個人的に書きたかったサイコパスVSバトルジャンキーがやっと書けました。
S装備のコンテナが射出され、可奈美達が折神家本邸へ突入した同時刻――――。
刀剣類管理局は騒然としていた。
「おいっ!何がどうなっている!!」
「それよりもさっきのS装備のコンテナは何処に着地したんだっ!?」
先程、鎌倉一帯が停電した影響で、作戦本部は一時的に機能が麻痺してしまった。そのため、S装備のコンテナが何処に着地したか未だ不明のままであった。
「報告!美濃関、平城の管轄区、並びに付近にて荒魂が多数現れたため、救援を求めると……!」
「そんなものは今は後回しにしろっ!賊を討伐するのを優先だっ!!」
美濃関と平城の帯刀権を剥奪し、武装解除させてしまったため、荒魂討伐ができる刀使が居なかったのにである。いかに作戦本部が混乱していたか分かる。しかし、彼等は気付いていない。この報告は折神家の警備の数を減らすための嘘であることに……。
「直ぐに美濃関の地区は鎌府に、平城の地区は綾小路に、付近の荒魂は警備の刀使に対応させて下さい。賊は我々親衛隊のみで対処します。」
折神家親衛隊第三席皐月 夜見が作戦本部にそう指示していた。
「……しかし、賊はS装備のコンテナの数から、恐らく6名ほど侵入しました。鎌府は美濃関に向かわせず、こちらに向かわせるべきでは?」
作戦本部室の管制指揮官が今からでも鎌府の刀使を何名か応援を要請すべきではと具申していた。
「……紫様からの指示です。今この状況で荒魂を放置してしまえば刀剣類管理局の信頼は地に落ちるでしょう。……ですので、賊は我々だけで対処します。」
刀剣類管理局の局長からの指示と言われ、「分かりました。」と言い従う管制指揮官。……しかし、本当の狙いは優の中にいるタギツヒメを吸収する処を誰にも見られたくないからなのだが、それには誰も気付かなかった。
夜の鎌倉は、もとい折神家本邸は不気味なほど静寂に包まれ、月の光だけが頼りだった。
そんな中、可奈美達六名はただひたすらに進む。一つの目標に向かって。……折神 紫を倒すことを胸に誓って、ただひたすら無言で祭壇へと向かって行った。
そうして、姫和と可奈美が最初に出会った門の前まで進み、本来ならば昔日を思い出し感慨に耽っていたであろう。しかし、可奈美達五人が纏っているS装備(優は、刀使専用の装備を纏っても効果があるかどうか分からないので辞退している。)の稼動限界時間を考慮してか、彼女達は何も言わず、薫も誰かに頼まれた訳でもなく、猿叫と共に祢々切丸で門を破壊する。しかし、そこで――――。
「…折神紫親衛隊第四席、燕 結芽。」
白州の上で、結芽が名乗りを上げて立ち塞がっていた。笑顔もなく、誰も通さないという意志が見て取れるほどに……。
「親衛隊っ、……一つ聞かせろっ!穢れたノロを注入させた折神 紫を、そのノロの力を頼ってでも守る意味がどこにあるっ!」
姫和は、荒魂を注入された年下の子供に何かしら想うところがあるのか、説得しようとしていた。
「!……何も知らないくせに、……でもおねーさん達ひとつ間違ってる!私は、私は戦いに荒魂なんて1ミリも使ってないもん、これはぜーんぶ私の実力なのっ!!」
しかし、結芽にとって姫和の説得は侮辱以外の何物でもなかった。そのため、結芽は姫和の言葉を拒絶していた。
(……私は、時間のある内におねーさん達を全員倒さなきゃいけない、……だから!)
