73話を投稿させて頂きます。
人類に幸福をもたらすものはすべて、人類に災難をもたらすものである。
言い換えれば、今日の世界で、兵器にならないものなど何一つない。このことは、われわれの兵器に対する認識の上で、すべての境界を打ち破るよう求めている。
『超限戦』 第一章、いつも先行するのは兵器革命 より~
江仁屋離島、数時間前――――。
「これより、高機動型パワードスーツの連続野外試験を開始する。」
護衛艦の作戦指揮所から、高機動型パワードスーツの試験の開始を宣言し、水陸機動団の自衛隊員10名はCRRC(戦闘強襲偵察用舟艇。最近の上陸訓練に使われるラバー製のボート。)を使って、江仁屋離島へと向かって行った。
表向きは、江仁屋離島の海岸上にて行う、統合運用力の強化と島嶼部の奪還の強化を目的とした訓練内に予定されていた試験項目、高機動型パワードスーツの野外での評価試験となっているが、実際には真希や寿々花のように半ば荒魂化した自衛隊員達を中心に行う人体実験が主であった。
その証拠に、高機動型パワードスーツを身に纏い、試験に参加した自衛隊員達は皆、鎌府の研究データから得たノロのアンプルもどきを強化薬と言われ、服用していた。
……つまり、作戦会議前の西田の懸念通り、防衛省の上層部は鎌府の研究所から得た資料を元にノロのアンプルもどきを使って、水陸機動団の隊員10名を強化し、島嶼部奪還の能力を底上げしようとしていた。
強化した理由は、刀使の力を得るのではなく、皐月 夜見が有していた自身の体内から小型の荒魂を出すという能力を得るために、強化されたのである。
もし、自衛隊員に皐月 夜見と同様の能力を付与させることができたとすれば、放った小型の荒魂を偵察と観測に利用できるうえ、放った荒魂を敵部隊に付け、その荒魂の反応を元に砲撃支援を行うことができれば、こちらの姿を晒すこともなく一方的に敵部隊を殲滅することが可能となるため、自衛隊の防衛力は飛躍的に向上することとなる。
そのうえ、それらの能力は逆上陸作戦の遂行、並びに島嶼部の奪還にも応用が効き、グレーゾーン事態といった新たな脅威に対応が可能となるかもしれないため、今回の江仁屋離島にて行う訓練に参加している水陸機動団の隊員10名に投与されることとなった。
それに、このまま荒魂事件が増加すれば、荒魂化した人間がいずれは現れるであろうことを考慮し、それらへの対処法の構築。及び、ノロをどれほどの量で投与すれば身体能力が強化されるのか?どれほどの量を投与すれば人は荒魂化するのか?といった人体への影響を探るための実験でもあった……。
この人体実験が行えた理由は、体内にあるノロを除去する研究が進んでいること、大荒魂の一部であるタギツヒメを9歳の子供が身に宿すことができたという例があるからであり、もし、失敗して、隊員達の制御が不能となった場合は、市ヶ谷に居る『姫』が人型の荒魂であることを考慮して、人体への暗殺の勘を鈍らせることが無いよう経験を積ませるために荒魂化した自衛隊員達は優に始末してもらう必要があったのだ。
故に、彼は群馬に居ても、ヘリや輸送機やらが用意されており、直ぐにでも江仁屋離島へ向かえたのである。
「各隊員の状況を報せ。」
「総員、問題無し。」
一方、護衛艦の作戦指揮所から、後の参事をまだ知ることができない評価技官はノロのアンプルもどきで強化した隊員達の様子に異常が無いかモニター越しに確認していた部下達に訊き、今のところ問題が無いことに、少しだが安堵していた。
