54話を投稿させて頂きます。
まだこの話は少しだけ続きます。
今更ですが、AH-64Dの事故理由は多分(ネットとかでの噂をモデルにしました。)フィクションです。
それと、UH-1Jの事故が起きた時には肝を冷やしましたが、貴重な隊員さん達の命が失うこととなる事態がなく、本当に良かったと思います。
刀剣類管理局局長執務室にて、真希は朱音に箱根山における荒魂掃討作戦の経緯と結果、作戦に参加した隊員について報告していた。
「今回の荒魂掃討作戦にて、衛藤の剣の実力は凄まじい勢いで上達しております。又、剣術に関して造詣が深いところから、剣術の指導役が適任かと思われます。その下に内里 歩を就けるのが最良であると私は判断致します。」
そして、可奈美を特別任務部隊の隊員に剣術を指南する役に就け、歩をその下に付かせることを朱音に進言。可奈美の下に歩を付けたのは、歩が可奈美のことを憧れていることを伝え聞いているからであり、憧憬の念を抱いている相手の指導であれば身に付き易いだろうという判断である。
「そして、今回の荒魂掃討作戦にて……内里 歩は活躍、……もとい此方に引き留めておきたいので、鎌府に籍を替え、その活躍を事実にするため、衛藤の下に付かせて内里の実力を飛躍的に向上させようと思います。」
真希は、綾小路武芸学舎学長の結月に優の情報を掴ませないためには歩を此方側に引き留めつつ、その活躍が嘘偽りではないことにするため可奈美の指導の下、歩の実力を向上させることを目論んでいた。
「岩倉、柳瀬の両名は明眼を駆使した状況判断能力に優れた指揮官として活躍できると思います。特に、柳瀬は戦闘能力にも秀でていて、人望も高く、僕よりも新型S装備を使いこなしていました。もし、僕が刀使としての力を失うか、御刀を持てなくなったら、柳瀬が僕の後釜に良いかも知れません。」
真希は、自身が刀使としての力を失う、もしくは御刀を持てなくなったときは舞衣を自身の後継者にして欲しいことを朱音に伝えていた。
「……少し、気が早くありませんか?まだ、力を失うということではありませんでしょう?」
「ええ、ですが僕ももう16です。遅いことではありませんし、後進が活躍できる場へと整頓したいのです。いつまでも現役などとふざけたことは言えませんしね。」
朱音はまだ悲観的になることでは無いのではと真希に告げるが、真希は御刀が力を発揮できるのが若年の傾向が強いという理由で後進達が活躍できるようにしたいと自らの考えを言っていた。
「それと、後ほど寿々花から報告があるのですが、柳瀬と糸見両隊……いえ、第二小隊全員にメンタルケアを目的としたカウンセリングをしてもらいたいのですが。」
「……それはどうして?」
「柳瀬は先程の掃討作戦にて、攻撃ヘリのパイロットを救出したのですが、その際に近くにヘリパイロットの死体が有ったにも関わらず、それを気にもせず救出したそうです。……内心、そのストレスを抱え込んでいるか、それとも少々ワーカーホリック気味かも知れません。そのストレスが何処かで爆発するかも知れませんし、もしワーカーホリック気味で、その症状が進み過ぎると部隊内で不和を引き起こしてしまうかも知れません。」
第二小隊全員にメンタルケアをさせる理由の一つは、舞衣が攻撃ヘリのパイロットを救出した際、近くにヘリパイロットの死体が有ったことで、内心ストレスを抱え込んでいるか、ワーカーホリック気味かも知れないため、そのストレスを緩和すべきだというのが理由であり。
「糸見も先程の掃討作戦中に原因は分かりませんがパニックを起こしたらしく、何らかストレスが爆発したのかも知れません。糸見隊員は鎌府女学院の初等部から第一線で活躍するベテランです。今、この時期に貴重な戦力を失うのは大きな痛手となりますし、今後のことを考えれば必要だと判断しています。」
第二小隊全員にメンタルケアをさせる理由の一つは、真希は刀剣類管理局と刀使の風当たりが強いため刀使の離職率が急増している昨今の状況が気がかりであったこともそうだが、沙耶香が突然パニックとなったことで、もしも、このパニックが刀使全体の心理に大きく関わることであるなら、早期に発見し、緩和、対策を講じる必要があったためであり。
