やっと、戦闘シーンが書ける!!そして、オリ主の本性が現れた。
STT(特別機動隊)が舞草の隠れ里に突入する数日前――-―。
この日、STT内は誰がこの対刀使用のボウガンを使うかで揉めていた。
理由は女子中高生に向けてボウガンを使うこともそうだが、何よりも慕われていて、戦友とも言える刀使に対して、使用を間違えれば大事に至る対刀使用のボウガンを刀使に向けて撃つことに忌避感を覚えていた。そのうえ、撃った後も刀使を相手に仕事をしなければならないので、そのストレスは生半可なものではないことは明らかであった。そういった理由もあって、この対刀使用のボウガンを使いたがらなかった。
「隊長。やはり、皆反発しています。作戦を再検討するか、この対刀使用の武器は使用すべきでは無いと思いますが?」
そんなことが起こっているので、分隊長が隊長に意見を具申する。
「……上は刀使への対抗手段としてアピールする必要があるから使えと言ってきている。」
「クソ、なんですかそれ?」
分隊長は上の命令の内容に毒づいていた。
「だから、ただ持っているだけで良い。」
「はっ?」
「だから、刀使に向けて必ず使えとは言われていない!親衛隊一名と手練れの刀使を何名か増援として呼んでいる!!」
今回の作戦で、手練れの刀使を数名増援として呼べたのは、親衛隊二名を倒す程の実力を有する者が居るということ、荒魂化した刀使に対抗するにはやはり御刀で斬って祓うのが一番有効であることを上に伝え、何とか納得させたからでもあるが……。
「……りょ、了解 。」
分隊長は憤慨している隊長に驚くも、彼の意図を理解した。この対刀使用のボウガンを極力撃たず、持っているだけに留まらせ、反乱分子に所属する刀使の制圧に使われたということにするのだろう。
「……クソ、上は何考えてんだ。」
しかし、この隊長はSTT隊員のみで荒魂化した刀使を含めた造反組織の制圧作戦という当初の作戦よりも、幾分かはマシになったと思うしかなかった。
そして、親衛隊一名は燕 結芽、手練れの刀使は織田 ソフィアとその部下数名であることに何も疑念を抱かなかった。
時は戻り、舞草の隠れ里にて――――、
「あなたは?」
「折神紫親衛隊第四席燕 結芽。四席って言っても一番強いけどね。」
「抜刀!」
聡美は仲間に合図を出し、御刀を抜かせると、親衛隊の中なら間違いなく最強の実力を持つ結芽と対峙していた。
本来なら、拠点の神社にヘリで強襲する予定だったが、山中の戦いにて廃棄されていた地対空ミサイルを見つけたことから舞草が地対空ミサイルを入手していることが判明。そのため、結芽はヘリを使わずに徒歩で神社まで来たのだが……。
(なんて強さ……。)
結芽が神社へ向うその道中、舞草に所属する刀使が数多く居たにも関わらず、全員写シを解除され、倒されていた。
「……おねーさん達も弱すぎ。」
憮然と何か納得しない顔をしながら結芽は階段を上り、境内に入ると、破れかぶれの突撃をしてきた正面の刀使三名を流れるように容易く斬り伏せる。
すると、突然入り口の死角から二名の刀使が側面と背後から奇襲する。
「そんなんで……。」
しかし、結芽は容易く八幡力で二名の刀使の頭を飛び越えると同時に頭を軽く叩くように刀使を一人斬り倒すと、もう一方の刀使は背後から斬り伏せる。だが、正面に注意を向けさせるために生垣から舞草の刀使が二名突然現れ、正面の二方向から結芽を奇襲する。
「……なにそれ?」
しかし、即座にタイミングが微妙に合っていないことに気付くと、わざと後ろに下がりながら隊列を伸ばすと、一番近くに居た刀使と鍔迫り合いに持ち込ませ、もう一人の方の刀使の視線から鍔迫り合いをしている刀使の身体の陰に隠れられるように誘導し同時攻撃を封じる。だが、最初に切り伏せられた刀使の一人が腹這いで結芽に近付き、足を狙って気合と共に斬りつける。
「もらったっ!」
「だから何っ!!」
結芽が吼える。すると突然、鍔迫り合いを止め、真横へ流れるように移動すると同時に鍔迫り合いをしていた刀使の脇腹をばっさりと斬る。鍔迫り合いをしていた刀使は結芽の正面に、腹這いで足を斬ろうとしていた刀使は結芽の背後にそれぞれ居たため、鍔迫り合いをしていた刀使は腹這いの刀使の上に倒れ掛かってしまった。となれば当然、腹這いの刀使の行動を阻害してしまうことになる。そして結芽は残った一人の刀使を真正面から容易く倒すと、腹這いの刀使も立ち上がりかけているところを狙って迅移で近付き、逆袈裟斬りで倒してしまう。
