【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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49話を投稿させて頂きます。

一応書きますが、親衛隊の制服を着ているのは、新キャラじゃありません。
次回で、戦闘になります。相変わらず、自分の趣味全開ですが、許して下さいねっ!!


箱根山戦1

その日の夜―――。

「……それで、何かあったのか?」

作戦本部室に居た紗南は、突然姫和に内密に話したいことがあると言われ、誰も居ない個室まで移動し、姫和に話したいことは何か尋ねていた。

「突然申し訳ありません、本部長。綾小路武芸学舎中等部一年の内里 歩が優のことについて何か探っていたようです。」

姫和は歩のことについて少々、いや、かなりの嘘を吐いて紗南に報告していた。

「……確かなのか?」

紗南は眉を顰めながら、事が事だけに神妙な面持ちで姫和に尋ねていた。そして、紗南と姫和の二人の会話は続いていた。歩の処遇をどうするかについてだが。

「確証は持てませんが、可奈美に接触して優の病室に入りました。…何の意図も無く、そのような行動を取るとは思えません。」

「……つまり、綾小路側のスパイだとでも?」

「いいえ、……本人は自覚しているか、自覚しているかは分かりません。しかし、刀剣類管理局内部に居る旧折神 紫派が何かしらの動きを見せているという信憑性の高い情報がある以上、優の居る場所と中の病室がどうなっているかを知っている内里 歩を旧折神 紫派で、今もその影響の強い綾小路に帰すのは得策ではないかと……。最悪、旧折神 紫派が綾小路に居る歩を通じて機密事項が探られ、舞草が中心となった新体制に対して、何かしらの体制を揺らがせるような活動をする可能性は無くはないと思われます。」

姫和は現在の刀剣類管理局の風当たりが強い現今の状況と旧折神 紫派が何かしらの動きを見せている情勢を先ず紗南に説明したあと、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題で現れた大荒魂を優が倒したという事実を覆い隠すため、公式な発表では優は鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の被害を受け、荒魂に身体を侵食されている状態となっているため、現在は刀剣類管理局の特別な病室で治療中ということになっており、優の居る病室を見た歩から通じて特別な病室ではないことを旧折神 紫派が知り、その矛盾点に気付き、大荒魂をどうやって討伐したかを探られ、優が大荒魂を倒したという事実を公表される恐れがあると指摘していた。

「…………では、どうすべきだと?」

「内里 歩の特別任務部隊への出向期間を延ばしてこちら側に引き込みましょう。そうするだけで、こちらの内部情報は漏洩されることもありません。その間に優を別な……安全の場所に移しましょう。」

そう言ったあと、姫和は自分の目論見通りに事が運ぶように祈っていた。

「……よし、分かった。そのように手筈は整えよう。十条の言うように、現今の刀剣類管理局への風当たりは一層厳しい物となっている。下手なスキャンダルは避けたい。先ずは、中等部一年の歩ですら容易く優の病室へ行けるのは不味いな……。もう少し警備は厳重にした方が良いだろう。」

紗南は少し考えたあと、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の“真実”を秘匿するために優を軟禁に近い状態にしていること。

敵性勢力の工作員が優を獲得工作してくるか、その家族を脅かしに来ることの可能性を考慮すれば、もう少し優とその家族の身辺の警護を厳重にするべきかも知れなかったと後悔をしていた。そのため、紗南は姫和の要求を呑むことにした。

「……ありがとうございます。本部長。」

姫和は柔和な笑顔を造り、まるで心配事の一つが減ったかのような仕草を見せながら、紗南にお礼を言っていた。

「いいや、そこは私が気を付けねばならなかったことだ。済まないな、十条。」

本部長という役職に身を置きながら、その危険性に気付かなかった不備を詫びる紗南。

「いえ、私も可奈美と優が息災であれば問題ありません。……こちらこそ、紗南本部長のご助力がなければ実現できなかったことなので、こちらこそ突然の無茶を聞いて頂き感謝しております。」

