【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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39話を投稿させて頂きます。

紫様サイド――――
大荒魂「紫、貴様邪魔立てを……。」
紫「……身体の自由は奪われても、お前の力を抑えるぐらいのことはできる。……覚悟しろっ!タギツヒメッ!!」
大荒魂「紫っ!!脆弱な人ごときがぁぁぁぁっ!!」

アニメ本編19話にて、真希さんの話を元にこんな格好良いことがあったのかなと想像して書いてみました。

あと、あとがきにて優とタギツヒメの会話。



荒魂

時は戻り、御前試合決勝戦――――。

 

優は、龍眼で姫和が紫に斬り掛かるが失敗し、それを助ける可奈美という未来が見えたため、可奈美が危ないと思った優は誰にも見つからないように裏手に回り、隠世から御刀を取り出すと、八幡力と迅移を使って紫の居る貴賓の観覧席のちょうど真上、屋根の上まで飛んで上がり、御刀を隠世に戻すと、御刀の代わりに鉄の棒を取り出す。そうして、荒魂の力を使い屋根に鉄の棒を思いっきり数回叩きつけて、天井を崩し紫を生き埋めにしようとした。そのため、紫が生き埋めになったと思った者、紫の安否を気にする者、爆発の様な音に驚く者が居たため、本殿白州にて行われていた御前試合は騒然となり、優も頃合いを見てこの場から離脱しようとするが、

「あっ、何あいつ?」

よく見ると、結芽が可奈美に御刀を向けていた。

(……可奈ねーちゃんの、邪魔するなよ。)

そう思うと、優はそこら辺に有った瓦を掴むと、結芽に向けて力一杯投げつけていた。それに驚いた結芽は難なく横薙ぎで斬り払うが、その隙に可奈美達が八幡力で跳躍し、逃げおおせたことに安堵すると、優も鉄の棒を隠世に戻し、再度御刀を取り出すと可奈美達とは別方向へ八幡力で跳躍し、御前試合が行われていた本殿白州から姿を消し、可奈美達と合流。

 

そこから、可奈美と姫和、そして優の物語が始まった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、優と紫が対峙したノロの貯蔵庫にて――――。

 

「……行こう、“みんな”。」

 

鉄の棒と“ニッカリ青江”を携えた優が現れる。

『ああ、やっちまえ優!!』

『頑張って、優ちゃん!!』

優の中に居るジョニーとミカが優に声援を送り、

『こいつ倒したら、ニキータ達、助かる?でも良いのヒメちゃん?結芽おねーちゃん?殺して欲しくないんじゃない?』

『……そうだな。だが、あれは我とは関係無い。だから、あんな荒魂は早々にやって良いぞ。そして此処に居る皆を救おう、優!!』

そして、優の中に居るニキータはタギツヒメの事を案ずるが、タギツヒメは問題ないと言って、優にその大荒魂を倒すように言っていた。

『……良いよ、紫様ごと倒して……。」

しかし、結芽は真希と寿々花を救えず、夜見に酷い事を言ったまま優の中に取り込まれたうえ、大荒魂に精神を支配されている紫を見て、何もできなかった自分を恥じてなのか、顔を俯かせながら紫ごと大荒魂を倒すように半ば投げやりに答えていた。それを怪訝な表情で見つめるジョニー。

土煙の中から現れた優は、鉄の棒を紫こと大荒魂に向けて振り下ろすが、大荒魂は二本の御刀を交差して容易に受け止めていた。

「やっと、やっと来たか!あのときのように攻めて来るとはな、だがお前が来た所で折神 紫を超える者などっ!!」

大荒魂は歓喜していた。やっと一つになり、やっとかつての力を取り戻せることに喜んでいた。

「……紫って誰?」

しかし、優は紫のことを二本の御刀を持っている他人ぐらいにしか思っていなかったので、紫のことは何一つ憶えていなかった。そのため、優は紫が誰のことか分からないので、紫とは誰のことかと大荒魂に尋ねていた。

