【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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余談後編を投稿させて頂きます。

余談はこれで終わりです。本当に悪ふざけに付き合って頂いてありがとうございます。

タギツヒメはカワイイ。プレイアブルで出てくれるかな?
個人的にタギツヒメはツンデレのノリでうっかり世界を滅ぼしかける残念な子にしか思えなかったんだよ…………。
 
 


荒魂達の狂騒 〜余談後編〜

 

 

「という訳なのだが、全く進展しないのだが……。」

 

タギツヒメが結芽に要らぬ見栄を張り、優に告白することとなり、そんなこんながあって、タギツヒメは悩んでいた。いかに優に告白するか、いかに結芽に対して威厳を保つか。

 

「……難しいわね。イイもん見せたら終いだと思っていたんだけど。」

「な訳あるかっ。」

「……もしかしてなのだが。」

 

ミカとジョニーの会話を聞いていたタギツヒメはある事を思う。それは、

 

「我等、まともに恋愛とかしたことないのではないのか?」

 

タギツヒメの重い言葉にミカとジョニーは顔を伏せ、重苦しい雰囲気を出していた。

その鋭い一言により、タギツヒメ達は恋愛とか分からない者同士で話し合っても解決しないのだろうかと思い込んでいた。

そんでもって、三人はこのままだと春は訪れないんじゃないのかと自問自答していた。

 

「……痛いところ突くなよ。それじゃあ、解決できねぇよ。」

「……ごめんね、ヒメ。私、同年代の子と付き合ったことないんだよね……。」

 

何かこの状況を打破することのできる起死回生の一手は無いか?三人はそれを考えていた。

 

「……こうなれば、ニキータにも聞いてみるとするか…………。」

「すまん、面目ねぇ……。」

「まあ、何もしないよりは良いわよね。私、結芽の足止めを兼ねた女同士の話しをしてくるね。」

 

タギツヒメは藁にも縋る思いでニキータにもどうすれば良いかを尋ねることとし、ミカは結芽がこっちに来ないようにするために足止めを兼ねたガールズトークをしに行ったのであった。

 

 

 

 

 

「どしたの?みんな?」

 

救援として来たことに理解しているのかいないのか分からない返事をしてタギツヒメ達の所へ来たニキータ。

 

「……ああ、実はヒメがな、また調子乗っちゃって……。」

「あっ、うん、そうなんだ……。」

 

ジョニーは耳打ちでニキータに現在の状況を教えていた。それだけでニキータは何が起こったのか理解した。

タギツヒメが見栄を張ったことで一騒動が起こったのだろうと……。

 

「…………う~ん、私もこういったことは詳しくないけど、先ずは優の好きな物とか趣味を調べてタギツヒメと共通点が無いか調べるのが良いかな?」

「どうして?」

 

優とタギツヒメとの間に好きな物等で何か共通点が無いか調べるべきだと言ったニキータに、その真意を問うジョニー。

 

「……えっとね、好きな事で話し合えれば話しは弾むよね?それを利用して、話しやすくして相手の好意も得られるって、教えてもらったことがあるから、それで話しやすくなったら告白すれば良いんじゃないかな?て、思ったの。」

「なっ……なるほど。」

「こやつ、天才か?」

 

ニキータの説明に感嘆とするジョニーとタギツヒメ。

早い話がニキータはタギツヒメと優との間に同じ共通点を見つけ、その共通点を主とした会話をして、タギツヒメにとって告白させやすくしようとしていたのである。

 

例を挙げるとするならば、

2001年6月16日にアメリカとロシアが首脳会談したときの話ではあるが、早朝に聖書を読むため夜早々と寝床につく程に敬虔な信徒であるアメリカ大統領がロシア大統領の十字架のネックレスを見て、「あなたは共産主義者でKGB諜報員だったのに、十字架の首飾りをしていますね。お母さんの形見ですか。」と直説的に尋ねたため、ロシア大統領は「そうだ。」と言い、マルクス主義の下でロシア正教の信仰が禁止されていた少年時代に母親の計いで洗礼を受けた経緯をアメリカ大統領に静かに語った。

