【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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57話を投稿させて頂きます。

マッド博士さんが出てきました。
でも個人的に晩年の科学者って、あの世と交信する装置を開発しようとしたり、オカルトめいたことやりだすというイメージがとても強い。




荒魂と人の境界線

和樹は自分のロッカーに入っていた封筒の中に入っていた紙に書かれていた場所まで来ると、一人の可愛らしい少女が待っていた。

 

「望月さん、ですよね?」

 

声を掛けられ、ドキッとする。

和樹は、今まで女性とまともに喋ったことが無い、いや正確には会話すらしてこなかったのだ。

和樹の内気な性格が災いして、女性に対して苦手意識があった。そのため、先ずはどう喋るべきか迷っていた。

 

「……えっ、えと、そうです。」

 

少し情けない顔をしながら答える和樹。

それに、気づいているのか気づいているのか、今の和樹には分からないが、待っていた少女はそんな和樹のことを理解していた。

 

「……そうですか。はい、こちらにどうぞ。あ、あと私は大村 静といいます。宜しくお願いしますね。」

「あっ、はい、よろしく……。」

 

和樹は、しどろもどろになりながらも静に応えていた。そうして、静に導かれるままにある部屋へと案内される。

その部屋には、既に外国人らしい女性と何人かの刀使が居た。

 

「先ずは初めまして、望月さん。私はソフィアと言います。」

「あっ、……どうも。」

 

綺麗な女性から声を掛けられたせいか、動揺する和樹。

 

「……あの、どうして僕を呼んだんですか?」

 

和樹は此処に読んだ理由をソフィアに尋ねていた。

 

「……実は、我が母校の綾小路の立場が危ういこととなりましてね。そのために、貴方の協力が欲しいんですよ。」

「……どういうことです?」

 

和樹は、ソフィアの急な協力の申し出を訝しんでいたが、和樹は自分でなくてはならない理由があるのだろうかと心の中で少し期待していた。そう、就職先で失敗し、不況のせいで今もフリーターになるしかなく、何の取り柄も無い自分に何か出来ることが有るのならと期待し、和樹はそれが本当なら少し嬉しいと思い始めていた。

 

「今現在の刀剣類管理局は舞草が中心となっているのは知っていますね?」

「ええ。」

「それ故に、紫派であった綾小路の政治的立場は非常に危ういものとなりました。そのため、貴方の協力が必要なのです。」

「…………。」

 

和樹はソフィアの話を黙って聞いていた。

だが、ソフィアの話には、嘘が入り混じっていた。

綾小路学長の結月は、大荒魂に憑依されていた紫と協力してノロを使った新薬を開発していたのだから旧折紙 紫派と言えるのであるが、実際の綾小路の政治的立場はまだ健在であり、危ういものではない。その理由としては、結月と同じく朱音も綾小路と事を構えて、刀剣類管理局を二分するような事態を避けたいのが理由であり、朱音としては特段綾小路をどうこうする積もりは無いのである。

しかし、刀剣類管理局がそのような状況となっていることを知らない和樹にとっては唯一の情報であったので、綾小路の刀使であるソフィアの話を信じてしまう。

 

「今、綾小路はその紫派と管理局派で分かれており、分断寸前という状況です。」

「えっ?」

 

流石の和樹もその話に度肝を抜かれた。だが、実際には紫派と管理局派は存在しない。

より、正確に言うとソフィアと旧折神 紫派を中心とした派閥と旧来から綾小路に所属する結月を中心とした派閥に分かれているのが事実である。

だが、そんな裏事情まで知りもしない和樹はそれを信じてしまう。

 

「実は、我々紫派は内密に荒魂と人体の融合をしていたのですよ?」

「……は?」

 

和樹は度肝を抜かれていた。

何故そんなことをバラすのか?

何故そんなことを言うのか?

