【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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24話を投稿します。
ねね(さらっと、犯人扱いされたよ。)
あと、とじよんネタを使ってみました。


前夜

数日後、可奈美達は舞草の先輩方と集団戦の稽古を付けて貰ったあと、露天風呂に入り疲れを癒していた。

「個人戦も楽しいけどチーム戦って楽しいね。私達って、まだあんまり実戦経験ないから攻撃手とか遊撃手とかってなんだか新鮮!」

可奈美は、舞草のリーダー格の一人孝子に褒められたことに上機嫌だった。

「うん…可奈美ちゃんは強いね。」

舞衣はあまり元気がなさそうに、力無く応える。

「舞衣ちゃんだって!聡美さんと対峙した時薫ちゃんと打ち込みのタイミングかぶっちゃって、一瞬遠慮したでしょ?あのまま打ち込んでたら一本!だったよね?」

「そんなとこまで見てたんだ……。」

元気良く言う可奈美を見て、舞衣は落ち込んでしまう。あれほど、荒魂を斬っても斬っても、剣術の腕が上がらない。いや、下がっているように感じられた。だが、実際は荒魂ばかり斬っていたために対荒魂戦においては上がっているが、対刀使戦においてはさほど上がっていないことに気付いていないことが原因だった。

「見たっていうか、見えたっていうか……。」

「やっぱり可奈美ちゃんは強いよ。お母さんのあんな話聞いてそれでもまだ戦おうとしてる。ううん。聞いたからかもね……。でも、私には……。」

知らず知らずの内に舞衣は親友の可奈美に弱音をぶつけていた。そんな舞衣に可奈美は、

(……よく言うよ。)

心の中で毒づきながら呟いていた。

可奈美は、舞衣は昔から自分なんかより良くできた子だと思っていた。妹二人の面倒をよく見ていて、よく分かっている。そのうえ、お菓子作りも上手だし、忘れ物をしたときも貸してくれたり、座学も優秀で可奈美自身もよく助けてもらっていた。

その一方、自分はどうだろうか?最愛の弟だと思っていたのに、化け物のような目で見てしまい、何も理解していなかった。そして、面倒も見れてなかった。いや、むしろ何も見ていなかった。そんな剣術しか脳がない自分を舞衣は凄いと言ってきたことに、可奈美は嫌味のようにしか思えてならなかった。そんな舞衣に可奈美は苛立ちを募らせていた。

そして、舞衣自身も可奈美が自分に対してそんなコンプレックスを抱いていることに気付いていなかった。

その後は、姫和は舞衣に『因縁が有るから戦う理由が無ければついていく必要がない。』と言って、戦いに巻き込まれないようにしていた。エレンと薫が楽しげに喋っているのとは対照的に、舞衣と可奈美の気持ちが沈んでいることに気付くこともなく。

 

 

 

 

露天風呂から出た可奈美達は身体を拭いていたところ、

「なんだか外が騒がしいね。」

トントンカンカンと何かを建てている音が聴こえ、何事かと可奈美は言う。

「そりゃそうデスよ。なんてったって、今日はお祭りデスから。」

「……お祭り?」

「この里では、年に二回やるそうだ。」

「へぇ~。楽しみだなぁ、お祭り。」

お祭りと聞いて心を弾ませる可奈美。しかし、本来であれば可奈美は舞衣に後で行ってみようと訊くが、舞衣に苛立ちを募らせたことも有って、何も言わなかった。

「あれ?私の制服なくなってる……。」

「私のも……。」

可奈美がまず真っ先に自分の美濃関学院の制服が無くなっていることに気付くと、舞衣もそれに気付く。そうして、可奈美達は自分達の制服が無くなっていることに気付き、姫和が一つの結論に至る。

「まさか……優が?」

姫和は声を出して、一応男性である優が制服を盗んだのではと言うが、

「もぉ~~、それは酷いよ姫和ちゃん。」

「それは幾らなんでもないと思うけど……。」

「……姫和、考えすぎ。」

「まだ子供ですからそれは無いデスヨ。……ねねデスネ。」

「だな、俺は優にねねはどうしてたか訊いてみる。」

五人とも寝所を共にした優が何も問題を起こさなかったことと、まだ子供だからそれは無いだろうと迅移よりも早く結論付け、色々と前科が有るねねが犯人だと決め付けていた。だが、当のねねは露天風呂が空くまで優と一緒に遊んでいたことは五人とも知らなかった。(つまり、冤罪である。)