(……足りない、違う。)
結芽は愚痴るようにそう思うと、聡美の方を向く。左右に広がっているところから、包囲して倒す腹積もりだろうと思った結芽だったが、そんなことは気にせず真ん中に居て、一番強そうな聡美に一直線で向って行くとそのまま拝殿の入り口近くまで押し切ってしまう。これには、聡美も虚を突かれた。理由としては死角からの奇襲、生垣からの強襲、やられたふりをした刀使の攻撃。それらを使ったため、警戒し、端の刀使から攻撃するものと思ってしまったからだ。そのため、陣形に穴が空き、連携が崩れてしまう。
「なんて強さ……。」
「お姉さん達も弱すぎ。」
聡美は策を講じて倒すこともできず、連携をも簡単に崩してしまうことに驚愕する。しかし、一方の結芽は少しイラついていた。例の鎌府の制服を着た“少女”を見つけ出し、“時間の有る内に”真希と夜見のやられたことをやり返そうとしていた。しかし、見つからない。そのことが彼女を苛烈にさせていた。
結芽は聡美を足払いで転倒させ、陣形が崩れた舞草の刀使達を襲うと、迅移と八幡力による跳躍を使って、巧みに一対一に持ち込ませ、全員倒してしまうと、立ち上がろうとしていた聡美の咽を突いて、倒していた……。
(足りない。……こんなんじゃ、全然……。)
結芽は心の中でそう愚痴ると、銃声が聞こえたので、そちらに向かうことにした。
そして、STT隊員等は舞草の刀使を殺さずに全員打ち負かし、気絶させた結芽の活躍を素直に賞賛していた。
時を少し戻して、一方の可奈美達は大昔の水源の一つを使って、潜水艦へ向っていた。
「やはり既に手を回されてたか……。」
まだ中には突入していないのか、他の乗組員やコック長が捕まっている姿も無ければ、中に入って銃撃戦をしている様子もない。何をしているのかと孝子は物陰から見て伺っていた。恐らくスペクトラムファインダーを使っているところから、潜水艦の中に荒魂が居ないか調べているのだろう。
「撃ってくるデスカ?」
「多分ね。彼らはスペクトラムファインダーを装備してるだろう?舞草の構成員は人間だよ。あんなものが必要だと思うかね?」
エレンの質問にフリードマンが答える。
「それじゃあ……。」
「伊豆でのことを思い出してクダサイ。目の前に荒魂がいたというのにスペクトラムファインダーはぴくりとも反応しませんデシタ。」
「まさか官給品に細工を!?」
舞衣はそのことに驚いていた。そんなことをまでするとは思わなかったからだ。
「おそらくそうだろう。あれはS装備同様折神家からもたらされた技術で作られたものだ。今ならそう御刀に反応するよう設定されているといったところか……。」
フリードマンの推測が当たっている証拠か、STT隊員の所持しているスペクトラムファインダーが反応する。
「荒魂の反応複数あり!すぐ近くです!」
「気をつけろっ!すぐに刀使さん達に応援の連絡を!」
皆、ゾクリとした。官給品のスペクトラムファインダーにはああいう使い方もあることに。
「このままだと我々は荒魂として処理されるぞ!」
「“荒魂”が“人を荒魂呼ばわり”するか!」
姫和はそれに憤慨し、そう嘆く。すると優が突然動き出し、STT隊員の方へと向かって行った。
「「えっ?」」
可奈美と姫和は同時に素っ頓狂な声を思わず上げてしまった。何をする気なのか全く分からなかった。“人は殺さない”約束をしているハズであるから……。
「おい、止まれっ!!」
優を見たSTT隊員は短機関銃のMP5を構え、すぐに警告をするが、
「待て待てっ!あれは男の子だっ!!荒魂になったのは刀使だ!!!」
STT隊員の分隊長が男の子と言って目標の刀使ではないと解りやすいように撃つのを止めるよう隊員達に命じる。大方、迷子の子供が戦闘の音を聞き、怖くなって保護を求めに来たのだろうと思ってしまったのが理由だった。だが、次の瞬間、STT隊員にも可奈美達にも予想しないことが起こった。
