【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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33話を投稿させて頂きます。

折神家本邸に突入するまでの間、優は何を思って戦っていたのかという話です。
すいません、大分遅れました。
何とか、平成最後の投稿となりそうです。


Save you save me 3

「………………。」

この日、江麻学長は悩んでいた。

親友の息子衛藤 優が荒魂と人体の融合実験の被検体となっていたことに、いかにすべきか悩んでいた。

公表すれば、親友の忘れ形見の人生が狂ってしまう。

かといって、隠蔽すればスレイドという悪党を処罰することができなくなる。

「…………どうして、こんなことに……。」

彼女は己の無力感を感じながら、そう呟くだけで精一杯だった。

そして、彼女は決断するしかなかった。

優が荒魂と人体の融合実験の犠牲者であることを隠すことを、……親友の忘れ形見が何事もなく平穏な人生を送ってほしいがために。

「美奈都……貴女は今の私を見たらどう思う?…………」

そして、江麻は隠蔽しようとしている今の自分の姿を美奈都が見たらどう思うであろうかと。そんな自問自答している中、不意に恩田 累からの着信があった。

『……もしもし、学長ですか?少しお話が……。』

その後、累から舞草という組織が存在すること、朱音から聞かされた二十年前の真実、紫が大荒魂であることを知り、舞草に協力することとなる。

 

 

 

 

 

 

僕の名前は衛藤 優と言います。

僕は大好きなカッコイイ刀使の可奈ねーちゃんの友達と共に、かまくら?か何処か忘れましたけど、御前試合という名前だったと思います。その場所へ向かっていました。

そして、可奈ねーちゃんは、順調に勝ち進んでいました。それを見て、可奈ねーちゃんが嬉しそうなのが、僕も嬉しかったです。

そのあとは、可奈ねーちゃんが二本(紫のこと。)に斬りかかった緑の服(姫和のこと。)を助けたから、大変なことになると分かってしまったので、僕も一緒に行くことにしました。

「これ以上付き纏われるのは迷惑だ、ここで斬り合うか、さもなくば……」

そう言って、緑の服は御刀を構えて威嚇していたのが気に食わなかったけど、

「ええと、ほら、あの、力が戻ったら、ちゃんと試合して欲しいから…うん、それだけ。」

僕のために強い刀使になろうとしている可奈ねーちゃんがそう言ったから、この緑の服を殺すことができなかった。

「…おい、何している、危ないから退け。」

「やらせない。」

だから僕は手を広げて遮ることしかできなかった。例え、この緑の服に斬られても、この緑の服が強い刀使となって、可奈ねーちゃんが倒してくれたら可奈ねーちゃんが強い刀使になる。だから、斬られても大丈夫だと思った。

でも、僕を斬ることもできなかった緑の服は何か常に偉そうだったけど、可奈ねーちゃんのために色々用意してくれたり、僕の服も考えてくれたり、チョコミントっていう美味しい物をくれたから悪い人じゃないかも知れない。…………名前は姫和おねーちゃん、ちゃんと覚えておこう。

 

 

 

 

次の日には、荒魂が出てきたから、可奈ねーちゃんと姫和おねーちゃんが少し言い争っていた。

けど、何となく姫和おねーちゃんが悩んでいると思ったから、僕は思ったことを言ってみた。

「それと、病院で可奈ねーちゃんが言ってたんだ。刀使は人を守って、感謝される、“正義の味方”だって。それを聞いて僕は、強い刀使になれない僕は、僕を助けてくれた大好きでカッコイイお姉ちゃんの助けになりたいと思ったんだ。僕と一緒で姫和おねーちゃんもそんなお母さんが大好きだから、刀使になったんだと思ったんだ。だから、僕は姫和おねーちゃんと可奈ねーちゃんのために頑張りたいんだ。」

僕は姫和おねーちゃんも可奈ねーちゃんと一緒で頑張っているから、応援したくなって、僕が思ったことを素直に伝えてみた。すると、姫和おねーちゃんはそれに応えて頑張ってくれた。それを見て、僕は姫和おねーちゃんも助けようと心に決めた。そうすれば、姫和おねーちゃんは可奈ねーちゃんと立ち会いしてくれて、強い刀使にしてくれる。そして、可奈ねーちゃんが僕達、いや僕も救ってくれる。だから、可奈ねーちゃんの親友の舞衣おねーちゃんに斬られたって大丈夫だよ?何で姫和おねーちゃんはそんなに慌てるんだろう?……よく分からない。いつか、可奈ねーちゃんが救ってくれるから腕の一本くらいどうということはないのに……。