「……私が操っているこいつのことだっ!!」

そう言われた大荒魂は、紫の力を得たことを自慢気に語りたかったのか、誇らしげに言っていた。

『なあ、結芽。あの目ん玉の下に繋がっている奴って、結芽が言ってた紫様とかいう奴か?』

優と大荒魂が戦っている最中に、ジョニーは大荒魂のことを目ん玉と呼び、結芽に紫という者は大荒魂の下に繋がっている者なのかどうか尋ねていた。

『えっ?……そうだけど、どうしてそんなこと?』

『良ぅし、聞いたな優!!結芽が紫様とか言っていたから、結芽にとっては大事な奴ってこった。なら、俺達にとっても大切な奴ってこった。なあ、優!!』

突然、ジョニーがそのようなことを言ってきたことに、驚いて目を見開く結芽。

『えっ、…どっ、どうしてそんなこと。私、あんたたちの敵だったんだよ!?それに、私は悪い子だから、きっと(バチ)が当たったんだよ。だから、気にしなくて――――』

『そんなの関係ねぇよ。それに、“私が操っているこいつのこと”ってことは、望んで俺たちの敵になった訳じゃねえってこったし、あの目玉にとっちゃどうでもいい奴なんだろ?それと此処に居る奴等は皆仲間だ。仲間の大切な者は俺達にとっても大切な者だ!…なあ、そうだろお前らっ!!』

真希も寿々花も助けられずに夜見に酷い事を言ったこと、そしてああなってしまった紫をどうすることもできないことに消沈し、負い目を感じ、自らを“弱くて何一つできない悪い子”と一方的に思い詰めてしまっていた結芽を気遣ってなのか、そう強く宣言するジョニー。

『…まあ、当然よね。だから優ちゃん!二本は殺しちゃダメだからねーーーーっ!!』

『そうだね。あの目ん玉はどうでも良いけど、結芽おねーちゃんは大切な仲間だよね。』

『……ウム、仕方ない。』

それに、ミカとニキータ、タギツヒメはそう言って、ジョニーの考えに賛同していた。

(……分かった。できる限りやってみるよ。)

そして、優もジョニーの考えに乗ることにした。

『……みんな、ありがとう……。』

結芽は、自分のために紫を救おうとしてくれるジョニーとミカ、タギツヒメとニキータに誰にも聴こえないくらいの声量で感謝していた。

 

だが、結芽は気付かない。確かに、彼らは結芽のことを大事な仲間だと言っており、そのために紫を助けると言っていた。一見、暖かい善人の様に見えるが、それと同時に彼らはSTT隊員達を傷付けたことも、殺したことにも何も抱かない冷酷な部分を持ち合わせる者達であることに。

 

「……じゃあ、お前ってそんなに凄くないんだね。」

優は大荒魂からの攻撃を受け止めながら、目ん玉こと大荒魂の言っていたことを総合的に考えた結果。“紫を超える者は居ない”と言っていたことから、この目ん玉は紫以下であると解釈し、そう返答していた。

「……キサマァ!!」

9歳児に小馬鹿にされたことに気づいた大荒魂は、優に力押しで迫る大荒魂。

「…ちょっと、しつこい!!」

力押しに対抗すべく優は、強大な大荒魂の力を利用するように鉄の棒を時計回りで掬い上げるように回して、大荒魂へのカウンターとして紫の股関節辺りを狙うが、大荒魂は後ろへ退がると、難なく躱していた。

「小童如きがっ、どのみち何もかも見通す力がある限り、我に傷を付けることすら叶う――――。」

大荒魂が全てを言い終わる前に、優は鉄の棒を垂直にし、紫の顔面、足と腕の関節を特に狙って、突きながら追撃していた。

「そのようなもので……。」

優の追撃を大荒魂は紫を僅かにずらして躱しながら優に近付くと右手に持つ御刀を振り下ろして、鍔迫り合いに持ち込んでいた。

「……力と反応は、あっちの方が上、これがノロの量の差なのかな?……!」

優は顔を歪ませながら、力を分散させるため鉄の棒を少し右斜めにして大荒魂の振り下ろしの斬撃をどうにか防ぐ。しかし、大荒魂は優が持つ鉄の棒の形に合わせて、滑らせるように鉄の棒を掴む優の左手の指を狙って斬ろうとしてきたことに、優は気付くと鉄の棒を左手の指だけパーの形にして回避するも、相手は二本も御刀を持っていたため、もう一方の左手の持つ御刀で横薙ぎに斬り掛かってきた。それに反応した優は回避できないと瞬時に判断し、刀の強く深く斬れる切っ先の部分で斬られるぐらいならばと、間合いを詰めるかのように前に進み、切っ先以外の刀の部分を腹で受け止め、受けるダメージを可能な限り最小限に抑えようとした。そのため、相手の懐に飛び込むこと同時に致命傷を避けることができた。

「……!」

しかし、致命傷を避けたとはいえ無傷ではないので、痛みに堪えるかのような表情をする。だが、それでも優は攻撃の手を緩めることなく、相手の懐に飛び込めたという優位性を最大限発揮させるため、鉄の棒を短く持ち、紫の側頭部を狙って叩きつけようとする。だが、大荒魂はその攻撃も読んでいたのか、間合いを空けるため、優を蹴り飛ばしていた。

