【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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62話を投稿させて頂きます。
和樹くんは今後も大活躍の予定です。
 


痛みに耐えて、耐え続けてた。

 

  

  

  

綾小路武芸学舎内――――。

 

「隊長、和樹氏に柳瀬氏の息が掛かった研究所を襲わせるということですが、宜しいのですか?」

 

穂積は、ソフィアが和樹に特別希少金属利用研究所を襲わせる意味を尋ねていた。

 

「それはだ、我々が関与したという証拠を可能な限り残さないのが彼であり、夜見が使った蝶型の荒魂を和樹が使って襲うことによって捜査を攪乱させることが目的であることを考慮すれば、彼の方が適任であると判断したまでだが。……不服そうだな。」

「…………。」

 

穂積の態度を見て、ソフィアはそう判断し、更に話を続ける。

 

「我々の理想とする世界を構築するには権力が必要だ。だからこそ、我々は空席となった親衛隊の席を我々が占有する必要があったのだが、それは叶わぬ物となった…………。」

 

ソフィアは理想とする世界を得るために、結芽と夜見を罠に嵌め、真希と寿々花を陥れ、親衛隊の席を空席にしたのだが、結果は空いた席を自分達のシンパで埋めるということができぬまま、ソフィア達は結芽の一件以来から綾小路学長結月に疑いの目を向けられ続けていた。

 

「それ以前に、我々は結月から目の敵にされている。そこで、あの男だ。」

 

結月から疑いの目で見られ続けているソフィア達の状況を一変する手が、あの男と呼ばれた和樹であるとソフィアが言っていた。つまり――――、

 

「あの男を使えば、ノロの強化薬の研究は飛躍的に向上し、尚且つ夜見と同様の蝶型の荒魂で刀使関連の施設を襲えば、夜見と雪那に疑いの目を向けることができる。そのうえ、彼は結月と面会している以上、和樹氏と結月は何らかの関係があるように見せることもできますね。」

 

要するに、ソフィアにとって、和樹は未だ投与のリスクがあるノロの強化薬の完成度を高めるための実験台であり、刀剣類管理局への疑いの目を夜見に向けさせるための囮でもあったのかと穂積はソフィアに尋ねる。

しかし、ソフィアはまだ何かあるのか、微笑みながら答えていた。

 

「そうだ。鎌府の研究データを静が高津から訊き出したが、投与のリスクは未だに高いからな。あの男は実験台にも使え、囮にも使える。だが、もう一つあるだろう?」

 

ソフィアにそう問われ、穂積は首を傾げる。一体、他に何があるというのだろうかと、

 

「あの男は自分が荒魂となってでも頑張れば、本気で刀使を救えると思い込んでいるのだぞ?本心をひた隠してな。それで奴は荒魂と融合したのだ。なら、奴を見た結月はどう思うだろうな?どう心が痛むだろうな?……愉しみだろう?」

 

ソフィアは結月を精神的に追い詰めるために、結月の知り合いでもある和樹を選んだのだと言っていた。

ただ、利用するために使っていると。

 

「まあ、そんな男の話しよりも、優の居所は見つかったか?」

 

ソフィアは和樹のことより、優の方に興味があった。

 

「……現在、鋭意捜索中であります。」

「必ず見つけ出せ、彼は二十年前の残り香だからな。」

 

ソフィアは、スレイドから優が二十年前の大荒魂の一部と融合していることを聞き出しており、予想通りの人物であったことに喜んでいた。

 

(……彼が、彼こそがもしかしたら私の理想を叶えてくれる。そして、私の最大の理解者となってくれるかも知れない…………。)

 

優のことばかり考えていたせいか、ソフィアは優だったら和樹に対して、そして自身に対してもどのようなことをするのだろうか?と思い始める。

 

(……だが、彼なら、あの男をどうするだろうか?……それに、彼は私をどうするだろうか?どう傷付けて、どう殺して、どう壊して、どう奪い尽くすのだろう?そして私に、どのような力を、救いようがない暴力を見せてくれるのだろうか?)

