【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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36話を投稿させて頂きます。
ソフィア嬢が甲冑着た理由は正体を隠すことと、ただの趣味です。


胡蝶の夢

タギツヒメの後ろに優の幻が見えた姫和は攻撃を躊躇してしまう。

「姫和ちゃん!!」

そして、姫和の危機を知らせる舞衣の声が聞こえず、タギツヒメが姫和に攻撃を加えようとしていることにも気付かぬまま姫和は立ち竦んでいた。

「ぐっ……!」

そのうえ、可奈美が姫和を庇い、可奈美の身体に紫の突きが刺さる。

「…可奈美っ!」

姫和は可奈美の苦悶の声で状況に気付き、自分の所為で可奈美は傷付いてしまったと深く後悔する。

「……ぜっやあああああっ!!!」

だが、写シの上とはいえ身体に御刀が突き刺さった状態のまま、紫に組み付き、柔術の要領でタギツヒメを投げ飛ばしていた。

これにより、タギツヒメは壁を背にして迎え撃つことができなくなり、急いで立ち上がろうとした所を舞衣がノロを祭るための祭壇箱を思いっきり投げてタギツヒメの動きを阻害。その隙に、可奈美は鬼気迫る表情でタギツヒメに一太刀入れ、右腕を弾き飛ばしていた。

(……この器ではこれ以上の演算は無理か、何?)

しかし、可奈美の千鳥によって斬られた部分に異変が生じ、タギツヒメは何が起こったのかと驚いてしまった。

(……千鳥と小烏丸。藤原美奈都と柊篝の二人と同じく現世に在らざる物。我と同質の存在に、何故その可能性が見えなかった。……そうか…紫!!)

「みんな!今の内に右側を狙っ……!?」

舞衣は右腕が無いタギツヒメに更に攻撃を与えるため、右側を狙おうとするが、急にタギツヒメが苦悶の声を上げたことに異様な雰囲気を感じ、舞衣は可奈美達を手で制止する。

「討て、……その御刀で私を討てっ!!」

一瞬、可奈美達は紫の精神が戻ってきたのではないかと思ってしまい、攻撃の手を止めてしまう。だが――――、

紫は苦痛の声を上げると同時に髪が巻き上がり、そこから四本の腕が生えていき、禍々しい姿となり、姫和はあまりの出来事に呆けてしまい、紫の姿に「……鬼…か…?」と呟いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薫は写シを張れる精神力がもうないため死を覚悟するものの、刀と刀が打ち合う剣戟の音を聞き、何事かと思い薫は目を開くと……。全身甲冑と御刀を携えた正体不明の刀使が目の前に居て、夜見の御刀を自らの御刀で受け止めていた。

「……っ?」

そして、その正体不明の刀使は横薙ぎに斬って、夜見との間合いを空けていた。

「……お前、何者だ?」

薫はこんな全身甲冑を纏うような人と知り合いに居た覚えが無かったため、何者かと尋ねていた。

「……あちらに親衛隊の真希と寿々花の両名が居ます。彼女らは紫の本性を知らないので協力を仰ぎなさい。」

「……分かった。」

薫は誰かは知らないが、夜見に御刀を向けていること、真希と寿々花のことを教えてくれたことから味方であると判断し、そちらへ向かうことにした。

「…!」

夜見は、薫を逃がさないようにするため、追おうとするが、正体不明の刀使が夜見の前に立ち塞がる。

「……私が相手をしてやろう。」

その正体不明の刀使は薫がこの部屋から離れていったところを見届けると、兜を外し、正体を現していた。

「……貴女は……!」

その正体を知り、顔を歪ませ、激昂する夜見。正体不明の刀使の正体は――――、

 

「……良い表情だ。」

 