考えが纏まらない――――。彼女達は何が目的なのだろうか?といったことを和樹は考えていた。

 

「現在の綾小路は舞草が中心となった管理局に糾弾されております。……もし、この研究が公となれば結月学長は綾小路を去らねばならず、そのうえ今の刀剣類管理局ならば、これ幸いとばかりに大規模停電と横須賀湾での乱闘騒ぎの責を取らせることで自らの権力と権威を磐石にしようとするでしょう。綾小路出身の刀使達もどうなることか……。」

 

和樹は唖然とするしかなかった。

荒魂と人体の融合を綾小路がやっていた―――?いや、結月学長はこのことを知っているのか?と和樹は疑問に思うが、先程、ソフィアが『我々紫派は内密に……』と言っていた。なら、結月学長とは何も関係が無いのかも知れないと思ったが、和樹はソフィアに“結月学長は関係無いのか?”と尋ねることができなかった。

もし、和樹が思った通りに関係が無い場合、彼女達に結月学長以外はどうでも良いのか?と思われそうな気がしたことと、そのままの足でソフィア達が管理局に突っ込むのではないかと危ぶんだため、和樹は何か良い言い方は無いかと考え込んでしまう。

 

そして和樹は、この前結月に会ったばかりだというのに、そんなことすら気付かなかったことに……。そして、綾小路がそんな状況に陥っていることに気付かなかった自分に罪悪感を感じていた。

 

そのため、

 

――――何が自分にできることはないか、……よくもそんなことが言えたな、和樹!!

と、和樹は内心愚痴る。……尊敬している結月学長がそのような状況に陥っているのに、何も気付かず、のほほんと何かできることはないか?と尋ねた自分を恥じていた。

 

「それを知った我々はあのノロのアンプルを使って、管理局を襲撃しようと思います。」

「なっ!!」

 

考え込んでいる和樹を尻目にソフィアは更に和樹にとって目眩がするようなことを言う。

そんなことをすれば、生徒のことを一人一人大事にする結月は悲しむだろうと思い、なりふり構わず止めようとする。

 

「そんなの、そんなの間違ってるっ!!」

 

和樹はソフィア達を叱責していた。

年頃の少女が荒魂を自らの体の中に入れてまで、綾小路のために戦うのは、どう考えても忌むべき考えだと和樹自身も思ったし、それよりも刀使同士が、いや年頃の少女達が血で血を争うこととなるのは見たくないのである。

 

「とは仰いますが、今や管理局は舞草の言われるがままです。その証拠に彼らは古来のやり方と言って荒魂と強調すべきだと言いつつ、荒魂と人体の融合をしているのです。そのうえ、鎌倉でのノロ漏出事件、横須賀湾での大規模停電の責を負わせようとしているのです。…………そんな管理局に一矢報いて何が悪いのでしょうか?そんな横暴を見過ごすことができますか?」

 

だが、ソフィア側も一歩も引かず、刀剣類管理局の横暴に立ち向かうとそれっぽいことを言っていた。当然、ソフィアが語っていた鎌倉特別危険廃棄物漏出問題と横須賀湾での大規模停電の責を綾小路に取らせるというのは虚偽である。

だが、和樹は今の刀剣類管理局が舞草中心の組織へとなっていることと、鎌倉でのノロ漏出事件の失態以降は荒魂事件を頻発させてしまったことにより、今の刀剣類管理局は前よりも風当たりが強くなったことは和樹も知っているため、その風当たりを緩和させるため、権力と権威を磐石にするため、尊敬する綾小路学長の結月に責を取らせる事にしたのだろうと和樹は勝手に思い込んでしまった。それ故に、和樹は今の刀剣類管理局は舞草が好き勝手なことが出来るように、独裁が行われているかのように感じてしまった。

そのため、刀剣類管理局にソフィア達が反乱を起こそうとしていることを言えば、政争の具にされてしまい、憧れている結月が只では済まないだろうし、ここに居る刀使達も暴走し手酷く傷付いてしまう恐れがあった。だから、和樹はソフィアの反乱を刀剣類管理局に伝えるという選択肢を放棄してしまう。

そのため、和樹は今も生徒を大事にしていて、今も憧れている結月とその生徒達、管理局を二分した刀使同士の争いを回避し、救う手段は何かないかを必死で考える。

 

(…考えろ、考えろっ!!少しでも良いから、何か彼女達の矛を収められるだけの理由を!!)

 

和樹は刀使としての力もなく、ただのフリーターでしかなかった自分にできることを求めた。渇望した。

 

(先ず、今の刀剣類管理局は信用できない……!)

 

そして、和樹は結月とここに居る刀使達を苦しめている今の刀剣類管理局を全く信じず、ソフィア達が行う決起を刀剣類管理局に伝えるという選択肢を棄てていた。

 

(……そして、どんなことがあっても刀使同士の争いを回避させる!)

 

刀使達、いや年頃の少女達が傷付くようなことを一時的でも良いから、避けられる方法。

 

(……そのために、僕にできることは…………!!)

