【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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44話を投稿させて頂きます。
2週間以上もお待たせしまして、申し訳ありません。出来る限り更新は早くできるようにしたいです。(切実)

荒魂掃討作戦前の準備の話です。

S装備「これで、役立たずだの、クソダサアーマー等と言わせないっ!!」
しかし、これはオリジナル設定になるのだろうか?


新型S装備の話 1

防衛省市ヶ谷――――。

「横田基地から米軍所属のグローバルホークの支援、刀剣類管理局の警察庁からの独立、そのうえAH-64D、OH-1改、スキャンイーグルから新無人偵察機システムを各方面から持って来る。……何と言って良いのか、いささか強引な手段ではあったのでは無いか?」

甲斐の防衛大の同期であり、現防衛大臣である中谷 啓祐は長年の友でもある甲斐に詰問していた。

「心配ない。こちらのことは気付いておらんし、それに二十年前に起きた相模湾岸大災厄が再び起きる可能性が有るのであれば、防衛省は刀剣類管理局と一層緊密な協力体制を取り、一刻も早く国民の刀剣類管理局への信用を回復させると同時に、来るであろう大災厄への対応は急務であるし、それに自衛隊にも荒魂対策の資金を無人機の研究へ注ぎ込めることができるのは、自衛隊の無人機の開発と運用研究、指揮通信能力が発展することは、今後起きるであろう自衛隊の省人化と無人機の導入が増えている各国の対策となることを考えれば悪くはないだろう?」

中谷の詰問に対し、元同期であるためか、甲斐はややフランクに自らの考えを防衛大臣の中谷に話す。

朱音の推測通り、防衛省、いや、甲斐の企みは警察の重武装化による予算の増額と権限拡大を防ぎつつ、表向きには防衛省は刀剣類管理局と協力体制を組み、その見返りとして、防衛省にも荒魂対策の予算を計上してもらい、その予算でスペクトラムファインダーのレーダー技術を搭載した無人機の開発と試験運用を行い、無人機の運用実積を伸ばし、世界中に拡散している無人機への対策研究と戦術研究を強化し、いずれ立ち向かうこととなるであろうドローン戦争に対応しようとしていた。

「それにだ。この荒魂掃討作戦が成功すれば、戦術データ・リンクによる空と海の、それらの後方支援の元で行われる陸上戦闘の有用性が国会でも認められれば、戦術データ・リンク対応可能な陸上装備が増えるだろう。ただでさえだ、創設当時から、“専守防衛たる自衛隊は米軍との連携によって最大の能力が発揮できるように設計され、戦略が立てられていて、”その米軍は戦術データ・リンクと無人機の開発が進んでいるというのに、優先順位が低いとはいえ、“我々陸自だけが未だに無人機の開発と戦術データ・リンク対応可能な兵器は少ない状況であり、”米軍との連携に支障が生じるかも知れないという状況は好ましくない。」

甲斐は続けて、“専守防衛たる自衛隊は米軍との連携によって最大の能力が発揮できるように設計され、戦略が立てられていて、”と“我々陸自だけが未だに無人機の開発と戦術データ・リンク対応可能な兵器は少ない状況であり、”といった部分を少しばかり声を大きくして強調し、防衛大臣の中谷に聞こえるように伝えていた。

甲斐が無人機と戦術データリンク可能な装備を急いで配備して貰う理由は、細長い島国という地理的な環境から防衛上の正面が広いため、侵攻部隊は上陸地点を選択する主導権を保有し、空挺・へリボン部隊等による奇襲を行うことが予測されている。だが、その全てを洋上で全て撃破することは海上自衛隊・航空自衛隊のみでは困難と考えられ、陸・海・空各自衛隊は、相互に緊密な連携の下に、それぞれが持つ特性・能力を十分に発揮して防衛に当たるということが必須であるという見解を自衛隊は示している。(無論、日米安全保障条約に基づいて自衛隊と米軍とが共同して、防衛に当たることは言うまでもないことも記載されている。)

