿々花の二名が居ます。それに綾小路に潜伏している草からの情報によると、綾小路と鎌府からの増援が居るという報告を聞いています。……これらの防備を突破しなければならないのは現状では至難だと思いますが……。」

集団戦はこちらが訓練の監督をすると決まったと思った孝子が親衛隊達と戦闘になった際の対抗策の話に持って行こうとする。

「……それなら考えてある。……綾小路と鎌府からの増援は舞草の刀使に任せよう。」

トーマスは綾小路と鎌府からの増援は舞草の刀使でも充分対処できると言い、

「寿々花と真希、指揮と前線にも立てるこいつらが一番厄介だが、子供に甘いところがあるのを突いて、優を囮にし孝子達が側面か背後で攻撃。」

9歳の子供を使った囮作戦で背後と側面で奇襲して倒すと述べ、

「結芽は功名に逸るところがあるから、突出させて本隊と分離、連携の取れた三名に任せ、一人が正面に立ち向かって、写シを解除してやられたふりをしたあと残りの二人は背後から結芽を奇襲し、結芽が背後の二人に気を取られたところを正面の奴が不意討ちする。」

正面に当たった人はわざとやられ、油断したところを残りの二名が背後から奇襲し、背後に意識が集中したところをやられたふりをした人が不意討ちをすると答え、

「夜見は無念無想を使える沙耶香と舞衣が適任だろう。」

夜見は親衛隊の中では実力が高くないが、ノロの強化が厄介なので、足の速く実力も高い沙耶香に当たらせ、小型化したノロの集団の攻撃を翻弄してもらい、舞衣が仕留める

「紫は衆目の目があれば大荒魂の力は使わないだろうから、一番連携が取れていて実力もある姫和と可奈美、役割が空いた者が援護に向かい当たらせる。……それが、一番だろう。」

龍眼の弱点である集団戦に脆いという弱点を考慮し、実力と連携が一番取れている可奈美と姫和に当たらせ、それでも倒せない場合は手の空いた者も動員して数の暴力で押し切ろうとしていた。

だが、恥も外聞もなく後ろからの不意討ちや9歳の子供を使った囮作戦などといった外道な作戦をトーマスは孝子達に言ってのけていた。ロークはそんなことを女子中高生にやらせることに渋い顔をしていたが。

「……まあ、今の私達では、親衛隊に真っ向から挑んで勝てる訳も無いので、そうするしかないですね。」

孝子はエレンという戦力を失っている今の状態で、折神家との戦闘まで発展した場合はそうすることでしか勝てないことは承知していた。何より、大荒魂を討伐するということ、刀使としてあるべき姿に戻すことを掲げているが、どのようなことを言ったところで舞草のことを反社会勢力、いわゆるテロリストとしか見られないのは理解していたので、卑怯な作戦もやってのけようと思っていた。

「……じゃあ、この話は以上だ。まだ時間はある。可奈美達が集団戦でも一線級になるまでには決めよう。」

ロークはこれ以上、トーマスが刀使達の反発を招くような発言をする前にさっさと切り上げ、終了させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、寿々花は――――。

「お加減はどうです?」

「……身体を動かせないから退屈で仕方ない。」

刀剣類管理局本部内に有る病室に居る真希の見舞いに訪れており、他愛の無い会話をしていた。

「夜見は?」

「……重傷ですわね。」

「……そうか、もう少し見てやるべきだったな。」

夜見は物静かで何を考えているか分からない部分があるため、どうして一人で突出し、そんな無謀なことをしたかは分からないままだった。

「ところで、結芽は迷惑を掛けていないだろうな……。」

「ええ、特に問題は無く。」

昔、親衛隊権限とかを使って部下を困らせていたことを思い出した真希は、寿々花に尋ねていた。そんな真希に苦笑をしながら右手で顎を撫でると、書類を渡していた。

「……これは?」

「報告や回覧です。真希さんや夜見さんの空いた部分を埋める形で出向してきた刀使のリスト、夜見さんの容態とSTT隊員の弾薬使用数のリストといった書類です。目を通しておいてくださいね。」

「……そうか。」

「それでは、私はお暇させて頂きます。」

そう言って、寿々花は真希の居る病室を退室しようと席を立ち、退室しようとすると、真希から「書類済まないな。」と言って手を振り、寿々花もそれに応えるように手を振って退室していた。

「…………。」

真希は誰も病室に居ないことを確認すると。書類を一枚一枚丁寧に見ていた。

(……対刀使用のボウガン、……スペクトラムファインダーの修繕依頼の費用。違う、そうじゃない。寿々花は何かを伝えようとしていた。)

寿々花は右手で顎を撫でていた。これは二人で決めた不味いことになっているのを知らせるサインであった。真希はこの書類から何かの暗号があると思い、鉛筆で白い部分を黒く塗りつぶす。すると、

(スペクトラムファインダーの修繕依頼書に何か書かれているな、……衛藤 優に荒魂の強い匂い、の文字から伸びている矢印を辿ると、……反応なしで修繕。……特に異常なし!?)

真希は立ち上がりそうなほど驚いていた。親衛隊の夜見が使役する荒魂に反応しないのは、夜見の能力は秘匿しなければならないという説明を紫に受けていたため、夜見に反応しないのは納得できる。しかし、優は親衛隊でもなければ、刀剣類管理局とは関わりがない一般人、もしくは舞草が製造したノロで強化された人間だと思っていた。しかし、夜見と同じ様に反応しないのは何故だろうか?優の中に居る荒魂が紫と同質のタギツヒメであることを知らない真希は疑問を抱き、一つの結論に導く。

(スペクトラムファインダーに紫様による不正、……いや、衛藤 優と折神家に何らかの繋がりが……?いや、紫様はこれを知っているのか?)

となれば、今の自分の状況は不味いだろう。スペクトラムファインダーの不正を知った自分は何処で、何時背中を刺されるか用心しながら舞草と戦わねばならない。それに、紫も何らかの理由で脅されている可能性もあるため、慎重に行う必要があると思っていた。

(……まずは情報が欲しい。寿々花一人では……、一刻も早く身体を治さないと。)

真希はそう考えを改めると、鉛筆で黒く塗りつぶした部分を消しゴムで消し、退院したあとのことを考えていた。




結芽ちゃんと夜見ちゃんの両隣にソフィアと優を置くと、アラ不思議。結芽ちゃんと夜見ちゃんのことをやべーやつとか言えなくなったでしょう?

※1月9日、改めて見ると、誤表記と誤字がかなりあったので修正しました。申し訳ありません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。