でも、本編でもスマホゲーでも親衛隊のお仕事って大変だなぁっと、作者は思います。
御前試合会場は焦燥と不安に包まれていながらも、対応に追われていた。
屋敷の爆発により、テロの可能性が浮上したため、観客を安全な所へ避難させている最中であった。
真希は周りの刀使達に指示を飛ばして、困難な状況をどうにか収めようと動いていた。そんな時に、美濃関の生徒二人と自分の部下が何やら言い争っているのを見かけた。
「だからっ!あの中にまだゆ……友達の弟が居て、怖い思いしてるかも知れないから入れてよ!!」
「会場内は危険だから、入るなと命令が出ている筈です!!」
美炎は自責の念に駆られていた。友人の可奈美に任せられていたのに、あの騒動で少し目を離している隙に、居なくなってしまったのだ。どうにか、美炎は中に入り優を見つけ出そうとして真希の部下と言い争っていた。今も、あの大人しい子は爆発と騒動で怖がって、何処かに隠れているのかも知れない。
「どうした、何があった。」
真希は、何を言い争っているのか自分の部下に聞いてみた。
「はっ、会場な「親衛隊の獅童 真希さんですよね!九歳の子がまだ会場内に居るかも知れないんです!入れてください!!」
「お願いします!」
真希とその部下の会話に割って入って、必死に言う美炎と舞衣。
「おい、そんなことを……」
真希の部下は、そんなこと聞き届けられる訳無いだろうと言おうとしたが、
「わかった、その子の特徴は?」
意外にも、真希はその男児を探すため、特徴を聞き、何処かに連絡しているようだった。
「捜索隊を編成したから、安桜 美炎は此処で大人しく待っていてくれ。それと、結芽!」
真希は、美炎が避難場所から移動しないように伝え、結芽を呼ぶ。
「な~に?真希おねーさん。」
「結芽は捜索隊と共に会場内に逃げ遅れた九歳の男児を探して見つけてきてほしい。」
「え~、何でそんな事しなきゃいけないの?」
結芽は、真希にそう文句をいうが、
「勝手に紫様から離れた罰だ。それと、その子を安全な場所へ避難させなければならん。」
それを無視し、結芽に雑事を押し付ける。
「「あっ……ありがとうございます!!」」
美炎と舞衣は、今は難しいだろうに、親衛隊の一人を捜索隊に編成してくれたことを感謝していた。
「結芽、ちゃんと探すんだぞ。あと、柳瀬 舞衣だな、少し話しを聞かせて貰えるか?」
真希はそう言って、舞衣を事情聴取するため、取調べが出来る部屋へと一緒に向かう。そして、結芽は力なくうなだれ『横暴だ。』と文句を言いながら会場内に進むのであった。
しかし、優は何時の間にか可奈美達と行動を共にしていた。
「おい、下ろせ!」
あの後、可奈美と共に御前試合から逃げ出した十条 姫和は涙目で叫んでいた。
それは当然だろう。何故なら、優が姫和を俵担ぎして走っていたからで、姫和は尻を突き出しているような格好が恥ずかしくて、顔を茹蛸のように赤くしていた。
「え~、でも姫和ちゃん、あんな凄い迅移使って、写シも張れない状態なんだから、そうしてた方が良いと思うよ?」
「だからと言って、これは酷いだろう!……っスカートの中が見えるかも知れないだろう!」
姫和のもっともな悲痛の叫びに、可奈美はしょうがないなぁ、と思い。
「じゃあ……優ちゃん、お姫様抱っこ。」
優は可奈美にそう指示され、器用に俵担ぎからお姫様抱っこに変えていた。
「ひゃわあ!!?」
姫和は驚きの声を上げ、優にお姫様抱っこをされていた。その事実に更に赤面し、押し黙ってしまう。抗議したら俵担ぎになりそうな気がして。
姫和はなんとか声を出し、可奈美に神社へ向かうよう伝え、お姫様抱っこから開放される。
「……ハァ……ハァ……はー……なんとか、一先ず逃げ切れた…かな。」
息を切らしながら、可奈美はそう答える。
「……ここまでだ、分かれよう。」
「えっ、でもそんな状態じゃ、すぐ捕まっちゃうよ…一緒に行くよ。」
心配そうに言う可奈美、しかし、