 

ソフィアは優に対してそのような感情を抱きつつ、自分を傷付け、どう壊して、どう奪い尽くして、どう殺すのかを待ち焦がれていたことに誰も気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別希少金属利用研究所――――。

和樹は御刀を握り締めつつ、自らの二の腕を見ていた。

 

「……ハァッ…………ハァッ!…………」

 

荒魂を召喚するためには、自らの血を代償にしなければならない。そのため、和樹は今から自らの腕に傷を付けなければならないのだが、和樹は動揺していた。

それも当然で、和樹の人生は今まで暴力とは無縁の人生を送っていたのであり、自分の腕を傷付ける行為など一つもやったことなどないので、どれぐらい腕を切ればいいのか分からないのである。それ故に、和樹は怯え、手を震わせながら、腕に御刀を持って行き、そして切る。

 

「……うっ…………づぅ、あぁあぁあぁあああ…………。」

 

そのうえ、どれぐらいの量の血を出せば良いのか分からないうえ、御刀を握ったこともないため、余計に深々と刺してしまった。

和樹の予想以上の痛みと多量の血が溢れ出て、少々パニック気味となる。

 

「あぁあぁあぁああああぁぁぁ……血が、血が!」

 

今の和樹の精神状態は、リストカットに失敗し、血が多く出てきたことに動揺した自殺志願者に近い精神状況でもあった。それ故に、血を止めなければと矛盾したことを考えるほど、慌てふためいてしまう。

 

「……あっ…………あぁ!」

 

だが、自らの血を代償に無事荒魂を召喚できたこと、蝶型の荒魂が自分の命令に素直に聞くことで自信を取り戻し、今なら刀使が相手でも勝てそうな気分となった和樹は、

 

「……はは……ははははは。……これなら、これなら!」

 

和樹は妙な自信を得る。

これで、僕はこの体中に這い回る激しい痛みを乗り越え、刀使と同等の力を手に入れた。そして、その力で刀使を救えるのだと一人で喜んでいた。

 

所詮は偽りの力、胡蝶の夢のようにうたかたの夢だと気付かずに…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可奈美は、ニモと呼ばれているノロを窓越しに見つめていた。

 

「……ねえ、何がそんなに寂しいの?」

 

フリードマンが言うには、ニモという名が付けられたノロは孤独を感じているらしい、……孤独。孤独という言葉が思い浮かんだ可奈美は自分も似たようなものなのだろうと実感していた。

だからなのか、ニモに親近感を感じた可奈美は返事が返ってくることはないことを理解しつつも、ガラス張りの向こうに居るニモに喋り続けていた。

 

「……私って、剣術が大好きなのかな?心の何処かで私、優ちゃんのこと疎ましく思ってる私って本当に何なのかな?」

 

可奈美は同じ孤独を感じているであろうニモに自身の悩みを語っていた。剣術の深い見識と理解を買われ、剣術の指南役を任命された後に苦悩することになったことを思い出していた。

 

『ありがとうございました。』

『可奈美さんって、剣術が好きなんですね。』

 

鎌府の練兵場において、剣術の上達を夢見て、必死に自分に向かって来る刀使の卵達。それを見て、どの程度の強さか冷静に判断し、自分以上の実力者ではなく、高みへと昇らせてくれる者ではないと理解してしまい、何処か心の奥底で冷めた目で彼女達を視る可奈美。

昨日の舞衣との殴り合いも、舞衣に殴られても写シを張ったみたいに痛みを感じなかったうえ、心の何処かで何故そこまでムキになるのか分からず、冷めた目で、冷めた心で舞衣を見る自分。

そんな冷めた目をする自分と一生懸命に剣術の上達と社会の役に立とうとすることを夢見る刀使の卵と舞衣。どちらが刀使として立派なのか?どちらが剣術好きな少女なのか?……自分は御刀を持つべきなのか?