 

 

 

 

その後は、累さんのお家に厄介になりました。

お世話になったから、可奈ねーちゃんと姫和おねーちゃんの僕を含めて三人で部屋の片付けとか、ごはんの用意をしました。それに、累さんが喜んでくれたのが僕は印象に残りました。

それから、累さんが話があるとかで私室に招かれると、パソコンで姫和おねーちゃんは誰かと連絡を取っているところに、誰かがこの部屋に窓から入って来るなり、可奈ねーちゃんと姫和おねーちゃんに刀を向ける奴が来る“先”が見えたから、僕はそいつを倒すために窓の前に立つ。すると、案の定うさぎみたいな奴(沙耶香のこと。)が現れた。……こいつは、可奈ねーちゃんと姫和おねーちゃんを傷付けようとした。それで、このうさぎを倒す理由は充分だった。……こいつは可奈ねーちゃんにとっても、姫和おねーちゃんにとっても邪魔にしかならないから要らない。このうさぎは動きがすばしっこいけど、単調だから倒し易い。

「駄目ッ!!優ちゃんッ!!」

けど、可奈ねーちゃんに止められたら仕方が無い、可奈ねーちゃんの邪魔をしてはいけないし、嫌われたくないから。……でも今の内に殺しておいた方が良いと思うけどなぁ……、どうせ、後で邪魔しに来るんだし。

 

 

 

 

次の日には、でっかい(エレンのこと。)のと、ちっこいの(薫のこと。)が邪魔しに来た。

昨日のねずみと同じだから倒そうと思ったけど、可奈ねーちゃんでも充分勝てる“先”が見えたから僕は可奈ねーちゃん達に任せることにした。……強い刀使になりたい可奈ねーちゃんの邪魔はしたくないから。……けど、可奈ねーちゃんの足に噛み付く邪魔な“物(ねねのこと。)”はなんかムカついたから踏んづけた。

そして夜になると、またでっかいのとちっこいのと邪魔な物が現れた。

言っていることがよく分からないから、どうしようかと思って可奈ねーちゃんに聞いてみた。

「可奈ねーちゃん、アレは味方ってこと?」

可奈ねーちゃんは、「そうだよ。」と答えてくれたから、味方なのだろう。

でっかいのじゃなくてエレンおねーちゃん、ちっこいのじゃなくて薫おねーちゃん、それと邪魔物じゃなくてねねちゃん。……覚えておこう。

 

 

 

 

その日の夜はすこぶる最悪だった。

何が最悪だったかと問われれば、二本のおまけの人達(真希と寿々花のこと。)に僕を安全な所へ連れていくとか、勝手なことばかり言ってきたことだ。

「寿々花、子供の言うことだ気にするな。……案ずることはない、君を安全な場所に――――。」

……うっさいなぁ、なんかゴチャゴチャと勝手なことばかり言っているけど、僕を救ってくれるのは可奈ねーちゃんじゃなければいけないから、おまけが勝手に決めるなよ。……だから、可奈ねーちゃんの邪魔をするおまえらなんか要らない。

でもまた同じこと言ってきたら、……“僕”が“僕”で、“可奈ねーちゃん”が“可奈ねーちゃん”でなくなっちゃうから、ちゃんと片付けないと……。

 

 

 

 

「ねえ、優ちゃん聞いてくれる?」

その次の日の朝、可奈ねーちゃんが話しかけてくれた。こういう時って、大事なお話しだからちゃんと聞いておかないと。

「……あんまり、人を殺しちゃうのはダメだよ。お姉ちゃん悲しむから。約束、約束だよ。」

理由は良く分からないけど、人を殺すのは良くないことらしい。ジョニーくんに人殺しをさせていた大人とか、ニキータちゃんやヒメちゃん、ミカさんのことをいいように使っていた大人達とかは殺しちゃいけないの?とか、荒魂とそんな人達はどう違うのとか、おねーちゃん達は人と同じで悪い奴も良い子もいる荒魂を斬りまくっているのに何で人は殺しちゃいけないの?とか、訊きたかったことは沢山有ったけど、可奈ねーちゃんを疑うのは“僕”ではないから疑うことを止めて、