「お前の目的は何だ……?」
姫和は不思議で仕方なかった。面識も無いのに、ここまで付いて来る理由も無い。だから、姫和は可奈美の目的が分からなかった。
「ええと、ほら、あの、力が戻ったら、ちゃんと試合して欲しいから…うん、それだけ。」
可奈美は視線を泳がせ、片方だけ口角を上げて、そう答えていた。姫和は少し訝しむが、これ以上付き纏われたくないので、御刀に手を付け、構える。
「そうか……なら、ここで決着つけよう。」
その行動に、可奈美は“待った”をかける。
「いや、だから駄目だってば。」
「これ以上付き纏われるのは迷惑だ、ここで斬り合うか、さもなくば……」
姫和は、自分と可奈美の間に小さい何かが割り込んで来た為、話を中断する。
「…おい、何している、危ないから退け。」
「やらせない。」
そう言って、優は手を広げて、顔を膨らませていた。
「優、怪我はしたくないだろ、早く退け。」
たしか、名前は優だった筈、と姫和は思い出しながら言い、怪我をさせたくないため、退くように伝える。
「可奈ねーちゃんのやりたい事をやらせたいから、退かない。」
そう言われた姫和は、毒気が抜かれたのか、構えを解いて可奈美に向けて言う。
「…本当の目的は知らんが、邪魔をするなら見捨てる。」
「それって、付いて来ても良いってこと?」
「好きにしろ。」
「うん、好きにする!」
こうして、少女達の行く当ての無い逃避行が始まる。
舞衣は、真希から容疑者の親友という理由で聴取を受けていた。騒動の前日に不審な行動はあったか、局長の紫を恨んでいなかったか、誰かと連絡を取っていなかったか、といったことを聞かれていた。舞衣は心の中で親友を心配しつつ、うつむきながら答えていた。
「理由は……特に思い当たりません。」
「……そうか、時間を取らせてすまなかった、今日の所は部屋に戻ってもらっていい。あと、何か思い出したらここに連絡してくれ。」
舞衣は『はい、』と答え、退室した後、真希も退室し平城学館代表の岩倉 早苗の聴取を行っている部屋に向かおうとするところで、寿々花と会う。
「岩倉 早苗はどうだった?」
「シロですわね、何も知りませんわ。そちらは?」
「同じさ。」
お互いに進展が無かったことを伝え、紫の招集命令で来る平城学館学長と美濃関学院学長を出迎えるため、ヘリポートに向かいながら今後のことについて話し合っていた。
「しかし、真希さんは今回の騒動に舞草が関わっていると、お思いでして?」
真希はチャンスと思い、自分の推理を寿々花に言う。自分の失態を隠すために。
「天井が爆破されたのが余りにもタイミングが良すぎるからな。舞草か紫様の行動を妨害したい者達の仕業と思うだろうが、元々は十条 姫和による単独の犯行だろう。何故なら、紫様の警護が二名しか居なかった千載一遇の好機があったにも関わらず何もせず、たった一回で終わっている。しかも、爆発物を撤退の援護にしか使わないのも妙だ、僕だったら爆発物を十条 姫和ごと巻き込んで生き埋めにして証拠を消すか、囮(姫和のこと、)の方に注意へ向けさせて親衛隊の分散を謀る。それに、衛藤 可奈美が十条 姫和と元々から協力者であったなら、僕が姫和を背後から斬る前に援護する筈だ、だから僕は元々は姫和による単独の犯行だと見ている。恐らく動機は単独で動いていることから私怨だろう。」
「何か、穴凹な推理ですわね。」
「そういう君はどう思っている?」
「そうですわね、私はあの二人以外、協力者が居るとお思いますわよ。」
「どうして?」
「女子中学生が爆発物を扱えないですから、協力者が渡したんでしょう。それに、撤退のために爆発物を使ったのは二人を逃がした後、行方不明(これは、生死を問わないという意味も含まれている。)にすれば特別刀剣類管理局の権威と発言力は低下し、紫様の活動を妨害するという計画だったのでしょう。」
「…まあ、どちらが正解にせよ舞草か協力者が彼女達に接触を図るだろうさ。」