この上記の経緯により、アメリカ大統領の心は動かされたのか、「私はこの男(ロシア大統領のこと。)の眼をじっと見た。彼が実にストレートで信頼に足る人物であることが判った。」という言葉を残す程にロシア大統領を信頼するようになったとも云われている。

 

上記の首脳会談が理由ではないだろうが、ニキータはこれに近いやり方で優とタギツヒメを親密にする方向へと持っていこうとしていた。

 

「そうと決まれば、ちょっと優に聞いてくるわ。」

 

ジョニーは優の好きな物を聞くべく、優に尋ねていた。

 

「おーい、優。」

「何?」

「優って好きな物ある?」

「好きな物……?」

 

ジョニーに急にそう尋ねられた優は、首を傾げるしかなかった。

 

「ほら、剣術とか好きか?」

「……よく分からない。」

「いや、ほらお前のねーちゃんって、剣術好きだろ?だから、何か好きな剣術もあるかなって。」

「振って、斬れれば何でも良いかな。」

 

どうにか、話題を恐らく優の好みであろう剣術に持っていき、優の好みを訊き出そうとしたが、優はしれっと斬れれば何でも良いと答えたことにガクッとしていた。

 

「いや、何かあるだろう?例えば構えがカッコイイだとかあるだろ?何か一つぐらいさ。」

「う~~ん、特には。」

 

ジョニーはならば可奈美という刀使の姉が居ることから剣術には興味あるかもと思い尋ねてみたが、返答は悲しいものであった。

しかし、ジョニーは諦めず、剣術が駄目なら可奈美が使っている刀には興味あるだろうと思い、刀に関係のある話しをすることにした。

 

「なら、アレだ、アレ。好きな物とか欲しい物とか何か無いか?」

「欲しい物?」

「そうそう、可奈美だっけ?剣術やってるから自分も刀欲しいとかそんなんあるだろ?」

 

しかし、ジョニーは失態を犯していた。優には可奈美という刀使の姉がいるのだから、刀に興味があるだろうと思い込んでいたのである。

早い話が優は刀には興味がないことを知らずに訊いたのである。

 

「うーん、刀じゃなくて、斧とか、バールとか、鉈とかの方が良いなぁ。」

「…………何故に?」

 

そのため、ジョニーは玩具とか、ぬいぐるみとか子供らしい物を欲しがるだろうと思い訊いていたのだが、優は斧だとか物騒な物が欲しいと答えたことに流石のジョニーも欲しい物がそんな物だとは思わなかったため、優に対して(コイツ、本物のやべーやつだな。)という認識を更に強めることとなる。そんなジョニーの気持ちを知らずに優はジョニーの質問を欲しい武器は何か?と解釈したため、そのように返答したのだが、ジョニーは全く気付かなかったのである。

 

「刀使同士で争うかも知れないとか、話題になってたから、だったらそれが邪魔になったとき対処できる物が有れば便利だな、って思ったから今欲しいなって思ったの。」

「…………いや、結芽が使ってた刀とかで良いんじゃねえの?」

「それもそうだけど、刀使だった結芽おねーちゃんの刀が血で汚れるの何かヤダなぁ。」

「変なこだわり持ってんなぁ。」

「そりゃあ、……刀使さんが持つのが……御刀だったけ?」

「いや、知らんのかーい。」

 

刀使が持っているのが御刀という名称だったような気がするのか、首を傾げながら答える優の姿を見たジョニーは案外可愛いなと思った。しかし、ジョニーはそう聞かれても、刀使とかいう者に対して興味がないため、刀使の姉を持つことから詳しいであろう優にツッコミを入れていた。

 

「うん、話を続けるけど。」

「マイペースだな。」

 