 

(私、何処か冷めた目で、……心の奥底であの子達も、舞衣ちゃんも見下していたんだ。)

 

そして、潜在的孤独に打ちひしがれ、舞衣に怪我させた自分は荒魂のようなものではないかと?心を失った今の自分は人間なのか?と可奈美は思い悩んでいた。

 

そのうえ、可奈美はエレンの両親がたゆまぬ努力によって確立させた荒魂の穢れを清める研究。その研究が成功すれば、刀使の力が不要となり娘のためになると判断し出資する舞衣の父。14年間という月日を犠牲にしてまで研鑽に励んだ剣術は大荒魂に通じず、12歳の結芽の剣術は通じたという事実。……どうあがいても荒魂化が進む優。

それらの事実が、疎ましく妬ましく感じている自分がいることに、可奈美は辟易としていた。

 

 

自分は何て嫌な女で、醜いのだろう――――。

 

 

可奈美が一人、ニモを見つめながら自問自答をしているとき、突如として特別希少金属利用研究所内から警報が鳴り響き、騒然とする。

 

「何事かっ!?」

 

見ると、蝶型の荒魂が群れをなしてこちらに来ていることが伺えた。つまり――――、

 

「何処かに、夜見さんが?」

 

今も行方不明の夜見が此処に襲撃を仕掛けたのだろうか?と、推測するものの舞衣は先ず、父とエレンの両親に危害が及ばないようにしなければならないので、こちらに向かって来る荒魂の大群をどうにか対処しなければとならないと思い、舞衣はエレンと共に荒魂の大群の許へと向かおうとするが、

 

「……エレンちゃん、舞衣ちゃん、二人は此処の研究員を守って、私一人で充分だから。」

 

だが、可奈美の単独でやるという意見にエレンと舞衣は驚いていた。しかし、可奈美は元気無く、俯きながら低い声で言っていることから、可奈美が無理をしていると気付いたエレンは、単独では無理だと判断し、協力を申し出ていた。

 

「カナミン、イッパイ無理していることは分かりマス。……なので「良いからっ!!一人で良いっ!!」」

 

しかし、可奈美はエレンの協力の申し出を大きな声で制止し、気迫の大声を上げながら、蝶型の荒魂の大群へと向かって行った。

可奈美は剣術の型も何も関係無く、ただ子供のように刀を振り回していた。

 

自身が抱えるどうしようもない苛立ちをぶつけるように、ただ我武者羅に振り回していた。

可奈美の流派は柳生新陰流。自ら先を取るより、『相手の動きや考えを読み、それに乗って勝つ。』ことをスタイルとし、将軍家御流儀とされた歴史を持つ剣術流派である。だが、今の可奈美は柳生新陰流の教えを反するかのように、自ら攻撃を仕掛けていた。

可奈美は荒魂の大群に真正面から向かって行ったのである。そして、可奈美は獣のように吠えながら、荒魂に向けて剣を振り回す。自身が抱える悩み、妬み、失望、……軽蔑。

自身がそのような暗い感情が有ることを否定するかのように、その暗い感情を断ち切るかのように剣を荒魂にぶつけて、子供のようにただただ振り回していた。

 

(……この、このぉっ!!!!?)

 

だが、多勢に無勢。可奈美は一瞬の隙を突かれて、写シを一回分失うほどの痛手を受ける。

 

「カナミン!!」「可奈美ちゃん!!」

 

それを見たエレンと舞衣は流石に救援に向かおうとするが、

 

「来ないでっ!!!」

 

可奈美の鬼気迫る表情に両者は臆してしまい、止まってしまう。

可奈美自身、約束を守れず優を苦しめてしまったのだから、例え自分もそれ以上に傷付いたとしても、これは自分に科せられた罰だと思っていたため、エレンと舞衣を必死に戦列に加わらないように大声を張り上げ、止めていた。そして、

 

「私はっ!剣術が好きだよっ!!刀使をやり続けることもっ!!!そうじゃなきゃっ……そうじゃなきゃ私が思う心も嘘になるから、そうしたくないからっ!!」

 

可奈美は叫ぶ、自分は剣術好きな少女であると、刀使であることを失いたくないと。母と優との約束も嘘にしたくなかったからだと声を上げながら、型もなく荒魂を相手に我武者羅に振る。

 

「私よりも強い奴がいたらそれで良いのっ!?私よりも凄いものがあれば……それに挿げ替えれば、本当に救ったことになるのっ!!?」

 

可奈美は誰かに向かって叫ぶ。

母から教わり、自分が14年という時間を費やして研鑽を積んだ剣術が、12歳の結芽の剣術より劣っているのでは?と痛感する可奈美は声を上げる。――――自分以上に強い者が現れたとして、それだけで何もかも救われるものなのか?

