53話を投稿させて頂きます。
今回は個人的な感想が入っております。
第二小隊は、S装備の能力のお陰か、それとも目が良い可奈美が先導しているお陰か、起伏が激しく歩き辛い山の地形を迅移と八幡力を使わずとも、軽々と疾走していた。
これなら、AH-64Dの墜落した地点に荒魂よりも早くに着くことだろう。
しかし、足止めはするべきかも知れない。
ふと、そのようなことを頭に掠めた舞衣はS装備のバイザーに表示されている敵荒魂の位置を見て、ブロックLにりゅう弾砲で火力支援を要請し、足止めをすることにした。
「すいません、ブロックLにりゅう弾砲で火力支援をお願いします。」
『……了解。ブロックLに近付かないで下さい。』
舞衣から、ブロックLに火力支援の要請を受けた臨時指揮所は直ぐ様、陸自の特科部隊に舞衣の要請を伝えた。
そうして、臨時指揮所から火力支援の要請を受けた特科部隊は99式自走155mmりゅう弾砲で支援を行うべく、スペクトラムファインダーとS装備のGPS反応、それと陸上自衛隊の無人機FFRSから得られる観測情報を元に、味方の位置とムカデ型の荒魂の移動経路を算出し、味方に当てず、荒魂だけを砲撃しようとしていた。
数十秒後、りゅう弾砲が着弾したのか、ブロックL当たりの方角で轟音が鳴り響き、土煙が上がっていた。
『ブロックLに着弾を確認。……荒魂、りゅう弾砲により進行が止まりました。』
臨時指揮所から、りゅう弾砲によって荒魂の進行が止まったことを告げられるが、一時的なものであろうことは舞衣は分かっていた。
だが、これで少しだけでも時間稼ぎにはなる。
舞衣と可奈美含むS装備刀使達はその内にブロックMに到着し、墜落したAH-64Dを中心に方円の陣形を組み、ムカデ型の荒魂が何時来ても良いようにしていた。
「大丈夫ですか!?」
舞衣の声を聞いたAH-64Dのパイロットは、安堵する。
助けが来てくれたのだと……。
「……助かった。」
「自力で出れそうですか?」
「足腰が少しおかしい。……立てそうにない。」
舞衣は生存しているAH-64Dのパイロットは女性であった。
そして、このとき舞衣は知らなかったが、AH-64Dの女性パイロットは脊椎の圧迫骨折と大腿部の粉砕骨折で動けない状態だったので、致し方なかった。
「分かりました。肩を使って下さい。」
「……済まない、助かる。」
そのため、舞衣は肩を貸してAH-64Dの女性パイロットを救出しようとしていた。
AH-64Dの前席操縦席に座っているパイロットは恐らく、いや間違いなく死亡しているにも関わらず、舞衣はそのことに気にすることなく後席に座っていた女性パイロットの救出をしようとしていた。
その姿を見た刀使達は、危険を鑑みずAH-64Dの後席に座っていた女性パイロットの救出に向かったことに素直に称賛する者と、ある種の不気味さを感じる者が居た。
そんなとき――――。
『右方向から荒魂接近、会敵予想時間は約30秒程。交戦に備えて下さい。』
後方の指揮所から、ムカデ型の荒魂が迫って来ていることを告げる通信が入る。
「……分かりました。すみませんが、ヘリの機銃かミサイルで支援をお願いします。」
舞衣は、それに合わせてヘリの部隊長にロケット弾か機関砲での支援を願い出ていた。
『了解、10秒後に攻撃開始します。離れて下さい。』
ヘリの部隊長は荒魂に実弾は効果が無いということは知っていたが、こちらを囮にしてムカデ型の荒魂を殲滅するか、土煙に紛れて撤退するのだろうと思い、AH-1Sの近接航空支援をしようと行動する。
10秒後、ヘリの近接航空支援が始まった。
機関砲、ロケット弾といった攻撃ヘリAH-1Sが持つ全ての武器がムカデ型の荒魂に襲い掛かる。それと同時に荒魂の周りは聴覚を失うと思えるほどの轟音、視界を遮るかのように土煙が上がり、一瞬だけ荒魂の目と耳が封じられた。
だが――――、
「間接標準で援護、お願いします。」
『了解。』
舞衣はそれを見るやいなや、FFRSのセンサーで捉えた荒魂の位置と刀剣類管理局にあるデータベースを元に指揮所が合成画像を作成。それらの情報を新型S装備に送り、土煙の中に居るムカデ型の荒魂が見えるようにしていた。