そして、結芽も時間が限られているため、親衛隊という場所を守るため、結芽という人が居たことを一人でも憶えてもらうために、結芽は先ずは舞衣を狙おうとするが、
「うわっ!!」
優が短機関銃のMP5でこちらを狙っていることに気づき、慌てて写シを張り、何とか銃弾を受けずに済むが、小さい子供が何食わぬ顔で発砲しつつこちらに近付いてきたことに驚愕する。
「なっ……!」
そして、優は空となった弾倉を抜いて結芽に向けて投げ、注意をそらしている隙に銃把で殴り掛かり、鍔迫り合いに持ち込むと、結芽を力技で可奈美達から離していった。
「……こいつは任せて、僕がやる。」
「っ!」
どうやら、優は結芽を相手にする気らしい。それを知った可奈美は止めようとするが、
「行くぞ、可奈美!」
可奈美を無理矢理引っ張って祭殿へと走る姫和。それに驚き、思わず抗議の声を上げる可奈美。
「ちょっ、ちょっと姫和ちゃんっ!?優ちゃんを一人にっ!」
「……いいからっ!!」
しかし、舞衣に大きな声で遮られるかのように言われ、思わず押し黙る可奈美。
「可奈美、大丈夫だ!あの親衛隊が言っていただろう?“戦いに荒魂なんて1ミリも使ってない。”と、ならあいつは“人”だ!それに、優はあいつに負けない。」
姫和は結芽のことを先程の問答でノロによる強化がされていないただの“人”であると納得していた。それならば、優は一度親衛隊二人を同時に相手取ったことがあるため、負けはしないと思っていた。
「私達の誰でもあの親衛隊を一人で抑えるのは、二人でもどうか……。私達には……時間がないから、私達の最大戦力は間違いなく優くん、でも優くん一人だと大荒魂の相手は無理だから、龍眼に対抗するには多人数を割かなければならない。ならツーマンセルに長けていて、実力もこの中では高い可奈美ちゃんと姫和ちゃんだけでも大荒魂の元へ届けないといけない……、優くんがそれを言ってきたから、だからっ!!」
舞衣は、事前に聞いていた龍眼対策のために、一人でも多くの戦力を、S装備の稼動時間を割かせず、大荒魂の元へ向かうことが最善だと判断し、優単独で結芽の相手をさせることにしたことを語る。
「……ごめん、舞衣ちゃん。」
舞衣が苦渋の末に判断したことを理解した可奈美もそれに同意するしかなかった。姫和の“結芽が荒魂を1ミリも使っていない人”であるから、“人”は殺さないと約束してくれた優が何もしないことを信じて、可奈美は先に進むことを決断した。そして、
「……ねね、頼んだ。」
薫は、可奈美を少しでも落ち着かせるため、ねねに優のお目付け役を任じていた。
「……薫ちゃん……。」
「気にすんな、ねねもあいつのこと気に入っているらしいからな……、だから、早く終わらせようぜ。」
薫は、ぶっきらぼうにそう答えていた。
「……ありがとう、皆。」
可奈美は、誰にも聞こえないぐらいの小さな声で、そう呟いていた。
結芽と優は、既に鍔迫り合いの状態から、互いに向かい合って対峙している状態へとなっていた。
「なんで余計な真似するの!?」
結芽は邪魔をしてきた優に抗議する。
「……敵だから。そんでもって、沙耶香おねーちゃんと舞衣おねーちゃんと、そして神社に居た人達の仇だから。」
そして優もいつも通りの無表情で、バッサリと結芽の抗議を真っ向から叩き斬っていた。
「だから何!?そんなの弱いのが悪いだけでしょ!知ってるよ、結芽知ってる。弱いから群れているんだ、だからあんたは荒魂に頼らなきゃ誰にも勝てない。だからあんたは此処に置いてかれたんだっ!!」
結芽は思いつく限り、“自身の体験”を元に、優を罵倒していた。
「あのさぁ、……一つ言っていい?」
しかし、優は何となく、それが結芽の罵倒になると理解し、
「そんなに言うほど強くないおまえが言っても、何にも思わないんだけど?」
結芽に返していた。尚、優の強いか弱いかの基準は可奈美である。そのため、結芽を見て最終的に可奈美よりも強くならないと龍眼で分かってしまったため、優は結芽のことを自分が強いと勘違いしていて、親衛隊の中で群れているのに群れている人は弱いと言ったり、荒魂の気配がするのに荒魂に頼っていないと言ったり、舞衣や沙耶香、舞草に居た刀使の人達を侮辱したことに優は結芽に憤りを感じていた。