「お前達の制服なら、クリーニングに出しといたぞ。」

「夕方には仕上がるそうよ。それまでは……はいこれ。って、何着ているの?」

何故か、沙耶香は裸ではなく、誰の物か分からない黒のトレンチコートを着ていた。

「いつでも、任務に出られる格好で待機しておかなきゃと思ったから。」

入浴する前、沙耶香は制服のまま入浴しようとしたため、舞衣が慌てて止めて風呂は裸になって入るもの、学校の制服と他の皆もこの露天風呂は使うから汚してはいけないということを沙耶香に教えていたという一悶着があったことを可奈美達は思い出していた。

「沙耶香ちゃん、そんなの何処にあったの?」

「隅にあったから拾って着た。」

裸に黒のトレンチコートという露出狂一歩手前の格好をしている沙耶香を見た舞衣は呆然とし、もしやと思い訊いてみる事にした。

「……もしかして、その格好で外に出ようとしていた?」

「うん、ねねを探さないといけないから。」

舞衣は高津学長は今まで沙耶香に一体何を教えていたのだろうかと思ってしまった。

「……とりあえず、脱いで。」

「でも、流石に裸で外に出るのはちょっと……。」

とりあえず舞衣は沙耶香に黒のトレンチコートを脱ぐように言うが、沙耶香は裸で外を出るのは流石に恥ずかしいと言っていた。

「……いいから、ほら孝子さん達が浴衣持ってきているからそれに着替えよ。」

舞衣にそう言われた沙耶香はしぶしぶ黒のトレンチコートを脱ぎ(割と気に入っていた。)、浴衣に着替える。

「ほら!姫和ちゃんも早く着替えようよ。」

「今はそんな浮かれてる場合では……。」

「お祭りだよ。今日浮かれないでいつ浮かれるっていうの!」

「おっ、おい……。」

それを見た可奈美も姫和にかなり強引に押して言い、着替えてもらった。

「……。」

姫和は、鏡に映る浴衣を着た自分を見つめていた。舞草の先輩方が稽古をつける前日に見た小さい頃の自分が出てくる夢の内容を思い出し、本当にこんなことをしている場合だろうかと悩んでしまった。しかし、

『お祭りだよ。今日浮かれないでいつ浮かれるっていうの!』

そんな可奈美の笑顔を思い出し、今日だけでもと思い、お祭りに行くことを決意する。

「……行くんじゃないのか?お祭り。」

そして、姫和が皆にそう尋ねたことが合図となり、可奈美達はお祭りを楽しむことにした。

 

 

 

 

 

どうしてこうなった……、姫和はそう思った。

少し前までは可奈美と一緒だったのだが、偶々優と合流し、そのまま可奈美と一緒に見て回ると思っていた。しかし、

『あっ!舞衣ちゃんと見て回る約束してたんだった!!じゃ、そう言う事だから姫和ちゃん、優ちゃんをお願いねっ!!』

と、やや早口気味で、そんなことを突然言い出したと思ったら姫和と優を置いて何処かに行ってしまった……。可奈美自身は優が姫和と仲良くなれば、優が無茶をしなくなるかもと思い、二人っきりにしようとしていた。

『……何処か見て回ろうか?』

『うん。』

といったやりとりのあと、姫和は優に何と言えば良いのか分からず、フランクフルトとバナナチョコと何のシリーズか分からない特撮物の仮面を買ってあげて、時だけが過ぎていくのであった。

「……。」

そして、今姫和は優と二人っきりで見て回ることになっていた。

「……ねえ、姫和おねーちゃん。」

姫和は急に話を振られ、優がこちらの手を繋いできたことに驚くと「なっ、何だ?」と姫和は応えていた。

「……一つの太刀だったけ?おっきい荒魂倒すのに使う技。」

「ああ、そうだが、何だ?」

おっきい荒魂というのは、多分紫の中に居るタギツヒメのことだろうと姫和は理解していた。

「……使っちゃダメ。…使っちゃダメだよ。姫和おねーちゃんが消えるくらいなら、そのおっきい荒魂、僕の中に入れる。」

「!……優、気持ちは嬉しいが、それだと可奈美が悲しむから、それだけは止めてくれ……。」

姫和は消え入りそうな声で、可奈美が悲しむから止めて欲しいと懇願していた。

しかし、本心は、まるでトーマスが言っていたこと通りになっているように思えたこと、自分を苦しめる小さい頃の自分が出てくる夢の続きを見せられているように感じたこと、タギツヒメと融合し一体となった優を本当に斬らなければならなくなることを恐れて優に懇願していた。

