【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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46話を投稿させて頂きます。

更新が大変遅れてしまい、申し訳ありませんでした。人生色々あると大変です。

またも、色んな人が苦労する話です。




災いの警鐘

一方、鎌府女学院――――。

「「「真希さんっ!!おはようございますっ!!」」」

「あっ、うん。…おはよう。」

真希は朱音の命により、鎌府女学院に出向しており、朝から熱烈な歓迎を受け、

「真希さんっ!飲み物買って来ましたっ!!」

「ああ、うん、済まない。頼んでもいないのに買ってきてくれて……。」

そのうえ、鎌府の刀使から何か貰うことができ、

「真希さんっ!!」「真希さんっ!!」「真希さんっ!!」

「…………。」

そして、一時間ごとに鎌府の刀使から何かできないかを聞かれるのが、日常となりつつあるとき。

 

 

時は過ぎて、刀剣類管理局本部の食堂。

「…………寿々花、疲れた。」

「モテモテですわね。まあ、頑張って下さい。」

真希と寿々花は紗南から重要な知らせがあると言われ、刀剣類管理局本部へ赴き、他の刀使も使用し混雑している食堂にて待ち、テーブルに突っ伏した状態で寿々花に助けを求めていたのであった。しかし、当の寿々花は口に手を当て、そんな真希の姿をニヤニヤしながら見ていた。

「いやいやいや、これ以上は無理だよ!四六時中何所に居ても見つかってそんなこと言われるのは流石に辛いよ!!」

だが、真希は引き下がらず、待遇の改善を求め抗議し、救いを求めていた。

「……何が不満ですの?戦闘指揮官が慕われることは理想的で良いことだと思いますが?…まあ、ハーレム状態みたいですが。」

真希が鎌府の刀使達に多数慕われている状況を寿々花はハーレム状態といって茶化していた。

「僕は女だよっ!!」

真希は、寿々花にハーレム状態と言われ、刀使は女性にしか務まらないことと、自分は人類の生物学上女性であるとツッコミを入れていた。

しかし、真希がこのように、これほどまでに鎌府の刀使に慕われているのには理由がある。それは、元々鎌府は折神家と関わり合いが深いこともあって、折神家親衛隊とも関わり合いが深かった。そのためなのかは不明だが、元々から折神家親衛隊のことはかなり信頼していたと言っていいだろう。

 

――――だが、それだけの理由で慕われているのではない。

 

幼い子供をノロ漬けにしたうえ、大規模テロの関与(舞草の拠点が襲撃され壊滅に近い損害を被った後、それが公式発表されていたため、一部の民間人もそれを未だに信じている者が一定数居る。)、そして横須賀湾で起こった報道陣の前での斬り合いの際に生じた混乱と刀剣類管理局の社会的地位の低下といった、一連の要らぬ騒乱を引き起こした舞草は鎌府にとって、これらの諸問題を引き起こしたテロ組織であり、長船もそのテロ組織を支援しテロを幇助していた組織であると鎌府は思うようになっていった。そのため、舞草の幹部の一人である長船女学園学長真庭 紗南が刀剣類管理局本部長に就任したことが鎌府にとって見ればテロ行為によって得たものとしか見ることしかできず、朱音の懸念通り、鎌府の神経を逆撫でてしまうことになってしまった。そのうえ、舞草の首領であった現局長代理の折神 朱音が実の姉でもある折神 紫をテロ行為によって追いやったかのように鎌府は見え、折神家の警護と横須賀湾の混乱の鎮圧に駆り出された鎌府には何の恩賞も無しであったことから、朱音は折神家と刀剣類管理局を実効支配するために、同じ舞草の一人である真庭 紗南を本部長にしているのではないのかという噂が鎌府の間で勝手にされるようになっていた。

鎌府がそんな状態の中、元折神家親衛隊の中でも特に人気が有る獅童 真希と此花 寿々花の両名が鎌府女学院の刀使達を指揮することとなったことを鎌府が聞き、どういう訳かこんな話が出回ってしまった。

 

 

鎌府を、刀剣類管理局を好き勝手にしようとする紗南と朱音の野心を挫くべく、元折神家親衛隊の獅童 真希と此花 寿々花の両名が、刀使達の離職率が上がっている状況を上手く使って、わざわざ鎌府の指揮を買って出てくれたと――――。

 

 

