次話投稿します。一話に誤字があったので訂正しました、お許しを。
多分、優くんは次話で活躍させる予定です。
「今年の大会は年少者が多いようですわね。」
会場の視察と警備に来た親衛隊第二席の此花 寿々花がそう言うと、同じ理由で隣にいる第一席の獅童 真希が答える。
「御刀との相性は年少者の方が高いと聞くし。それに、あの中に何名か僕等より立派な刀使が居るかもしれ知れないから、あまりそう言うものじゃない。」
「へえ、その口ぶりからすると、私達の世代は大会二連覇の獅童さんが終わらせたとでも?」
寿々花の皮肉に真希は、
「…僕はそれ程自惚れていない、結芽を見てるとそう思う……それに、それ程の実力を持つ刀使が居れば親衛隊に入れるべきだと、思うからな。」
実際、真希が所属する親衛隊は局長の折神 紫の警護から職務の同行、そして、作戦の指揮と書類仕事といった多種多様の仕事をこなすのに四名しか居らず、人手が足りて無かった。そのため、真希は少なくても四十名、多くても六十名は欲しいと思っていた。
「でも、剣術ばかり得意な奴ばかり集めても仕方が無いから、書類仕事や作戦指揮ができる人材も欲しいと思っている。」
「そんなに、人数が必要とは思いませんけど。」
「紫様も僕達も人間だからな、不意を受ければ死ぬことだってある。…それに、最近は政治的な影響力を強めているからその妨害と、舞草との戦闘を考慮すればそれぐらいは欲しいさ。」
真希は、剣の腕は自分に次ぐ遣い手でありながら、参謀として親衛隊一の此花 寿々花。自身をほぼ犠牲にして、特殊な能力を持つ三席の皐月 夜見。自分よりも刀使の才能に恵まれた天才、四席の燕 結芽。三人とも、最高の人材ではあるが、失えば二度と手に入らない逸材だと思っている真希は人員を増やし、三人の負担を少しでも減らすべきだと思っていた。実際、会場の警備は親衛隊だけでは人手が足りないので、鎌府の刀使を借りていたりする。そして、特別刀剣類管理局内の造反分子『舞草』との決戦、様々な勢力の妨害といったことを考えていた真希は人員を増やそうとしていた。
「まあ、そうですわね。」
寿々花は頷くしかなかった。
「ああ、お喋りしている間に、私の後輩とあなたの後輩の一戦が始まりますわよ。」
見ると、第一回戦、綾小路武芸学舎の山崎 穂積と平城学館の十条 姫和の試合が始まるところであった。
「礼、双方備え。」
審判の合図に応え、お互いが礼をした後、御刀を抜く。
「写シ。」
写シ、刀使の基本戦術であり、最大の防御術。御刀を媒介として肉体を一時的にエネルギー体へと変質させる。写シで防御している間は、わずかな痛みと精神疲労を代償に、実体へのダメージを肩代わりできる。ダメージを受けるとその部分は消失し、身体機能も奪われていくが、写しを解除するまで実体へのダメージはない。そんな無敵のような術を両名共に展開するが、弱点もある。それは、写シで防御している間に異物が刺さったまま、写シを解除すると、実体にもダメージを受けるということである。
「始め!」
審判の声と共に、試合が始まる。姫和は迅移を使い、間合いを詰めたと同時に横薙ぎに斬る。相手は上半身と下半身が分かれるが、写シを展開していたため、命を失うことはなかったが、苦痛の声を上げ、倒れていた。
「勝者、平城学館十条姫和。」
「へえ、頼もしい後輩ですわね。もしかしたら、親衛隊は平城学館出身者が多くなりそうですわね。」
(小烏丸……?適合者無しだった筈だが……)
寿々花の茶化した物言いに、真希は耳が入っていなかった。それよりも目の前の疑問に集中していた。
「真希さん?」
「んっ?ああ、何か言ったか?」
「……なんでもないです。」