「でも、姫和おねーちゃんが消えたら、可奈ねーちゃんはもっと悲しむはずだから、……だから、消えて欲しくない。それに、潜水艦に乗っていたとき約束してくれたよね?可奈ねーちゃんを一人にしないって、いつか強い刀使になった可奈ねーちゃんが救ってくれるなら、大丈夫だよ。それに、刀使が居なくなったら、荒魂をどうするの?だから僕が一度死んだくらいでどうってことないよ、きっと。」

「……。」

姫和は思い出していた。

『だって姫和おねーちゃんが僕を斬ったら強い刀使になれるんだよね?だったら、可奈ねーちゃんを一人にしないであげて、そうすれば何時か可奈ねーちゃんが強い刀使になって、僕を助けてくれたら、それで充分だよ。』

潜水艦内でした約束のこと。ただ時間を先延ばしして、何時か解決する術があればと思って言った言葉が、約束が、

『昔、可奈ねーちゃんと約束したんだ。強い刀使になったら僕を助けてくれるって、よく分からないけど、可奈ねーちゃんが強くなったら僕にとっても良い事なんだから。可笑しな話じゃないでしょ。それに、それだけで可奈ねーちゃんが喜ぶならそれで良いと思うんだ。』

今、また自分に冷たいナイフのようになって帰って行き、刺さったのか自らの心がズキズキと痛み始めていた。

 

 

 

 

 

 

その後、夕暮れとなり、可奈美達は累とフリードマンに本日の祭りのメインイベントに招待され、神社の社内で神楽を見つつ、フリードマンの説明を受けていた。

 

曰く、数はだいぶ減ったものの、この国にはまだノロを祀る社がいくつかあるとのこと。

 

曰く、ノロは御刀の材料、玉鋼を精錬する工程で不純物として分離された物で、人の持つ技術ではそれを消し去ることはできないとのこと。

 

「でもそのまま放置すると荒魂になっちゃうから折神家が管理してるって……。」

「ふむ。不正解だな。」

「えっ!?」

と、可奈美が社内で騒いでしまったため、話を中断し、一旦外へ出ることになった。

「嘗てノロは全国各地の社でこんな風に祀られて来た。それを今のように集めて管理するようになったのは明治の終わり頃だね。主に経済的な理由から社の数を減らしたかった政府が合祀を進めていったんだ。当然ノロはそのままではスペクトラム化し荒魂になってしまう。そうならないように当時の折神家がノロの量を厳密に管理していた。……でも、戦争の足音が大きくなるにつれ軍部を中心にノロの軍事利用を求める声が高まり箍が外れてしまったんだね。」

(……軍事利用。)

フリードマンの説明を受けた姫和は優のことを見る。

「ノロの持つ神性、つまり隠世に干渉する力を増幅させ、まさに君達刀使にのみ許された力を解明し戦争に使おうとしたのさ。戦後、米軍が研究に加わったことでノロの収集は加速した。表向きは危険なノロは分散させず一か所に集めて管理した方が安全だと言って日本中のノロが集められていった。…しかし、思わぬ結果が待っていた。」

そして、刀使に対抗する兵器を作るため、子供をノロで強化して集団で不意討ち、または心理的動揺を突くという計画が有ったことをフリードマンは伏せていた。

「ノロの結合、スペクトラム化が進めば進む程彼らは知性を獲得していった。」

「それって、ノロをいっぱい集めたら頭のいい荒魂が出来上がったっていうことですか?」

「ねっねっ!」

可奈美の言葉にねねは、優に向けてえっへんと胸を張っていた。

「フフッ……簡単に言えばそういう事だね。」

ねねと優の一幕を見て、少し微笑んでしまうフリードマンは平常心へとすぐに切り替え、説明を続けていく。

「今や折神家には過去に例がない程の膨大なノロが貯め込まれている。それが……。」

「タギツヒメの神たる所以か。」

「問題はそれだけではないわ。もしもその大量のノロが何らかの弾みで荒魂に、いえ大荒魂になってしまったらもう私達にコントロールする術はないの……。」

「あの相模湾大災厄の時のようにね。」

「どういうことだ?」

「あの大災厄は、大量のノロをアメリカ本国に送ろうと輸送用のタンカーに満載した結果起きてしまった事故。…つまり人の傲慢さが引き起こした人災だ。」

そう言いながらフリードマンは過去のことを思い出していた。

「彼らの眠りを妨げてはならなかった……。」

輸送用のタンカーから大きな荒魂が出て来たことを……。自分達が何をしたのかを……。

「ノロは、人が御刀を手にするために無理矢理生み出されたいわば犠牲者なんだ。元の状態に戻すことができないのならせめて社に祀り安らかな眠りについてもらう。それが今の所我々にできる唯一の償いなんだ。」

フリードマンが語る相模湾大災厄の始まりとノロの真実を聞き、可奈美達は呆然として立っていた。

(犠牲者…荒魂が……。)

そう思えることができれば、斬らなくて済むかも知れない。姫和はふとそんなことを考えてしまう。

(それじゃ、私のやって来た事って……、何だったの?何を信じてたら良いの!?)