母と弟との約束を守るため、親も友人にも笑顔の仮面を被り、嘘を吐き続け、14年間も彷徨い続けた可奈美は血反吐を吐くように叫ぶ。――――自分の剣術以上に凄い物が創られれば、本当に私達は救われるのか?

 

「なのにっ!危険だけという理由だけで、刀使を続けたいことは良くないことなの!?ねえっ!!?」

 

私自身の手で、母から教わった剣術で、母との約束を守りたい。優との約束を守りたい。

母から受け継いだ唯一の物、唯一の繋がりである剣術は無価値ではないということを証明したい。

刀使の仕事を誇りだと言って教えてくれた母を、死ぬまで笑ってくれていた母を否定したくない。

 

「だったら、強い刀使になろうとしている私は、……私の、私達のやり方は間違ってるって言うのっ!!そんな訳ないっ!!そんなこと、認めないっ!!絶対に、認めないっ!!!!」

 

母との約束。優を救う。そのために、強い刀使になると決めた。それだけは嘘にする訳にはいかなかった。だから14年間も笑顔の仮面を被った。隠してきた。我慢してきた。研鑽してきた。精進してきた。前へと進んできた――――。

 

 

「だって私は、私はぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

『……そう、ならおねえちゃんに任せようかな、……お願いね、おねえちゃん。』

 

 

 

 

 

 

 

――――私は、強くて、優しくて、頼れる存在になりたかった……。剣を通じて解かること、お母さんが残してくれた物は、何の意味もないことじゃないから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハァッ…………ハァッ、まだ、…………まだぁっ!!」

 

写シを数回剥がされ、もう写シを張れない状態であっても可奈美はまだ挑もうとしていた。

例え写シが張れなくても、傷付けばいい。――――それはそれで、優ばかり苦痛を受けたことにならないし、母に対する贖罪ともなる。

そう考えた可奈美は、写シを張らずに荒魂の群れへと再度突撃しようとするが、荒魂の群れは急に勢いを無くす。それは、

 

(えっ?……止まれ止まれよ荒魂共!!何を考えているんだあの娘はっ!?)

 

禁忌の力を使って刀使を救うことを決めた和樹が必死に止めたからである。

 

「離してっ!!離してよっ!!!」

 

鬼の形相で、舞衣を責める可奈美。

 

「可奈美ちゃんっ!!何をしているのっ!!」

「マイマイはカナミンをお願いします!!」

 

しかし、逆に舞衣に叱責された可奈美は押し黙ってしまう。その隙にエレンは少し慌てながら、可奈美を舞衣に任せ、エレンが荒魂の群れの前に躍り出る。可奈美の救助の時間を稼ごうとするために。そして、可奈美は舞衣に羽交い絞めされ、建物内へと連れて行かれる。

 

「外人?…………荒魂達、そいつを攻撃しろ。」

 

だが、和樹は先程の写シを張らずに突っ込んできた刀使とは違う、新しい刀使が現れると、その外人と思しき新しく現れた刀使を攻撃目標に変えた。

 

「……勢いが増して来まシタネ。カナミンを後退させて良かったデス。」

 

そのため、エレンと舞衣は荒魂の群れを召喚した者が刀使を殺める意志が無いことには気付かなかった。だが、舞衣は可奈美を建物の中へ避難しているため、エレンは単独でこの荒魂の群れを相手にしなければならなかった。

 

「今なら、ノロがある場所の警備も薄いハズ。」

 

一方、和樹は特別希少金属利用研究所にあるノロを奪取するために動く。

理由は、ソフィアから特別希少金属利用研究所にあるノロを奪取することができれば、政府と刀剣類管理局が民間施設と偽ってノロの研究を行っていることを糾弾することができると言われたからである。しかし、秘密裏にノロを民間施設へと運び、誰にも知られず妙な実験をする刀剣類管理局はやはり信用できないと和樹は断定し、特別希少金属利用研究所に有るニモと呼ばれたノロを奪取しようと決意を新たにする。

 

(……大丈夫、僕は荒魂を操る力とこの御刀が在れば!!)