綾小路武芸学舎の刀使、織田 ソフィアであった。

「何故、貴女まで裏切るのですか?」

夜見には理解できなかった。変革派の重鎮である織田防衛事務次官の養女で綾小路武芸学舎の彼女が裏切る理由が夜見には分からなかった。

「……何故?分からないのですか?貴女方が蒔いた種が最終的にこうなっただけのことであると。」

しかし、ソフィアは真意を語らなかった。

「どういう意味で?」

そう言いながら、夜見は雪那を守るように移動し、それを悟られぬように行動していた。

「ぐっ!」

「……高津学長!」

夜見は、雪那の呻き声に何事かと振り向くと、ソフィアの部下なのか黒服の刀使達が雪那を気絶させていた。雪那を助けようと一瞬そちらに気を向いてしまったため、

「あぐっ!」

ソフィアに後ろから斬られ、写シを剥がされ、使用回数が一つ減ってしまう。

「……一つ言いましょう。私を倒さずに雪那を助けようとすれば、雪那の命は無いと思え。」

「……どういうこと、ですか?」

「簡単なことですよ。雪那を救いたければ貴女が私を殺せば良いのですから。」

夜見は雪那の方をチラリと見る。既に雪那は気絶しており、頭に黒い袋を被せられ、拘束させられていた。そのうえ、綾小路の刀使達が雪那の首筋に刃を当てているので、今は従っているフリをして隙を伺い、可能であれば雪那を救出しようと決め、このソフィアが主催するどちらかが死ねば助かるという悪辣なゲームに参加するという意志を見せる夜見。

「……本当に、貴女を殺せば学長の命は。」

「ええ、命は助けます。」

その言葉に安堵した夜見だが、剣の腕前は結芽と互角かそれ以上であるソフィアが相手では正攻法では勝てない。ならば、どのようにして勝利をもぎ取るかを考えていた。

(……剣術の腕はあちらが数段上、そのうえ甲冑を身に纏っていますので、今の荒魂の数で全てぶつけても有効打にならない。ならば、ノロのアンプルで荒魂を補充して大量の荒魂でぶつけて転倒、もしくは撹乱させれば、勝機はまだあります。……高津学長。)

夜見はそう判断すると、ノロのアンプルを打ち、薫戦で殆ど失った荒魂の補充をしようとするが、

「……制御できない程入れると、雪那を攻撃してしまうのではないのか?」

夜見はソフィアのその言葉に一瞬躊躇し、雪那を少し見やると、

「どうということは……ぐっ……!!」

構わず、ノロのアンプルを入れようとしたところ、左腕に激痛が走り何事かと思い見ると、投げナイフが刺さっていた。写シを張る前にソフィアが投げナイフを投げたのだ。刺さった箇所に血が流れ、ナイフが刺さった激痛によりノロのアンプルを落としてしまう。

(あっ!)

夜見はノロのアンプルを落としてしまったことに驚き、慌てて右腕でノロのアンプルを取り出そうとするが、ソフィアがそれを待ってくれる筈がなく、夜見に斬り掛かっていた。そのため、防戦一方となり、荒魂の補充ができない状態となってしまう。

それだけでなく、ソフィアは防刃グローブを着用しているのか、夜見の水神切兼光の刀身を掴んで、刀身を上に上げると、夜見の腹を両断するように斬り裂くと、夜見の写シをもう一度剥がすことに成功する。

「くぅっ!」

そのため、夜見は気を失いそうになるが、雪那と結芽、真希と寿々花、そして紫のことを思い出すと、どうにか気を振り絞ってすんでのところで気絶することなく気を確かに持つことができた。

だが、今の夜見の状態は荒魂の補充が容易にできないうえ、写シも張れないという圧倒的に不利な状況へと追い込まれていた。

「だが、貴女のお陰で助かりましたよ。いや本当にありがとう。」

「……何を、言っているんです?」

夜見は、ソフィアが何を言っているのか理解できなかった。

「貴女が雪那を守るために、真希と寿々花を売ったらどうなりましたか?」

その言葉に夜見は、結芽と仲違いしたこと、親衛隊にはもう戻れないことをつぶさに思い出していた。

「結芽は病に苦しみながらも奮闘し、徐々に精神と身体をすり減らしたことでしょう。目の前に真犯人が居るというのに、その滑稽な姿を見るだけで笑いを堪えるのに必死でしたよ。いや、本当に。」

ソフィアは微笑を浮かべながら結芽が苦しむ姿は愉快であったと告白すると、夜見は苦虫を噛み潰したかのような顔をする。

「そして結芽はあの少年と、衛藤 優くんと戦ってくれているのは僥倖だった。あの少年なら確実に結芽を追い詰め、私が渡したノロのアンプルを使わざるを得ない状況に持っていってくれるだろうとな。」

しかし、今のソフィアの発言に夜見には疑問があった。

ノロのアンプルはそんな簡単に手に入る代物ではない。なら、彼女はどうやってノロのアンプルを入手したのか?