優の返答にガックシしながら、ジョニーは刀以外の凶器を欲しがる理由を訊くことにした。

いや、ジョニーとしてもそんなものは訊きたくないが、タギツヒメの告白が上手くいくために訊いて、少しでも情報を手に入れようとしていた。

 

「まあ、ジョニー君の言う通り、刀って人を斬る物だから他の物と変わりないし、別にそれで倒しても良いかな?て最初は思ってたんだけど、刀使って人を守って感謝されるべきだから、だったら御刀で人を斬っちゃうのは善くないよね?だから、僕はあの御刀の代わりになる物が欲しいの。」

「…………いや、可奈美って人から人を殺さないこと約束したんだからそれ守れよ。な?」

「?……そんな約束してたっけ?」

「いや、してたよ。」

 

首を傾げる優の姿を見たジョニーはため息を吐きながら、優に人殺しをさせないようにしていた。

 

「お前が約束破っちゃダメだろ?」

「……そうだね。」

「そうだよ。」

 

ジョニーは優から好きな物を聞き出すことを諦め、休日に何をしているのかを尋ね、違う方向から優の好きな物を調べようとしていた。

 

「じゃあ、最近どこか行った?休日は何してる?」

「病室から出てないかな。……あとは姫和おねーちゃんと話してる。」

「いつも観てる番組とかは?」

「……最近は病室から出てないから、観てないなぁ。」

「……そうだったな。」

 

ジョニーは優の好きな物を調べようとしていたが、前の返答と同じく素っ気ないものであった。しかし、その返答を聞いたジョニーは優が今現在監禁状態であることを思い出し、何も言えなくなってしまっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………すまん、分からなかった。」

「…………うん、まああれだけ喋れれば充分だから、気にするな。」

「仕方ないよね。」

 

そのため、ジョニーはタギツヒメとニキータに上手く訊くことができなかったことに対する謝意を述べていた。

 

「……皆、すまんな。後は我はやろうと思う。」

 

だが、タギツヒメはこれ以上迷惑を掛ける訳にはいかないと思ったのか、後は自分の力のみでこなそうとすることを宣言するが、その宣言にジョニーとニキータは動揺する。

 

「えっ?お前大丈夫なん!!?」

「ね、ねぇヒメちゃん。もう少し時間をかければ解決するかも知れないし……。」

 

ニキータとジョニーは何とかタギツヒメに思いとどまるよう説得する。

 

「……すまない。だが、これ以上我としてもお前たちに迷惑を掛けられん。」

 

ニキータとジョニーに背中を見せながら、上記の台詞を吐くタギツヒメ。

その時ばかりはジョニーとニキータはタギツヒメがカッコイイと思えてしまったとかなんとか……。

 

「……そうか、頑張れよ。」

「今のヒメちゃんなら、いけるよ!」

 

ジョニーとニキータは目を輝かせて、タギツヒメのことを見て応援していた。それを知ったタギツヒメは、

 

(……どうしようか?もう、後に引けなくなったぞ。)

 

心の中で泣きながら、タギツヒメは優の元へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒメちゃん、どしたのー?」

「……お、おう。少し用事があってのぉ。」

 

タギツヒメは優を呼んで、一人で頑張って告白することにした。

 

「ワクワク。」「ドキドキ。」

 

それを結芽とニキータはワクワクしながら見守り、成功したら歓待を以って出迎えようとしていた。

 

「ねえ、大丈夫でしょうね?」

「まあ、心配なのは分かる。……でもさぁ、ヒメがああ言ってたし、後は信じようぜ。」

「…………そうね。」

 

その一方でジョニーとニキータは不安であった。

タギツヒメが上手くやれるかどうか不安だったのだ。しかし、タギツヒメが一人でやると言っていたので、成功することを信じ見守ることとした。

 

「……あ、あの、その、す、少し話したいことがあってのう。」

「ん?」

 

タギツヒメが何やらモゴモゴしながらも伝えようとしていることに気付いた優はタギツヒメを見ていた。

 

「……あ、あのな。」

 

優を前にして、タギツヒメは紡ぐ。

 

「……そのぉ、何というか。」

 

告白の言葉を紡ごうとした。

 

「……いいお天気じゃな?」

「……うん?」

 

だがしかし、内心は焦っているせいか、その内容は告白の言葉ではなかった。

 

(……あぁぁぁぁぁーーーー!?もう我、何言ってるんだろう!!?)

