【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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31話を投稿させていただきます。
可奈美と優の過去話。
全てはここから――――。


Save you Save me 1

私がまだ幼かった頃は幸せだった。そして、ここからが全ての始まりだった。

お母さんが私の弟となる男の子を授かり、頑張って産んでくれたことに私は今も感謝している。まだまだ仲が良いお母さんとお父さんが、名前は優しい子であるようにという思いを込めて優と名付けていたことが私は印象的だった。そして、私は生まれたばかりの弟、優ちゃんの頬を指先で突くと、まだ赤ん坊の優ちゃんはそれに反応して、私の指先を小さな手で掴んで喜んでいたことに、私は思わずはにかんでいた。

すごく小さな手に触れられる反面、私は“おねえちゃん”としてやっていけるかどうか不安もあった。けど、私は初めて見る新たな命に目を輝かせてしまって、出来るか出来ないかは考えてなかったけど、とにかく“おねえちゃん”としてやっていけるように目指した。

でも、私と一緒で純粋に剣術が好きでお母さんとお父さんの願い通りに優しい子になってくれたら良いな。

「よろしくね。」

私はずっと仲良く暮らせれば良いなとも思い、優ちゃんに笑顔で挨拶していた。

 

 

 

 

 

まだ幸せだった頃。

私は、身体がだんだん弱くなっていくお母さんの助けに少しでもなりたくて、優ちゃんの面倒をお母さんの代わりによく見ていた。

「大丈夫?優ちゃん。」

「うん、ゴメンね。……ジャマしかしてない。」

優ちゃんは身体が弱くて、大変だったけども、私に迷惑掛けていると思っているせいなのか、私の言うことを守ってくれた。だから、手間の掛からない良い子だったよ。

「大丈夫、優ちゃんは悪くないよ。おねえちゃんに任せて!」

私は目を輝かせて答えた。

「……うん、ねーちゃ、ありがとう。」

それに、いつも私の後ろにちゃんと付いて来てくれた。だから、私には優ちゃんが必要で、優ちゃんは私が必要なのだと思った。

「それに、お医者さんが言っていたでしょ?大きくなったら身体が強くなれるから、強くなったら剣術を一緒に頑張ろう?ね?」

「うん、ねーちゃの言うこと、聞く、ボクも剣術やる。」

それに私の言う事を何でも聞いてくれたから、身体が弱いこともあって、剣術ができないのが残念だけど、大きくなれば身体も強くなれるとお医者さんが言っていたからそれまで我慢する!だから、だからそれまでずっと一緒に居る。そんな未来を見ていた。

だからかなのか分からないけど、大事しなきゃいけない子だと思えたのかも知れない。けど、たった一人の弟ができたことが嬉しかった。だからお母さん、ありがとう。優ちゃんはとっても優しい子だよ。

「それに、優ちゃんは邪魔とかじゃないよ!、お母さんとお父さん、優ちゃんが居てくれたから、いなくなって欲しくないから私は頑張れるんだよ。……だから、ずっと一緒に居ようね?」

「……うん!」

これで、私も一人前の“おねえちゃん”だよね?お母さん!!

 

 

 

 

 

 

「……可奈美、優のことお願い。……あの子に親らしいこと……あまりしてやれなかったからさ……。」

とある病室で、とても弱っているお母さんが白いベットで寝ていた。私はもうそろそろで会えなくなることに気づいてしまったから、励まさないといけないと思った。

「大丈夫だよ。私、……私、おねえちゃんだし、お母さんみたいに強い刀使になって、全てを守り抜いてみせるよ。」

私はそう強がって泣きそうになるのを堪えながら、できるだけ笑って答えてあげた。

お母さんはそれに安心したんだと分かった。やっと、笑ってくれたから。

「……そう、ならおねえちゃんに任せようかな、……お願いね、おねえちゃん。」

お母さんにそう言われ、私はお姉ちゃんとして頑張ろうと思う反面、上手くできるかどうか不安もあった。

「……任せてよお母さん、私はお母さんが言っていたように、大好きな剣術を学んで、荒魂から人を守って感謝されるような刀使になるんだから、優ちゃんもみんなも守るよ。」

私がそう言うと、お母さんは安心したかのように、嬉しそうに笑ってくれていた。

そして、これが私とお母さんの最期の会話となった。

 