「んっ、分かった。」

とだけ返事をした。

まっ、いいか。人を殺さない。つまり、殺さなければ良いだけだから手足を潰せば動けなくなるし、あの邪魔をして来た二本のおまけの人達はなんか荒魂の気配がしたから多分、姫和おねーちゃんが言っていた荒魂化した人?だと思う。そういうのは人じゃないらしいから、おまけの人達は何匹でも潰して良いか。それ以外は手足を潰せばいい訳だし……。

 

 

 

 

……知らない間にエレンおねーちゃんが捕まっちゃったらしい。

ねねちゃんも悲しそうだから、必ず助けないとね。

それと、刀使の制服を着ておまけの人達を殺す……じゃなくて、潰しに行くことになった。……何だか、刀使の制服を着てると荒魂を倒しに行く刀使になったみたい。ジョニーくんがお面とか被ったり、ドレス着たり、妖精の羽とか着けて戦うと何も感じないし、気分が良いって言っていたけど、本当だったね。

……それを考えると、楽しくなってきた。だから、何匹潰しても何にも思わないで戦える。

 

 

 

 

そして、おまけの人達がまた二匹、いや三匹も増えた。

いいかげん鬱陶しい。……どうしようかヒメちゃん達に聞いてみたら、

『敵の言うことなんか信じんな。さっさと倒して帰ろうぜ。』

『そうよ、そんなこといって、騙す奴が多いんだから、気を付けないとダメよ!』

と悪い大人の甘い言葉に騙されて、散々利用されたジョニーくんとミカさんがそう教えてくれた。

『この人達、甘そうな人だから不意を突けば良いんじゃないかな?』

『よし、なら優。隠世から武器を取って不意を突けばよいぞ。』

ニキータちゃんはそういうのに詳しいなぁ、物乞いをやらされていた頃に悪い大人達から物を恵んでくれそうな人を教えてもらったんだっけ。

……なら、ヒメちゃんが言っていた通り、ポケットに手を入れて、そこから隠世に入れた拳銃を取って、撃てば良いか。

じゃあ、鬱陶しいから…………そろそろ消えろ。

あっ、仕留められなかった……。ゴメン、可奈ねーちゃん。役に立てなくて。

でも、エレンおねーちゃんを助けてあげれなかったら可奈ねーちゃんは悲しむ筈だからそっちを優先する。

そして僕はジョニーくんが言っていた通りに、黒い服を着た人達(STT隊員のこと。)が可奈ねーちゃんの所に行かないように、幹線道路の上に陣取ることにした。そうすれば、おまけの人達と黒い服を着た人達を分断することができるから、可奈ねーちゃんはおまけの人達を相手にするから、可奈ねーちゃんは強い刀使に近付けるかな?夢が実現できるかな?

 

 

 

 

今日、僕は色んなことを教えてもらって、教わった。

「おまえ、人を痛めつけてそんなに楽しいか!?おい!!」

言っている意味が分からなかった。

殺していないから、別に悪いことじゃないでしょ。何言っているんだろう?

…………とりあえず、重たいから“コレ”を退かそう。さっき使った拳銃で“コレ”の指を撃つか、痛くて呻く筈だから、その間に抜け出して、殴って気絶させよう。

…………でも、人を痛めつけて楽しいって、どういうことだろう。

……人を痛めつけて楽しい、……痛める、……傷つける。……楽しい、……嬉しい。……何が嬉しいんだろう?

そんなことを考えていたら、ふと可奈ねーちゃんのことを思い出しちゃった。

 

――――良く頑張ったね。――――

 

――――偉いね。――――

 

……ああ、こいつら倒したら可奈ねーちゃんは喜んでくれる。だから僕は、“人を痛めつけて楽しむ”ことと“大切な人のために戦う”ことを教えてくれたこの他人に感謝しよう。

ありがとう、大切なことを教えてくれて。……やっと、可奈ねーちゃんが喜んでくれるかも。それを考えると嬉しくなって、鼻唄歌いたくなってきた。

……これが、“楽しい”ってことなんだ。

 

 

 

 

今日も役に立てなかった……。

笑いながらこっち来た変な女(ソフィアのこと。)が邪魔過ぎる。お陰で苦労したし、そのうえ可奈ねーちゃん達を怪我させてしまった…………。

…………やっぱり、殺した方が良いんじゃないかな?ああ、いけない。可奈ねーちゃんを疑ってはいけない。可奈ねーちゃんはきっと意味があるから、“人を殺してはいけない。”って言ったんだ。だから、僕はそれを守らなきゃ…………。可奈ねーちゃんの約束すら守れない弱い僕が悪いんだから。