「……はぁっ!!?」
しかし、結芽もその言われように憤慨した。真希や寿々花、夜見が在籍している親衛隊の中でもトップの実力を持つ自分がそんなに強くない?結芽はそんな訳が無いと強く思った。認めてしまえば、真希や寿々花、夜見が弱いと認めることになるため、ただの子供の強がりであると思っていた。
「……もういいよっ!すぐに片付けて追いかけるんだからっ!!」
結芽はそう言い放つと共に疾走し、優を御刀ニッカリ青江で気絶させようとするが、いとも容易く攻撃を流され、反撃されてしまったことに驚愕する。
「んなっ!?」
結芽は、荒魂の気配がするので多少は身体能力が上がっているだろうとは思っていたが、こうまで容易く躱わされるものなのかと、疑問に思ってしまった。彼女は知る由も無いが、優は龍眼を使って先を読み、それに対応していただけに過ぎなかった。
「……何かコイツ鬱陶しい。」
そして、優は結芽のことをただの荒魂と化した人で、自分の“宝物”となった舞衣や沙耶香のことを侮辱し、自分のことを強いと勘違いしている鬱陶しい“邪魔物”としてしか見ていなかった。
そうして、可奈美達は五人となり、祭殿へと向かう道中。
「親衛隊第三席皐月 夜見……。」
夜見がこれ以上は通さないと言わんばかりに立ちはだかっていたため、可奈美達五人は立ち止まってしまう。そして、
「やはり帰ってきたわね沙耶香、……どう?この世に貴女の望んだ物が有った?それとも貴女が望んで得た物は何の価値も無いことに気付いて、捨てて来たのかしら?」
「……高津……学長……。」
雪那が可奈美達、いや舞衣と沙耶香の前に姿を現した。その姿を見た舞衣は緊張しているのかゴクリと咽を鳴らしていた。
「まあ、どちらにしろ良いわ。貴女達二人がそいつらを捕らえてくれるのなら、今までのことは水に流してあげるけど、どうする?」
雪那は、舞衣と沙耶香が可奈美達を捕らえれば、今までの罪は免除すると言ってきた。それに舞衣は雪那を真正面から見据え、
「そんなつもりで戦いに来たんじゃありませんっ!!あなただってもう分かっている筈です。折神 紫は忠誠を尽くすべき人ではないとっ!!」
「だからどうだと言うのだ。……あの女は、犠牲にした者を見捨て、私に非道なことをさせて労いの言葉すらなかったあの女に……。」
このときの雪那の小さな独白のような呟きは、誰にも聞こえなかった。
「それよりも、お前と沙耶香が信じてきた理想はどうなった?ただ現実という名の暴力に屈しているではないか?……どこに居ようと理想と現実は相容れぬ物だ。一つになることはない。現に優しさや愛情、友情といった物を求め、私の元を去ったお前達は今は何を抱いて此処に来た?復讐、怨嗟、そんなものを抱いて此処に来たのではないのか?」
「だとしても、沙耶香ちゃんも可奈美ちゃん達も渡しません。そして、私もあなたの元に戻る気はありません!……あなただって、本来なら此処に居るべき人じゃないはずです。」
「もし此処を離れて何が変わる?犠牲は犠牲として終わるだけだ。……お前が私の前に現れて、沙耶香を連れて行ったときこうなる運命だったのだろうな……。あの二人だけは生かして捕らえろ。」
雪那と舞衣、どちらも一歩も引かずに互いの主張をしていた。そして、埒が明かないと判断した雪那は夜見に沙耶香と舞衣のみ捕えろと命じる。
「うわっ!?」
突如、横から濁流のような荒魂の群れを受けてしまう薫は、可奈美達と離れてしまう。
「薫ちゃんっ!」
「くそっ……囲まれている!」
可奈美は薫の身を案じる声を上げるものの、冷静に他の皆と共に方円の陣形を組み、突如現れた夜見の荒魂の群れを対処していた。
「……左前方!一気に突っ込んで!!」
舞衣は司令塔として、皆を荒魂の群れが無い所へ誘導し、夜見の対処をするために一人残ろうとするがっ……。
「きええええええっ!!」
突然、猿叫と共に大上段からの振り下ろしで、夜見の荒魂の群れをまとめて排除し、祭壇への道を作っていた。そして、薫は、