「ぐっ……!」

優は体重が軽いので、蹴り飛ばすこと事態は容易であった。そして……、

「……我は子供といえども容赦はせぬぞ。」

優がノロで強化されたのは、対刀使用として強化されたのであって、荒魂用に強化された訳ではない。

今まで、御刀から超常の力を引き出すことができる刀使を相手に優位に戦えたのは、年下の子供を斬らねばならないかも知れないという心理的動揺を突いていたことと、先読みが可能な龍眼が使えたからであること、刀使が知りえることもない剣術以外での銃といった近代兵器と対刀使用の矢を使った奇襲攻撃。それらの攻撃が通じる相手であったからこそ今まで戦えたが、今の相手は二十年前の大荒魂であるため、子供を相手にするという嫌悪感から来る心理的動揺を生じさせることはできなかった。

「そのうえ、ノロの量は我の方が上だ。お前の様な壊れかけの器とは違う。」

優は龍眼を使って、鉄の棒を振り回して攻撃するが、相手の大荒魂は優の攻撃を難なく二刀の御刀を以って、力を受け流すように躱していた。それもそのはずで、相手は20年分のノロで更に強化された大荒魂である。相手の大荒魂の方がノロの量、質は共に優より上であった。となれば、龍眼同士の戦いでは大荒魂の方が一歩先に行っていた。

(……この棒だと先の攻撃が読める相手には相性が悪い。けど、銃なんかじゃ効き目がない。)

優が持っている鉄の棒は質量が有るので、大振りになり、先を読むことができる龍眼という能力を持つ大荒魂相手には不利であった。そのうえ、銃やスタングレネードといった近代兵器、対刀使用の矢は荒魂相手に通じる物でもなかった。

「優ちゃん!!」

「今行く!!」

可奈美と姫和もどうにか援護しようとするが、両名共にS装備を失い。更には、可奈美は既に損耗していることと、姫和は斬ることに躊躇うようになったことにより、鞭のようにしなり、他方向に斬り掛かってくる4本の荒魂の腕を掻い潜ることもままならなかった……。

そして、優は一人で大荒魂と対峙する格好となってしまう。

(……銃も矢も効かない、こいつが相手だと、この棒じゃ相性が悪い……。やっぱり、真正面から戦うのは苦手だな。……なら!)

優が持つ武器。子供を相手にするという忌避感からくる心理的動揺を突く、近代兵器等の道具による不意討ち、御刀以外の武器での搦め手、そして龍眼による未来視、今まで使ってきた戦い方が全く通じない相手にいかにして立ち向かうべきか優は悩んでいた。どうやって、この大荒魂を殺すべきか。

「所詮貴様などに、我らの間に入ることは――――!」

大荒魂はそう言うと、大きく振りかぶるが、優が突然後ろへ跳び退がると瓦礫の後ろへ隠れ、その瓦礫に鉄の棒を叩きつけて土埃を起こす。

「悪あがきをっ!!」

優が起こした土埃から、鉄の棒が現れ紫に向かって真っ直ぐに突くかのように来るが、大荒魂はその攻撃も予知していたかのように鉄の棒を払い除ける。しかし、優は鉄の棒を投げ、鉄の棒を囮にして別方向から大荒魂に近付こうとしていた。

「接近さえすれば。……!」

先程、この大荒魂は間合いを詰めれば、優を蹴り飛ばしていた。つまり、大荒魂との間合いを詰めることが出来れば、御刀の切っ先の部分で相手を斬ることも、突くこともできないから、間合いを詰められると、対抗手段は蹴り飛ばすことぐらいしかできないのかも知れないと判断した優は、迷うことなく零距離まで近付き対刀使用の矢か素手で、紫の腹等といった部分を殴るか刺し続ければ、紫を纏っている写シが剥がれ、手足を負傷させれば、この大荒魂を相手にすればいいだけなので、この大荒魂を殺すことができるかも知れないと思い、紫に接近する優。

「言った筈だ。…我には全て視えている。」

しかし、龍眼によって全て見破られているのか、大荒魂は既に其処から優が現れることが分かっていたかのように立ちはだかっていた。

「あっ……!」

優は、大荒魂の初撃の右からの突きをどうにか回避するが、もう一方の左側からの御刀を掬い上げるかのような逆袈裟斬りは、鉄の棒を失い、対刀使用の矢しか持っていない状況であったために、避けられないと判断すると、左腕を犠牲にして、御刀からの攻撃をどうにか避ける。