 

…………許さない。おまけ(夜見のこと。)の一匹が可奈ねーちゃんの首を絞めたから、それだけでコイツを殺す理由としては充分。荒魂化した人は人じゃないから、殺しても何も問題無い。

でも、可奈ねーちゃんがコイツを殺してはいけないって言ってきたから、僕は殺さないようにするため、身体に御刀を自分に刺して、コイツを倒しに行った。

僕は肉の塊となったシェパード?おじさんを持つとおまけの御刀を防ぐ盾にして、おまけが御刀を抜くのに一苦労している間に腕を折って御刀を持たせなくさせると、剣術は足腰が大事だと可奈ねーちゃんが言っていたから足を折ってやった。

でも、しぶといなぁ、まだコイツ殴りかかってくる。

時間が無いから、決着をつけるか…………。

 

……殺さないように、……殺さないように、……殺さないように、……殺さないように。

 

あっ、殺しちゃったかな?……ああ良かった。可奈ねーちゃんとの約束を守らなきゃいけないから、死んでなくて良かった。

じゃあ、もうコイツとは関係ないからいいや。

…………やっぱり、みんな変な目で僕を見る。何でだろう?

 

 

 

 

パーティーが終わって、潜水艦から覗ける海の中を“みんな”で見ていた。

ジョニーくんもミカさんもニキータちゃんも、あとヒメちゃんも初めて見るのか嬉しそうな声をしていた。

見たことない魚とか一杯居るのが楽しいから、僕もみんなで見るのが楽しかった。

「どうした?そんなところで。」

そんなとき、姫和おねーちゃんが話しかけてくれた。

……でも、パーティーのとき何で辛そうだったんだろう。

 

『荒魂化した人はもはや人ではない、』

 

ああ、そうか。姫和おねーちゃんが言っていた通りだ。

 

僕は、僕は荒魂なんだ。……だから、みんな変な目で見ていたんだ。可奈ねーちゃんもそんな目で見るときがある……。だから僕は、姫和おねーちゃんが立派な刀使になれるように、前へ進めるように、

「姫和おねーちゃんは凄いよ、色んなことを知っているし、可奈ねーちゃんに決着を挑まれるくらいだもん。それに、お母さんのために今まで一人で頑張って来たんだから、姫和おねーちゃんの言っている事は何一つ間違っていないよ。……だから、姫和おねーちゃんのことを何も知らない癖に悪く言う奴と邪魔する奴は一匹残らず僕がやっつけてあげる。だから、僕は可奈ねーちゃんと同じくらい姫和おねーちゃんのことが大好きだし、会えて嬉しかったし、少しでも助けになりたい。」

僕は思ったことを素直に言う。……本当に僕は荒魂になったかも知れないけど、悔いはない。

荒魂になっても、ヒメちゃん、ミカさん、ジョニーくん、ニキータちゃんが、そして可奈ねーちゃんと姫和おねーちゃんや薫おねーちゃん達が居る。……大切な友達が居るなら、大切な人に出会えたなら、何も怖くない。それだけで、僕は、……僕はみんなに会えたならそう悪くない人生だと本気で思えるよ。

 

 

 

 

またうさぎに会った。

でも、何時の間にか可奈ねーちゃんと仲良くなったらしい……。

…………まあいいか、可奈ねーちゃんがそれで良いなら何も問題ない。

宜しくね、沙耶香おねーちゃん。……名前は覚えておこう。

それと話していて分かったけど、沙耶香おねーちゃんも大変なんだな。……何をすれば良いのか分からないんだ。だったら、僕は“大切な人のために戦う”ということを言おう、そうすれば、沙耶香おねーちゃんも“強い刀使”になってくれると思うから。

元気が出るなら、僕は背中から押す手のように、僕の考えを、声を響かせて、“強い刀使”になって貰うよう僕もがんばろう。

……大切な人、尊敬できる人が増えた。探してたものは近くにあって、そして一杯有った。……本当に、ミカさんの言っていた通りだ、みんなに会えたならそう悪くない人生だと本気で思えるよ。

 

 

 

 