「ここは任せて先に行け!よし!今度は言えた言えた。…とりあえず我が生涯に悔いなし!」
「薫ちゃん!」
軽口を言ってここに留まり、夜見を一人で倒すつもりでいた。
「いいから行け!…こいつには色々と借りがあるからな。それに、一人でも多く行かなきゃなんねーだろ!」
笑顔で可奈美達にそう告げる薫。
「……早く来てね!先に行って待ってるから!!」
「おう、直ぐ行く!!」
可奈美は薫にそう告げると、薫もそう返事をすると、可奈美達は紫の元へと向かって行った。
「……貴女一人でですか。」
「ああ、そうだよ。オメェらなんかなぁ、沙耶香や舞衣が相手するより俺一人で充分だっ!!」
薫はそう言って、夜見を倒すと宣言していた。
「……すみませんが、今回は前のようには行きません。いや、負ける訳には……。」
夜見も、結芽のこと、真希と寿々花のこと、……そして、雪那のこと。それらを背負って戦う覚悟を決め、このときばかりは勝利を得んとしていた。
薫の言いつけ通り、優が人を殺さないように見守るねね。ねねの視線の先には、鉄の棒を持った優とニッカリ青江を持つ結芽が数回打ち合っており、互いに一歩も引かなかった。
「……くそ!時間、無いのに…!」
そして、結芽は苛立っていた。
自分よりも年下で、刀使ですらない男、そんな子供に一本も取れず、時間だけが過ぎていくことに……。
理由は、結芽は初めて自分よりも背が低い子供と戦っていること(相手の懐に飛び込んで突きを放つ得意技等が使えなかった。)と、棒を使う相手とは初めて戦うため、荒魂や刀使を相手にするのとは勝手が違ったからだが、心身共に余裕のなかった結芽はそれに気付けなかった。
「可奈ねーちゃんが心配だから、終わりにしよう。」
「…ナメんなぁっ!」
優はそう言うと、また結芽に鍔迫り合いに持ち込んでいた。
「同じ手なんか……!」
しかし、今回は違った。何故なら結芽に、強烈な光と音が襲いかかったからである。
「何、これ……?」
そのため、結芽は数秒ほど視覚と聴覚を失うが、直ぐにニッカリ青江を振って、近付けさせないようにしていた。しかし、
「うぐっ……!」
何かが足に深く刺さった感触がした。 結芽は数秒経って視覚と聴覚が機能し始めると、何が刺さったのか理解した。
(…対刀使用の矢!?)
そう、優は鍔迫り合いと同時にSTT隊員の死体から奪ったスタングレネードで目眩ましをし、対刀使用の矢を投げて結芽の足を動き辛くさせていた。
「私は認めないっ!!こんな戦い!……ゲホッ、ゲホッ。」
結芽は強い自分を認めてもらいたいが為にノロの力に頼らず、刀使として、正々堂々とした戦いを求めていたことを告白していた。しかし、心身共に追い詰められていたためか、遂に左胸を押さえて血を吐いてしまう。それを見た優は左胸が弱点だと判断し、更に追い詰めるように、何度も鉄の棒で左胸を狙って殴り掛かっていた。
「私は……、もっともっと戦わないと!」
結芽は叫んでいた。例え、左肩の鎖骨が鉄の棒で叩かれ、砕ける感触がしても……。
「でないと、私のすごいとこ、見せられないっ!!」
結芽は叫んでいた。例え、左胸を鉄の棒で強く叩かれ、吹き飛ばされても……。
「……負ける訳には……。ゲホッ、ゲホッ。」
結芽は立ち上がっていた。例え、血を吐いても、足に矢が刺さったまま写シが解けて、血を流し歩きづらくとも、戦おうと、今の受け入れ難い状況に抗おうしていた。
「……あのさぁ。」
しかし、優は結芽の痛々しい姿を見ているうえで答える。
「ごちゃごちゃとうるさいんだけど?」
ただ何も動じず、ただ何も抱かず、ただ冷酷に言い放っていた。そして、結芽は背筋が凍る思いをし、気付いてしまった……。
目の前に居る子供は、自分のことを“人”として見ていないこと。
(違う……、)
目の前に居る子供は、自分が欲している“勝利”や“名誉”を何一つとして求めていないこと。
(……今まで色んな人と出会った。)
目の前に居る子供は、到底理解出来ない存在であることに。
(……けど、こいつはもう、人間じゃない!)