「……優ちゃん!!」

可奈美の悲痛な声が上がる。

(……こっちの先の行動を読むから不意討ちが全く通じない。剣術なんて使えないけど、あいつ殺せないから使うしかないか。)

それと同時に、優は対刀使用の矢を紫に向けて投げると、大荒魂は紫に向かって投げられた矢を弾いたので、その隙に結芽が使っていた御刀ニッカリ青江を持って構える。

「……くっ、うおおおおおおお!!!」

優を傷付けた大荒魂に激怒したのか、可奈美は雄叫びを上げながら大荒魂に突っ込んで行く。

「……愚かな。」

その言葉と同時に大荒魂は、荒魂の腕で伸縮自在なゴムの様に伸ばして、姫和に襲いかかっていた。

「ぐっ……!」

荒魂の腕が持つ御刀の突きを受け、姫和の写シは剥がれ、転倒してしまう。

しかし、可奈美はそれに構わず、冷静さを欠いたまま、ただ一点に向かい、遮二無二に真っ直ぐ突っ込んでしまったため、突然紫と荒魂の腕が同時に迫って来たことに驚愕する。

(……あっ!)

可奈美は避けられないと思い、悪手ではあるが、つい目を閉じてしまう。

「うわぁっ!!」

しかし、可奈美は突然突き飛ばされ、何事かと思い大荒魂の方をを見ると、

「……あっ、……あぁっ……。」

 

優が可奈美の身代わりとなって、大荒魂の攻撃を一身に全て受けていた。

 

(……私が、…………私がもっと“強い刀使”だったら、……こうならなかったのかな…………。)

その光景を見て、意気消沈し呆然と見つめることしかできない可奈美。

「本来であれば我らの間に力の差はない。……だが、人ごときを必要とした愚かな貴様と不要とした我。それがこの結果だ。」

勝利を確信した大荒魂は、優の中に居るであろうタギツヒメに向けて、侮蔑の意味の言葉を投げかけると同時に、優を放り投げる。

(…………ねえ、ヒメちゃん。あいつヒメちゃんのことバカにしなかった?)

しかし、優はタギツヒメことヒメちゃんに大荒魂が言っていたことが気になり、尋ねていた。

『……えっ!?い、いやそんなことはないと思うぞっ!!』

そのことを尋ねられた優の中に居るタギツヒメは何か不穏な物を感じ取ったのか、そんなことはないと言っていた。

「……いや、絶対あいつ言った。…それぐらい分かる。…あいつ絶対許さない。…絶対赦さない。…殺せないのは絶対嫌だ。…絶対ヤダ。…絶対コロス。」

小さな声で呪詛の様に呟く優。

(だからヒメちゃん、全力出して。…じゃないと、あいつ殺せない。)

『いやいやいやいやいやそれをしたらお主の身体がどうなるか分からんのだぞ!?それに、そんなことしたら可奈美お義姉様が泣いてしまうし我がメチャクチャ怒られ――――』

優はタギツヒメに力を抑えることを止め、全力を出す様に言っていたが、タギツヒメはそれを行うと優の身体がどうなるか分からないので止めるよう必死に説得していた。

(……いいからやれよ、僕はどうなっても良い。だけどヒメちゃんのことをバカにしたあいつ許せない。……だからどんなことをしてでもあいつ、あの目ん玉を殺す。)

だが、優はタギツヒメの警告を全く意に介さず、自身の身体がどうなろうが気にも留めず、全力を出すようにタギツヒメに指示していた。

『……そうだ、優、ぶっ殺せ。』

『何も仕返しできないの、悔しいだけだもん。』

『殺そう。絶対!!』

優の中に居るジョニー、ミカ、ニキータも優の中に居るジョニー、ミカ、ニキータの三人は紫の中に居る大荒魂を殺すべしと言ってきていた。

『えぇ……。何もそこまでしなくても。』

しかし、同じく優の中に居る結芽が何もそこまでする必要はないのでは?と言ってきていた。

『うっせぇ!!何言ってるか知らねぇけど、あの目ん玉がコケにしやがったのは分かるんだよ!!』

『そうよ!!やり返せないままなんて絶対イヤッ!!』

『絶対殺したい!殺したい!!殺したい!!殺したい!!』

だが、彼らは自分達の仲間であるタギツヒメを馬鹿にされたのが、何よりも不愉快であった。だからこそ、彼らは大荒魂を殺すべしと叫んでいた。

 