「各隊員に、ノロのアンプルの濃度を変えたことは?」
「……伝えていません。そういうご指示でしたので。」
しかし、手術衣を着ている技術研究主任は何事もないかのように、評価技官にノロのアンプルの濃度を変えたことを水陸機動団の隊員10名に喋っていないかを尋ねていた。その物言いに評価技官は少し憤りを感じていたのか、若干苛立ちながら、そういう指示が技術研究主任から有ったから伝えていないと吐き捨てるように述べていた。
「……結構です。じゃあ、とっとと始めて下さい。」
「はっ。……高機動型パワードスーツ評価試験部隊、状況を開始せよ。」
だが、技術研究主任は興味がないのか、はたまた気にしていないのかは不明だが、始めろと言うだけ言って、モニターに映るノロのアンプルを投与された自衛隊員達を視ていた。そのことに、評価技官は訝しむものの仕事に取り掛かるべきだと気持ちを切り替えて、モニターに注目していた。
こうして、実験は開始される。
「さあて、ここから36時間。」
そう、技術研究主任の言うとおり、今から36時間も続く地獄のような耐久試験が始まるのだ。
そうして、一時間ほどで水陸機動団の隊員の内一名に異変は起こった。急に、地面に倒れ込んだのだ。
「一名、転倒。意識は失っている模様。」
「救護班を出せ。」
「…救護班、転倒した一名の回収に向かえ。」
モニターで水陸機動団の隊員の様子を伺っていた評価技官の部下は、水陸機動団の隊員が突然倒れ、立ち上がろうとしないところから気を失っていると判断。次の指示を仰いでいた。そのため、評価技官は、その倒れた隊員に救護班を送るよう部下に指示していた。
「……はぁー、まだ100分ぐらいだぞ。」
「やはり、あのアンプルはまだ使うべきではなかったんです。人間にはまだ早すぎるんです。」
ノロのアンプルで強化しても、一時間ぐらいしか持たなかったことに、ため息を吐き、愚痴りながら言う技術研究主任。しかし、その一方で評価技官はノロのアンプルもどきを入れた自衛隊員達に何か異変が起こる前に、現在行われている実験を中止すべきだと技術研究主任に進言していた。
「たった一人の落伍者のために、全てを放棄してしまえば我々は今も類人猿のままですよ?それに、この実験の有用性を忘れないで頂きたいですな?」
だが、この技術研究主任はどうやらマッドサイエンティストな部分が有るらしく、評価技官の実験の中止の呼びかけを無視して、続けるように命令していた。。
この実験は、我が国が軍事的な優位を今も保つために行っているのだと含みを持たせながら……。
「……転倒した隊員をそのまま救護し、残りの隊員等で実験を継続する。」
「「「りょ、了解。」」」
技術研究主任と評価技官の言い争いに戸惑いながらも、評価技官の部下達はその指示に従い、残りの隊員達に指示を飛ばしていた。
しかし、その数分後に転倒した自衛隊員の救護に向かった救護班から、緊急通信が送られる。
『緊急報告。緊急報告!我、荒魂化した隊員と遭遇。装備からして、恐らくは実験に志願した隊員であると推察。他の隊員も同様の兆候に有ると見られる。繰り返す。装備からして、恐らくは実験に志願した隊員であると推察。他の隊員も同様の兆候に有ると見られる。』
先ほど、転倒した水陸機動団の隊員が荒魂化した姿を見たとの報告であった。
「救護班は直ぐに離脱するよう指示しろ。それと、演習に問題発生したため、訓練の中止と参加している全隊員の離脱許可を三木一等陸佐に求めろ。」