「どうやってノロのアンプルを入手したのか気になりますか?答えは簡単です。任務で撃破した荒魂のノロを少量ずつくすねて、スレイド博士からノロのアンプルの作り方を教えてもらっただけのことです。」

夜見はスレイド博士という名から、雪那が忌み嫌う人間の一人であることを思い出し、眉をピクリと上げる。この女はそんな人間とも付き合いがあるのかと。

「ですが困ったことに私達もそんなものを造ったのは初めてでして、いかんせんあのマッドでも久しぶりのことらしく、ノロの量を間違って“病弱な体”にとっては致死量となるようにしてしまったかも知れません。」

ソフィアは微笑を浮かべ、わざとらしく両手を上げて、手をヒラヒラさせていたことに夜見は憤っていた。

「……あなたという人は……どこまでっ!!」

夜見は激昂の感情に流されるまま、ソフィアに向かって左腕が負傷していることもあって片手で水神切兼光を振るうが、全て躱されてしまい、逆に足払いを受け、片膝立ちの状態にさせられると、左肩を鎖骨ごと深々と斬られ、左腕でノロのアンプルを首筋に打てない身体にされてしまい、容易に荒魂の補充ができなくなってしまう。

そして、ソフィアは夜見がノロのアンプルで既に強化されていることを警戒し、後ろに下がり間合いを空けていた。

「そして私の同志が今頃、結芽が荒魂と化しているところを撮影しているだろう。」

「…まさか!?」

「…そうだ、結芽が私の渡したノロのアンプルで荒魂と化してしまえば、結芽は組織の“歪み”を証明する証拠となり、穢れの元である荒魂の討伐を名目に力と権威を得た刀剣類管理局と折神家は、自ら穢れの元である荒魂を製造していたという“歪み”を白日の元に晒すことになる。」

「何故、そのようなことを……!?」

「私の理想を具現化するためには必要なことだからな。……そして、鎌倉で起きた大規模停電、管理局内部の争いを衆目の目に晒し、そのうえ荒魂を使った人体実験を折神家と刀剣類管理局が主導していたという“歪み”が浮き彫りになれば、刀剣類管理局と折神家は社会的地位を大きく失うことになるだろう。…そして、貴女のお陰で親衛隊は一人が死亡、二人は背任者となり席が空き、その代わりの人員は私の同志が抜擢されるよう働きかけ、折神家内部に入り込めるようにする。……いや、最悪親衛隊という組織が無くなり、新しい組織となるかも知れないな。」

ソフィアは夜見が雪那を守るために行動したことがどのようなことになるのかを話し、精神的に追い詰めようとしていた。

「……あ、……ああ……。」

ソフィアの話しに夜見は落胆していた。敬愛する雪那を守るためとはいえ、このソフィア達に一時的に協力したことによって、このようなことになるとは思いも寄らなかった。

「そして、衛藤 可奈美と十条 姫和の両名が怨むことになった紫を討ち取ることになれば、紫の非情な命令によって特務隊から抹消された刀使を親に持つ娘達が、その元凶の親の仇とも言える紫を討つため様々な障害を乗り越え、親から受け継いだ使命を自らの命を費やしてでも果たす。国が制御できない英雄だった折神 紫とは違う、“国が望む制御し易い新しい英雄”が現れる。……まるで、親子愛を訴えかけ、努力すれば報われる素晴らしいお話しになったでしょう?」

ソフィアは告白する。折神家と刀剣類管理局を徹底的に貶めるためだけに、可奈美と姫和を争いに巻き込ませ、紫を怨み最悪相討ちとなれば、紫を排除することができ、そのうえ国が制御し易い新しい“英雄”が誕生すると言ってきていた。