「……そうか。では、私は優の警護を厳重にするよう取り計らおう。」

紗南は姫和にお辞儀をされ、そして礼も言われたためなのか、何とも言えない気持ちとなり、苦笑しながら短く返事をし、信頼していた篝の娘であることもあってか姫和と篝を知らず知らずの内に重ね、微笑んでいた。

「お願いします、本部長!」

そして、姫和も可奈美と優の身辺を守れることに喜んでいるかのように、少し大きめな声で、且つ早口で返答していた。その反応に初々しさと友人への気配りを感じた紗南は笑顔と片手を上げることで了承の意思を示していた。

しかし――――、

(……これで、内里は刀剣類管理局本部から出れなくなった。後はどうにか、内里を“荒魂との戦いにて戦死”にすれば、リスクを排除できる。……何もかも消せる。何もかも……。)

姫和は内心、歩を特別任務部隊への出向期間を延ばし、“荒魂討伐作戦中による戦死”にすれば、自分のことを一番理解してくれる優の秘密が漏れる事がなく、安全を守ることができ、紗南に気付かれることなく、自分と優の居る空間が壊れることが無くなると、そう思い描いていた…………。

 

 

 

 

次の日――――。

そんな一幕があったことを知らずに自室に戻っていた歩は、綾小路武芸学舎学長相楽 結月に綾小路に帰還する旨をスペクトラムファインダーの通話機能を使って伝えていたのだが……。

「……えっ?それってどういうことでしょうか?」

しかし、歩の想定していた返答が返ってくることはなかった。それは特別任務部隊への出向期間が延びたことを告げられたためである。

『君は東京都湾岸線沿いにて発生した荒魂との戦闘において、活躍をしたそうだな。真庭本部長から感謝の言葉を贈られた。そこでだ、真庭本部長は将来性のある君をどうしても手元に置いておきたいと言われてな。済まないが、しばらく、いやもう少しだけ本部に残ってもらえないだろうか?』

荒魂との戦闘で活躍?私が?誰かと間違えているのではないのか?と、疑問が幾つか出てきたが、姫和のことを思い出してしまい、長期出向のことを断り、綾小路へ帰ろうと考えていた。

(……私、あの人と組むの嫌だな。あの人に何されるか分かったものじゃないし。あの人が居ると優くんが可愛そうだよっ!……あっ。)

だが、可奈美と優のことを思い出し、

(…………でも私、優くんと衛藤さんに悪いことしたな。衛藤さん、悪く思ってないかな?だったら、そのことをちゃんと誤らないまま勝手に帰るのは酷いし、ダメだよねっ!!それに、本部長と学長の期待に応えないとっ!!)

先程の病室での優との邂逅で歩は自身の行動、優のことを荒魂に見えたとはいえ、腫れ物のように扱ったことを優と可奈美の二人が気を悪くしたなら、ちゃんと謝罪しなくてはと思い、残留することを決意する。

「……相楽学長、分かりました。その話、謹んでお受けしますっ!」

こうして、歩は綾小路に帰ることなく、本部に残ることを了承してしまった。……姫和の陰謀で、特別任務部隊に残るように仕組まれていたことに気付かぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

三日後、AM:8:00。

箱根山山中特別祭祀機動隊仮野営地――――。

その仮野営地内にある作戦指揮所のテント内にて、箱根山の荒魂掃討作戦の指揮官を務めることとなった真希と指揮官の補佐を務める寿々花、そしてS装備を装備する許可を得た可奈美、姫和、舞衣、そして沙耶香といった何名かの鎌府の刀使達とSTT隊員達。それと荒魂パーカーを身に纏い、フードを被りながらスポーツマスクとグレー系のゴーグルを装着し、旧折神家親衛隊の制服を着用している、恐らくは元親衛隊の刀使(尚、着ている制服と怪しげな格好だけに、誰も話しかけなかった。)。最後に陸上自衛隊から刀剣類管理局に出向している身のためビジネススーツに着替えている西田達五名と何名かの第一空挺団と第12旅団所属の普通科の隊員達。この三者が作戦会議に参加していた。