攻撃ヘリの近接航空支援により、土煙と轟音によって目と耳を封じられた荒魂。
陸自の無人ヘリの間接標準による支援の元、敵荒魂の位置を正確に得られる新型S装備刀使。
あとは一方的であった。
さしもの、複数人の刀使が相手をしなければならないほど強力な荒魂も目と耳が封じられれば、無力だったのだ。
こうして、ムカデ型の荒魂四体は舞衣達に何ら損傷を与えることもできぬまま討伐され、何事も無く救援の部隊と合流。
そのまま、ヘリの着陸地点へと向かうべく、救援の部隊はAH-64Dの女性パイロットを担架で運んで行ったが、前席に座っていたパイロットには黒い袋に入れられ、運ばれていった――――。
一方、第三小隊――――。
姫和は歩に気付かれないように横目で窺っていた。
何時、何処で始末すべきか。
「…………。」
そればかりを考えながら、小烏丸を掴んでいたら、ふと思い出してしまった。
『それと、病院で可奈ねーちゃんが言ってたんだ。刀使は人を守って、感謝される、“正義の味方”だって。それを聞いて僕は、強い刀使になれない僕は、僕を助けてくれた大好きでカッコイイお姉ちゃんの助けになりたいと思ったんだ。僕と一緒で姫和おねーちゃんもそんなお母さんが大好きだから、刀使になったんだと思ったんだ。だから、僕は姫和おねーちゃんと可奈ねーちゃんのために頑張りたいんだ。』
果たして、歩を斬ったとして優が望んでいた物は得られるだろうか?
姫和はそう思っただけで、斬る気力を失ってしまう。
(……何をやっているんだ。……私は…………。)
私は刀使、あの子の望むような存在でなければならない。だから、人殺しは良くない。
私は刀使、あの子が求めていた、理想でなければならない。だから、人殺しは良くない。
私は刀使、あの子は弱いから、見守らなければならない。だから、人殺しは良くない。
私は刀使、あの子を救う、その代償に母の想いを踏み躙った。だから、人殺しは良くない。
私は刀使、あの子は期待していた、その期待に応えようとした。だから、人殺しは良くない。
私は刀使、あの子を笑顔にし、本当の幸せを得てほしい。だから、人殺しは良くない。
私は刀使、あの子を人間にして、幸せにしたい。だから、人殺しは良くない。
(……そんなことをして、優が喜ぶか!!?)
それを念仏のように何度も念じた姫和は、歩を殺す算段を辞めようとしていた。
一方、第一小隊はブロックJにて多数の荒魂を抑えるため残っていたが、優が先頭に立って囮となってくれているため、他の刀使達は易々と荒魂の討伐ができた。
その中でも、優は生身の方の右腕で荒魂の角を掴んでもう一方の荒魂に投げ、“殺さないよう”に斬る。
もしくは、不意に近づいて来た荒魂は右腕で殴って吹き飛ばし、倒れたところを手足のみを斬って“殺さないよう”にしていた。
或いは、御刀で弱らせた荒魂の口の中に右腕を入れ、ノロを奪い、動くことすらままならないぐらい力を奪った荒魂を他の刀使の前へと投げ捨てる。
そんなふうに、残り少ない生身の部分を酷使したため、掌は生傷だらけで、腕を噛まれ、拳はボロボロであった。
だが、ノロによって強化された身体を持つためか、そんな腕になっても右腕は動き続け、普段通りに動いていた。
だが、本来なら右腕を負傷されることも、不殺をする必要はなかった。
何故なら、荒魂達は優のことを“同類”と思っており、その“同類”に殺される理由が分からず、戸惑っていたのである。
その隙を突いて殲滅、或いは強化された龍眼を使えば傷一つ付くこと無く荒魂を殲滅することは可能な筈である。なのに、それを行う理由は、優がそれを望んでいたからである。
(……これで、少しは強い荒魂に近付くかな?……それと、可奈ねーちゃん喜んでくれるかな?)
右腕を酷使していた理由。
それは、ただ単純に生身の右腕もノロに侵食させ、右腕も荒魂の腕に変えるため。
(ヒメちゃん、ニキータちゃん、ミカさん、ジョニーくん、結芽おねーちゃん、皆と一緒になれるかな?)
