59話を投稿させて頂きます。
ここの可奈美の心情は前話のSave you Save me 1と併せて読むと分かり易いかも知れないです。
「……舞衣、美濃関学院を辞めなさい。新しい学校は父さん達で決めているから、すぐにでも転入できる。」
舞衣は、「えっ?」とつい口に出すほど動揺してしまった。
急に、舞衣の父親柳瀬 孝則から電話が来たことから、こうなることはある程度は予測はできたが、真正面から言われると動揺するものがある。
「話が違います。高校卒業するまでは私の好きにしていいと……言っていたじゃないですか?」
「事情が変わったことぐらい理解できるだろう。任務中に怪我をする刀使も増えてるそうじゃないか、お前も随分と危険な目に遭ったんじゃないか?」
確かに、鎌倉でのノロ漏出事件以降は荒魂事件が頻発し、任務中の刀使が負傷をする事例が増えているのは事実だ。
だが、舞衣はそんな状況下に置かれても刀使を辞める気はさらさら無かった。
自分を庇って亡くなった人、不調気味の沙耶香、……そして、可奈美に追い着きたい思い。それらを無視して、刀使を辞めることなど舞衣はできなかったのだ。
「……確かに、任務中に怪我をする刀使は増えています。……ですけど、この孫六兼元は私を選び私は刀使になることを選びました。覚悟ならできています。」
「軽々しく覚悟なんて言うもんじゃない!」
舞衣の『覚悟』という言葉に反応してか、それとも『覚悟』という言葉を使うほど必死になって戦う娘に何もしてこれなかったことに不甲斐なさを感じていたのを思い出してなのか、もしくは今の今まで刀使という職業が危険なものであることに気付いていなかった自分を恥じていたのか、孝則は語気を荒げて反論していた。
色々な物を背負い、刀使を辞める気などない舞衣。親として、刀使という危険な職業を辞め、平穏に過ごして欲しい孝則。
刀使を辞めるか辞めないかで言い争う娘と父。
そのすれ違う娘と父を可奈美は遠巻きに見て、何とも言えない気持ちとなるが、何故、この場に可奈美が居るのかというと、舞衣に父親の説得に協力して欲しいと言われ、呼ばれたからである。
それは、遡ること数時間前――――。
舞衣は父の孝則から、少し話したいことがあるから家に戻るようにと言われた時のこと。
「…………。」
舞衣は悩んでいた。
父からの急な呼び出しは、もしかしたら刀使を辞めるように言われるかも知れないと勘繰り、如何に対処すべきかを考えていた。
「あっ、舞衣ちゃーーん。」
だが、そこに可奈美が手を振って、こちらに駆け寄って来るのを見て、舞衣はあることを考えつく。
「……可奈美ちゃん、お願いしたいことがあるの。」
「…………えっ?」
突然、何だろう。
可奈美は疑問に思いながらも、舞衣に何かあったのかを尋ねる。
「どうしたの?舞衣ちゃん。」
「……その、お父様から家に戻るよう言われたんだけど、もしかしたら刀使を辞めるよう言ってくると思うから、可奈美ちゃん一緒に来て、助けてくれる?」
「うえぇ?う、うん分かった。…でも、私なんかで良いのかな?」
可奈美は、舞衣が刀使を辞めさせられるかも知れないと言われ、驚きながらも舞衣を助けることを了承する。
しかし、舞衣の家庭の話に割り込んで良いのかと考えつつも、自分に自信が持てない可奈美は自分では何の助けにもならないのでは?と舞衣に尋ねていた。
「ううん、そんな事ない。可奈美ちゃんが親友で、とても強くて立派な刀使さんってことはお父様に聞かせているから、可奈美ちゃんがお父様の説得に協力してくれれば上手く行くよ。」
「……へぇ。」