 

そして、思いつく。

 

「……なら、僕をそのノロのアンプルで強化してくれ。」

「!…………それで?」

 

ソフィアは事が上手く運んだと内心喜びながらもその心を気付かせることもなく、和樹にその後はどうするのか尋ねていた。これで、和樹を説得させることはないだろうと思いながら……。

 

「そのノロのアンプルは刀剣類管理局に一矢報いることができるほどの強力なんだろう?それなら、僕に入れる方が良い?」

「……理由は?」

 

和樹はとにかく何でも良いから、彼女達を止めようと躍起になっていたためか、自分の体に荒魂を入れて強化しろと言ってしまった。自分でも、何故こんなことを口走ってしまったのか理解できなかったが、言ってしまった以上、どうにかそれに賛成するようにしなければならないと必死に思い、それを行うに値する理由も述べなければならないと、和樹は必死に考えていた。

 

「確か、親衛隊の二人がノロの力に頼ったとかで糾弾されていたよね?」

「ええ、そうですが?」

「なら、綾小路に関係がなく、刀使でもない僕がやれば、綾小路の名前と君達が傷付くことは無いよね?」

「そうですね……。」

 

ソフィアはそう言うと、申し訳なさそうに俯きながら答える。

だが、親衛隊の二人がノロの力に頼ったというよりも、正確にはソフィアが結芽をノロのアンプルを自らの身体に入れるよう唆したうえ、荒魂化させて優に殺されるように工作し、夜見は騙して協力させたうえ、荒魂化するほど追い詰めたあとにスレイドに贈与したのだ。しかし、そんな事実を和樹は知ることはなかった。

 

「……成功しなかったら、君達はどうなる?君達にはまだ将来があるんだ。だから、それは僕が受け入れる。君達が受ける必要も無いんだ。それに、僕は刀使じゃないから、君達には迷惑を掛けないから、君達も自分の身体は大事にしてくれ。」

 

彼女達の将来がそんなもので潰れるくらいなら、碌な職に就けないフリーターで、将来も無い男がやるべきだろうと、和樹は判断した。

 

(それに、僕は……結月さんのこと、何一つ気付けなかった…………今度は、僕が助けるんだ。)

 

和樹は、そう心の中で罪悪感を感じながら呟くと、更に自らの決心を固く、強くする。

そして、結月学長のお陰で今まで生きてこれたから、その恩返しをする時だろうと思い込み始める。それに、もう自分には失う物など、何も無いのだからと、和樹は心の中で納得させて……いや、そう思い込むようにしていた。結月と刀使達が傷付かないようにするため、自身の身体をノロの力で強化し、今の刀剣類管理局を相手に戦うしかないと……。

 

 

「……協力、感謝致します。」

 

あとは、彼の進むレールを用意するだけ、……ソフィアは内心そう呟きながら微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、和樹の体内にノロの入れて強化する手術を終えたスレイドはソフィアと話していた。

 

「…………夜見さんを使うことができないから、彼を使うということですか?」

「不服か?」

「出来ないことは無いが、私は元々、鎌府で年若い子の刀使達に神聖な荒魂を入れて強化するという実験をしていたのだよ。……私の実験は、こう、もう少し若い子の方が脳の適応能力が高いから……その、ねえ?」

 

スレイドは元々、鎌府の研究機関で刀使とノロが融合し強化するという実験をし、そして刀使でもない子供に荒魂を注入して身体強化をするという狂気の実験をしていたのである。そんな彼でも、成人男性に荒魂を入れて、刀使以上の力を付けさせるというのは初めてであった。

 

「つまり、子供が良いと?」

「そうだよ。でも、この研究は素晴らしいとは思わんかね!!?」

 

だが、研究の話に少しでも触れたのが良くなかったのか、急に声を上げ、饒舌になるスレイド。

 

「ええ、力を得られるという点に置いては素晴らしい研究であると常々思っております。」

「……まあ、大体の人はそう思うだろうねぇ、そう思うよねぇ?……でも、私がこの研究に打ち明けるようになったのは、やはり、やはりというか、あの20年前に大量のノロを持ち帰ろうとした輸送船に乗ったのは正解であった!正解であった!!……そうでなければ、私は私の道を導いてくれる“神”に遇えなかったであろう、“神”の恩寵に受けることもなかっただろう、“神”の福音を聴くこともままならなかっただろうっ!!!もし、“神”に遇えなかったなら、私は冒涜を犯す配信者となったままだったろう……。」