「ですが、糸見と柳瀬隊員のみでなく、第二小隊全員が孤立し包囲されたことを考えると、その精神的影響が無いかどうかも確認すべきだと進言致します。」
第二小隊全員にメンタルケアをさせる理由の一つは、孤立し、窮地に陥り包囲された際に生じたストレスを緩和させることだった。
「それとですが、陸自等に送る箱根山における荒魂掃討作戦中に使用された新型S装備に関する報告等は柳瀬が中心となって作成中でありますので、今しばらくはお待ちください。」
「……分かりました。」
真希は朱音に新型S装備の使用に関する報告書は舞衣達にしか書けないので、そのことを報告していた。そして、
「それと今回、第二小隊が危機に陥り、状況によっては撤退もあり得たため、航空ヘリの支援を要請しました。尚、墜落理由は不明ですが、結果は貴重な兵員であるAH-64Dのパイロットを一名死なせ、もう一名のパイロットと他数名も負傷させてしまいました。朱音様、申し訳ありません。」
今回の損害について真希は無念そうな表情をして、朱音に報告していた。
陸自のヘリのパイロットを一名死亡、もう一名は負傷。そのうえ、STT隊員と刀使達に重軽傷を負わせてしまったことに朱音と支援者に迷惑を掛けることになったことを詫びていた。
「……いいえ、真希さん。今回のAH-64D……で間違いないですね。そのヘリの墜落理由は陸自の整備が上手くいかなかったことが原因のようです。」
「……と、言いますと?」
しかし、意外なことを告げられた真希はどういうことか朱音に尋ねていた。
「今回の件はヘリの重要な部分に使う金属製ボルトが破断したことが原因だそうです。そして、その破断理由は……メイン・ロータ―・ヘッド、の保管中に腐食防止剤が劣化してしまい、構成品同士が固着した結果、…アウトボード・ボルト、に摩擦が発生し破断したのが理由だそうです。」
朱音は陸自から提供された事故報告書を見ながら、聞き慣れない専門用語に戸惑いつつも真希に説明していた。
「……つまり。」
「ええ、陸自側が有効な再発防止策として報告しているのは、点検要領の見直し、保管要領の見直しと記載されています。」
「……そう、ですか。」
真希は何か納得行かないかのような表情をしながら、応えていた。
だが、妙ではあった。
荒魂の攻撃をAH-64Dが受けて墜落したとは思えず、何が原因で墜落したのかは分からなかった。
だが、自分が責任を取ることで第二小隊の面々に責任が及ばないように先程は謝罪の言葉を述べていたが、無意味に終わったようであった。
「……ですので、今回の件について陸自側は真希さん達の指揮に問題は無かったとするようです。」
「……はあ。」
あまり調達数が少ない攻撃ヘリの一機を損失したのだから、今回の件を持って刀剣類管理局を糾弾するものかと思っていたが、そうならなかったことに驚く真希。何か事情が有るのだろうか?と勘繰るものの、そういった下種の勘繰りは良くないと思い、その考えを直ぐに破棄した。
「分かりました。すみませんが朱音様、少し管理局から離れさせて戴きたいのですが……。」
「それは、何故ですか?」
真希の突然の申し出にどういう理由か朱音は尋ねる。
「陸自の隊員の葬儀に出席させてもらえないでしょうか?我々は陸自の支援に助けられましたので……。」
「……そうですね。それなら私も出席した方が良さそうですね。」
「ご足労お願いします。朱音様の護衛として私と三名の刀使も同席します。」
こうして、朱音が死亡した陸自の隊員の葬儀に出席することが決定され、真希、件の三名の刀使が護衛として同席することとなる。
その後、真希は散々な目に遭うのだった…………。
刀剣類管理局本部――――。
姫和は優の居る病室に居た。だが、変わっているところがあった。
白い壁、白い静謐なベッドは変わらないが、姫和が病室の場所を変えるように紗南を説得し、手配するよう仕向けた窓と扉に鉄格子が増えていることを除けば、何の変哲も無い病室だった。
「色んな物が増えたね。」
「……ああ、優を付け狙う奴が増えているからな、当然の処置だろう。」
優の問いに、姫和は目を伏せながら答える。
その行動の意味は、優に牢獄のような部屋に押し込めた事に対する罪悪感なのか?