 

そしてタギツヒメは内心物凄くテンパっていた。

 

「ねえ、大丈夫なの?……アレ。」

「……いや、まだ失敗した訳じゃねえし、……うん、まだ大丈夫じゃ……ねえかな?」

 

その様子を遠巻きに見ていたミカとジョニーはどうすべきか悩んでいた。失敗したと見て救援に向かうべきか、それとも。

 

「……用事はそれだけ?」

「あっ、いや!それだけじゃなくてな!!な!!……我は優に、伝えたいことが、あるんだ。」

 

だが、ミカとジョニーの心配を他所に、しどろもどろになりながらもタギツヒメは優に告白しようとしていた。

 

「……その、我は、」

「…………。」

 

タギツヒメは必死に言葉を紡ごうとし、告白しようとどうにかこうにか奮起していた。その姿を黙って見守る優。

 

「……その、あのぉ、……う、……優と、その、えっと、我はス……。」

「ス?」

 

タギツヒメは必死に言葉をひねり出そうとしていた。

ミカとジョニー、そしてニキータとの練習の成果を出そうとしていた。

 

そして、タギツヒメは――――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――場面は変わり、刀剣類管理局本部内に居た姫和は上機嫌であった。

その理由は、

 

『姫和おねーちゃん、スキヤキが食べたいんだけど、良い?』

『!!……ああ、もちろん良いぞっ!!』

 

と優がスキヤキを食べたいと言われたためであり、姫和は二つ返事で了承。そんな訳で姫和は優の要望に応えるべくスキヤキを頑張って作ることにしたのであった。

牛脂、砂糖、醤油、酒といった調味料。そして、ネギ、しいたけ、エリンギ、シラタキ、春菊、そして100g3000円もする牛肉といった食材を揃えており、万全であった。

特に、100g3000円もする高級肉はこの日のために買って来たといっても過言ではない。

何故なら、平成生まれの小学生の子供が好きな食べ物ランキングは、

 

1位/カレーライス

2位/寿司

3位/鶏のからあげ

4位/ハンバーグ

 

捕捉事項:7位/焼肉

 

といった肉料理が上位に入る傾向であり、対して平成生まれの小学生の子供が嫌いな食べ物ランキングは、

 

1位/ゴーヤ(にがうり)

2位/セロリ

3位/ピーマン

4位/梅

 

といった野菜類が上位に入るということを姫和は有名な情報雑誌からリサーチ済みであり、ならば勝負に出るところは牛肉であると確信した彼女は、普段なら一切れも買わない高級牛肉を奮発して買っていたのである。

そのうえ、姫和は刀使に対する風当たりが強いこと、中学生ぐらいの刀使の制服を着る少女が100g3000円もする高級牛肉を買うのは流石に目立つという理由で、サングラスにマスク、野球帽にコートという出で立ち(姫和なりの完璧な変装。)で購入したのである。

 

この女、本気である。

 

早速姫和は調理し始めていた。

先ず牛脂を鍋一面に広げる。その上に薄切りの牛肉を広げ、その肉の上に砂糖をまぶし、砂糖の甘さが肉に染み付いてから醤油、酒を入れるという関西風の味付けで進めていた。

そして、肉60度、ネギ70度、焼き豆腐90度、シラタキ60度、しいたけ50度、エリンギ30度の角度で入れるのが好ましいと聞いた姫和はその通りにし、シラタキのカルシウムの成分が肉を固くしてしまうので肉から離して入れるということも細かく守っていた(※なお、一般財団法人日本こんにゃく協会はそんな事実はないと言っているので、安心して一緒に入れて食べても問題ありませんとのことです。)。