「ウーム。……できれば荒魂化した隊員を一人ぐらい連れて帰りたいのですが?評価技官殿?」
そのため、評価技官は直ぐに救護班の離脱と江仁屋離島での訓練の中止を三木一等陸佐に求めるよう部下に指示する。
だが、この技術研究主任は、サンプルとして荒魂化した自衛隊員を一人ぐらいは連れて帰って実験したいと宣っていた。
「……気にするな。続けろ!」
しかし、流石の評価技官も技術研究主任の態度に怒ったのか、部下に離脱許可と訓練の中止を求めるよう強く指示していた。
「し、試験評価部隊から本部へ。救護班が実験に志願した自衛隊員が荒魂化したところを目撃した模様。訓練に参加している全隊員の離脱許可と訓練の継続を考慮されたし。至急、至急願います。」
評価技官の部下もそれに応え、本部に訓練の中止と訓練に参加した全隊員の離脱許可を具申していた。
「どうするつもりです?この事態の責任を?」
「……そうは言われましても、私はただの技術研究主任ですので、そう命令されればせざる負えないでしょう?それに、“保険”は掛けられていますよ。」
「……その“保険”とは何です?」
「まあ、証拠隠滅には適任の人材です。」
つまり、この実験が企画された段階で、既に優が荒魂化した自衛隊員達を始末することは決まっていた――――。
目標の自衛隊員達の身体の中から、いや正確に言えば生み出したというべきであろうかと迷う薫。
何故なら、彼女は荒魂を生み出す刀使との対戦経験が有り、今の現象は夜見が行っていたこととそっくりだからである。
「おい、どういうこった?」
「どうとは?」
薫は、三木に何故、自衛隊員が蝶型の荒魂を作ったのか。いや、生み出せたのかを詰問していた。
「似たような奴と戦ったことがあってな。そいつと同じ力だとしか思えねぇんだよ。」
「……それはどのような方でしょうか?」
尚も、はぐらかそうとする三木に薫は苛つきながら答える。
「……そいつと同じで自衛隊員達が荒魂を生み出しているように見えたんだが?どういうこった?」
争い合ったとはいえ、刀剣類管理局所属の刀使である自身の口から、夜見のことを話すべきではないだろうと判断した薫は、夜見の名を伏せながら三木に再度詰問していた。
「……さて、私には何の話か理解できませんね。」
そのため、三木は優が江仁屋離島へと来させた真の理由を薫に何も教えずに済んだ。
しかし、映像を見る限り、流石の優も蝶型の荒魂を出した自衛隊員達から距離を取ろうとしていた。だが、優は銃声の音を聞くやいなや、撃たれるならばと優は蝶型の荒魂の群れの中に入って行った。蝶型の荒魂の群れが銃弾に対しての盾として利用できると判断したからだ。
「優!大丈夫か!?……くそ、俺だったら。」
優が蝶型の荒魂の群れの中に呑まれたと思った薫は、優の無事を祈りながら通信機に叫んでいた。
しかし、優は冷静に、隠世から柄を長くして長巻のように改造された鬼丸国綱を引き出して、それを振り回して蝶型の荒魂を薙ぎ払うと同時にノロに戻し、そのノロを吸収していった。
「〈M1からM5へ、S1が攻撃を受けている。支援攻撃を開始。〉」
『〈了解。〉』
西田は、薫の優を呼ぶ叫びで、優が危機に陥ったと判断。
「西田二佐!今、彼等を動かすのは危険だ。」
荒魂に対して無力に等しいMARSOCのメンバー達を今動かすことは、荒魂化した自衛隊員達に対して姿を晒すことと同じであるとして、三木は西田に指示を却下するように述べる。