――――しかし、彼らは気づかない。

 

優が沙耶香を手にかけようとした時も、真希を拳銃で撃った時も、優がSTT隊員を惨殺したことも特に止めなかったのに、自分達の仲間が侮辱されればその相手を殺すことに何も抱かず、自分勝手な言動をしていることに。

そして、タギツヒメが全力を出せば優の身体がどうなるか分からないというのに、気にも留めず無責任な行動を取っているということに考えもしなかった。

『……ぬ、ぬおおおぉぉぉぉぉぉーーーーっ!!』

そのため、タギツヒメは全力を出して優の身体を壊したことにより、可奈美に嫌われたくないこともあって全力を出すのに一旦は躊躇したが、結局は優の言う事を聞かなかったがために優に嫌われてしまうことを恐れ、叫びながら抑えていた力を解放することにした。

 

 

 

「さて、どうする?母と同じ秘術を使うか?その御刀を当てる事ができれば、だが、お前達の剣は私に届くことはない。折神 紫を超える刀使はこの世に……。」

明らかに戦意を失っている姫和と可奈美に向けて言う大荒魂。しかし、優が満身創痍でありながら立ち上がっていることに気付き、そちらに顔を向ける大荒魂。

「……優ちゃん?もういい、もういいよっ!!ここは大丈夫だから、お姉ちゃんに任せて!!」

可奈美は悲鳴に近い声を上げながら、優だけでも逃がそうとする。

「……もういい、お前だけでも逃げろっ!!」

姫和は、尚も立ち上がり戦い続けようとする優に向けて“逃げる”ように説得する。せめてあの子の命だけでも守ろうと、姫和は外れてでも大荒魂に“真の一つの太刀”を使おうと意気込む。

「……ダメだよ、可奈ねーちゃん、姫和おねーちゃん。……こいつは“僕等”をバカにした。それだけでこいつを殺す理由は充分にある。」

しかし、優はそう言って逃げることを拒否した。

「……愚かな。」

大荒魂は、それだけ言うと可奈美と姫和の両名を荒魂の腕の腕力で弾き飛ばし壁にぶつけると同時に、優も荒魂の腕が持つ御刀で刺し貫いていた。

「筋は良い。…だが、母親には遠く及ばぬ。所詮は雛……ん?」

大荒魂は可奈美と姫和をそう評しているとき、優がその荒魂の腕を掴むと、後ろに跳びながら、荒魂の腕を御刀ニッカリ青江で斬って千切っていた。

「だが、一滴の雫が落ちた――――。」

大荒魂はその行為は所詮小さな悪あがきだと思い、高を括っていたが、次の瞬間、可奈美と姫和、この大荒魂でも驚愕する事態が起きる。

それは、ガリッ、ガリッ、っと何かを噛っている音が聞こえたので、その音の元を見ると、

「……何を、…している?」

先程斬って千切った荒魂の腕を優が噛んでいた音であった。

(……噛み千切れないな。)

そう言って、優は噛み千切るのを止めて、荒魂の腕の切断面から赤い液体状となっているノロを吸い取っていた。

「……何か、ゲテモノは美味って聞いたことあるけど、チョコミントアイスみたいに美味しくないな…。鉄の味がする。」

幼い子供が事も無げに、未だ痙攣している荒魂の腕の切断面を咥え、ノロを飲んでいることに可奈美と姫和、そして流石の大荒魂もこの少年の行動に恐れを抱き、呆然と見入ってしまっていた。

「さぁ、……殺ろうか。」

その宣言と同時に優の身体は変化していった。

 

――――優の右額から鬼の角の様な物が生え、

 

――――可奈美と同じ色に近かった優の右目の瞳の色はタギツヒメと同じ色となり、

 

――――可奈美と同じ色に近かった優の髪の色は右半分のみ夜見と同じ白い色となり、

 

――――そして、斬られた優の左腕は荒魂の腕の様に太く、黒くなっていた。

 

 




優サイド―――
タギツヒメ「これで全部だから!これで勝てる筈じゃから!!それ以上はもう止めよっ!!(泣)」
優「勝つとか負けるとか要らないから、とにかく殺すんだよ。(圧力)」
タギツヒメ(何と言うか、とんでもない子を好きになったのではないか?……というよりも可奈美お義姉様も早く止めて下されっ!!)



結果――――。
大荒魂「くそっ!!……紫が邪魔してこなければっ!!」

タギツヒメ「アレッ?……今話はもしかして優に結構話しかけられたのではないか?(恍惚)」

……この荒魂二人はこんな感じですが、次回は多分決着。

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