 

 

 

 

 

 

お母さんが死んで、お母さんとの思い出がある庭先の縁側で一人泣いていた。

そして私はささいなこと、ほんの些細なことで酷いことを言ってしまった。

「………ごめん……ごめんね。」

ただ一言、酷い事言ってごめんと……ただ一言、ちゃんと謝れば良いだけなのに、面と向かうと喋り辛かった。

「あっ、……。」

「あぅ。」

私は何て言えば良いのか分からなかった――――。

優ちゃんも私を見ると、言葉が詰まってしまい。少しだけ震えていたようにも思えた。

何で、…………何で何で何で何で何で何にも言えないの?また昔みたいに元通りになりたいだけなのに、少しの勇気があれば進めるのに、どうすればいいのか分かっているのに、この先に何が待っているのかが怖くて考える暇もなくて、ただ黙っているだけしかできなくて。

「……。」

「……。」

お互い何も言えなかった…………。目の前の壁を壊していくこともできなかった。

優ちゃんが何も言わず、通り過ぎてしまったのは、心が張り裂けそうだった。

 

 

 

 

 

そして、優ちゃんが居なくなった――――。

夜になっても帰って来なかった……。

(……ごめん、お母さん。)

私はどうすれば良いのか分からなかった、おねえちゃん失格だった……。お母さん、ごめん。私、約束守れなかった。

もし、優ちゃんが居なくなったらどうしよう。そのことばかり頭に過ぎって、剣術のことなんて考える暇がなかった。いつも髪を縛っている黒いリボンが無いのも、そのせいかも知れない。大事な人も守れないのに、刀使になる資格があるの?

……刀使になる資格なんてない。……お母さんを裏切った。

そんなことばかり考えていたとき、ふとお父さんが、優ちゃんが無事に帰って来たと教えてくれた。

「……ただいま。」

そこには、傷だらけで泥まみれの優ちゃんが居た。それに、私は思いっきり優ちゃんの頬を打つと、私は涙を流しながら、顔をくしゃくしゃにして叫んでいた。

「バカ!何してたのっ!!」

頬を打たれ赤くしている優ちゃんは私に何かを差し出していた。

――――黒いリボン――――

私がいつも髪留めに使っている黒いリボン。

 

そんな物のために――――、

 

身体が弱いのに――――、

 

必死で探してくれた――――。

 

その、ただ見ている真実に私は堪らず声を上げ、優ちゃんを抱き締めてしまった。

「……バカ…………ばかぁ、そんなことなんかで…………。」

「でも、……ボクは身体弱いから、こんなことしかできない。」

優ちゃんも涙を堪えられず、私に謝罪の意味も込めて、言ってきた。

「……ばかぁ、ばかぁ、そんなものより、優ちゃんが、だいじにきまってるよぉ……。」

私は想っていたことを正直に打ち明けた。

「……ゴメンね、また一緒に居てくれる?」

「……うん。」

そのあとは、私も、優ちゃんもお互いに涙が枯れるまで、その日は泣いていた。

 

 

 

そうして私は今みたいに優ちゃんと些細なことで一方的に怒鳴ったり、辛く当たったりした。けど、今も髪を束ねるのに使っている黒いリボンのお陰で、前よりも優ちゃんのことを見て、よく聞いて、仲良くなれた。

そして、優ちゃんも美濃関学院に入学して、幼いながらも刀使意外の方法で私を助けたいと言っていたときは、嬉し過ぎて言葉が出なくなったときがあり、今も憶えている。

 

幸せな日々だった――――。

 

身体の弱い優ちゃんの面倒を見つつ剣術の稽古もしていた私は、辛いと思ったこともあるし、投げ出したいこともあったけど。

「えっと、ボクは男だから……、刀使になれないから、大好きでカッコイイお姉ちゃんの助けになりたい。」

けれど、優ちゃんが言ってくれた、背中を押してくれる手から響く声のように、私に力をくれた。私はこういった子達を荒魂から守っていると思うと、刀使になろうとしたことは間違いじゃなかったと心から思えた。

 

私、みんなが居てくれたら頑張れるよ。ありがとう、優ちゃん。だから……、だから、全てを守るよ、ここから――――。

 