現局長代理の折神 朱音が刀剣類管理局を実効支配するためだけに、その仲間である真庭 紗南を本部長にし、反体制側の舞草を支持していた長船だけを贔屓にするうえ、旧折神 紫派であった高津 雪那が鎌府学長であったがために鎌府を除け者にしようとしていると鎌府側が一方的に思い込んでいる矢先に、御前試合で素晴らしい実績を持ち、信者ができるほどの人気を得ていて、鎌府にとっては要らぬ混乱を引き起こしているテロ組織でしかない舞草を壊滅に追いやり、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題においても独自に判断し解決に尽力していたという話を聞いていた(尚、ソフィアの策謀で舞草と通じていたという嫌疑は朱音を逮捕するまで、そのまま公表されることがなかった。故に今現在も公表されておらず、鎌府の側はそのことを知らないままであり、仮に伝えたとしても、今のこの鎌府の状態では、信じない可能性が大きい。)ために、鎌府の間では真希と寿々花の評価は、刀使としての使命を忠実に守り、その使命を全うすべく律儀に刀剣類管理局の指示に従う者達であるという評価と栄誉を真希と寿々花は意図せず得てしまい、鎌府の刀使達にとっては、救いの神の様に盲目的に見えてしまい。紗南本部長に対抗する神輿として勝手に担ぎ上げている状況でもあった。

「……まあ、冗談はさておき、鎌府と長船がこのままなのは非常によろしくないことですし。刀使の離職者が増えつつある現状において、実戦経験が豊富にある鎌府が離反することになるのは避けたい事実ですし。そのまま、特に真希さんが慕われていれば楽なんですが、そうも行きませんものね。」

寿々花は、机に両肘を立てて寄りかかり、両手を口に持っていくと、刀使の離職者が増えつつある現状の中で、荒魂事件発生率の高い首都圏の担当だけに実戦経験も豊富であり、装備も優先的に最新のものが多く配備されているため、S装備等の扱い方も熟達している鎌府の刀使達が離反することは避けたいと思っているのか、苦悶していた。

「ああ、長船も長船で、鎌府のことを朱音様を撃つ訓練校だとか言って、お互いが憎悪している状況は座視できることではないしな。あの新型S装備は各自の連携によって性能が上がる物だから、長船と鎌府の関係は何らかの方法で改善しなくてはならない。」

真希の言うとおり、長船女学園側も鎌府のことを横須賀湾にて起きた鎌府の刀使(実際は、ソフィアのシンパだが。)による朱音を狙った射殺未遂事件が尾を引いており、長船の刀使達は鎌府女学院のことを朱音様を撃つ訓練校と揶揄しており、そのうえ事情を知らない長船の刀使達は舞草の拠点を襲撃し壊滅に追いやった親衛隊を許せない者も多数居て、その親衛隊が鎌府の指揮をしているということがより一層、長船の鎌府に対する憎悪と敵意を助長させる結果となってしまっていた。

そんなこともあって、真希も寿々花に同意し、鎌府と長船の関係が悪化していることが発覚するという不祥事が起き、刀剣類管理局への風当たりが一層厳しくなることはどうにか防ぎたかったのある。

「……僕等が仲良くしろ、っと言って仲良くなれるなら良いけどね。それとなく言ったとき『真希さん、貴女は騙されています!!』って言われたときはどうしようかと思ったよ。」

前に真希や寿々花が鎌府の刀使達に、長船との関係を改善するべきでは?と尋ねてみたところ上記のようなヤンデレ染みた返答が返ってきたため、真希と寿々花はその後もこれといった解決の手段が思い浮かばず、今まで何の解決策も、何の改善策も見い出せず苦悩していた。

「まさか、ここまで鎌府の刀使達が思い詰めていたとは思いませんでしたわ。」

寿々花も、親衛隊の頭脳的存在として扱われていたことを承知していたにも関わらず、今の今までこのことに気づかなかったことに自分自身を恥じていた。

「僕もこうなることを危惧できず。僕が鎌府に慕われるという状態を良しとしたままでしかできないのは、嘗て紫様から頂いた折神家親衛隊第一席の称号と荒魂討伐の作戦指揮を任せられた獅童 真希とは思えない失態だ。」