「それでは、今回の作戦について説明する。数日前、米軍所属の無人偵察機グローバルホークが箱根山周辺を演習中、荒魂の群れを観測し、自衛隊からの要請を受けた刀剣類管理局は人里へ向かう前に討伐するべきであると判断し、上層部の協議の結果、自衛隊との共同作戦を立案。実行に移されることとなった。そのため、本作戦の一時間前に航空自衛隊北部航空方面隊第3航空団隷下の第302飛行隊所属のF-35Aが四機編成で威力偵察を行い、荒魂の数と規模を観測してくれた。そして、陸上自衛隊は作戦が開始されると同時にスキャンイーグルと新無人偵察機システムといった無人機が情報収集するが、もし、その二機が使用不能となった場合はOH-1改が1機とAH-64Dが1機といった情報共有する能力を持つ回転翼機とそれらを支援するAH-1Sが6機が引き継いで情報収集することになる。そのうえ、間接照準射撃で撤退を支援するための99式自走155mmりゅう弾砲6輛が配備されており、火力支援可能だ。そして、米軍は無人偵察機グローバルホークが遥か1万1000mもの上空から箱根山周辺を偵察し援護してくれるということとなっている。まず荒魂の規模は――――。」

そして、真希が作戦の概要を他の刀使とSTT隊員達や自衛官等に説明していた。

荒魂の規模は数が多く、数名の刀使で対処する大型の荒魂も多数確認されたこと、待ち伏せも注意しなくてはならないことと、自衛隊と米軍の支援内容も説明していた。

「……だが、それだけで飛行能力を有する荒魂が居ないという理由にはならないと僕は考えている。本作戦に使用される横田基地米軍所属のグローバルホークが遥か上空から荒魂の数と規模を観測し、事前にF-35Aが観測した荒魂の数と規模が合っているか、飛行能力のある荒魂が居ないことが確認された場合のみ、援護に駆けつけて来てくれた有人機のOH-1改とAH-64Dを本作戦に参加させる。これは、乗員の命も関わってくるので、そういった部分も熟考したうえで作戦予定を変更することがあることも頭に入れておいてくれ。」

真希は作戦の概要を説明し終えると、各員の持ち場を説明し始めていた。

「第一小隊は前線の指揮と襲撃、小隊長は僕だ。」

第一小隊は真希が指揮を執り、第二小隊と共に荒魂の殲滅を担当するということであった。尚、新型S装備は10着しか先行試作されなかったため第二小隊に10着全て装備させることになっている。

「第二小隊の担当は遊撃と第一小隊と共に襲撃、小隊長は戦闘と指揮をこなせる柳瀬に任せる。遊撃を担当していることから戦闘回数が多いことも考慮し、先行試作された新型S装備10着を全員装備、人員は一線級の実力を持つ衛藤、沙耶香といった歴戦の刀使を配属させる。……だが柳瀬、君なら上手く指揮できる。」

「……はいっ!」

真希の励ましの言葉に舞衣は返事をするが、これから指揮する精鋭揃いの部隊を上手く指揮できるかどうか不安でもあった。

「第三小隊の小隊長は岩倉、陸上自衛隊の第一空挺団と第12旅団の第13普通科連隊と共に緊密に連携し、第一、第二小隊の援護、撤退支援を頼む。」

「あっ、はい。分かりました。」

真希の指示に元気が無さそうにする早苗。理由は、姫和が新型S装備を上手く扱いこなせないがために第二小隊配属とならなかったばかりか、真希を全く信用していないがために第三小隊配属となったため、早苗と同じ小隊の配属となったものの、未だ、早苗は姫和との間にわだかまりが有るせいで、まともに話せなかったことを少し気にしていた。

「寿々花は、西田さん達とSTT隊長と共に野営地に居て増援を送る場所や火力支援の要請といった前線部隊の後方支援を頼む。それと刀使達と共に野営地と後方部隊の護衛、並びに撤退路の確保を頼む。」