けれど、そんな私の決意を嘲笑うかのように、残酷な運命が私を構ってきた。

早く家に帰ることができてお母さんとお父さん、そして優ちゃんに会えると思っていた。けど、居る筈の優ちゃんが居なかった……。

それに私が驚き、お父さんに言うが、前と同じと思ったのか、昼に居なかっただけという弱い理由なのか、はたまた運悪くお父さんの仕事が忙しいのか、気にも留めてくれなかった。

だけど、夜になっても帰ってくるどころか、優ちゃんが履いていた靴が道路に落ちていて、その付近に血痕らしきものが複数有ったことで、お父さんも慌てて警察にやっと連絡してくれた。

 

そのときの私は、何も出来なかった。

 

大人が私の上を通り過ぎて解決に向けて動いてくれていた。結局私は、神剣たる御刀に選ばれていても、何も出来ないただの子供でしかないという事実が、……何日も、何日も何日も何日も何日も見せられていることが、それが真実であるということがただ辛かった。

そして私は何故だか分からないけど、警察の人や周りの人の目を見て、その人達が何を考えているのか分かってしまった。

 

『はぁ~~、ダルイなぁったく。』

 

……何で、そんなこと言うの?

 

『どうせ、大方家出かなんかだろ?騒ぎ過ぎなんだよ?』

 

……そんな事、どうしてわかるの?

 

『親の教育や躾が悪いからこうなるんだろ?』

 

……おかあさん、おとうさん、ゆうちゃんのわるぐちはいわないで。

 

『もう死んでるんじゃないの?何日経っていると思っているんだよ。』

 

……カッテナコトバカリイウナ、ナニガワカル。アナタタチガソンナコトヲイウナラ、ナニヲシンジレバイイノ?

 

 

 

 

そうして私は心が動揺していたこともあってか、時間が数日間、いや数年間だったのか曖昧になる程の、……優ちゃんが居ない時間が過ぎて行った。

孤独だった――――。

お母さんが死んだ日を思い出すほどに、御刀に選ばれても、そんなこと等意味がないかのように、辛く、目の前が見えなくなるほどの暗い時間が流れていて、どうすればいいのかわからない。

私は何のために御刀に選ばれたのだろうか?何のために剣術を磨いて、強くなろうとしていたのか?私はそんなことを考えては消え考えては消えを見えるようで見えない答えが見えるまで繰り返していた。

『こういった事件は、日が経つと生存確率は著しく低くなることが……。』

その映像を映す箱から映る、テレビドラマなのかトークバラエティなのか今の私ではもうよく分からない番組の話を聞いてしまった私の心は、日が経つと同時にその話が病のように段々と蝕み、テレビの話の仮定が現実へと置き換わって行っているようにも思えていって、そして優ちゃんとは永遠にもう会えないような気がした。

お母さんも、優ちゃんも、いつか私の知っている人はみんな消えてしまうのかも知れないという脅迫観念が、私から孤独という恐怖を教え、私の思考を奪っていく感触が不快だった。

『……そう、ならおねえちゃんに任せようかな、……お願いね、おねえちゃん。』

お母さんの言葉を思い出す。

 

――――私はお母さんとの約束を守れなかった。

 

――――ワタシハケンジュツイガイトリエガナカッタ。

 

そうして、何もせず怠惰な日々を過ごした私は江麻学長から鎌府の刀使さん達が優ちゃんを悪い博士から救出したという知らせを聞いた。だけど、そのことに私は納得できなかった。何故、私達を数日も会わせてくれなかったのか?その答えは、お父さんと病院に行くことになったことで、何となく嫌な予感がして、何となく悪いことになっていそうだと、

 

そして、それは当たっていた。

 

――――ゴメン、約束守れなかった、お母さん、ダメな子だ、ワタシ。

 

お母さんに心の中で謝罪をし、優ちゃんを呆然と見て、私とお父さんは当然のように心が混迷していた。

意識は戻っておらず、痩せ細っていて、女児のように髪が伸びていたから、居なくなった当時の姿とはかけ離れていた。身体の弱い優ちゃんがどれほどその悪い博士に雑に扱われていたかすぐに分かってしまうぐらいに酷い状態だった。