それとも、優の居る病室を牢獄のような部屋にした事について、聞かれたり、責められたりするのが怖いからか?
もしくは、優の居る病室を牢獄のような部屋にしたのが姫和であると気付かれるのが、怖かったからか?
姫和は理解できなかった。
「……それより、聴きたいんだが。」
「?」
だが、姫和は尋ねたかった。
(……どうして、歩と一緒に居たんだ。私じゃ、駄目なのかっ!!?)
と、尋ねたかった。
だが、聞き出そうとすることで不機嫌となった優に自分のことが不要だと言われるのが怖くて聞けなかった。
ただ、優が自分のことを見捨てて行くのが、とても怖かった。
大荒魂を討伐することすら出来なかった自分が、優にまで捨てられたら、母の想いを捨ててしまった自分に何が残るのだろうかと不安で仕方なかった。
「……箱根山で怪我をしたそうだが、辛くなかったか?」
「……うん、大丈夫。」
だから、訊くこともできなかった問い詰めることをしなかった。
そのため、姫和は優の右腕を握りながら、箱根山での事を優しげな声で聞いていた。だが、姫和の頭の中は別の事を考えていた。
(十条さん、……十条さんにとって、あの子は何?)
姫和は、早苗に言われた言葉を思い出す。
自分にとって、優は何なのだろうか?何を抱いているのだろうか?
――――友情?
――――愛情?
――――それとも、恋情だろうか…………?
こんな姿を見た母は私のことをどう思うだろうか?きっと、軽蔑するだろう。
だけど、だからといって、貴女のことを素敵な人だと言ってくれたあの子を“殺せ”と言うのでしょうか?私のことを一番理解してくれる子を荒魂扱いして、斬って祓うのは正しいことなのですか――――?
私には到底理解できません――――。
だから、私は貴女が優のことを斬って祓わないことを軽蔑するなら、私も貴女を軽蔑する――――。
だって、優は私と同じで“母さん”と呼べる人がいないから、私の好物を美味しいと言ってくれたから、私にとって大切な存在となったのだから―――。
……そんな優を自分にとって大切なものをタギツヒメなんかに母や父のように盗られたくない。例え盗られても、奪えばいい。こちらは奪われてばかり、それぐらい、全てを奪ったタギツヒメから奪っても良いだろう――――?
……そこまで考えていた姫和は、優を抱き締める。
「……優、不自由させるが、ずっと私が傍に居るだけじゃあ不満か?」
姫和は、優がこの牢獄のような病室が嫌とは思っていないか訊いてみた。
「本当に?」
だが、優が嬉しそうに顔を綻ばせたことに姫和は安堵していた。
「ああ、本当だ。」
この子だけは私の全てを認めてくれる――――。
この子だけは私を否定してくれない――――。
この子が居れば、私は刀使でいられる――――。
この子のお陰で、私は充たされていく――――。
それ故に姫和は、優が大事だった。そして、この牢獄のような病室を“優と共に居られる神聖な場所”で“美しくて、居心地が良い天国のような場所”と思うようになる。
(……そうだ。たかが少しぐらい一緒に居た程度だ。私にはこの場所が、優と一緒に居られる場所が有る。)
それだけで、歩に対して優越感を感じる姫和。
それだけで、優の事を知りえているかのように感じる姫和。
だからこそ、姫和は歩がこの聖域を踏み荒らさなければ何も問題ないと勝手なことを思うようになる。
(……そうだ、優は人間だ。人間なんだ。この優しい暖かさ、優しい声、優しい手。帽子が被れなくたって、服も着れるし、美味しい物を食べて美味しい言える。……全て人間の証だ。全て荒魂には無いものだ。)
それだけで、優は人間だと大きな声で言える――――。
それだけで、好きな物も欲しい物も与えられる――――。
それだけで、好きな物を食べさせてあげられる――――。
それだけで、優は怪物とは言わせない――――。
他者から見れば、姫和の行ったことは“異常”に見えることだろう。
だが、姫和にとって、この牢獄のような病室は優と姫和だけの特別で神聖な場所に思えていた。
そして、姫和にとって、この牢獄のような病室は優と姫和を繋ぐ大切な場所であると信じていた。
だからこそ、姫和にとって、優は人間だと言える。優は大切な存在だと言える。