人が忌避する荒魂に近付く理由。
それは、ただ単純に優の中に居る“友人達”と同じ存在になれるのが嬉しいから。
(……それに、“強い刀使”と立ち会うのが嬉しいって言っていたから、僕が弱らせた奴を他の人が斬っちゃえば、その人が“強い刀使”になる可能性があるから、なら殺さないようにすれば良いよね。……殺さないように、……殺さないように。)
荒魂を弱らせている理由。
可奈美が“強い刀使”と立ち会わせたら喜ぶと思ったから。
そのうえ、結芽もそれを望んでいたことを知ってしまったから、刀使という者は“強い刀使”と立ち会うことが嬉しいのだろうと結論付けていた。
(……こうやると、近付いてくるんだ。へぇ~。)
荒魂を鬼切国綱で殺さぬよう地面に突き刺して、身動きが取れないようにし、他の荒魂を誘き寄せる理由。
それは、“知る”という愉しみができるから。
(……ノロを奪うの……何か気持ちいい。)
荒魂からノロを奪う理由。それと同時に荒魂を弱らせるように斬る理由。
それは、ノロを吸い取ると満たされる気持ちになるから。
(……御刀で斬るの、何か楽しい。)
それは、何とも言えない渇きを満たすことができるから。
(……どれだけ斬ると、殺しちゃうことになるんだろう。)
それは、敵を蹂躙することに何とも言えない充足感を得られ、満たされるから。
(……御刀ってこういう扱い方ができるんだ。)
それは、ただ単純に、刀使になれない者が一方的な力で、余力を残したまま荒魂を殺し、ただの子供ではないと証明できることに何とも言えない甘美な快楽と充足感を得ていた――――。
「ねえ、君大丈夫!?」
誰かに右腕を掴まれてしまった。その右腕を掴んだのは――――、
歩だった。
「取り敢えず、退がろう!……ひゃあ!!」
歩は正体は知らないが親衛隊の服を着ている者、優が大怪我をしていることに見かねて後ろに下がり、傷を治して貰おうとしていたが、歩は何かに躓いて転んでしまう。
そのため――――、
「シャアアアアアアッ!!」
それを見た優が弱らせた荒魂は決死の思いで歩を襲い、活路を見いだそうとする。
「ひゃあっ!!」
殺られる!!……そう覚悟した歩だったが、そのときは訪れることも無かったため、薄っすらと目を開ける。
すると、其処には優が荒魂を討伐している所を見てしまう。
だが、親衛隊の服を着ている者の正体を知らなかったため、他人行儀に答えてしまう。
「……あっ、ごめんなさい。……助かりました。」
そう言われた優は『口調から、人物を特定されることを防止するため、他人と喋る』ことを禁じられていたにも関わらず、歩を相手に喋りかけてしまう。
「……ううん、大丈夫?」
そして、優は続けて喋る。声は機械で変えられているとはいえ、子供であることは誰もが分かるぐらいの口調であった。
「……あの、ゴメンなさい。可奈ねーちゃんを宜しくね。」
(あっ!!)
可奈ねーちゃんという言葉から、この親衛隊の制服を着ている者の正体が誰なのか簡単に想像ができた。
(でも、素顔を隠しているということは……。)
正体を知られるのは不味いことなのだろう。ならば、私はどうするべきかを考える。そして答えは、
「……任せて、でも先ずは治療を受けよう。」
「えっ?」
歩は優を後方へ連れて行き、治療を受けさせようとした。だが、それを拒むかの様な行動を見せる優。
「コラッ!私の方がおねえちゃんなんだから、言うこと聞きなさいっ!!」
しかし、歩にそう言われた優は素直に言うことを聞いていた。理由は優自身も分からない。
多分、優は、歩は可奈美に必要な人であるような気がしてならなかったから、怒ることも否定することもできず、ただ、何となく聞かなければならないような気がして、言うことを聞いていた。
だから、後方に退がることにした。
……それに、もう殆ど討伐している状況から見れば、退がっても問題無いだろう。優はそう思うと大人しくすごすごと後方に退がることとした。
そして、その光景を遠巻きに見ていたのが、
(…………どうして。)
どうして、あんなに素直に従うんだろう?
どうして、あんなに良い顔するのだろう?
どうして、あんなに朗らかな笑顔なんだろう?
どうして、あんなに手を繋いでるんだろう?
どうして、あんなに隣に近付いているんだろう?
どうして、あんなに仲良くしてるんだろう?