 

ニモを奪取することができれば、刀剣類管理局は糾弾されて新しくなるはず……。和樹は激痛に苦しみ、思考が定まらないまま、そんな夢物語を夢見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

可奈美は、研究所の通路で俯いたまま止まっていた。

 

「…………。」

「可奈美ちゃん…………。」

 

小さく蹲る可奈美を見て、舞衣は可奈美の名前を呼ぶ。

 

「…………何?」

「可奈美ちゃん。幾ら何でも、あの戦い方は…………。」

 

可奈美と喧嘩したとはいえ、舞衣は流石に自分を鑑みない戦い方をする可奈美を気にして説得しようとしていた。

 

「…………だから?」

「だから、もう少し「今までの戦い方じゃ足りないんだよ。私、才能ないから、人の何倍も努力しなきゃいけないの。だから、私は好きでそうしてるだけ。それの何がいけない訳?」

 

舞衣は可奈美の先程の無茶な戦い方を諌めるべく、

 

「……そんな戦いばかりしていたら、優くんは喜ばないよ……。」

 

舞衣に、『優くんは喜ばないよ……。』という言葉が引き金となって、可奈美は立ち上がる。

 

「……舞衣ちゃんの何が解かるの?何でもかんでも持ってる舞衣ちゃんに何が解かるの?」

 

しかし、可奈美の返ってくる言葉は拒絶。舞衣ちゃんは優のことを何一つ解っていない、優ちゃんは私に“かっこいいおねえちゃん”であることを望んでいるのだ。やはり、何不自由なく過ごせる家族を持つ舞衣に何か解かるのかと。

 

「……私はそんなこと………ただ、可奈美ちゃんのためを思って。」

「私のため?」

 

だが、舞衣は可奈美の身を案じて言っているといって、可奈美を説得するが、舞衣の“可奈美のため”という言葉に反応する。

 

「……私のためって何?剣術以外取り柄の無い子供(ガキ)の何のためになるっていうの?」

 

可奈美は舞衣に壊れた笑みを浮かべながら、舞衣を問い詰める。

 

「優ちゃんは痛みも何もかも耐えて、頑張っているのに、私は……私って、何ができた?舞衣ちゃんは私のこと“強い刀使”とかいうけど、“強い刀使”って何?」

「……可奈美、ちゃん?」

「みんな、みんなみんなみんなみんなみんなみんなっ!!私のこと大荒魂を倒したとか、強い刀使だとか、凄い人扱いされているけどっ!!それは、…それは全部嘘なんだよっ!!大荒魂を倒したのは優ちゃんであって、私じゃないんだよっ!!?」

 

可奈美は舞衣の襟首を掴みながら叫ぶ、今手に入れている地位、名声は全て虚偽であると。

 

「なのに……なのに、みんな見知っているかのように分かった気でいるんだ。けど、そんな子達が強い刀使になることを目指して、剣術の上達を夢見ていたんだ。そんな子達を相手にして、私は、コイツは大した実力が無い。コイツは私を高みに昇らせてくれない。って、心の奥底の何処かでバカにしているんだ。……ねえ、私は、私は本当に舞衣ちゃんのいうようにとても強くて立派な刀使さんなの?……私は、どっちが本物の英雄で、どっちが本当の剣術好きな少女なのか、本当の自分はどうなのか、分からないんだよ。」

 

可奈美は自身の思いの丈を全てぶちまけるかの如く、舞衣にそれを打ち明けていた。

 

「……だから、もう私のことを強い刀使とか、立派な刀使さんだとか言わないで?……腹立つから。」

  

 




 
人からの期待に応えるのは大変。しかも、人から英雄だの好き放題言われればねぇ。
 
 
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