「……三木一佐。自分は今回の実験の是非については問いません。ただ、今回のことで危険に晒された事実については御考慮頂きたい。最前線で戦う者は皆、後方に居る者達が“駒”としてではなく、“人間”として扱ってくれている。そう信じられる時、初めて全力を懸けて戦うことができると部下に教えてまいりました。……それに、今動かすことが危険だと承知であるならば、彼等を江仁屋離島に送るべきではなかったはずだ。」
『〈三木一佐、我々は構わない。……この通信は残して、米軍に送っておいてくれ。〉』
しかし、MARSOCのメンバーの一人が無線機越しに英語で三木にそう言うと、ダネルMGLの発煙弾で優の周りに煙幕を発生させていた。
なお、この事件の後にMARSOCのメンバー達に訊いて分かったことだが、ここで動かなければ、何のために海兵隊の誓いを宣誓したのか、あの地獄のような訓練とハートマン軍曹のような教官からのシゴキを乗り越えて、海兵隊の特殊部隊MARSOCの一員となったのか、分からなくなってしまうからだ……。故に、彼等は西田の指示に従い。外交上の問題が遺らないよう三木には、この通信を証拠として、日本は米軍を捨て駒にはしていないと伝えてほしいと述べていた。
急に煙幕が発生したことにパニックしたのか、銃を乱射し、弾切れを起こしてもリロードをせず、トリガーを引き続ける荒魂化した自衛隊員達。
それを見て、チャンスと見て取った優は嗤いながら、荒魂化した自衛隊員達に近付く。
これで、理由が無い頭痛から解放される――――。これで、理由の無い苦痛から解放される――――。
と思いながら……。
しかし、このとき優の顔は荒魂のパーカーのフードを被って、そのうえでスポーツマスクとグレー系のゴーグルで隠していることもあり、優の表情が歪に歪んで、嗤っていることに誰も気付かなかったことは幸いであったかもしれない。
薫と西田等自衛官達に更なる苦痛を与える結果にならなかったのだから…………。
煙幕の中に居て、視界が効かない優は荒魂の気配を頼りに目標の自衛隊員一名に近付くことに成功すると、自衛隊員の胴体を両断していた。
銀製品を自然落下の惰力だけでサックリ斬り落とすという逸話を持つほどの異常な切れ味を持つ鬼丸国綱だから為せることなのだが、そんなこと知りもしない優は、鬼丸国綱を長巻のように改造してくれたことに今日感謝していた。
何故なら、薫の発言から、
『似たような奴と戦ったことがあってな。そいつと同じ力だとしか思えねぇんだよ。』
と言っていたので、推測ではあるが薫は少なくとも荒魂化した自衛隊員達とよく似た存在と戦闘しているにも関わらず、今も生存していることから少なくとも勝利していること。
『優!大丈夫か!?……くそ、俺だったら。』
それと、薫自身が荒魂化した自衛隊員達を相手にしていれば勝てたかのような発言から、少なくとも勝てるという自身があるということ。
それらの薫の発言から、薫は他の刀使とは違う“何か”で蝶型の荒魂の群れを対処できるということである。ならば、薫と他の刀使、薫は姫和と沙耶香のどこが違うのか?と優は間違い探しのように考えてみたのだ。すると、姫和と沙耶香は祢々切丸という自身の身長よりも長い刀身の大太刀を使わないうえ、第五段階の八幡力を習得していないという違いが有るということに気付き、そこから蝶型の荒魂の群れを造る能力を持つ自衛隊員達、大太刀と第五段階の八幡力を連想し、ならば蝶型の荒魂の群れを大太刀か長い刀で振り回したらどうなるか?