姫和は恨めしそうに、悔しそうに、その光景を眺めることしかできなかった。
そして、この箱根山荒魂掃討作戦は、
損失 AH-64D一機、
死者一名、負傷者二名、軽傷者六名で終わる。
箱根山による荒魂掃討作戦後。
真希は、舞衣、それと先ほどの独断で荒魂の居る地区に攻撃を開始し味方部隊を窮地に追いやってしまった新型S装備刀使三名、寿々花といった六名が一室に集まっていた。
この部屋に来た三名は先程の箱根山における荒魂討伐作戦で起こした行動によって、第二小隊を危機的状況へと招いたことに関する叱責だろうと思い、三人共、覚悟していた……。
しかし、先ず真希は叱責するどころか、柔らかい言葉で勤務態度、成績、以前の功績等といったことをとにかく褒めていた。それに内心驚く三人。
「――――又、以前にも君達は荒魂討伐任務を幾度も成功させていることは僕の耳にも聞き及んでいる。そして、今回においても敵地に残ってしまったヘリパイロットの窮地を救うべく危険から救出したことは感謝の意の言葉を贈られている。……以前の功績と今回のこの件においても、とても良い働きをしてくれた。僕の方からも感謝する。」
だが、真希がそれを行った理由は、先ずは神君家康公が嘗て『松のさかへ』にて部下の叱り方について記されていることを明記させて戴く。
『召し使う者が何か仕落ちし不調法ありと報告された時、その者によく心得させ、今後は改めさせるようにすること、これが主人にとって特に重要な事である。
私(徳川家康)は若年よりこれを専ら心がけてきた。そのため今では異見を加えた者で、誤りを改めないという者はなくなった。
ここで気をつけるべきは、とにかく何であっても、人が身動きできないような状況にしてはいけないと言うことだ。先ず誤りをした者に、その事ばかり言って叱りつける、そんな事をするからその家臣は心得違いをし、主人を恨むようになってしまい、それまでよく勤めていた者であっても、不足の心が出来て勤めなくなり、主人を疎むようになる。
これは全く、主人の異見の仕方が悪いため、人を捨てるというものである。』
ということを実践するため、先ず失態したことについて何度も叱りつけることをせず、過去の功績等を言って、その三人の心を落ち着かせると同時に悦ばせるようにしていた。無論、この方法は『松のさかへ』にも、
『人に対しての異見の仕方というのは、先ずその者を呼び出し、側に一人、取り成す者をあらかじめ置き、それ以外の者を下がらせ、いつもより言葉を和らげ、
「以前にもその方は、この時は何々の手柄を致し、あの時は良き勤めをした。」などと、その者の心を悦ばせ、その上で、
「かような不調法は、その方には似合わぬことだ。」
そう能く能く申し聞かせ、「くれぐれも今後は相改め、前々の通りに心がけてほしい。」と伝える。そうすれば大体は、その理屈に従い、身の過ちを取り分け相改めるものなのだ。』
と(それと、王書というイスラームの訓示書にも書かれていること、立花道雪も似たような逸話を残しており、そのうえ“他人が叱られているのを見ると生産性がだいたい3割落ちる”という研究、客の前で部下に説教垂れるのは客からみたら購買意欲も食欲も下がるので辞めて欲しいという意見もある。)記載されている。
そのうえ、真希は気付いていなかったが、この三名の刀使達の荒魂掃討作戦以前の功績を褒め称えたことから“この人は自分達のことを良く見ていてくれている信頼できる人物”と思わせることができ、更に信頼されるようになっていた。
だが、真希にも不手際があると言えばある。
それは、真希と寿々花、それと舞衣を同席させ、三名の刀使達に要らぬ心理的な圧力を加えたことである。もし、三名の刀使達の精神が脆い場合、このことで心理的な圧迫感と緊張感を与えることとなり、安心させることができなくなるのだ。従って、真希の話しに要らぬ解釈をしたり、緊張か呆然とすることによって聞くこともままならず、心得違いをする可能性が大きいからだ。
しかし、それには真希なりの理由があったのであるが、幸運にも三名の刀使達はそれを気にするといった表情と仕草をしていない所から、問題は無いようであった。
「……しかし、だからこそそんな君達には、S装備の能力を過信し過ぎた行動は相応しくない。」
そして話は戻るが、先ず褒め称えることにより、再度言うが幸運なことに叱られたことで放心することは無く、失態を隠したり、挽回しようと躍起になることもなく、信頼している真希の言葉を三名の刀使達は素直に能く聞くようにしていた。