可奈美が強い刀使と言われ、“喜んでいない”ことに気付かない舞衣。
舞衣が思っている“剣術好きな少女”であれば、強い刀使と言われると喜ぶものなのだが、今の可奈美は剣術好きな少女ではなく、優を救うために他人を欺き、利用し、冷たいぐらい自分本位だが、友達思いで、立派な“姉”であろうとする子であった。
だが、優を救うと思いながら、何一つ出来ず、それどころか更に荒魂化が進んだうえ、優が荒魂と融合した経緯を隠すため、優の活躍を掠め取り、その掠め取った活躍で名ばかりの英雄を演じることで、嘘を嘘で塗り固めたことで、そうすることによって得ることができた羨望と尊敬の眼差し。
そんな嘘で塗り固められた女のことを、親友の舞衣は強い刀使と褒め称えたのである。そんな舞衣を可奈美は、
『あの人衛藤さんじゃない?美濃関の。』
『あの人達が大荒魂を倒した?』
剣術の指導員となった際に、羨望と尊敬の眼差しで見る後輩達の視線。だが、誰が大荒魂を撃退したのかはこの二人には、いや誰も分かっていない。
『私達とはまるで次元が違いました!』
『私達なんて相手になりませんから…』
鎌倉で活躍して以降、立ち会う前から言われる孫謙と諦めが混じっている声。だが、誰が大荒魂を撃退したのか分かっていない。
…………誰も理解していない。ダレモワカッテイナイ。
今の舞衣が言っていることと見つめる目が、優が大荒魂を撃退したのに、誰もそれを知らずに呑気に自分を鎌倉での英雄だの大荒魂を倒した凄い人だの勝手なことを言う者の声と目に似ているように感じてしまった。特に、舞衣が可奈美のことを剣術好きな少女と勝手に思っているところがよく似ていると、いや、何も知らず自分を称賛する者と舞衣は同じものであるのだと可奈美は感じていた。
自分の本性は剣術好きな少女ではないというのに、……可奈美はそう心の中で愚痴りながら。
そんな理由もあって、可奈美は舞衣に呼ばれ柳瀬邸へ一緒に向かうこととなったのである。
そして、今現在この場には可奈美と舞衣、孝則と舞衣の母柊子の四人がソファに向かい合う形で座っていた。
だが、可奈美は親子喧嘩の仲裁のために呼ばれたのかと思い落胆していた。
舞衣は私のことを便利に使える道具のように、都合良く利用できる物としか思っていないのだろうか?そんな卑屈な考えが、今の可奈美には過っていた。
可奈美という人物は元々、
『やっぱり、信用できない?だったら、利用しちゃえば良いと思うよ。』
『姫和ちゃんの目的に必要ならそうすべきだと思う。そもそも私もそのつもりで連れて来てくれたんでしょ?』
という考えを持っている。故に、彼女は“優しい反面、冷たいぐらい自分本位”という子でもあった。
そのうえ、今の可奈美は優の中に居るのがタギツヒメ、いや荒魂であることを隠すために、顔を歪ませながらも、苦しみながらも、友人や親といった人達に嘘を吐き続け、そして自らをも欺き続けていた。
だが、その罰なのか、大荒魂を撃退したのは自分ではなく優であるにも関わらず、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の真実を隠すため、英雄の役を演じ続けねばならないこととなり、それは可奈美にとってみれば、優の活躍を掠め取って偽物の英雄をしていることと同義であった。
……それら二つを14年間近くやらされていた今の可奈美は、舞衣が自分のことを道具のように扱っているという卑屈な考えに固執してしまっていた。