お父さんもその姿を見て、咽び泣き、お母さんへの謝罪の言葉を呟いていた。

そのあと、どうすればいいのかなんてもう分かっていた私とお父さんは優ちゃんの居る病室へ何度も通っていた。いつか意識が戻るんじゃないかと、流した涙もきっと笑って話せる日が来ると信じ続けていた。

でも、意識が戻らない日々が続いて、私は諦めたくない思いからあることを神様に藁にもすがる気持ちで優ちゃんの手を掴んで、叫んでいた。

「……神様、お願い。……また優ちゃんと一緒に居たい……!だから、だから今度は理不尽に怒ったりしない。酷いことも言わない。……ずっと一緒に居たいから、せめてお母さんとの約束を守りたいから、優ちゃんだけでも全てから守りたい。ここからでも良いから!!」

そんな願いが神様に通じたのか、優ちゃんの意識は戻ってきた。

「お……おはよう……。」

その声を聞いた私は、まだベッドの上で安静にしている優ちゃんを抱き締めて、わんわんと声を上げて泣いていた。

それからの私と優ちゃんはしばらく会うことができなかった。江麻学長とお父さんが私を除け者にして、大人達が難しいこと言って私に優ちゃんとは何故か会わせてくれなかった。

そして、目を見て気付いたことがある。江麻学長が、周りの大人達が、優ちゃんのことをまるで腫れ物のように見ていたことに、だから優ちゃんの味方になれるのは私しかいない、大人達は信用できないと強く思った。

そんな辛い目に遭ったから、今も笑うことがなく元気がない優ちゃんを元気付けようと、まずは話すことから努力してみた。けれど、笑ってくれない。でも、大人達にあんな怖い思いをさせられたら無理もないことだと思った。

 

だから、私は優ちゃんにあることを誓った。

 

「ねえ知ってる優ちゃん。お母さんが刀使は人を守って、感謝されて、剣術も学べる、最高だって言ってた。けど、私はこうも思うの、刀使は人を守って、感謝される、“正義の味方”なんだって。」

私が突然こんなことを言い出したため、優ちゃんは首を傾げる。

「だから、約束。…私はお母さんみたいに人を守って、感謝される、“正義の味方”のような強い刀使になりたい。だから、私は優ちゃんのことも怖い物から守るし、今度は何があっても救ってみせるよ。」

「……そうなんだ。だったら僕もそんな大好きでカッコイイお姉ちゃんの助けになりたい。」

私はこの日にやっと笑顔を見せてくれた優ちゃんと約束した。お母さんのように全てを薙ぎ払えるような全てを守り抜けるような強い刀使になることを約束した。

このときの私は、無邪気に強い刀使になって、私が“正義の味方”になれば、優ちゃんのこともみんなのことも守りきることができれば、お母さんとの約束を守ることができる。

だから、このときの私は刀使になって活躍すれば、テレビに出てくる勧善懲悪物の“正義の味方”のようになれると思った。そうすればお母さんとの約束も、……今度こそ優ちゃんを助けてあげられると本気で信じていた。

 

 

 

 

 

優ちゃんがやっと病院という名の白い檻から抜け出すことができて、一緒に家に帰ることができた。

元通りになった。これ以上欠けることがなくなったと心から思った。だけど、優ちゃんが一人で喋っているところを見て、全てが変わった。

 

優ちゃんは、影にある目?……違う、ナニカと喋っていた、楽しそうに。当然、私は混迷し荒魂と喋っていると気付くのに私は少し遅れてしまった。けれど、そんな訳ない、何度も見えたけどそんな訳がない。

 

――――私の弟が荒魂な訳がない。

 

――――ダカラ、アレハナニカノミマチガイダ。

 

そう思えば後は楽だった。

お父さんが優ちゃんが一人で喋っている時があると言われたときは、

「きっとアレだよ。……一人遊びで、何かの役になって遊んでいるだけだよ。」

私はお父さんを相手に、必死に嘘を吐いて優ちゃんを守った。

そして友達に私の弟がどんな子なのか見てみたいとそう言われたときは、

「あっ、でも今は酷い風邪引いているから安静にさせて、……ごめんね。」

私は友達相手でも平気で嘘を吐いた。でも辛い…………。

「……良いなぁ、上の妹は結構わがままで私を困らせてばっかなんだよ?」

更に舞衣ちゃんが妹のことを話してくれる。

「でもね、本当に困っているときは何も言わないの。おかしいよね、ばればれなのに。」

そして私と違ってよく見てて、よく喋れていた。対して私は、優ちゃんのことを喋り過ぎて、みんな優ちゃんのことを荒魂扱いして、いや私の大切な物が全て無くなってしまうのではないかと思い、何も喋れなかった。