真希も、自らの失態を自嘲するほど気に病んでいるように見えた寿々花はそれで立ち止まる訳には行かなかった。

「……だとしたら、鎌府の刀使達に大きな功績を与える機会がある仕事を与え、それを成し遂げることができれば、少しは改善されるかも知れません。」

そのため、寿々花は真希にある賭けに出る提案をしていた。

「……どうやって?」

真希は、寿々花に『どうやって?』と言って、その賭けに乗る魅力と理由を欲して尋ねていた。

「今日、紗南本部長に理由を話して荒魂殲滅作戦か何かの大掛かりな作戦に鎌府が参加することができるように取り計らった後、鎌府の刀使達には、朱音様と紗南本部長達が鎌府と長船の関係悪化と刀使の離職率が上がったことで刀剣類管理局の戦力が落ちたことを憂慮し、鎌府の協力を得るために、鎌府を快く思わない元舞草の重鎮達の制止を振り切ってでも、朱音様と紗南本部長が鎌府に功績を与える機会を設けるべく動いているという根も葉もない噂を流し、紗南本部長にお願いした大掛かりな作戦を鎌府の刀使達が中心となって解決すれば、朱音様達と鎌府の関係が改善され、長船の刀使達も鎌府の方達のことを悪く言えないはずですわ。…………都合良く大掛かりな作戦が有ればの話ですが。」

寿々花は冷や汗をかきながら、このような賭けにでることを提案していた。

「下手をすれば長船と鎌府は功績の取り合いに発展するかも知れないが、……何もせずズルズルこの状態が続いて、僕等が噂通りの人物ではないことがバレたら関係改善の道は閉ざされるどころか、状況はますます悪くなるばかりだろうしね。毒を以って毒を制することができるかは勝負に出るしかないな。今日、紗南本部長に呼ばれたのは僥倖だったな、寿々花の案を話して許可を得ることができれば実行しよう。」

しかし、真希と寿々花は気付かなかった。その案には、抜けているところがあることに…………。

 

 

 

 

 

そして、本部長に栄転した紗南と五名の自衛官が居る一室の中で、真希と寿々花は予定通りに紗南と会合し、鎌府の状況から伝え、寿々花の案を話していると、

「おお、そうか。実はな、箱根で荒魂の群れを討伐する作戦を計画中で、そういう事情なら鎌府の刀使達を中心に編成して当たってくれ。指揮と人選は真希と寿々花、お前達両名に任せたいが、良いか?」

しかし、都合良く大掛かりな荒魂討伐作戦の立案中だったことが幸いし、あっさりと許可が出たことに真希と寿々花は若干拍子抜けはしたものの、心の中でツキがでたのかもと思いつつ、直ぐに気持ちを切り替え、返答していた。

「…本部長、ありがとうございます。たしか、防衛省と刀剣類管理局は協力体制に入り、自衛隊の協力を得られる、ということを聞きましたが?この方達と何か関係があるのでしょうか?」

真希は、五名居る自衛官(真希が自衛官であることに気付けたのは、彼らが陸自の常装を着用していたからである。)を横目でチラリと見やりながら、紗南にこの部屋に居る五名の自衛官と何か関係が有るのかと含みを持たせながら尋ねていた。

「そうだ。箱根で米軍所属の無人機がな、スペクトラムファインダーの性能向上のために試験飛行をしている最中に偶然にも荒魂の群れを発見したから、これを討伐して欲しいと陸自から連絡が有ってな。そこでだ、彼らは我々刀剣類管理局にも戦術ネットワークリンクシステムを導入できるように支援する代わりに、自衛隊内にも荒魂対策の部隊を作る際のノウハウを得るべく長期出向という形で来てくれた。獅童、此花、彼らを宜しく頼む。」

紗南はそう言って、五名の自衛官が此処に居る理由を話すと、真希はそれに頷き、五名の自衛官を見る。

「陸上自衛隊第2師団第25普通科連隊所属二等陸佐の西田 保です。長期出向の間、部下共々長くお世話になりますが、何卒、宜しくお願いします。」

屈強な身体つきだが、どこか爽やかな好青年さを感じさせる西田 保二等陸佐が大きな凜とした声で、真希と寿々花に自己紹介をし、握手を求めていた。

「いえ、こちらこそ。陸上自衛隊第2師団の精強さは此処でも聞き及んでおります。その実力を拝見し、基幹連隊指揮統制システムの導入の支援とこちらの指揮管制官にご教授して頂けるのはこちらも感謝するところです。」