「?…何で剥れているんだ。」
そんな話をしている内に第二試合が始まりそうであり、二人とも試合に集中する。
「あの子は鎌府の糸見 沙耶香でしたかしら。」
「ああ、そうだ、高津学長がよく自慢気に話している子だな。」
とある事情のため、寿々花は憎らしい目で見ていたが、真希は鎌府女学院高津学長が沙耶香をいつも特別扱いするため、彼女は学院内でいつも孤立しているということを耳にしている。そのため、真希は複雑な心境で沙耶香を見ていた。
「…まあ、彼女が勝つだろうさ……」
「そーですわね。任務達成率100%の紫様の右腕に相応しい刀使でしたわね。」
寿々花は忌ま忌ましげに言う。真希は沙耶香がどういう状態で居るか知っているため、そう言うなと心の中で思っていた。まあ、実績を見れば彼女の親衛隊入りは間違い無いだろうし、今言っても納得しないだろうから、入隊した後にでも寿々花にそのことを伝えておけば和解するだろうと考えていた。それに、結芽とも仲良くしてもくれそうだと楽観的なことも考えてもいた。
「礼、双方備え。」
第二回戦が始まろうとしている。
「写シ。」
両名、共に写シを展開。
「始め!」
という声と共に沙耶香は御刀を媒介として通常の時間から逸して加速する刀使の攻撃術の1つ、迅移を使い、流れるような怒涛の連撃で相手を倒そうとする。
「沙耶香さん、勝ちそうですわね。」
面白くなさそうに寿々花は言う。実際、沙耶香の対戦相手は防戦一方のため、観客の方からも鎌府の勝利で決まりだろうという声が上がっている。
「いや…そうでもないかも知れない。」
真希は、沙耶香の対戦相手があの速い連撃を全て、最低限の動きで、太刀筋を見切っているように見えた。そうして、その対戦相手は沙耶香の一瞬の隙を突いて、下から掬い上げるような斬撃で御刀を持つ沙耶香の左腕を斬り飛ばしてしまう。
意外な試合結果に観客は驚き、会場内は大きな歓声を上げていた。
「…これは、また意外な結果になりましたわね。」
「あの子の名前は…衛藤 可奈美か……覚えておこう。」
「あの子を親衛隊入りにするんですの?」
「それは、この大会が終わってから考えるさ、あとは軽い身辺調査もするが。」
身辺調査をする理由は、可奈美が舞草の構成員であるか、調べるためである。
「味方も疑わなければならないのは、辛いですわね。」
「全くだ。」
しかし、可奈美が舞草と繋がっていないとわかれば、局長の紫に彼女の親衛隊入りを強く推薦しようと思っていた。それに、唯一親衛隊入りが一名も居ない美濃関学院から親衛隊入りを果たした者が居ることを大きく伝えれば刀使達の考えも改めるだろうという打算と、結芽のライバルになってくれるかも知れないという考えがあってのことでもあるが。
その後も御前試合は進み、準決勝の柳瀬 舞衣と衛藤 可奈美の試合が始まろうとしていた。
「衛藤 可奈美さん、準優勝まで来ましたわね。」
「ああ。」
寿々花にそう言われ、そっけなく答える真希。
(共に美濃関学院の刀使か……)
僕達の時は美濃関は準決勝まで来た刀使は居なかったのだが……。そのようなことを思いながら、寿々花が言うように僕らの世代は終わったのかもしれないと思い、少し物悲しい気分になっていた。
準決勝の試合が始まり、舞衣は会場全体が驚くようなことをする。
居合いの構えをしたのである。
「居合いなんて…?」
(正攻法では勝てないという判断か…?思い切りのいい子だ。)
寿々花は驚愕の声を上げるが、真希は可奈美の戦い方を思い出し、舞衣は居合いを使うことにしたのだろうと考えていた。たしかに、あれなら攻め難いかもしれないと真希は思う。だが、次の瞬間、真希は更に驚愕するのであった。
(片手で止めた……?)