だが、舞衣の方は可奈美を利用しようとは考えておらず、ただ単に、よく立ち会ったことと、同じように切磋琢磨していた可奈美のことを父によく話していたため、父も信頼しており、その可奈美も刀使を辞めさせようとする父の説得に来てくれれば、父も納得してくれるかも知れないという淡い考えで可奈美にも同行してもらいたかっただけである。
だが、何と言おうと舞衣は可奈美を父の説得に利用しようとしていたことに変わりはないとも言えるのだが、そのことに舞衣は気付かない――――。
そのうえ、
『あれ!?舞衣お姉ちゃんだ!――――』
如何にも純粋で、可愛らしい舞衣の一番下の妹詩織が刀使として活躍する舞衣が家に帰ってきたことが余程嬉しかったのか、笑顔で出迎えてくれた。
だが、そんな詩織を見た可奈美は、優がほぼ荒魂化してしまった以上、自分の家では、もう二度と見ることが叶わない光景なのだと、つい自嘲してしまう。
『おかえりーじゃないでしょ、また制服のままごろごろして。』
『ん、これ終わったら着替えるよー。』
『皺になっちゃうじゃない。ほら脱いで、もうすぐお父さん達が帰って来るんだからちゃんとしなさい。』
『え!?帰って来るのお父さん?』
『ていうか、日本にいたんだ。』
『じゃあ、もしかしてお母さんも?』
『うん、一緒だって。』
柳瀬邸にある普遍の一面。
一番上の妹美結が気だるげながら、舞衣の言うことを聞き、詩織が父と母の帰りを手放しで喜ぶ。
普通で、世間一般の、三人の姉妹のとても仲睦まじく、微笑ましい家族の場景。
嘗ての可奈美が欲して止まなかった、理想とする家族の場景が其処に在った。
『こら!立ったまま食べないの!』
『ハイハイ。』
『ハイは1回!』
なのに、事も無げに暴力と殺人を行う弟、何を考えているのか全く理解できない弟、もうどう接していいのか分からないから、優のことは姫和任せの自分。
まるで、正反対のような状況下に置かれている可奈美にとって見れば、舞衣の家庭が見せてくる家族の場景は虚しさと無力感を可奈美に与えることとなった。
『そんな細かいこと言ってるから彼氏できないんだよ、舞衣姉は。』
『余計なお世話です!!』
可奈美は舞衣と美結の口喧嘩を見て、舞衣の言っていたことを思い出していた。
『……良いなぁ、上の妹は結構わがままで私を困らせてばっかなんだよ?』
『でもね、本当に困っているときは何も言わないの。おかしいよね、ばればれなのに。』
昔、美結のことを舞衣はこう言っていた。
妹のことをよく見てて、よく喋れていた。剣術バカの自分よりも、親友の舞衣は優れた“おねえちゃん”だったことに、嫉妬した頃の思い出。
対して自分はどうだろうか?
今の自分は弟のことを邪魔物のように扱っていないだろうか?何か一つでも理解できたことはあったろうか?
…………自分が、何一つできなかった。自分が夢見て、欲しがった光景が柳瀬邸に在った。
そんな舞衣と妹達の光景を遠巻きに眺めながら、苛立ちを感じながら、無力感に打ちひしがれる可奈美。
母親との約束を守るため、弟の中に荒魂が居ることを隠すため、友人と親に顔を歪ませながらも、心が何処かに痛みを感じながらも、血を吐くように嘘を吐き続けていた。
だけど、剣術好きな少女を演じたのは、弟の事から逃げられる唯一の場所である立ち合いに長く居続けるための言葉、相手の剣術が見たいと言うための理由付け。
そして、嘘に嘘を重ねた罰なのか、優を救うと言いながら、今や優の活躍を掠め取り、その掠め取った活躍で鎌倉での英雄という嘘をやり続けることとなり、後輩から刺さる尊敬と憧憬の念。
…………それを何年間も続いたことで、卑屈となった少女は在りもしないことを考えてしまった。
何故、自分を此処に呼んだのか?舞衣は妹との仲の良さを見せて、私に自慢したかったのだろうか?