それ故に、母を失った時から、ずっと一人だった姫和にとって、優は母が居ないという同じ境遇で、チョコミントアイスが好きでいるという多くの共通点を持つことから特別視し、特別な繋がりを感じるようになっていた。
誰かに必要とされたかったから――――。
だからといって、誰でも良い訳ではない――――。
だから、自分と多くの共通点を持っていたことが理由だった――――。
それが理由で、特別な繋がりが有るように感じた――――。
だからこそ、優の感心を自分に向けたかった――――。
そして、できれば優の心と愛してくれることを独占したかった――――。
だが、何をどう言おうと、自分よりも幼い子供を自分の思い通りに閉じ込めて、好きにしているという事実から、
いびつで、鉄格子で固めているが、中は幸福だが、浜辺で子供が作る砂の城に籠っているという事実から、
姫和は目を背けていた。そして、
「……そうだ。今度から私が食事を作って持っていくから、わざわざ食堂に行かなくてすむぞ。」
「……そうなんだ。」
優に自分が食事を作るから、もう食堂に行かなくていいことを伝える姫和。
しかし、優の少し元気が無さそうな返事を聞き逃していた。
「だから、今日はぶり大根と焼き鮭と擦り芋、それに白いご飯だが、好物か?」
「……うん、食べたことないけど、姫和おねーちゃんが作ってくれた物なら食べれるよ。」
「?…そうか。」
食べたことない?それに姫和は少し疑問に思うが、そういった純和風のメニューは食べたことがないのだろうと理解して、特段気にしなかったために、
そして、箱根山の荒魂掃討作戦によって得たノロは既に優に注入されている事実を姫和は知らないままであったがために、
その砂の城は少しずつ崩れていることも気付かずにいた。
「こんにちは。いや、こんばんはですかね?」
「私は柊 篝と申します。……いえ、それは正確ではありませんね。“姫和さんが想い描いている柊 篝”ですね。」
「何勝手に現れたんだ。何新キャラを作っているんだって?……嫌ですね。私は前に一回出ていますよ?」
「……そんな、覚えが無い?22話の『相反するコト』で姫和さん産まなきゃ良かったとか言って責めていたでしょう?その時の私ですよ?」
「じゃあ、何のために出てきたんですって?……それは、今の姫和さんの心はどうなっているのか?何故、こうなったのかを姫和さんが造り上げた私が説明した方が良いだろうということで出てきました。」
「それに、この先を知っている人、勘の良い人なら気付くでしょうけど、“本物”の篝さんは紫様に恨みなど抱いている筈がありませんものね?」
「もし、恨みを抱いているなら、何故柊の性を名乗ることなく、十条の性を名乗ることにしたんです?何故姫和という実の娘に小烏丸を渡すようにしたり、刀使にしなかったんです?」
「ふふ、こうして見るとかなりヒントがあるんですけど、姫和さんは何故気付かなかったんでしょう?」
「……えっ?姫和さんが馬鹿正直だから?愚かだから?」
「……それに、今の姫和さんが狂いすぎている?」
「……どこが?今の姫和さんのことを考えたら、そうなるのも仕方無いじゃないですか?」
「……それに、愛し愛されることで狂喜に走ることも有るでしょう?」
「考えても見てください。姫和さんは父親を荒魂に無惨に殺され、母親はタギツヒメに殺されたと思っているんです。」
「そんな姫和さんが孤独に苛まれ、一人で生きていくには“自分のことを必要としている人”か“自分のことを愛してくれる人”が必要だと思いませんか?」
「だとすれば、紫様とタギツヒメを討つことを大切な母の想いと認識して、目標として生きて何が悪いんです?それを心の拠り所にして何が悪いんです?」
「えっ?……心が弱すぎる?勝手過ぎるですって?」
「何を言っているんです。人は一人では生きていけませんし、あなたが思っているより人は多くの物や想いが必要なんです。」
「特別な人の愛が欲しい。特別な人から必要とされたい。そんなちっぽけなものを一つくらい願って、欲しがることの何が悪いんです?」
「依存して何が悪いんです?そして、共依存となったとしても、誰が責めれます?」
「……本人が何かを掴んで、そして自分自身が心を入れ替えない限り、何も代わりませんよ?」