 

スレイドはその時を思い出したのか、やや興奮気味にその時のことを語っていた。

20年前の大荒魂のあの禍々しい姿に見蕩れたことから人体と荒魂の融合の研究は始まったと、そして彼にとって大荒魂の姿は神々しく見えたと云って。

 

「そして、その後にその“神”から荒魂と人体を融合の研究をしろと言われれば!これこそ私が信ずる“神”が与えたもう使命だとは思わんかね、思わんかねぇっ!!!……あの時、誘われたときは正に“神”からの天啓だと思うたのだよ。」

 

スレイドは妙な言い方をするが、要はスレイドは20年前の大荒魂と出会ったことで自身が進むべき道を垣間見たと述べていたのである。

 

「……ドクター、貴方は無神論者であった筈ですが?それに、人を襲う荒魂はどう思われます?」

 

だが、それなりに付き合いのあるソフィアは何を言っているのかは理解していた。だが、少し意地悪を言いたくなり、それを言ってみることとした。

 

「私は今や改心し敬虔なる信徒の一人となったのだよ。……しかし、もし、そのような迷える子羊が居たら、神の信徒が教え諭さねばならんだろう?いや、神の元へ還らせるべきかも知れん。」

 

ソフィアの意地悪な質問に、スレイドは20年前の大荒魂を信仰する敬虔な信徒の一人であると自称し、そのうえで人を襲う荒魂は迷える子羊として処理し、自身が信仰する神の供物にすると大真面目に言っていた。

 

「しかし、しかしだ。管理局が昔はノロを祀っていたということを隠していたのはいけない、いけない子供達だ。それに、荒魂だからという実に下らない理由で神ではないというのもそもそもだ。そもそも可笑しな話ではないかぁ?神の言葉を記した聖書通りであるなら完全なる神が不完全な人の姿をしていること自体が可笑しいではないか?あのような御姿こそ神に相応しいとは思わんかね。思わんかねっ!?」

 

そして、スレイドは自らの持論を語る。

神の御言葉を記した聖書に神は完全な存在であり、人は不完全な存在であると書かれていて、その通りであれば完全たる神が人と同じ姿な訳がない。ならば、20年前に自分が見た大荒魂の荘厳なるあの御姿こそ、神と呼ぶことに相応しいと熱く語る。

 

「……まあ、私としても20年前の姿を拝見したく思いますが。」

「そうであろう。そうであろう!君のような信心深き者が共にすれば、我が神は嘗ての御姿でこの地に舞い戻られるであろう。」

 

そのうえで、スレイドはタギツヒメを20年前当時の姿に戻したいとソフィアに語る。それに、ソフィアは同意していた。

 

「……だが、その“神”の御心を今なお管理局は理解できないでいる。……嘆かわしい、実に嘆かわしいことだ。」

「どう嘆かわしいので?」

「考えても見たまえ考えてもみたまえ!?たかが荒魂と人体を融合させることが何が悪いことなのだ?御刀が使われている珠鋼とノロは元々一つであったのだろう?ならばノロと珠鋼はどう違うというのかね?周りが“ノロは穢れの元”だという言葉だけで振り回されているか怖がりなだけではないのかねぇ!!?……理解のない人間ばかりだからこそ敬虔なる私を世間は背信者としたのだ。」

「……世間がもっと間違っていると?」

「そうだそうだ!奴等の言っていることが正しければ、清く美しい御刀が選んだ少女が荒魂と殺し合うということの方が最も素晴らしい形であるということなのだろう。だが、そんな彼等はそう嘯きながら、その嘯いたその口で、“子供達に任せるのは忍びない”と言うのだ!?なら私が子供にノロを注入することの何がいけない?ノロに選ばれし子供達であると何故思わん!!?」

 

自身を認めなかった世間に対して言っているのか、熱を込めながら言うスレイド。

 

「ノロと融合できた彼等はただ単にノロに選ばれただけだっ!!御刀に選ばれた者を刀使と呼び敬うこととどう違うと言うのだぁっ!!!狂っているのは私か、それとも御刀が選んだ子供と荒魂が織りなす殺し合いを観たがる世間がそんなに、そんなに素晴らしいことなのかっ!!?なら、“子供達に任せるのは忍びない”と言いつつ子供達が殺し合う場を整える彼等の方がイカレてるよぉおおぉぉお!!!」