しかし、舞衣は可奈美に追い着くために、数多くの荒魂を藁束扱いし、戯れのように切り伏せていた。

 

足を失い倒れてもがく荒魂に何度も突き刺して、突きの練習代わりにしたり。

 

荒魂を的にして、新しく覚えた技の練習台代わりにしたり。

 

つぶさに思い出していった舞衣は苦しむ思いをし、抜け出せない迷路に迷い込んでしまったこのようだった。

「刀使たる者、御刀を使い荒魂になってしまったノロを祓い鎮める。その行いはちゃんと人を救ってきたわ。でも……。」

「刀使の起源は社に務める巫女さんだったそうだね。荒魂を斬る以上その巫女としての務めも君達はちゃんと受け継いでいかないといけないってことさ。」

フリードマンと累の大人達の言葉は、舞衣には入らなかった。

今まで、伍箇伝すら折神紫によって曲げられた事実を教えられ、それを信じ続けていた優等生の舞衣は何を信じれば良いのか分からなかった。

(私は……、どうしたら良いんだろう……。)

誰も気付いていなかった。舞衣が暗い表情をしていたことに。

 

 

 

 

 

「……では、貴女達は我々と行動を共にすると言うのですね?」

「はい、歪みを正し、刀使を本来の役目に戻すと言うのであれば目的は同じです。私はその元凶、折神紫を倒す。」

決意は変わらないという顔をする可奈美と姫和を見た朱音は、浮かない顔をしながらフリードマンの方を見ていた。

「……優秀な刀使が増えるのは喜ばしい事だと思いますが?」

しかし、フリードマンの方は冷静に返していた。

「貴方は……そうですね。気持ちは分かりました。舞草は貴女達を……。」

フリードマンに何か言いたげな朱音だったが、自分がどのような決断をしようともそれを尊重すると言った以上どうすることもできなかった。しかし、突然襖が開けられ、トーマスが顔を出す。

「……朱音様、フリードマン、良く聞いてくれ。お客さんが来た。」

それを聞いた朱音とフリードマンは撤退することを決定。そのあとは、皆迅速に動き、迎撃と撤退の準備をしていた。

トーマスとロークはケースから突撃銃のAK103と拳銃のグロック17を取り出し、弾倉を入れると弾を薬室に装填。あとは銃に何か問題ないかを確認し、黒のトレンチコートを羽織った後、バラクラバを被る。

孝子は聡美と一緒にエレン達や舞草の戦力を呼びに行き。神社へと集めて、防備を固めていた。

「敵はSTT隊員と何名かは刀使を連れている。おそらくSTT隊員は俺らを殲滅する用、刀使はこちらの刀使に対抗するためだろう。だが、ロークが報告のために米軍基地に発つ前なのが助かった。」

「山中の戦いでストレラ3を捨ててきたから、連中はヘリを使って神社に強襲をしない。まだ時間は有る。朱音様を潜水艦へ送ることができればこっちの勝ちだ。」

山中の戦いにて、地対空ミサイルのストレラ3を置いてきたことにより、刀剣類管理局側は(舞草)が地対空ミサイルを所持しているということを知ったため、対空兵器の脅威が無いことを確認しない以上ヘリによる強襲は難しいだろうという判断を下すことは間違いないとトーマスとロークは推測していた。

「なら、私が志願者を集めて、神社で迎え撃ちますので、朱音様をお願いします。」

聡美は自分から殿を務めると言っていた。

「……済まない、聡美。また後で。」

「ええ、貴女も気をつけて。」

孝子は聡美を置いて行くことに浮かない顔をするが、聡美は笑顔で孝子を送っていった。

この後、親衛隊最強の燕 結芽と立ち会うことになるとは思いもせず……。




舞衣「やっぱり、可奈美ちゃんは凄いよ……。」
可奈美「……チッ。」
可奈美ちゃんと舞衣ちゃんは親友同士。

でも、裸にトレンチコートを着た沙耶香ちゃんを私は見てみたい。あっ、舞衣さんこんにち……。

本日の犠牲者 tatararako
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