その後、春菊を入れてふたを閉めると野菜から水分がにじみ出るのを3分間かけて待つ。

事実なら、この3分間は“神の時間”と呼ぶらしい。しかし、姫和はそれを聞いたとき、恥ずかしいから言わないようにしておこうと心に決めていた。

 

そんな手間暇を掛けて、スキヤキを完成させた。

……9歳児の優の笑顔を想像しながら。

 

時間を費やして調理したスキヤキを優の元に持って行く。

 

「優、食べようか。」

 

姫和はそう言って、優の居る病室へと持って行った。

しかし――――、

 

「……あの、そのな、……なんか、本当にスマン。我のせいで。」

「?……あっ、……そうか、タギツヒメか。」

 

優の雰囲気と口調がいつもと違うのに気付いた姫和は、我という呼称を使ったことで、優の現在の中身がタギツヒメであることが分かった。

何故、優がタギツヒメに変わったのか、経緯を語ろう。

それは、場面は変わって優にタギツヒメが一世一代の告白をするとき、

 

 

『……我はスキヤキが食いたいぞっ!!』

 

タギツヒメは告白の練習の成果を出したのであった…………。皮肉にもジョニーと同じ内容であったが……。

その光景にタギツヒメ以外の皆が「えっ?」と言いながら、呆然とするしかなかった。

 

『……スキヤキ、……スキヤキが食べたいの?』

『!……そそそそそうなのだ!!アハ、アハハハハ……。……アハハ。』

 

優の質問にタギツヒメはYesと乾いた答えと共に答えるしかなかった……。

ただただ、「好きです。」と言えなかった自分を悔やみ、恥じていたのであった。

 

『分かった!食べさせてあげるねっ!!』

『わっ、ワーイ。』

 

こうして、タギツヒメは力ない返事で応えつつ、スキヤキを食べられる権利を得たのであった。

せっかくのチャンスを得ることもできず、そのうえタギツヒメは結芽に自ら残念な本性を晒してしまったのであった…………。

 

 

 

「……という訳なのだ。何かホントスマン…………。」

「…………そうか。」

 

そんな経緯があり、タギツヒメにスキヤキを食べさせるため、優は姫和にスキヤキが欲しいと言ったのである。

そして、タギツヒメの説明を聞いた姫和は、謎の連帯感と謎の共感をタギツヒメに対して今日抱くのであった。

ほらいずんどうめいが出来そうなぐらい…………。

 

「……とりあえず、いただきます。」

「ああ、どうぞ。」

 

タギツヒメの食事を始める際の挨拶の声を合図に、姫和と二人で無言の食事を始める。

特にスキヤキの肉は旨かった。流石100g3000円もする高級肉であり旨かったが、両者の心は何とも言えない気分となったのである。

 

(……分かっておった。こうなるオチになるのは分かっておったしっ!!)

 

だが、タギツヒメは内心でこうなるオチになることは分かっていたと強がりを言って、無理矢理自分自身を納得させようとしていた。

 

(…………なんだろうか、この気持ち。何故100g3000円もする肉なんて買ってしまったんだ?)

 

そして、姫和も冷静になり、何とも言えない虚しい気持ちとなっていき、100g3000円もする高級肉を何故買ったのかということについて自問自答をしていた。

 

「……いや、それよりも泣きながら食うなっ!!こっちも悲しくなるだろうっ!!」

「ええい、うっさいわぁっ!!こうなりゃ、ヤケ食いじゃあっ!!!!」

 

だが、タギツヒメが泣きながらスキヤキを食べていたので、それを姫和が注意したため、最初の無言の食事から一転、騒がしい食事となっていた。

 

「もう、こうなったのも全て可奈美お義姉様が悪いのじゃっ!!龍眼が役に立たないとか何じゃあのチート!!!おかしくないか!!!?」

「おっ、おい…………。」

 