「……いつも通り、貴女が前衛で、私が後衛ということですわね。」

「そうだ、指令役を頼む。あと、新人の刀使も付けるから、その面倒も頼む。」

「いきなり、実戦ということはさせられないという判断からでしょうか?」

「ああ、指揮通信から後方部隊の護衛。それと、撤退路確保という重要な役が多いところに新人のことも頼むのは済まないとは思う。……だが、「荒魂討伐作戦の雰囲気に少しでも慣れさせるのが目的ということですわね?」…ああ、そうだ。多忙だが頼む。」

寿々花は指揮通信から撤退路の確保という多忙な任を預かったにも関わらず、歩を含む新人の刀使達の世話という真希の指示に嫌な顔を一つもせず、受け入れていた。

「……各小隊については説明した通りだ。まず、第一小隊と第二小隊を先行させ箱根山周辺の荒魂を討伐する。やり方は荒魂がこちらに気付いていない場合によるが、大型の荒魂の場合は第二小隊がSTT隊員によるサプレッサー付きの短機関銃で荒魂の注意をSTT隊員に向けさせ、その隙に新型S装備を纏った刀使が側面、或いは背後を強襲して斬って祓う。弱い荒魂が相手だった場合は、いつも通りに斬って祓ってもらっても構わない。そして第一、第二小隊の支援を担当する第三小隊は第二小隊の新型S装備のバッテリーを運んでもらい、各ブロックの荒魂が居た区域を一つ一つ制圧する。それと、もしもの話だが、荒魂が早期にこちらの存在に気付いてしまい、多数の荒魂がこちらに向かって来た時は第一小隊が囮となって戦線を維持し、続く第二小隊が荒魂の陣形の隙を突いて陣形を乱れさせ、陣形の穴を突き壊滅的打撃を与える。第三小隊は第一小隊の支援と陣形の穴を塞いで貰う。もし、作戦の続行が困難であると判断した場合は陸上自衛隊の99式自走155mmりゅう弾砲とAH-64DとAH-1Sの編成による火力支援による撤退支援を行なってくれる手筈となっている。……以上だ。何か質問は?」

真希は周りの刀使達とSTT隊員、自衛官達に分からないところがあるか質問をしていた。

「……F-35Aと言いますと、最近ニュースで言われているあの最新鋭のやつですか?」

真希の説明を聞いていたSTT隊員の一人が真希に質問する。

「そうだ、何か不明な点があるのか?」

「我々刀剣類管理局に情報をもたらすため空自が支援してくれたのはありがたいですが、F-35Aは最新鋭のステルス戦闘機だと聞いています。ですが、荒魂に対してステルスは効果があるとは思えないのですが何故、空自は今回の荒魂に対する威力偵察で三沢の臨時F-35A飛行隊が適任であると判断されたのでしょうか?」

STT隊員は、荒魂相手には効果が無いと思われるステルス戦闘機で威力偵察した理由を今回の作戦指揮をすることとなった真希に何かしら知っているかもしれないと思い尋ねてみた。

「今回の作戦で空自がF-35Aを威力偵察に使ったのはステルス戦闘機だからという理由ではなく、元々F-35はネットワーク戦争を前提に造られた戦闘機であり、EO-DASといった各種先進的なセンサー類によって得た情報を直接基地や司令部に送ることができるネットワークシステムを持つことと、空自が保有するマッハの速度で飛べる航空機であるということで荒魂に対する威力偵察の任務に適していると判断された。……とまあ、こんなところだが、我々刀剣類管理局でいうところの明眼を使える刀使が上空からの監視をしてくれていて、その見た情報を地上に居る各刀使達にスペクトラムファインダーが持つ画像付きメール機能で知らせてくれていると思ってくればいい。」

真希は、F-35AはEO-DASといった各種先進的なセンサー類と直接基地に画像情報といった情報を送ることができるデータリンクシステムを持つこと、マッハの速度で飛行できるといった理由で今回の荒魂掃討作戦が行なわれる箱根山にて荒魂の数と規模を上空から威力偵察するのに適しているのがF-35A(元々、F-35はネットワーク戦争を前提に作られた戦闘機であるため、偵察機としても非常に優秀であり、事実アメリカ海兵隊もおよそ2025年の上陸作戦時にも弾着観測や偵察に使う予定である。)であると空自は判断したとSTT隊員に説明していた。