そして祭りの日、僕は姫和おねーちゃんが一つの太刀を使って、おっきい荒魂を倒そうとしていたことを事前にヒメちゃんから教えてもらった。

……一つの太刀を使うと、姫和おねーちゃんが消えちゃう。

……そんなの嫌だ。大切な人が消えるくらいなら、僕がそのおっきい荒魂を入れればいいんだ。そうすれば、僕が強い荒魂になれば可奈ねーちゃんか姫和おねーちゃん、もしくは可奈ねーちゃんの友達が僕を殺せば強い刀使になって、可奈ねーちゃんが強い刀使になれば僕を救ってくれる。……それが、僕の全て。……それしかできない僕の全て。

 

 

 

 

祭りの夜、僕の大切な人達を傷つけようとする人達が一杯来た。

……どうしよっかな、可奈ねーちゃんとの約束だから、人は殺せない。困ったな、先に殺しておかないとシェパード、マイケルだったかな?みたいに可奈ねーちゃん達が殺されちゃう。役に立てない。大切な物、想い、人、全てを守ることができない。

 

「荒魂が人を荒魂呼ばわりするか!」

 

……ああ、そうかあれは荒魂だったんだ。気が付かなかった。

やっぱり、姫和おねーちゃんは凄いや。……だったら、殺せる。大切な物を全て守れる。だから、全員殺そう。可奈ねーちゃんは喜んでくれるかな?

「おい、止まれっ!!」

「待て待てっ!あれは男の子だっ!!荒魂になったのは刀使だ!!!」

だから、死んでね。

 

 

 

 

そうして、全てが終わった。

この人達、良い人だな。こんなに一杯武器をくれる。色んな武器が手に入った。…………けど、沙耶香おねーちゃんが、

「何で!?何でこんなことするの!!?」

沙耶香おねーちゃんが騒いで来た。……どうしたんだろう?僕は荒魂を倒しただけで、可奈ねーちゃん達をバカにしたのが許せないのもそうだけど、……僕にしかできないことだと言ったら、

「……でも、そんなのは間違っている。もう戦っちゃダメ。」

そんなことを言ってきた。

何なのそれ?言ってる意味が分からない。僕は可奈ねーちゃんを強い刀使にすれば、僕は、僕達は救われるから頑張っているのに、何それ?

それに、沙耶香おねーちゃん達は散々荒魂を殺しているのに、どうして人は殺してはいけないの?

もういいや、可奈ねーちゃん、コイツ許せない。消せば何もかも無くなる。……それでいいや、コイツが居なくなれば、僕達は救われる。

……僕達は救われて、可奈ねーちゃんは夢だった強い刀使になって喜んでくれる。……それが、幸せなんだ。それを邪魔するな。

「いや、優、こいつらは荒魂だ。沙耶香はこういうことは(戦闘)初めてだから、気が動転していただけだ。」

そうだったんだ。知らなくてゴメンね。沙耶香おねーちゃん。

 

…………けど、可奈ねーちゃんは辛そうだった。何がいけなかったんだろう?

 

…………そうだ!記念日にしよう。たくさん、たっくさん邪魔な奴等を一人で排除できた、とっておきの記念日、……そうすれば可奈ねーちゃんは喜んでくれる。それまで助けられないけど、待ってて、ゴメンね。

 

 

 

 

 

 

 

優は、コンテナの中で思い出していました。

 

友達のお陰で、荒魂と人はそんなに変わらないこと――――。

 

そして、この世界は子供すらも平気で利用する人達が居ること――――。

 

そんな世界から、可奈美がいつも自分を守ってくれたこと――――。

 

そして、可奈美がタギツヒメとミカ、ジョニー、ニキータ、そして姫和と薫達、大切な“思い出”と“宝物”を引き合わせてくれたこと――――。

 

それらをつぶさに思い出し、大切な“思い出”と“宝物”全てを守れるなら、荒魂となっても何も思わない。何も感じない。

例え自分が荒魂扱いされ、斬られたとしても、何時か、可奈美が強い刀使になり、自分とタギツヒメ、ミカ、ジョニー、ニキータを救って、姫和とも笑って話す未来を見ていたからこそ、可奈美を信じることができました。

 

そして、優もマイケルとシェパード、ロークの様に大切な“宝物”と“思い出”を失いたくないので、折神家本邸へと向かいました。例えこの身が果てようとも――――。




優「ヒメちゃん、ミカさん、ジョニーくん、ニキータちゃんとか見ていたら、荒魂も人もそんなに変わらないから、邪魔する奴は平等に倒すね。」

……優くんは、荒魂も人も平等に扱っています。かなりの危険思想だけど。

次回、本編に戻り、折神家本邸のところに話が戻ります。そして、結芽ちゃんが出てきます。

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