「……まさか、舞草の刀使を解放したあの武装集団も、海自の哨戒網を舞草が抜けられたのは、……!」

「ええ、警察にマウントを取られるのが嫌だと言ってきた防衛省の制服組が私に協力してくれましたよ。……その他にも、紫を排除しようと動いていた官僚と議員も数多く居ましたから海自の哨戒網を入手するのは割と楽でした。……それと夜見、元からお前にはスレイド博士に“協力”してもらおうと思っていた。」

そこで夜見は気付く。自衛隊の制服組が舞草の刀使を助け、そして政府の一部の人間の意志が紫を排除しようと動いていたことに、……そして、ソフィアがそれを話すということは夜見と雪那もただで帰す気など毛頭無く、夜見を元からあの雪那が毛嫌いするマッドへの手土産にする積もりであると理解してしまった。

「……私は、私は貴女をっ!!」

夜見は涙を流しながら、型も何も無く、ただ振り下ろすだけしか斬り掛かれなかったが、それで夜見とっては充分であった。

「許さない、赦さない、許せない、許せない赦せない赦せない赦せないっ!!」

このソフィアという者を赦す訳にはいかない。雪那も、紫も、真希も、寿々花も、結芽も利用し尽くし、ゴミのように扱うこの外道を何が遭っても赦してはならなかった。だからこそ、届かずとも振り下ろし続けた。

「……燕さんは、貴女のことをとても信頼していたのに、なのに!貴女は燕さんのことを踏み躙ったっ!!」

叫びながらも、嘆きながらも、傷付いていても、心がズタズタにされていても、水神切兼光をソフィアに向けて振り下ろし続けた。

「燕さんは、きっと、対等の仲間ができて、だから私は貴女をっ!!」

声が枯れようとも叫び続け、涙を流しながら嘆き、血を流しながら、心が乱れ思考がまともに機能しなくても、水神切兼光をソフィアに向けて振り下ろし続けた。

 

「結芽さんの“誰かの記憶に残りたい”という夢については叶えましょう。」

 

だが、ソフィアの発言に夜見はハッとなる。このソフィアでも結芽に何かしら負い目を感じているのではと、ありえないことを夜見は思い至ったからだ。

 

「結芽さんは“荒魂の力に頼った刀使”として、皆の記憶に残ることになりますので。」

 

せせら笑いながら答えたソフィアに、絶望と激昂の感情がない交ぜになったまま夜見は撤退の二文字を頭から捨て、半狂乱となり人の声とは程遠い声を上げながら、真正面からソフィアに斬り掛かっていた。

(そうだ、もっとだ!)

夜見が感情を表に出し、感情に流されるまま、ソフィアに殴り掛かる勢いで、御刀で斬り掛かって来たことにソフィアは内心驚喜乱舞していた。

(……友情、親愛、そして“平和”。そんな物は人が造った人工物であり、ただの虚しい妄想でしかない。……憎悪、殺意、そして“戦争”という自然物の前に霧散するしかない。)

ソフィアは、憤怒の感情のままがむしゃらに御刀を振り下ろす荒魂の角を生やした夜見の姿を見て、自らの思想の正しさを実感していた。

(……だが、足りない。そんな程度の怒りでは到底私は満足し得ない。)

しかし、ソフィアはそんな夜見を見て足りない部分を実感し、落胆する。

 

――――友情、親愛という無価値な物を後生大事にする。

 

――――身を焦がすほどの殺意と怒りが足りない。

 

――――如何なる手段を使ってでも、得ようとしない。

 

(だから、利用されて終わる。)

ソフィアは心の中で夜見をそう評すると、夜見にとどめを刺すべく、右腕の手首を打ち御刀を手から落とさせ、首を掴んで持ち上げると、そのまま腹に深々と刺して壁に押し付け、動きを封じる。夜見を壁ごと突き刺しているのを見たソフィアはまるで蝶の標本のようだと、つい思ってしまった。

(……そして、優くんから与えられた鳩尾の傷はまだ癒えていないことは知っている。)

そして、夜見がまだ鳩尾の傷が治っていないこと知っていたソフィアは掴んでいた夜見の首を手から離すと、夜見の鳩尾を何度も何度も叩きつけるかのように殴り続けていた。

「がっ!……ごっ!……げはっ!!」

手甲を装備していること、八幡力と筋トレで鍛え抜いた力も加わっていることと、鳩尾の傷が癒えていないこともあって充分な効果があり、夜見は苦痛の声を上げる。

 