「……う、うんそうなんだ……。」

そんな舞衣ちゃんを見て本当の仲の良い姉妹とか姉弟はこうじゃないのかと、舞衣ちゃんの方が“おねえちゃん”として立派なんじゃないかと私はいつも思っていた。だから私は、本当は優ちゃんのことを何と思っているんだろう。優ちゃんは私のことを本当はどう思っているんだろう。……それを考えるだけで辛かった、惨めだった。

『だから、約束。…私はお母さんみたいに人を守って、感謝される、“正義の味方”のような強い刀使になりたい。だから、私は優ちゃんのことも怖い物から守るし、今度は何があっても救ってみせるよ。』

私は“おねえちゃん”としては失格かも知れない。けれど優ちゃんとの約束を思い出した私は剣術を頑張った。好きな剣術でもっともっと上を目指した。そして手を伸ばして、掴んでいけば力になって必ず優ちゃんとの約束を守れると思い頑張った。

けれど、もう一人の私が囁いてきて、私は自問自答する。

『このままわざと剣術の試合が長引けば、決着が付かなければ優ちゃんのことを見なくて済むね?』

違う、そんなこと言わないでっ!

『違わないでしょ?どんなに強くなっても、どんなに自分の好きな剣術を磨いても救えないかも知れないと思ったから、こうやってわざと手を抜いて剣術を楽しむためという方便を造るために剣術バカな自分を演じて逃げたんでしょ?』

違う、私は本当にお母さんとの約束を守りたくて、本当に優ちゃんを助けたかったから、だから私は剣術を頑張っていつかあの日のように、普通の子に戻って欲しかったから今まで頑張れた!!お父さんも友達にも舞衣ちゃんにも嘘を吐いた!だからこれ以上、優ちゃんとの約束まで嘘にしたくないっ!これだけは本当の気持ちっ!!

 

『嘘。』

 

だけど、そんな私の叫びを『嘘。』と言ってばっさりと切り捨てるもう一人の私。いや今の私の本性なのかも知れない。

『でも気付いているんでしょ?相手を倒して倒してみーんなやっつけちゃったら行きつく先にあるのは、優ちゃんも誰も居ない孤独。あなたは優しいし、友達思いで弟思いかも知れないけど、結局はそれが怖くて剣術に逃げて、しかも全力を出してしまえばすぐに立ち会いが終わって優ちゃんを見なければならないから、約束が守れないかも知れないからわざと手を抜いて立ち会いを長引かせた臆病。結局は冷たくて自分本位なだけじゃない。』

いつ誰に言われたか分からないけれど、“優しいし友達思いだけど冷たくて自分本位”と言われたことを思い出し、何も言い返せなかった。

『大好きでカッコイイお姉ちゃんの助けになりたい。』

けれど、優ちゃんがそう言ってくれるだけで、私はまだまだ止まらない、まだまだひたすらに進めると、頑張れると思えた。

それを信じて前を向き、目を開いた、“冷たくて自分本位”というのは利己的かも知れない。けどこれまでの私とこれからの私の全てを壁にぶつけて壊していけば、そしてこの先は何が待っていても、流した涙もきっと笑って話す日が来る。

 

 

けど刀使は、“正義の味方”は18歳辺りになってしまったら力を失って返納するか。私以上の適格者が現れたら変換しなくてはならないことを知った私は、もう4年かそれよりも少ない時間で優ちゃんを救わなければならなかった。だから、私は、上が見えなくなるのも怖かった。……そんな、そんな未来もずっと見ていた。




今回も文字数が多くなりそうなので、次回も優と可奈美の過去の続きの予定です。長いですがご勘弁をお願いします。
あと江麻学長等が可奈美達への報告が遅れた理由も書く予定です。

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