真希は、何処か政治的な、そして謀略の匂いを感じてはいたが、好意を無下にして刀剣類管理局にとって数少ない支援者を失う訳にも行かなかったので、これからも共に協力して行こうという返答の意味を込めて西田と固い握手をしていた。

「ありがとうございます。我々も真希さん達の御前試合での実績と鎌倉特別危険廃棄物漏出問題での活躍を聞き及んでおります。そのような素敵な方達と共に作戦を遂行でき、そのうえ我々だけでなく習志野の一部小隊に荒魂対策のことをご教授して貰えるのは、荒魂対策に通じている部隊が無い自衛隊としてもありがたいことです。」

西田もそう言って、刀剣類管理局と防衛省の固い同盟が結ばれたかのように真希との握手を握り返していた。

 

 

 

 

 

 

真希と西田が固い握手を交わした後、最寄の駐屯地に帰還し、進捗状況等の報告を済ますと、帰還した駐屯地のとある一室にて西田達は刀剣類管理局への長期出向に対することについての話をしていた。

「どう思います?我々が基幹連隊指揮統制システムのような物を刀剣類管理局に導入するための支援と同時に、荒魂対策の真髄を教授してもらうことによる情報共有ということが目的の今回の長期出向のこと。」

西田の副官的立場にあり、西田よりも体躯が更に大柄な男性沼田 剛一等陸尉は不意に西田に今回のこの長期出向のことについて尋ねていた。

「…………そうだな、警察庁は先の鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の責任を取らされる形で、刀剣類管理局がより専門的な組織となるよう独立をさせられることになり、通るはずだった荒魂対策の政府予算を縮小されてしまったからな。だが、防衛省は刀剣類管理局への支援を名目に荒魂対策の政府予算を得た。やけに防衛省側が得するようなことになったのは、何かキナ臭いものを感じるが、獅童さんと此花さんは此方のことを状況が状況なだけに疑ってはいるが、嫌悪している訳ではないのがせめてもの救いだな。今回の我々の長期出向の第一の課題はいかに彼女達の信頼を勝ち取るかだ。」

西田はこの長期出向の最初の目標を掲げ、各隊員達のわだかまりを解消させようとしていた。

「……しかし、よく認められましたね。国会内部にも今回の防衛省と刀剣類管理局の人事交流と共同作戦は反対意見が多いんでしょう?」

だが、沼田は西田に国会の内部にも、自衛隊が刀剣類管理局を援助又は支援することを国連や各国が軍事行動と見なし、非難され、児童の権利に関する条約といった国際法に抵触する恐れがあることと、国連加盟国である我が国が国際連合安全保障理事会決議1261から続く国連決議に反する行動を取ることによる外交上の損失を恐れた野党や子供の権利に関するNPO法人から根強い反対意見があることを西田に伝えていた。

「俺達は“暴力装置”ということですね。大災厄から我らの守るべき国民を守ろうってことなのに。そんでもって、年下の子と仲良くできるチャンスだと思っていたのに。」

西田の部下である勝田 亨二等陸尉は西田と沼田の会話に割って入り、その会話の内容を茶化したようなことを言っていた。

「へぇ~~、勝田二尉はそんなこと考えてたんですか?でしたら、代わりに私とご一緒しません?年端の行かない子供にイタズラする不届き者を処罰するための予行演習ですけど。」

同じく西田の部下であり、自衛官に似つかわしくない可愛らしい声で予行演習に付き合って欲しいと言って、微笑んでいる格闘微章保有者の古河 蛍三等陸尉に言われた勝田は、

「……すいません、今のは冗談です。幾らなんでも甲斐陸将補がせっかく頑張って構築した防衛省と刀剣類管理局の協力体制を反故にするような行動はしないから。」

と言って、蛍に早口で説明し、謝罪する勝田。

「……まあ、ハードルは未だ高そうですな。」

沼田は勝田と蛍の会話を無視して、西田との話を進め。そのような状況下であるにも関わらず、防衛省のお偉方達が防衛省と刀剣類管理局による共同作戦をしようという魂胆が沼田には見えなかった。

「だが、甲斐陸将補が防衛省と刀剣類管理局の協力体制にご執心だからな。あの人のことだから、強引にでも推し進めるんじゃないか。」

西田は甲斐の目的達成のためならば、非情な手段を取ることもある人となりを推測し、表向きは防衛省と刀剣類管理局の協力体制は鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の解決のためと言いつつ、刀剣類管理局の支援のためと言って無人機とデータリンクシステムを使い、精度を高めようとする魂胆は容易に想像できた。