そんな考えが過るほど、卑屈となった少女可奈美は、舞衣に対して言いようのない憎悪の感情を沸々と湧き上がらせていった。
「……舞衣、忘れないで欲しい。お前もこの家の一員だということを。」
舞衣の身を案じ、心配しているということを話す孝則。
だが、舞衣は、
「……柳瀬という家に、刀使が居ては体面が悪い、ということですか。」
「ん?」
刀使をどうしても続けたいためなのか、家の体面を守るために孝則は刀使を辞めさせようとしているのだろうと曲解していた。
そのため、孝則は舞衣の妙な物言いに怪訝な表情をする。
「舞衣。」
舞衣の物言いを嗜める柊子。
だが、舞衣は射殺さんばかりの視線を実の両親に向けつつ、止まらない。
「もし、そうなら私は刀使を続けなければならないんじゃ無いんですかね?」
「……何を言っている?」
孝則は、舞衣が何を言いたいのか真意が分からなかった。
「荒魂が大量発生している時期に私が転校すれば柳瀬の家の者は困難に立ち向かうことなく、逃げ出す者だと物笑いの種になるということです。ゴシップ誌が好みそうな話であると思いますけど?」
「……舞衣、そんなことは気にしなくて良い。私が何とかしよう。」
「お父様が手を回せば、余計に柳瀬の家の者は一般大衆とは違うのだと言われると思いますけど?こういうの、上級国民って言うらしいですね。柳瀬の家はそう言われるんじゃないですか?」
「いや、私はそんなことを言おうと!……した訳じゃないんだ。」
孝則は、今この状況で声を荒げて、舞衣から刀使を辞めさせようとしても、誰も納得しないだろうと判断し、どう言って良いものか戸惑ってしまったのか、後になって声を抑えていた。
「舞衣、お父さんはそう言いたいんじゃないのよ。ただ、貴女のことが大切なの。」
「私にとっては、柳瀬の家も刀使としての私も大事です。柳瀬の家が悪く言われれば美結と詩織がどうなるんです?」
柊子は孝則の気持ちを代弁して、舞衣を説得しようとしていた。
だが、舞衣は自身の妹美結と詩織を引き合いに出してでも、両親を説得しようとしていた。それは、柳瀬の家のためでなく、舞衣の家庭に有る家族の場景を守りたいためではなく、犠牲となった者達のために、沙耶香のために、そして可奈美に追いつくためにも刀使を続けたかっただけである。
だが、孝則は気付いていないが、柊子は母の感なのか柳瀬の家のためでなく、舞衣は自分のために刀使を続けたいがために自分の妹達も利用しているのではないのかと気付いていた。
それに、孝則と柊子は、可愛い娘の舞衣が例え本当のことを言っていても柳瀬の家のために犠牲になることは許せなかった。
「…………舞衣ちゃん、嘘は止めようよ。」
だが、可奈美の遮るような物言いに舞衣は不思議な顔をする。
「えっ?……可奈美ちゃん?」
「だって、舞衣ちゃんが嘘吐いてることぐらい誰でも解かるよ?」
その可奈美の声は極寒の大地の如く冷たく、可奈美の瞳は舞衣を射抜くかのように見つめていた。
その可奈美の変貌に舞衣は驚き、何事かと可奈美に問う。
「可奈美ちゃん?」
「だって、舞衣ちゃん。『柳瀬の家のため。』とか言っちゃって悲劇のヒロインっぽく振舞っているけど、刀使を続けたいだけなんでしょ?そんな下手な芝居を観てると笑っちゃうよ。」
舞衣は、可奈美が約束を反故し、突然こちらを糾弾するかのようなことを言ってきたことに驚いたこともそうだが、剣術が大好きな可奈美は舞衣が刀使を辞めることに何も思わないということなのだろうかと疑問に思う。
「どうして、そんなこと言うの?私は可奈美ちゃんに追い着きたくて今まで頑張ってこれたのに。」
「……舞衣ちゃんが私に追い着く?ふざけたこと言わないでよ。もうかなり実力の差が開いていると思うんだけど?そんなんことで覚悟だとか言わないでよ。」
可奈美は、舞衣のことを実力の差は開く一方で、弱いと散々とこけ下ろし、舞衣を批判していた。