「荒魂の数と規模の情報を得るため上空から監視した後、F-35Aパイロット達はまだ荒魂が隠れているかこちらに気付いていないことも想定し、JDAMを投下、その後飛行可能な荒魂が居ることも想定し、誘い出そうと低空飛行による機銃掃射を行なった際、僚機のF-35Aが低空飛行で機銃掃射を行なったF-35Aを荒魂が威嚇していたことを確認してくれていた。…そういったことから、もし飛行能力を有する荒魂が存在していたら、JDAMの投下で騒音があり、低空飛行で身を晒して機銃掃射をしたにも関わらず飛行能力がある荒魂がF-35Aを追いかけて来なかったという理由で、今から討伐する荒魂の群れの中に飛行能力を有する荒魂は居ないというのが刀剣類管理局並びに航空自衛隊の見解だ。だが、もう一度言うがこれは推測の域に出ていないため、充分警戒すべきことであると僕は思う。」

真希はF-35Aが威力偵察を行なった理由とその効果を質問をしたSTT隊員のみならず、他の刀使や自衛官達にも聞こえるように説明していた。

そして、これは真希が説明することは無いと判断し省いているが、もし低空飛行で機銃掃射を行なったF-35Aが飛行能力を有する荒魂に追われた場合はマッハ1.2で即時離脱する予定であった。

「米軍所属のグローバルホークが箱根山周辺で演習をしていたと言いますが、何の演習をしていたんです?」

米軍に不信感を抱いているのか、姫和は他の人の目もあることを考慮し、出来る限り丁寧な言葉使いで真希に質問をしていた。

「……中の構造といったことは機密に関わることなので詳細を省くが、索敵範囲を伸ばした新型のスペクトラムファインダーに搭載される予定のセンサー技術のテストであると聞いている。もし、このテストが成功すれば、新型のスペクトラムファインダーが配備されることとなるらしい。……それまでは吉報を待ってくれ。」

真希の発言に周りの刀使達は騒然としていた。グローバルホークを飛ばしたのは、新型のスペクトラムファインダーに搭載される予定のセンサーが積まれているという情報に驚いたこともそうだが、新型のスペクトラムファインダーが研究、開発されており、そのテストが成功すれば、その索敵範囲を伸ばした新型のスペクトラムファインダーが配備されるかも知れないということにだ。

「あと、これは皆に聞いて貰いたい。本作戦は撤退も許されない防衛戦ではないことを頭に入れておいてくれ。先程も言ったが、危険と判断したら即時撤退し、体勢を立て直すことも許可されている。それ故に、作戦が瓦解したら陸上自衛隊の99式自走155mmりゅう弾砲とAH-64DとAH-1Sの編成による撤退支援を行なってくれる手筈となっており、爆撃と砲撃に乗じて速やかに撤退すること。……以上だ。」

真希は体勢を立て直すことと撤退は許可されていることを各員に伝えていた。

そして、作戦会議が終了し、皆が持ち場に戻ろうとする中。

「寿々花、夜見と高津学長の行方は?」

真希は、内々に寿々花に夜見と雪那の行方を追わせていた。寿々花は代々折神家に仕える京都の名門此花家の令嬢であるため、此花家の力を使って夜見と雪那の捜索していた。

「……いいえ、まだ見つかりませんわ。一番可能性のある綾小路に居ると踏んでいるのですが……中枢まで調べるのに、警備が厳重なのもあって、やはり時間が掛かりますわ。」

寿々花は、誰か聞き耳を立てていないか周りを横目で見た後、真希にだけ聞こえるように小声で伝えていた。

「……そうか、引き続き捜索に当たってくれ、見つかったら先ずは僕だけに知らせてくれ。朱音様の指示を仰いで、どうするかは判断しよう。」

真希は無念そうに寿々花にそう小声で伝えていた。

「…分かりました。」

寿々花も短くそう言うと、自分の持ち場へと向かって行った。

 

夜見さえ戻れば元の四人となり、全員揃うと夢見ながら……。

 

    

    


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