夜見は己の無力を呪い――――。己の至らなさを呪い――――。己のしでかした事を呪っていた―――。

 

「…ぐっ、……げふっ。」

夜見は次第に弱々しい声となって、ソフィアに殴られながら、思い出していた。

 

嘗ての自分は御刀に選ばれない程の力しかなかったこと――――。

 

そして、そのちっぽけだった自分が雪那と出会ったことによって、親衛隊に抜擢されるまで色々と助けてくれたこと――――。

 

だが、夢から醒めるかの如く、全てが崩壊していくことを恐れ、悪魔と契約を結んだことによって、今まさにその罰を受けているかのように思えた――――。

 

まるで胡蝶となって、様々な人のお陰で親衛隊第三席となったうたかたの夢を見ていたら、悪魔と契約した罰なのか、親衛隊になる前の以前のちっぽけな自分に戻ってしまったかのように一方的にやられてしまっていた。

(……高津学長……。)

そして、最後は雪那のことを想いながら、彼女は気を失ってしまった。援助を受けていながら無様な結果となり、己の不甲斐なさに謝罪の意を込めて、雪那の名を心の中で呼びながら……。

 

――――――――♪

「……そちらはどうだ?」

不意に携帯が鳴ったので、ソフィアは電話を取っていた。

『……隊長、結芽さんがノロのアンプルを打ち、荒魂の角を生やしたところは録れました。』

穂積はソフィアの指示通りに、親衛隊の結芽がノロのアンプルを打ち、荒魂化した状態の映像を録り、その映像で刀剣類管理局と折神家を糾弾する証拠を得たということをソフィアに報告していた。

「ご苦労、こちらも夜見が荒魂を産んでいるところを録れている。これで紫と管理局はただでは済まんだろう。……良い働きだ、お前を親衛隊に抜擢するよう働きかけよう。」

『ありがとうございます。ですが、辞退させて頂きます。』

「何故だ?」

ソフィアはこれには思わず疑問に思った。

『親衛隊になるより、隊長の側で働いていた方が楽しいので。』

本心なのか分からない落ち着いた声量で、そう答える穂積。

「……フフッ、なるほど、それならば良い。」

意外な答えにソフィアは思わず上機嫌となり、笑みを浮かべる。

(……これで紫と政治的な繋がりがある御養父上……いや、織田防衛事務次官は失脚、防衛省に居られるかどうか。……それに、あの益子 薫が真希と寿々花を紫の元へ送り、紫に刃を向けることになれば親衛隊には戻れなくなるだろう。代わりの人員は私の同志を親衛隊に抜擢させ、折神家内部にも影響力を強めれば、政治的に弱体化した紫も易々とこちらに何かを仕掛けることはできまい。)

そして、ソフィアは自らの思い描いた通りに動いていることにほくそ笑んでいた。

「隊長、夜見と高津学長は如何致しますか?」

「……高津学長は静に渡してやれ、手段は問わんから鎌府の研究成果を必ず聞き出せと伝えておけ。夜見はあのマッドの手土産だ。どんなものかは知らんが、新しいノロと人体の融合実験をするらしい。」

自身の部下である黒服の刀使にそう尋ねられたソフィアは、雪那から鎌府の研究成果を聞き出すために、そういったことが得意な静に雪那を渡しておくようにと言い、夜見はスレイドの新たな実験の被験体として送れと指示を出していた。

(……この二人が行方不明となれば、騒乱が起こったとしても、主犯は彼女達だと思い、朱音か紫が血眼になって探すことだろう。)

そんな計算もあって、彼女達を生かして利用しようとしていた。

 

 

まさに、道具のように扱っていた―――――。




今回の話

ソフィア「真希と寿々花の件も朱音達が横須賀港に来れた件も全て私が裏で手を回してた。それと、お前を元から排除する目的で協力を煽っていた、スマンな!……あと、お前達が可愛がっていた結芽を有名にするよう“荒魂の力に頼った刀使”としてプロデュースしておくから、安心してあのマッドの実験台となっていいぞ!!」
夜見「」

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