「それに、愛を説く宗教だって、いやどんな宗教や法だって、皆“信仰”のために剣を持って全てを投げ打てということを言うじゃないですか?」
「その“信仰”だって、いや信ずるに足るものは色んな容の成しているでしょう?……夢、復讐、希望、あとは何でしょう。多すぎて分かりませんね。」
「ですから、あなたに“復讐という信仰”のために“殉教”しようとする姫和さんのことを責めれますか?復讐は空しいものだと、上から目線で言いますか?」
「でも、そんな姫和さんでも、優くんに出逢ったことで、“人殺し”というものを知ってしまった姫和さんの心は、復讐の思いは一気に崩れてしまいました。」
「本心は殺したくないのに、いや本来の姫和さんは荒魂と化した人を斬るのにも躊躇うくらい優しい子なのでしょうね。」
「……沙耶香さんを“斬る”ことに躊躇う程なのですから、本当はやりたくないのでしょうね。」
「そして、心の奥底の何処かで“復讐”というもの自体に疑問を抱いていたのでしょう。……だから、姫和さんのことを産まなきゃ良かったとか言う姫和さんが望んだ妄想の産物である“偽物の篝”を夢の中で造ったんです。」
「そして、その“偽物の篝”とは、あなたの目の前にいる私のことです。」
「だから、姫和さんは“母の想い”を捨てることができたんです。」
「だから、一番大切な存在を私こと“偽物の篝”から多くの共通点を持ち、特別な存在にした“優くん”にすげ替えることができて、大事にすることができたんです。」
「……?姫和さんに悪いと思わないのかって?」
「……ふふ、可笑しな事を言いますね?」
「だって、私は今の姫和さんが望んだ“偽物の篝”なんですよ?なら、望んだ通りに行動しかできないのは当然ではありませんか?」
「最初は一人でいることの辛さから逃れるために“姫和さんのことを必要としている人”を姫和さんは造り、そして姫和さんは紫様と荒魂と化した人を斬るということに対する免罪符として私は生まれたのかも知れません。」
「そして、優くんの凶行を見て、“人殺し”の何たるかを知った姫和さんはやりたくないから、姫和さん自身が抱いていた“復讐”そのものが邪魔になったから、姫和さんが造った“偽物の篝”に姫和さんを産まなきゃ良かったと言わせて、母の想いを捨てるための免罪符として“偽物の篝”は利用されたんです。」
「つまり、私は今の姫和さんの願望、本音でもあるんです。」
「だとすれば、47話の複数の目と呪いで二重鍵括弧で話していた優くんのことを荒魂扱いして、不気味がっていた人達も本当に存在したのかどうか分かりませんね?」
「……案外、姫和さんが優くんを救うという大義名分を得るために造った、もしくはそう聞こえるようにしたのかも知れませんね?」
「……?じゃあ、何故優くんは止めないのかって?」
「……そんなの、あの子はまだ9歳の子供ですよ?」
「優くん、あの子はそれを理解しているんです。元少年兵といった恵まれない子供達の記憶を引き継いでいるんですよ?」
「大人に、いえ、自分よりも年上で頼りになる人が傍に居ないと何も出来ないことを理解しているんです。」
「……だから、可奈美さんや姫和さんを頼るしかないんです。」
「それでも、今の姫和さんのことを“身勝手な女”だとか、優くのことを無責任だとか、私のことを“悪魔”だとか幾らでも罵ってもいいですよ?」
「でも、覚えておいて下さい。……この世の中は両親が死別する以外の理由で孤独に苛まれている人が大勢いること。」
「それと、見捨てないで下さい。この国は、この世界には恵まれない子供達が大勢居て、その差が縮まっていること。」
「そして、忘れないで下さい。……この国は人の姿をして人を騙す妖怪がいて、そしてここ意外の国にも人の姿をして人を騙す悪魔がいることを。」
「でも、……ふふ、そうなると私はどれに該当するのでしょうか?」
「人を堕落させる“悪魔”?」
「人を誑かす“妖怪”?」
「それとも、やはり人の姿をしているから“人”なのでしょうか?」
「ああ、でもどうせなら、この刀使が居る世界に合わせた方が宜しいですよね?」
「“人の世を脅かす荒魂”の方がピッタリ、ですかね?」
「でも、違うとおっしゃるなら、人と荒魂、悪魔と妖怪はどう違うのでしょうか?私は何に区別されるのでしょうか?……私には分かりかねますので。」