母の約束を守るため、弟を救うべく他人も親友も欺き、自らを剣術好きな少女と偽ってでも、弟と母のために強い刀使になることを望みながら“覚悟”を持って挑んだ可奈美にとって舞衣の言う“覚悟”という言葉は安く、そして軽く感じたうえ、可奈美にとって舞衣が家族と共に平穏に過ごせるという道を可奈美に追い着きたいという理由だけで放棄する意味が今の可奈美には分からなかった。だからこそなのか、可奈美は妹を利用してでも刀使を続けようとし、覚悟という言葉を軽々しく使う舞衣が理解できなかったし、信用できなかった。
それに、舞衣は激昂し反論する。
「へぇ?そんな可奈美ちゃんはどうなの?一人で鎌倉へ行けた?どうせ迷子になって、出場出来るかどうか怪しかったじゃない!?」
「何が言いたいの?」
舞衣の言い分に何が言いたいのかを尋ねる可奈美。
「だって可奈美ちゃん一人だったら、御前試合に行けなかったじゃない。……それだけじゃない。部屋は片づけられないし、前から忘れ物ばかりで私に頼ってたよね?勉強も教えてあげないと進級できるかどうか怪しかったよね?」
舞衣は可奈美のことを忘れ物ばかりで、部屋の片付けもできない。そして、勉強も一人ではできないと非難していた。
「そんなんで、弟さんを助けることができるの?」
舞衣の嘲笑とも、侮蔑とも取れる言い方に可奈美は激昂し、舞衣の頬を殴る。
舞衣の発言を認めないかのように、その声を払い除けるように、それが事実であるかの様なことを否定するかのように、可奈美は舞衣に掴み掛かっていた。
「舞衣ちゃんに何が分かるの?……私は頑張った、頑張ったけどこうなった!!ああなったんだよっ!!」
可奈美は叫んでいた。
どれほど母との約束を守るため、弟を如何なる手段を使ってでも救おうとした。覚悟を持って挑んだ。だが、そんな安い覚悟では挑んでも意味が無かったと言わんばかりに、優は自身の身体の殆どを荒魂と化し、大荒魂を倒した。結果は優を救うどころか、更にその道は険しく、遠くなってしまった。
「なのに、舞衣ちゃんはっ!!私に追い着きたいとか、しょうもない理由でっ!!安い覚悟で刀使を続けようとしている!!」
「可奈美ちゃん一人でどうにかできると思っているの!?一人でしょうもない意地張ってるから、しょうもない結果になった。そうなっただけじゃないっ!!?なのに、そんな貴女に私の覚悟を否定する権利は無いっ!!」
可奈美に殴られ掴み掛かられた舞衣は、可奈美の襟首を掴み返し、反論していた。可奈美に刀使を続けること、自らの覚悟を否定する権利は無いと激昂しながら応えていた。
「覚悟も無い人なんかにっ!!」
「人のことが分からない人にっ!!」
「脳カラ!!」
「臆病者!!」
そうして、大荒魂を対峙したという経験を経たせいか、互いに気が強くなった可奈美と舞衣は更にヒートアップし取っ組み合い、殴り合いになりながらも己の言い分を通そうとしていた。
「……止めないかっ!!二人共っ!!」
だが、舞衣の父孝則の制止の声も聞かないまま、暴れる可奈美と舞衣の二人を見た舞衣の母柊子は執事の柴田達を呼んでどうにか暴れる二人を抑えることができた。
可奈美と舞衣の両者は孝則と執事達に取り抑えられ頭が冷えるまで、鼻血を出し顔にアザができるほど暴れて、殴り合い、口で罵り合っていた。
「……取り敢えず、もう遅いから可奈美さんは今日は我が家に泊まりなさい。親御さんへの連絡は私がしておくから、それで良いな、舞衣。」
「……分かりました。」
孝則の話に舞衣は納得したかのような返答をしていた。
だが、怒りの熱が収まらない舞衣は可奈美を見ないまま、自室へと向かって行った。
舞衣が理想的な“おねえちゃん”であることに嫉妬した可奈美。
可奈美に追い付きたいがために、焦ってしまった舞衣。
二人も何処か似ていながらも、ほんの些細なことで擦れ違うこととなってしまった…………。
今後、舞衣と可奈美は擦れ違うこととなりますが、最終的に和解します。