理由は、無関係であろうがなかろうが、今後の活動の邪魔にならないようにする必要があるから、接触を図ると二人は確信していた。
「そのときまで泳がせるのも手ですわね、それと真希さん、何故あの時結芽の援護に向かったんです?貴女が向かわずに私か夜見の方が適任だと思うのですが?」
と、寿々花は笑顔で理由を問い質していた。真希は少し怖いと思ったのと同時にバレたかと内心毒づいていた。確かにあの時は爆発で動揺したにせよ、真希の判断ミスである。四名しか居ない親衛隊の中でも戦闘能力がトップクラスの二名が警護対象を離れ、警護対象の危機を増大させている。そのため、真希が援護に向かうのではなく、後方支援担当の寿々花か夜見に向かわせて戦力を均衡にするべきだった。だが、これは真希も後に気付いており、失態をウヤムヤにするため寿々花に自分の推理を語っていた。そういう打算だったのだが、物の見事にその目論見は外れてしまった。
「…気付いたときには鎌府の刀使は観客を守らないといけませんし、私達はキルゾーンの真っ只中に居て何時殺られるか不安でしたわ。その気持ち解りまして?」
「…む……すまない。」
「まあ、いいですわ。あっそう言えば結芽にペナルティを課したそうですわね。貴女もペナルティとして一人で両学長を出迎えて紫様のところへ案内して下さい。いいですわね。」
笑顔でそう言われればYESと答えるしかないと真希は、リーダーは大変だと思い、精神的ダメージでうなだれていた。
ヘリポートに一人で到着した真希は、既に直立不動の姿勢で紫の招集命令で来た平城学館学長五條 いろはと美濃関学院学長羽島 江麻の両学長を出迎えていた。
「ご足労感謝致します。」
「あら、真希ちゃん、親衛隊の制服がよく似合うようになって。」
真希は、昔世話になった五條 いろはにそう言われ、こそばゆい気持ちにはなったものの、おくびにも出さなかった。
「…紫様がお待ちです。どうぞ、こちらに。」
そう言って、真希は紫が居る執務室まで案内しようとする。
(親衛隊の制服が似合うか…さっき、ポカしたことを責められていたんだがな……)
真希は憂鬱な気分になっていた。果たして、あれから自分は制服が似合うようになっただろうか?結芽が入った直後に荒魂の一掃作戦に参加し、一つの部隊を任されていた。しかし、任務は成功したものの、無様な戦いを演じてしまった自分はあの頃より少しは成長しただろうか?あの頃を捨て、少しは仲間を信頼し、常に冷静沈着で、前へ出たがる性格を直し、自らが理想とする指揮官に近付き、この制服が似合う人物になったであろうか。ただ自分よりも優秀な仲間に支えられて、ようやく一人前になっているんじゃないか、という思いがあった。無論、あの頃を人生の反省点とし精進しているが、それは慢心しているだけでは無いのかと自問自答していた。そんなことを思考しながら、紫の居る執務室に着いてしまい、ノックをし、平城学館と美濃関学院の両学長を此処へ連れてきた旨を伝え、扉を開け両学長を先に入室させる。
「久しいな。」
「お久しぶりです。局長。」
「お久しぶり、ホント紫ちゃんはあの時からお変わり無く。」
いろはは、紫の二十年前から変わらない姿でいることに、何かを思い出したのか声が少し弾んでいた。
「同窓会で呼んだ訳では無い。」
「あら、ごめんなさい、つい……」
「二人の生徒の潜伏先に心当たりはあるか?」
「ごめんなさい、特には……」
「私も、同じく。すみません。」
いろはは変わらぬ表情でそう答え、江麻は沈んだ表情で答えていた。真希は、江麻といろはが生徒思いの学長であることを思い出し、少しでも安心させるために発言する。
「柳瀬 舞衣、岩倉 早苗の両名の聴取は終わりました。無関係だと思われます。」
「そう。」
江麻は安心したようで、少し朗らかな顔になっていた。
「……質問を変えよう。平城学館学長、刀剣類管理局への届け出には小烏丸は平城学館預かり、現在は適合者なしとなっているが?」