「……西田二佐。発言宜しいでしょうか?」

西田の部下の中では、沼田に次ぐ古参の部下であり、発言力もある女性自衛官の鏑木 霞一等陸尉は西田にあることを尋ねようとした。

「ん?何だ。」

西田も鏑木が何を尋ねたいのか聞こうとしていた。

「9歳の子供がこの作戦に加わるということを聞き及んだのですが、それは見送るべきだと思います。参加しなければならない何らかの特別な事情があるのかも知れませんが、刀剣類管理局に所属する特別祭祀機動隊と自衛隊が出動している作戦に参加することになれば、どのような理屈であろうと、その9歳の子供を戦闘行動に加担させたことになるのは自明です。下手をすれば我が国の行政機関が幼い子供を軍事利用していると言われることとなり、年端も行かない少女達に危険な荒魂討伐任務を行なわせているという問題が再燃され、反対の声が大きくなり、そのような世論状況となれば、自衛隊は問題を引き起こしたとして責任を取らされることとなり、自衛隊と刀剣類管理局の協力体制は解消されることとなります。そうなれば、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の解決の目処が立たず、刀剣類管理局は更なる批判を受け、このような状況に引き込んだ自衛隊は刀剣類管理局側から白い目で見られることになり、甲斐陸将補がご執心している防衛省と刀剣類管理局の協力体制は今後しばらく形成されることはないと言えます。そうなれば、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の解決できなくなり、国民の不満が大きくなるだけという最悪の結果に終わることになる可能性が高いです。ですから、法的上民間人である9歳の子供に戦闘行動させるのは、如何なる理由があるにせよ問題になると私は進言します。」

そう言って、鏑木は9歳の子供が刀剣類管理局に所属する特別祭祀機動隊と自衛隊が出動している戦線に加わっていることが発覚すれば、防衛省と刀剣類管理局は国民からの信用を失うことになってしまうばかりか、防衛省と刀剣類管理局の協力体制がご破算となり、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の解決の目処が立たない刀剣類管理局は更なる批判を受け、自衛隊も幼い子供を軍事利用しているという世論を形成したとして責任を取らされることになり、今後しばらくは防衛省と刀剣類管理局の協力体制ができなくなることを西田に強く訴えていた。

だが、鏑木の本音は、刀使でも自衛官でもない“民間人”である9歳の子供を戦闘に駆り出すことに否定的であるだけであり、戦闘に参加させないように誘導しているだけである。

「……そうだな。だが、上はそう思っていないらしい。荒魂を討伐できる力の無い私達にできることは充分過ぎるほどの援護をしてやり、一人でも家に帰らせることだ。それと、その9歳の子供について、私が甲斐陸将補から聞かされたことについて、今から話そう。」

この後、鏑木達は9歳の子供衛藤 優が今現在置かれている状況のことを聞かされるのであった。

 

  

 




西田 保
陸上自衛隊第2師団第25普通科連隊所属、階級は二等陸佐。
刀剣類管理局に戦術データリンクを導入する代わりに、荒魂対策の研修のために長期出向している自衛官のリーダー的存在。どこか爽やかな好青年さを感じさせる顔立ちだが、40代前半。

沼田 剛
西田と同じく陸上自衛隊第2師団第25普通科連隊所属、西田の最古参の部下で階級は一等陸尉。
西田の長期出向に同行しており、西田のサポート役として、副官的な役割を担っている。大柄な身体とは裏腹に情報収集と分析を任されることが多い。

勝田 亨
西田と同じ所属で、同じ理由で長期出向に同行している西田の部下。二等陸尉。
軽い言動をするが、ムードメーカーとして振る舞い、隊の緊張を和らげようとしている。

古河 蛍
階級は三等陸尉。西田と同じ所属で、同じ理由で長期出向に同行している西田の部下で、愛らしい容姿と声とは裏腹に格闘微章保有者で腕っ節だけなら西田と沼田を倒すことができる実力者。

鏑木 霞
階級は一等陸尉。西田の部下の中では、沼田に次ぐ古参の部下で、発言力も西田の隊の中では沼田に次ぐためか、手厳しい意見をズバズバ言うことが多い。
蛍が唯一恐れる存在。
 
 

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