その男の子は、何時の間にか鉄の棒を振り上げていた――――。
その男の子は、何の躊躇いも無く振り下ろしていた――――。
そしてSTT隊員の頭は潰れたトマトのようになっていた――――。
誰もが誰も、この状況を説明できず、この状況を理解していなかった。
「――――!」
次の瞬間、STT隊員等は銃撃を受けていた。
トーマスとロークの援護射撃である。但し、ロークは単発で撃ち優に当たらないようにし、トーマスは連射で優を気にせず撃っていたという違いはあるが……。しかし、隠れる場所が無いSTT隊員達は一方的に為す術も無く銃弾のシャワーを浴びてしまう。
(この“荒魂”なんか脆いなぁ。何匹も居るからさっさと倒すか。)
銃弾でも倒せることを理解した優は早速突撃銃の89式小銃を隠世から取り出し、まだ立っているSTT隊員に向けて単発で撃っていた。
「えっ、ちょっ、ちょっと……。」
優が“人”を殺していることに気付き、そのことにやっと頭が回った可奈美は、
「優ちゃん!!」
と半狂乱になりながら、弟の名前を叫ぶも返事が無いことから、銃弾の音で聞こえていないことに気付き、向かおうとする。そのことに気付いた孝子が、
「姫和!見せるなっ!見せるなっ!!」
孝子もこの異常な状況に呑まれているのか、やや狂ったかのような指示を出す。だが、姫和は意図をすぐさま理解し、可奈美を抑えていた。
「離してぇっ!!」
半狂乱になった可奈美は、鬼女がそこに居るかのような叫声と歪ませた顔をしながら、姫和を睨んでいた。
「舞衣!エレンも抑えておいてくれっ!!薫も可奈美と朱音様を頼む!!私達が切り込む!!」
孝子はそう言うと自分の部下を引き連れ、STT隊員達と優が交戦している場所へ向かう。
「行かないと……!私が……行かないと…私は約束も、したのに!!」
舞衣とエレンにも押さえられるが、それでも前へ、優の元へ向かい、凶行を止めようとする。だが、見ていないのは幸いだったかも知れない。ボウガンの矢を二の腕で防ぐ、奪った銃と武器で殺す、鈍器でSTT隊員の頭を潰す、死体を銃弾の盾にしたり、STT隊員の首を踏んで骨を折るといった凶行を笑顔で行っているのを見ずに済んだのだから。
「離して……はなしてったら……。」
可奈美の耳にも聞こえていた。
銃撃の音が――――。悲鳴の声が――――。呻き声が――――。血飛沫が――――。
可奈美の精神をすり減らしていき、遂には嗚咽混じりに声を上げ、止め処なく涙が溢れさせ、心が張り裂けていった。
結局、何もできなかった――――。
剣術バカの自分が優を助ける方法を何年間も探し続けた――――。
だから、必死になって、優が戦わなくても済むように剣術が強い自分を作った――――。
だが、一つも叶わない、届かない――――。
銃撃と悲鳴の声が奏でる不吉な音楽が止むと、全てが終わったことに気付いた可奈美は力が抜け、ただただ膝を地面につけて咽び泣いていた。
「…………っ!」
姫和は走ろうとした。優の元へ、問い質すために。……しかし、それよりも早く沙耶香がSTT隊員の死体を漁り短機関銃のMP5とスタングレネード等を回収している最中の優に問い質していた。
「何で!?何でこんなことするの!!?」
沙耶香は優の両肩を掴むと、物凄い剣幕で言っていた。大切な人のために戦うことは嬉しいことだと言っていた子が何故こうも容易く人を殺すのか理解できなかった。あれは嘘だったのかと思う程に。
「何でって?姫和おねーちゃんが言ってたよ。これ、荒魂だって。それよりも姫和おねーちゃんを悪く言うのは許せない。」
優はいつもの如く、無表情でそれが当然といった風に答えていた。
「何言って……!」
沙耶香は優が何を言っているのか分からず、戸惑う。しかし、少し前の姫和の言葉を思い出していた。
『“荒魂”が“人を荒魂呼ばわり”するか!』
まさかと思い沙耶香は優に聞いてみることにした。
「……もしかして、荒魂呼ばわりする荒魂だから?」
「そうだよ。やっぱり姫和おねーちゃんって凄いや、僕も大体分かるつもりだったけど、こればっかりは全然分からなかった。」
「……何で、そう思うの?」
沙耶香は優に何気なしに訊いてみる。