そのためには、陸上自衛隊も、殆どの護衛艦・哨戒機・潜水艦など戦術データ・リンク可能な装備は充実、無人機も既にQH-50Dを1,500時間以上運用しており、アヴェンジャー・MQ-8C等といった新しい無人機も導入予定である海上自衛隊、F-4以外の戦闘機・早期警戒機・地対空誘導弾等といった装備が戦術データ・リンクが可能であり、そのうえ無人偵察機グローバルホークが三沢に配備される予定で、無人機研究システムの研究も今も継続中である航空自衛隊、並びに最強の同盟軍でもある米軍の装備更新に遅れることなく、且つ相互に緊密な連携に齟齬が生じさせないようにするべくしていた。

中谷が言う強引な手段を甲斐が使う理由はこういった込み入った事情も含まれていた。だからこそ、甲斐は陸上自衛隊にも、無人機・戦術データリンクの研究と開発、その発展の必要性を訴えるため、中谷に“専守防衛たる自衛隊は米軍との連携によって最大の能力が発揮できるように設計され、戦略が立てられていて、”と“我々陸自だけが未だに無人機の開発と戦術データ・リンク対応可能な兵器は少ない状況であり、”といった部分を強調して説明していたのであった。

「……まあ、お前が20年前のことで、個人的な感情でそれを推進していないことを願うばかりだが。」

中谷が物憂げな表情で甲斐に問い詰めていた。

「20年前?……確かあの時は、江ノ島にて相模湾岸大災厄で出動して、部隊の小隊長をしていたが、それと何の関係が有るんだ?」

しかし、甲斐は何を尋ねているのか、皆目検討が付かないといった顔で聞き返していた。

「……いや、何でも無い。この荒魂掃討作戦で、新無人偵察機システムと個人データ共有システム、並びに観測ヘリコプター用戦術支援システムを実戦に近い環境下で運用試験を共に行おうということだな。だが、この二つの無人装備は実用性に欠けるとの報告を受けていたが?」

中谷は、甲斐の腹を探るかのように、尋ねていた。

「そうだ。新無人偵察機システムは信頼性が未だ低く、実戦レベルではないのが辛いところだからな……。この荒魂掃討作戦にて、新無人偵察機システムとスキャンイーグルの運用データを蓄積していき、二十年前以上の災厄が起きる前に実戦投入できれば、とは思っている。だが、掃討作戦中に何らかの不慮の事故で喪失し、航空支援を失うのは痛い。だからこそ、個人データ共有システムと観測ヘリコプター用戦術支援システムの実地試験という名目で何とか、OH-1改とAH-64Dも用意できた。」

痛い所を聞いてくる中谷に、甲斐は渋い顔をしながら、そう答えていた。それ故に、OH-1改とAH-64Dをどうにかこうにか引っ張り出してきたのだった。それと同時に、このOH-1改、AH-64Dを一つでも喪失しようものなら、甲斐への非難は免れないものとなることは確実であった。

「それにだ。よく横田から米軍所属のグローバルホークの支援を得られたな。」

中谷は、ある疑問があった。それは、三沢基地の基地改修のため、現在は在日米軍の横田基地に北の敵性国家への警戒監視強化を理由に配備されている米軍所属グローバルホークが荒魂掃討作戦に参加してくれることに、どういう経緯があったのかということであった。

「ああ、それはな、長時間飛行できる無人航空機グローバルホークにスペクトラムファインダーのレーダー技術を組み込ませることで、どれほど荒魂掃討作戦が通常より有利になるか知らしめたいんだろう。その性能を見せて、購入機数を増やそうという魂胆だろう。」

早い話がスペクトラムファインダーのレーダー技術を搭載した無人航空機の性能を見せて、刀剣類管理局にも購入させようという腹積もりなのだろうと、甲斐は話す。

「だが、この掃討作戦が可決されたのは、2ヶ月前の新型S装備のプレゼンが効いたのだろうな。」

中谷はそう言いつつ、2ヶ月前の新型S装備の説明会を思い出していた。

 

 

 