だが、真希は最後は叱責だけで終わらせず。
「そして、これは幸運にも新型S装備の限界と性能を知ることができた君達だからこそ頼むことだが、これからも新型S装備を着用してもらう。跡に続く刀使達のために新型S装備を学び、それらを教えてやって欲しい。……君達のことはヘリパイロットを救うべく奮起していたことを良く良く陸自と朱音様に伝えているから、そういったことは安心してもらいたい。」
と柔らかい口調で三人を諭し、尚且つ目的を与え、能く働けるようにしていた。これは、
『主人たる者は、一人でも能き人材をつくり、どんなに軽い身分の者であっても、科人が出来ないよう心がけ、身を慎むことが肝要だ。
何であっても、行き届かない事はある。まして並々の者は総じて抜けがちなものだ。
そういった行き届かない所は、主人が行き届くように心がけ、不調法にならないように致して召し使う事、
これが主人の心がけの第一である。
召し使っている者へ、科を申し付ける時、その多くは実際にはその主人自身の科なのだ。』
といった理由もあることと、ただ叱るだけ叱り過ちを正す以外の余計な物が発生するよりも良いこと、刀使と言えど思春期の少女であることに変わりないこと、優自身が荒魂の強い影響により暴走することも考慮すれば、このような言い方となるしかなかった。
「さて、これでこの件は終わりだ。……柳瀬、寿々花、今後はそれで頼む。」
「はい。」「解りました。」
そして、舞衣と寿々花を同席させた理由は二つあるが、その一つは三人の刀使達の弁護としての役割と三人の刀使達の今後について納得させるためでもあった。
「では以上だ、宜しく頼む。」
「「「はいっ!!」」」
真希は三人の刀使達にそう伝えると、退室させていた。三人共、真希に頼まれたことを誠実に且つ、忠実に守ろうと心に決めていた。
その後、真希は三人の刀使達が退室し、足音が遠ざかっていくのを感じたあと、
(……全く、よくもそんな事が言えたものだ。……獅童 真希。)
真希は、自分は幼い子供を利用して勝っているだけの存在なのに、偉そうなことをほざいている自分自身に対して、心の奥底で毒づいていた。
「柳瀬、今回は助かった。色々と無理難題を押し付けてしまったようだ……。」
「いえ、お気になさらないで下さい。助かる命が助かってよかったと思います。」
だが、真希は直ぐに心を入れ替え、ヘリパイロットを救出した舞衣に感謝の意を述べていた。
「……ありがとう。今日はゆっくり休んでくれ。」
「はい。では、お言葉に甘えて。」
真希に今日は休んで欲しいと言われた舞衣はその言葉を受け取って、自室に戻って行った。それを確認した後、真希は寿々花に、
「寿々花、柳瀬はヘリパイロットに肩を貸して救出したと聞いているが、間違いないか?」
「……ええ、ヘリパイロットに確認を取りましたので。」
「……そうか。」
寿々花と話した真希は顎に手をやりながら、思案していた。
それは、失態をした三人の刀使達が失態の事で追い詰めることが無いように功績を与えるためとはいえ、舞衣達にヘリパイロットの救出に向かわせたが、死体が近くにあり、そのうえ苦しんでいるヘリパイロットの姿を間近で見てしまったことにより、舞衣達の精神にダメージを負う可能性を考慮せず、舞衣達にAH-64Dの墜落地点へと行かせたのは間違いだったかも知れないと真希は考えていた。
そのうえ、沙耶香が突然取り乱したことも気になっていた。
「……寿々花、第二小隊に所属していた者達全員に戦闘による精神的苦痛が無かったかを確認するため、カウンセリングをするようにしてくれ。僕は朱音様にこの作戦の経緯を報告してくる。」
「分かりました。」
それを懸念した真希は朱音に今作戦の経緯と成果を報告するため、第二小隊のカウンセリングを受けさせるよう寿々花に頼んでいた――――。
人の前で叱る上司の話や人手不足が騒がれることが多い昨今。神君家康公の叱り方って本当に良いなぁって、個人的には思います。
叱ったり、叱られたりした人は分かると思いますけど恨まれたり、それを引き摺って放心して判断を誤ったりすることがあるから個人的には神君家康公のやり方が理想と言えば、理想ですね。
あと、個人的な推察ですが、こういった逸話からほめ道が言われるようになったのかな?とか思っております。