 

そして、狂人と言われたスレイドは叫ぶ。

何がいけないことなのかと?何が間違っているのかと?たかが、力の無い子供達に刀使と同等にしようとしてるだけではないかと、もしそれが禁忌の考えであるならば何故彼等、刀剣類管理局やそれを許す人達でごった返す世界も狂った世界ではないのかと叫んでいた。

そして、スレイドは禁忌を犯した大罪人として扱われ、それらを行ってきた刀剣類管理局やこの世界の人間達には何もお咎めが無いのは笑劇(Farce)だと叫ぶ。

 

「……フフ、そうですね。私も大荒魂を復活させることは賛成です。ですが、彼の方はどうなのです?」

「ああ、ノロを彼に注入して強化することはできたが、良いのかね?」

「何がです?」

「まあ、どうにかして血を媒介にしたあらゆる荒魂の召喚とその使役を行えるようにしたよ。けど、彼は歳を取り過ぎているから脳がノロを適応しようとしないんだよ。そのせいで身体の方はアレルギーが出て、拒否反応していてね。結果、彼の身体は常に起こる激痛で常時危篤、内臓の殆どが機能不全を起こしているから飲料ぐらいしか栄養補給ができない。そんな身体だから攻撃方法は自分が召喚した荒魂の使役ぐらいだよ。そのうえ荒魂を召喚したらノロのアンプルで補充しなければならないから、更に荒魂化は進行するけど?」

「構わん、彼の生死は問わない。」

「良いのかね?彼、理由は何なのかは分からないが、一応は君達の身を案じていたのだろう?」

 

ソフィアから和樹をどう改造したか尋ねられ、今まで子供と荒魂の融合の研究をしてなかったスレイドは初めて成人男性の人体にノロを入れるという無茶な改造をしたせいで、身体は既にボロボロで使える攻撃手段は夜見のような荒魂の召喚と使役のしかないうえ、使役できる荒魂を御刀で斬り祓われ失うとノロのアンプルで補充しなければならないが、補充すればするほど荒魂化が進むと伝えていた。そのことにスレイドは彼を戦力に加えることに難色を示していた。

 

「それで充分です。あとは、貴方が鎌府から逃げ出した旧折神 紫派の元研究員という立場を忘れず、はしゃぎ過ぎないようお願いしたいところなのですが?」

「ああ、うん。そこは気を付けるよ。君達のお陰で檻から抜け出せたしね。」

 

スレイドの問いかけにソフィアは和樹の改造内容に納得したのか、満面の笑みを浮かべていた。

だが、その次の瞬間、ソフィアはスレイドに今の身分は舞草から逃げ出した旧折神 紫派の元研究員という身分であることを忘れるな、と釘を刺していた。その注文にスレイドは大規模停電の闇に紛れて刑務所から出してくれたことに感謝していることを述べつつ、大人しくすることと、和樹に自身がスレイドであることに気付かれないようにすると誓っていた。

 

「……でも、次に使うのは子供が良いなあ。」

「大人しくしていれば、見つけますよ。」

「!!……ああぁぁ、ありがとう、ありがとう!!これで、イチキシマヒメも喜ぶよぉ。」

 

だが、スレイドは次の実験に使う素材は子供が良いとソフィアに注文すると、快諾してくれたことに歓喜していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハァッ、……ハァッ、…………み、みんな、僕が…………マモルんだ………。」

 

そんなふうにソフィアとスレイドに言われているとは知らずに、和樹は綾小路と結月、刀使達の安否を案じながら、身体に激痛が走ることに慣れないせいか、這いつくばるように動くしかなかった。

 

(僕は覚悟した。……けど、)

 

白髪頭に右目が荒魂の目の様に変化している自身の姿を鏡で見ながら、もう結月の所へ、うだつの上がらないフリーターだった頃には戻れないだろうと確信していたのだった…………。

 





スレイド「まったく、小学生は最高だぜっ!!」
という発言をするうえ、大荒魂の熱狂的な信者1号でしたとさ。


なお、そんな神と崇められているここのタギツヒメさんは……。

姫和「貧乳っ!!」タギツヒメ「貧乳っ!!」

タギツヒメ「うぅ、酷いこと言ってしまった。……どうしようかの。(´;ω;`)」

こんな感じでお送りしております。
あと、和樹の剣の実力はノロ強化されてない歩ちゃん以下。
 
 
 

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