時は戻り、中谷が言う2ヶ月前の新型S装備のプレゼンテーション当日――――。

そのプレゼンテーションに中谷の派閥に所属する議員と甲斐も出席していた。

「折神家と米軍が共同で開発しましたストームアーマー、通称S装備は刀使の身体能力及び防御力が飛躍的に向上する荒魂殲滅用の強襲装備であります。その中でも我が八幡電子はS装備開発の一端を携わらせて頂きました。」

八幡電子システム課に所属する恩田 累は、折神家主催の新型S装備のプレゼンテーションの司会をすることになり、定型通りの挨拶から始めていた。

「しかし、S装備は使用する刀使の身体能力及び防御力を飛躍的に上昇させますが、その反面、稼働時間が予備電池を含めても30分以内であり、個人の戦闘能力を強化させるのみという欠点を抱えたままでした。……しかし、この新型S装備に内臓されているバッテリーは特別希少金属利用研究所が研究を進め、改善されたことにより稼働時間が大幅に延長されました。そのうえ、防衛装備庁からのデータリンクシステムと先進個人装備システム等の技術提供により、刀使の防護力及び攻撃力を向上させ、刀使の生残性と任務遂行率を高めることが可能となりました。」

そして、累は新型S装備は従来の性能よりも向上したことをこのプレゼンテーションに出席している甲斐以外の刀剣類管理局や防衛省の重役とDARPAの技術が使われているため米国側の監督役として参加している米軍将校、並びに政府のお偉方に説明していた。しかし、当のそのお偉方達は半信半疑であった。

「……データリンクシステムと先進個人装備システムによって、戦闘能力と生残性が向上したとのことですが、一体どのように向上したのでしょうか?」

一人の自衛官が累に質問をぶつけてきた。どのように防衛装備庁の技術提供を使っているのかと。

「データリンクシステムによって、UAV等と情報をリアルタイムで共有することにより、上空から荒魂の数と規模を先んじて視認することができ、過去に起きた箱根山の討伐作戦において刀使が不意討ちを受け、孤立することを防ぐことが可能となります。そのうえ、無線アンテナ、赤外線LED、TVカメラ、ヘルメット・マウンテッド・ディスプレイ等を装着した統合ヘルメットの機能を付けたバイザーによって、無線ネットワークを通じてデータリンクシステムに対応したUAVと防衛装備、同じ新型S装備を装着した刀使同士が見ている画像は新型S装備を装着している刀使と指揮官にも配信されます。それだけでなく体温、血圧、呼吸、心拍数、運動反応をS装備に内臓された各部位のセンサーで測定し、そのセンサーを制御するモニター及びデータ信号を送信する制御装置が指揮所等にあるモニター等を通じて指揮官にリアルタイムで新型S装備装着者の状態と生体反応をも含めた情報を共有することにより、新型S装備を装着した刀使を指揮する指揮官は、刀使の健康状態を考慮しながら、より組織的な荒魂討伐が可能となると言えます。」

刀使に高度なデジタル通信機能を持たせて情報ネットワーク化すると共に、各種装備によって戦闘能力と生残性を向上させるというものであった。

「それは、モンゴル帝国の情報戦略やナポレオンの大陸軍(グランダルメ)のように、連携して諸兵科が対処するようなものなのでしょうか?」

この真面目そうな自衛官は、嘗てのモンゴル帝国のように、遠征における組織だった軍事行動を支えるために遠征に先立ってあらかじめ情報を収集、敵情を分析し綿密な作戦計画の策定。それと同時に実戦においても、先鋒隊がさらに前方に斥候や哨戒部隊を進めて敵襲に備え、また中央アジア遠征ではあらかじめモンゴルに帰服していた中央アジア出身のムスリム商人、ヨーロッパ遠征では母国を追われて東方に亡命したイングランド貴族を斥候に加え、情報提供や案内役を務めさせていたことから、きわめて情報収集に力がいれられており、優れた連絡網と馬を使った機動性を生かした軍事行動が取れたこと。