「報告が遅れてしまい申し訳ありません。小烏丸があの子を選んだんです。」
「衛藤 可奈美は『千鳥』、十条 姫和は『小烏丸』の適合者であり、今もその御刀を所持している。」
「『千鳥』と『小烏丸』がですか……」
思案気な顔をしていた江麻に真希は気付き、この事件にその二つの御刀は何か関係があるのかと思い、後で時間があれば少し調べて見るかと思っていた。
「十条 姫和、衛藤 可奈美の両名を確保。その為に二人はここに滞在し、尽力してもらう。真希、二人を案内してくれ。」
「了解しました。」
真希は、江麻といろはの二人を作戦指揮所へ案内するため、二人を伴って退室する。紫は一人になったことを確認すると、この世のものとは思えぬ邪悪な笑みで呟いていた。
「…“幼き二羽の鳥”が“器”を持って来て、クレタカ………」
一方、可奈美達はトラックに忍び込み、姫和が可奈美の名前を覚えていなかったといった一悶着があったが、無事に首都高速を通って東京に着いていた。
「おっき~い、高いビルがいっぱいだよ、優ちゃん。」
「うん、凄い。」
可奈美は優の手の握りながら、優と一緒に輝いた目で周りを見ていた。
「はしゃぐな、目立つだろう。」
「あっ、ごめん。でも、姫和ちゃんは何で東京へ向かったの?」
「平城のある奈良と美濃関のある岐阜へのルートは警戒されていると考えて、東なら手薄だと予想して此処に来た。」
「なるほど!人も多いしね、何処か当てがあるの?」
「当てはないが、制服のままだと目立ちすぎる。服と御刀を隠せる物、あと宿も探さないと。」
そうして、可奈美の提案によりギターケースとパーカーを姫和が所持していた金で購入。パーカーを制服の上に着用し、御刀をギターケースの中に隠す。これで、変装を終えた二人は優を変装させるべく、服を物色。最終的に赤のジャケットから灰色のパーカーに変更し、hominisと刺繍された帽子を被らせていた。
「……こんな感じでいいだろう。」
優の変装を姫和が手伝い、そう感想を呟く。我ながら上手に出来たとか思いながら……。
「うん、ありがとう姫和おねーちゃん。」
「っ!…」
姫和は、優に満面の笑顔でそう言われ、顔を背けた。赤面しながら。
「姫和ちゃん…?ああ、なるほど。」
可奈美は、姫和を見て何か感付いたのか、ニヤニヤしながら近付いて来た。
「……何だ。」
「いや~、そういう事か~~、ふ~~ん。」
「ちがうからな。」
「何が違うのかな?かな?」
「少し黙ろうか…?」
姫和は顔を赤くしながら、可奈美を睨んでいた。そして、可奈美と姫和の間にまた小さい何かが入り込んでいた。
「喧嘩はダメ。」
「……そうだな、行くぞ可奈美。」
そう言って、姫和は優の手を握って会計を済ませ、宿を探すため店外に出る。可奈美も『待ってよ~。』と言って、しっかり後に付いて行った。
なんとか、宿を見つけた可奈美達は泊まろうとするが、
「あなたたち、未成年?三人だけ?」
年配の恰幅の良い店番の女性にそう聞かれ、姫和は不味いと思っていた。だが、可奈美が、片方だけ口角を上げて、
「ええと、そうです。実はバンドとかやってて、二人でライブとかやろうと思って上京して来まして、…で帰ろうとしたんですけど帰りの駅まで行ける線路が荒魂のせいで壊れちゃったらしくって、明日の朝まで復旧しないみたいなんで出来たら一泊だけでもと……。一応、公衆電話で親に連絡してますので。」
「あらそうなの、大変だったわね。その小さい子は?」
「付いて来るって言って、聞かなかったんです。」
「お姉さんなのに、あまり感心しないわね。」
「ええと、すいません。一応、親から軍資金もとい、こういったときのために何日かの宿泊費は貰っていますので……」
「…いいわ、今日は此処で泊まっていきなさい。夜に女の子達がふらついていたらダメだからね。」
「すいません、ありがとうございます。」
と言って、可奈美は頭を下げ礼をする。こうして、可奈美達は一泊することができ、姫和はよくあんな嘘を吐けるものだと関心していた。