可奈美は、舞衣の居合いを片手で押さえて止めていた。そのことに驚嘆した真希は、この大会が終わった後に可奈美の身辺調査を行い、何も無ければ局長の紫に親衛隊入りを強く推薦しようと決意した。
本殿の白州にて行われる御前試合決勝。可奈美と美炎達はそこに居て、可奈美はエールを貰っていた。
「ここまで来たら、優勝のみだ!」
「可奈美なら、落ち着いて行けば勝てるよ。」
「みんな、ありがとう。」
「可奈ねーちゃん。」
「ん、何?」
優に呼ばれた可奈美は、優の身長に合わせて屈んで、話を聞こうとしていた。
「これに優勝したら、夢が叶う?」
「…うん、一歩前進かな!」
「うん、僕も夢が叶って欲しいから、あそこで頑張って応援する。」
優は顔を綻ばせながら、自分の気持ちを伝えていた。そう言われた可奈美は、少し驚いた表情をした後、満面の笑顔になった。
「うん、お願い。優ちゃんが応援してくれたら、力が出るよ。」
「優くん、可奈美おねーちゃんは剣術が好きでここまで行けたんだから、必ず勝てるよ。」
「ちょっ、美炎ちゃん、プレッシャーをかけないでよ!」
そうして、可奈美は美炎達の声援を受けながら、決勝戦に挑むのであった。しかし、可奈美は優を横目で少し見て、
「……でも、私、本当に剣術が好きなのかな?」
可奈美の小さな呟きは、誰にも聞こえていなかった。
「これより、折神家御前試合決勝戦を行います。選手は前へ。」
ついに始まる決勝戦。試合前による緊張もそうだが、本殿白州は異様なまでの静けさに包まれていた。その理由は、試合場を正面から見据えれる位置に、二十年前に現れた大荒魂の討伐の英雄にして折神家現当主でもある折神 紫が貴賓の観覧席にて上覧しているからだろう。その姿に観客席側から、なんて神々しい、変わらぬお姿で、私も頑張って毎日青汁を飲もう、といった声が上がっている。
「あの、二本持ってる人って凄いの?」
「ゆ…優くん、あの人は昔、とっても怖くって、刀使が何人居ても勝てないぐらい強い大荒魂を倒した、この国のヒーローみたいな人なんだよ?」
舞衣は優の物言いに冷や汗をかきながらも、子供にも解り易く、そう説明する。
「じゃあ、あの二本を可奈ねーちゃんが倒せば、可奈ねーちゃんが一番強いって事になる?」
そんなことを聞かれた舞衣は沈黙し、可奈美なら本当に挑んで行きそうだと少し思ってしまったが、とりあえず答えをはぐらかそうとする。
「あっ、優くん、そろそろ始まるから静かにしようね。静かにしてたらクッキー上げるから。」
そう言われた優は、は~いと言って、言われた通り静かにしていた。
「これより、折神家御前試合決勝戦を行います。選手は前へ。」
「「はい。」」
決勝に残った姫和と可奈美、両者は試合場で対峙していた。
「双方備え。」
審判の合図と共に、姫和と可奈美は御刀を抜く。
「写シ。」
そして、姫和と可奈美も写シを展開。誰もが、この一戦で刀使の頂点に立つ者が決まると思い、固唾を呑んで見守っていた。
始め!の合図の前に姫和が迅移を使う。それは、舞衣が消えたと思う程の速さで、可奈美に向かわず、紫の方へ向かって行き、突きを放つ。
しかし、それを紫は容易く防いでのけていた。
「それが、お前の“一つの太刀”か?」
姫和は驚愕した、自分が持てる全てを注ぎ込んだ剣を容易く防いだことに。この日のために修練し、研鑚し続けていたことが無駄であると、眼の前にいる敵にそう宣告されているような気がした。しかし、姫和は挫けることなく、追撃を行おうとするが、
「がっ!」
後ろから真希が姫和を袈裟斬りし、写シを解除し行動不能にさせた。姫和の前に親衛隊の一人寿々花が紫を守り、背後は真希が上段の構えで油断無く立ちはだかっていた。此処で殺されると覚悟していた姫和だったが、意外にも殺す気は無いのか真希は周りの刀使達に捕縛を命じていた。だが、可奈美が何故か真希に斬りかかり、姫和を助けていた。
「迅移!!」
可奈美の言葉を受けて、姫和は迅移を使って逃走する。それを見た真希は追おうとするが、上から爆発したかのような音が数回鳴り、紫のいる天井部分だけが崩れて来た。
「紫様!!」
真希は間に合わないと思ったが、寿々花と夜見が迅移を使って紫を安全な所まで避難させていた。それを見て、安堵した真希だったが、一難去ってまた一難、結芽が勝手に可奈美達を追いかけた。
「結芽!…寿々花と夜見は紫様を安全な場所へ!!」
とにかく、結芽を一人にすることは出来ないと判断した真希は、寿々花と夜見に紫を守るよう指示し、結芽の跡を追うことにした。
一方、結芽は心躍っていた。強い刀使と戦えることに。
「私もま~ぜて。」
結芽は待ち構えるが、可奈美はそれに気にすることなく、姫和の腕を掴んで、屈んでいた。
「も~、つれないこと…しないでよ!」
結芽はその言葉と同時に、可奈美達に斬りかかりろうとするが……突然、瓦が自分の所に物凄いスピードで迫って来ていることに気付いた結芽は
「はぁ!!?」
驚くが、流石は親衛隊というべきか、難なく横薙ぎで瓦を払う。その隙に可奈美は姫和と共に、御刀を媒介として筋力を強化する術、八幡力を使って跳躍し逃走。
「……アレ何?も~!!もう少しでおねーさんと遊べれたのに!!!」
そして、観客席側の方からも、問題が発生していた。
「柳瀬さん!優くんが居ない!!!」
今日は長い一日になりそうだと、舞衣と真希はほぼ同時に同じ事を思っていた。