そして、もう一つは嘗てナポレオンが率いていた大陸軍(グランダルメ)のように、菱形状の隊形で各頂点を位置する軍団の互いの距離は一日行程とされ、どの軍団が強力な敵と対峙しても、24時間前後で援軍として到来する方形布陣と各軍団に対応力を持たせるためそれぞれが補給・行軍・戦闘を行なえるように編成し、全体の膨大な情報と連絡を処理できるよう中央司令部を置いたことにより、各軍団を広域に分散させたまま行軍させ、共通する目標へと同じタイミングで到達(ナポレオンの時代で、これをやろうものなら普通は統制が取れず、バラバラになり行軍どころではなくなる。)させることができたこと。

これら二つと同じ意味なのかと自衛官は、専門外の累に特に気にせず質問をしていた。

「えっと、まあ、……そういうことです。」

累は突然専門外過ぎる質問に当然困惑をし、そのように答えるしかなかった。

「では、私の方からも質問させて頂きます。私が所属する防衛省は刀剣類管理局と連携することになりました。ああ、無論、荒魂事件に対してのみであり、指揮権は刀剣類管理局にありますので皆様ご安心を、流石に年端の行かない少女達にレンジャー訓練を施すほど、愚かではありませんので。……さて、話を戻しますが、UAVと防衛装備の連携が可能と言われましたが、それは自衛隊の艦船、航空機、車両に装備されているデータリンクシステムにも対応されているのでしょうか?」

甲斐は困惑していた累に助け舟を出すため、システム課に属する累の得意そうな話題で場の雰囲気を変えようとしていた。

「荒魂事件によっては海上保安庁、防衛省にも協力の要請があると思われますので、それも考慮し、データリンクシステムにも互換性があるかどうか運用試験したところ、問題無く作動したとのことなので、命令系統に問題が無ければ連携に支障は無いと思われます。」

甲斐に質問された累は、命令系統に問題が無ければ連携に支障はないと、釘を刺しながら答えていた。

「……ほう、それは実に素晴らしい!となれば、自衛隊の無人機とデータリンクシステムの運用が進めば、更に新型S装備の性能が向上すると見てよろしいのですね?」

すると、甲斐は釘を刺されたことに気にした様子も無く、突然大きな声を上げ、喜色満面の笑みでそう答えていた。

だが、この一連の累と甲斐の会話は事前に取り決めていたことであり、そのことについては周りのお偉方は知らなかった。

「UAVとの、無人機との連携を考慮なされているようですが、その無人機が破壊される恐れは無いのでしょうか?」

中谷の派閥に属する議員が無人機を破壊されれば、連携が取れなくなるのではと質問していた。

「それは心配ありません。最新の研究により、ノロのスペクトラム化、またはノロ同士が融合することで脳のようなものを形成し高度な知能を有していきます。その過程で感情が芽生えて荒魂となる。全ての荒魂が最初に抱く感情は喪失感と言われており、この餓えにも似た喪失感を埋めるためにノロは本能的に結合を求めます。その課程で結合を繰り返し、より知能が発達すると喪失感は怒りに変わります。自分の一部である珠鋼を奪った人間に対する怒りです。荒魂が人を襲う根本的な原因はそこにあると考えられていますので、無人機が荒魂を威嚇、または攻撃しなければ襲うことはまず無いと思われます。」

累の荒魂が人を襲う原因を聞き、お偉方は荒魂を鎮めるための唯一の武器が荒魂を生み出したそもそもの原因とは何とも皮肉な話であろうと思い、声を唸っていた。

「ま、まあ見ていただくのが一番ですね。場所を変えましょう。」

累は、場の空気を変えるべくそう言うと、甲斐と議員、お偉方達は場所を累と共に移動して行った。

そして、このプレゼンテーションに参加している者達は新型S装備の性能を知ることとなる――――。

 

 

 




個人的に、アウステルリッツ三帝会戦の戦いで戦争芸術という意味が分かるほど、ナポレオンは稀代の天才だと思います。

ちなみにですが、モンゴル帝国の部隊間の連携が保てる最高距離は1000kmで、ナポレオンの大陸軍による方形布陣は24時間前後で援軍として到来するようです。

次回も、荒魂掃討作戦前の準備の話です。
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