そして、目の前に居る子供は、自分が許容できない化け物だと思ってしまった。
「このぉ、……化け物っ!!」
結芽は、優のことを人間ではない化け物として見ることしかできなかった。いや、見なければならなかった。
結芽自身が言っていた“強い刀使”のというのが、目の前に居る子供に当て嵌まっているような気がしてしまったから……。
目の前に居る敵を何の感情も無く、ただひたすら名誉も賞賛も無く作業のように殺し、残虐な手段も選ばない子供のようになるような気がしたから……。
そして、自らが求めた“強い刀使”になろうとすれば、目の前に居る残虐な子供みたいになるぞと、その子供に言われている様な気がした……。
だが、そんな風になってしまったら、果たして自分は誰かに憶えてもらえるだろうか?気味悪がられるだけでは無いのか?それが事実だと、今の結芽には到底受け入れることが出来なかった。それを認めてしまえば、自分は目の前に居る子供の様になるために頑張っていたことになるから。
だからこそ、結芽は優に打ち勝ち、自分が正しいと証明しなければならない。だからこそ、再度写シを張り、がむしゃらにニッカリ青江を振り回していた。しかし、優は冷静に結芽の攻撃を見切ると、鉄の棒を捨てて注意をそらし、ニッカリ青江の柄を掴み、結芽の足を踏んで動きを抑え、結芽の脇腹に何度も何度も対刀使用の矢を刺していた。
「…ぐっ!…ゲホッ!……このぉっ!!」
写シのお陰で死にはしなかったが、何度も腹に刺され、何度も腹が焼けるような鈍い痛みをする思いは精神的に辛く、結芽は集中力を途切れさせないように必死であった。
「…こんのぉっーーーー!!」
結芽は悲痛な叫びを上げながら、優を蹴り飛ばして離すことに成功する。しかし、優は蹴り飛ばされると同時に対刀使用の矢を投げて、結芽の左胸に刺していた。
「あぐぅあっ…!」
結芽は悔しかった。
(こんなのに……私がっ……!)
こんな手を使う化け物に勝てないことに……。しかし――――。
「ね……ね……ねね……。」
突如、ねねが優の目の前で両手を広げて立ちはだかり、身体を張って止めようとしていた。これ以上、手を汚して欲しくないから……。
「?……ねねちゃん、何しているの?遊んでるの?」
だが、優には理解し難い行動であった。ねねが何故敵を庇うのか?何故自分の邪魔をするのか?理解できなかった。
「……ねえ、退いて?危ないよ?」
優はやさしい声音で、笑顔でねねに結芽を殺せないから退くように言う。
「……退かないと、困る。」
しかしねねも、結芽もこの優という子供を荒魂よりも末恐ろしい化け物か何かの様に思えてならなかった。
(……どいつもこいつも、邪魔ばかりっ!!)
多分、この子供は本当に退かなかったら、ねねですら何事も無く手に掛けるであろうと結芽は思った。刀使として正々堂々と戦う信念を持っていたら、この優という“鬼”のような子供には勝てないと判断し、せめて真希、寿々花だけでも救えたらと思い、ポケットの中にある物を使うことを決意する。
ポケットの中にある物は……皆さん分かりますね?ソフィア嬢が渡してくれた物です。
あと、優くん的に強い刀使は可奈美以上の実力者じゃなければならないようです。