優への告白が上手く行かなかったせいか、可奈美に八つ当たりを始める大荒魂の片割れことタギツヒメ。当然、姫和はそれを止めようとするが、それが原因なのか、余計にヒートアップするタギツヒメ。

「だいたい、立ち会い立ち会い立ち会い立ち会いと何回やれば気がすむのだあの脳筋剣術バカもといキチガイバーサーカーは、そのせいで我は可奈美お義姉様に勝って優を奪い取るということができんからこそ、こんな苦労をしているというのに……、というか何なのだあのキチガイ剣術オタクバーサーカーは!!!我の龍眼が児戯に等しいとか、あれはチートだチート、もしくは不正行為!!」

「…………。」

 

可奈美に対する鬱憤を吐き出すかのように更にヒートアップするタギツヒメ。それを黙って聞いている姫和。

 

「というか、幾つになってもあの調子だと嫁の貰い手が居るのか?キチガイ剣術オタクバーサーカーとか、かなり需要が限られると思うのだが……。そうなると、可奈美お義姉様を置いて我が生涯の伴侶と先に付き合うこととかできんから結局苦労するの我ではないかっ!!」

 

更に更に鬱憤を吐き出すタギツヒメ。

 

「というか冷静に考えてみたら我は頭のいい方であって、神でもあるのに、可奈美お義姉様は立ち会いをプレゼントすれば喜ぶ脳ミソ緩いチョロインだからな!そこを考えると我の方が敬われるべきであろう!!?」

『……ふぅん?』

「…………ファッ!?」

 

可奈美を不正行為、チート、脳筋剣術バカ、キチガイ剣術オタクバーサーカー等と呼んでいたタギツヒメは、何処からともなく可奈美の声が聞こえたせいか、顔を真っ青にし、声を上擦らせながら周りを見回していたが、可奈美の姿が見えないことに顔を歪ませる。

 

「……タギツヒメ、言う事がある。」

 

姫和の声に応えるかのように、タギツヒメは姫和の方へと顔を向ける。

 

「……実はな、この病室は監視カメラで見られていて、スピーカーで向こうに居る可奈美と会話できるようになっている。」

「…………もしかして、今の会話は?」

「全て、可奈美に聞こえている。」

「」

 

タギツヒメは刻が止まったかのように固まっていた。

 

『……ねえ、タギツヒメ。……誰が、脳筋剣術バカで、誰がキチガイ剣術オタクバーサーカーだったけ?』

「いいいえ、いえいえいえいえいえ可奈美お義姉様に、そ、そぉんなことは言っておりませぬぅ!!」

『へぇ。じゃあ、誰が不正行為したのかな?』

「!…………ハイ、可奈美お義姉様本当にスイマセン。本当に、スイマセン。我、心を入れ替えて参る所存でございます。」

 

可奈美は優しげな声で誰が脳筋剣術バカなのか?誰がキチガイ剣術オタクバーサーカーなのかとタギツヒメに尋ねているが、誰もが怒っているということは気付いていた。

そして、自称神ことタギツヒメはプライドも威厳もかなぐり捨てて監視カメラを前にして綺麗な土下座を敢行していた。

 

こうして、タギツヒメを中心とした一騒動は終わったのであった。

そして――――。

 

 

 

「――――(中略)―――でな、優がな、それでな?――――(省略)―――。」

「……うん、そうなんだ……。」

 

あの告白騒動以来、結芽はタギツヒメに対して憐れみの目で見ることになった。

そして、タギツヒメは結芽の最近の自身の扱いが悪くなっているように思い、悩むこととなる。

 






個人的にあの当時のアメリカ大統領がロシア大統領の十字架のネックレスが母親の形見だと調べ上げたのは凄いことだと思いますね。(なお、元ネタはプーさんと子ブッシュの首脳会談。)

タギツヒメ「……結局、我は更にアホ扱いされとらんか?」
タギツヒメの目下の悩みが増えました。




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