「?…姫和おねーちゃんも可奈ねーちゃんは嘘なんか吐かないよ。だって、立派な刀使だもん。だから、悪く言う奴と邪魔する奴は一匹残らず倒すだけだよ。それに、これが僕が唯一可奈ねーちゃんの役に立てられることだから。」
優は二人を疑うことはせず、自分がやるべきことだからやっただけと言っていた。
「……でも、そんなのは間違っている。もう戦っちゃダメ。」
沙耶香はどう間違っているのか言えなかったが、これだけは間違っていないと心から思った。
「……何で?何でそんなこと言うの?」
だが、優は恐ろしく禍々しい雰囲気を漂わせ、
「沙耶香おねーちゃんは、姫和おねーちゃんと可奈ねーちゃんのことを嘘つきだって言うの?何でそんな酷いことを言うの?」
心が急激に冷えるような声でそう沙耶香に尋ねてきた。
「そんなこと言う人は“刀使”じゃないよ?人に酷いこと言う人と嘘なんか吐く人は人に感謝される訳ないよね?」
昔、可奈美に刀使は人を守って、感謝される、“正義の味方”だと教えてもらい、それを頑なに信じている優は沙耶香のことを“姫和と可奈美のことを詐欺師呼ばわりする酷い人”と認識し始め、沙耶香に殺意を向ける。荒魂の匂いがする邪魔物だと思い……。
「……!」
沙耶香は優のことを怖いと思ってしまい、優の肩から手を離してしまい、言葉を詰まらせてしまった。そんなときに姫和が、
「いや、優、こいつらは荒魂だ。沙耶香は
優の両肩を掴んで、自分の方へ目を合わせると優しく諭すように言っていた。
「……そうなんだ。ごめんね、沙耶香おねーちゃん。」
姫和の説明に納得したのか、沙耶香に酷い事を言ったと思い謝罪していた。
「……えっ、あっ、……うん。」
沙耶香は姫和に何も言うなと言わんばかりに睨まれていたことと、可奈美をこれ以上悲しませたくないと思ってしまったため、そう答えるしかなかった。
「……朱音様今です!お前達も早く潜水艦に乗れ!!」
トーマスが大きな声で言うと、孝子達は朱音と可奈美の二人には、STT隊員達の死体を見せないようにするため、優先させて潜水艦に乗せていった。しかし、ロークはあることに気付いてしまう。
「舞衣!!危ない!!!」
まだ、息があったSTT隊員が拳銃のP226で写シを張っていない舞衣を狙っていたことに気付いてしまったロークは走った。
「えっ?……ろっ、ロークさん!?」
舞衣はいきなり、後ろから抱き締めてきたロークに驚くが、銃声の音が響いたことで抱き締めてきた理由が分かってしまった。ロークは自分を銃弾から守ってくれたのだ。……そして、ロークは舞衣をしゃがませると、首と右肩を撃たれたことに素早く気付き、拳銃のG17を抜くと、こちらに撃ってきたSTT隊員に発砲し、胴体下当たりを数発当てる。STT隊員も負けじと、ロークの側頭部、腹部を数発当てる。子供達に危害を加えさせないようロークは気を失いそうになりながらもSTT隊員に向けて、数発撃つ。STT隊員も一人でも倒すべく気力を振り絞ってロークを撃つ。そんなことを繰り返していく内に、ロークは足を撃たれ、倒れてしまい。STT隊員も優に首の骨を折られ、力を失ったのか、腕をパタリと下ろしていた。
「ろっ、……ロークさん?」
伏せていた舞衣はロークが血を流しながら、倒れていることに気付き呆然としていた。
「……Fuck!!Fuck!!!」
それに気付いたトーマスは累とフリードマン、潜水艦の乗組員達等に重傷のロークと倒れている舞草の刀使達、そして何が起きているのか理解できず呆然としていた舞衣を潜水艦の中まで運ぶように素早く指示していた……。
ほとんどの者が潜水艦内に乗り込み、孝子とトーマス、そしてSTT隊員の死体から使える物を物色していた優だけが残っていたそんなとき。
「フフフフ…。」
笑っている結芽がそこに居た。そして、暗がりの洞窟の中だったためか、STT隊員が死体となっていることに気付いていなかったことは彼女にとっても幸いだったろう。
「……誰?」
優は、結芽のことを睨みながら何者か尋ねていた。
「折神紫親衛隊第四席燕 結芽。四席って言っても一番強いけどね。」
結芽は無邪気にそう答えていた。
今回の話の犠牲者。
親衛隊側、STT隊員数十名。
舞草側、ローク。
次回、結芽ちゃん、オリ主と出会い戦う。