……優はそこまで連想すれば、この蝶型の荒魂の群れは長い刀で、第五段階の八幡力の力もしくは大きな力で叩き潰したり、振り回せば数だけ多いことが脅威の蝶型の荒魂の群れを薙ぎ払えることに気付いた。だから、鬼丸国綱を長巻のように改造してくれたことに感謝していたのだった。
それなら、蝶型の荒魂が幾ら居ても物の数ではないし、ノロに戻して吸収すれば良いだけの話しだ。
ならば、蝶型の荒魂以外に考えられうる脅威は、元は水陸機動団所属の自衛隊員達であったことから、自衛隊格闘術や高い射撃能力なのだが、先程胴体を両断しようとしたときに相対していた標的の自衛隊員は攻撃する前に防御態勢に入っていたことと、弾切れになっているにも関わらず銃のトリガーを何度も引いていたところから、身体能力を強化し、特別な能力が付与され、荒魂化する前の記憶を残しているとはいえ、今も呻き声を上げているところから、耐え難い苦痛と荒魂を身体の中に入れるのは強い拒否反応が出てしまうということであり、思考能力は数段落ちるということ。
……そんな心身の状態であれば、倒すのは容易い。むしろ、荒魂を身体に入れなかった方が手強かったかもしれない。
と判断した優は、標的の自衛隊員の中から特に“攻撃する前に防御態勢に入った”者を次のターゲットに定め、容易くその防御態勢の裏を突くように討伐する。
何せ、その防御態勢が側頭部を腕で覆うものであったのだ。確かに、その防御方法はナイフに対する防御の一つとして言われているが、振り下ろしに対して有効であるため、背丈の差がある優では振り下ろし攻撃ができないうえ、何よりも決定的なのは攻撃する前に防御したことである。
ある格闘技経験者が言うには『格闘技などを習いたての者は、攻撃を見切る前に習った防御方法を先にしてしまう。』という傾向があるため、その格闘技経験者にしてみれば、相手がどのように防御するか判るため、対処し易い以外の何物でもないということらしい。
……とはいえ、標的の自衛隊員達は場合によっては、準特殊部隊として扱われることもある水陸機動団出身であるので、そういった格闘戦も訓練という経験を通して理解している者が多い筈である。だが、弾切れをしているにも関わらず、引き金を引き続けるところから見るに、やはり体内にノロを入れた影響は高いということが窺える。
幾ら体内にノロを注入したところで、ノロに対する拒否反応から精神の均衡が取れなくなり、思考や判断力が無くなれば攻撃も防御もままならないのだろう。
そのため、優は“攻撃する前に防御態勢に入った”標的の自衛隊員の胴体を両断して、二人目を討伐していた。
しかし、討伐した自衛隊員の死体から、蝶型の荒魂の群れが這い出て来ていたが、それに意に介することなく、次の自衛隊員を
残り、7匹――――。
優は心の中でそう呟きながら、土煙に紛れ、銃撃されないようにし、荒魂の気配を頼りにもう一人の目標の自衛隊員の上に八幡力で跳躍して、死角となる上から一刀両断して討伐する。
そして、近くに居た目標の自衛隊員もこちらに気付く前に首を刎ねると、戦闘不能にする。
だが、流石に残り5名の自衛隊員達に気付かれ、一斉に銃口がこちらに向こうとしていた。その事態に驚くこともなく、優は手にした鬼丸国綱で首を刎ねた自衛隊員の身体に刺すと、その胴体を持ち上げて、銃弾の盾にしていた。
そして、銃弾の盾にしつつ、自衛隊員達の弾切れを待つ。そうして、弾切れになったところで残りの自衛隊員達のところへ突っ込み、数珠つなぎのようにもう一人の自衛隊員を突き刺していた。そうやって、残りの自衛隊員達に接近すると鬼丸国綱から手を離して、ニッカリ青江で残り4名の自衛隊員を一気に斬り殺していた。
……後は、蝶型の荒魂の群れを討伐するだけだが、優は長巻のように改造した鬼丸国綱を手にして、薙ぎ払うかのように振り回して討伐していた。
こうして、荒魂化した自衛隊員達と蝶型の荒魂の群れは優に一方的に殲滅させられることとなったのだが、その一連の光景を薫はUAVを介して観ていた。
――――自分は何を観させられているのだろう?
――――平和は良い事である。そうある筈である。
だが、今有る平和、そのためにここまでの犠牲は必要なのだろうか?荒魂化した自衛隊員達や優はそれで良いのだろうか?
――――彼等は何のために戦うのだろうか?
――――平和とは?自由とは?個人とは?人生とは?
そんな哲学的な思いを抱かざるおえないほどの醜悪で残虐な今の状況に、薫は目を覆いたかった。救いが欲しかった。
そして、目を背けたかったが、薫は目を覆い、耳を塞げば、それは只の“逃げ”でしかない。
それを理解していたからこそ薫は、目を背けずにUAVを介して観れる荒魂化した自衛隊員達の亡骸の鮮明な姿を観ていた。そうして、薫は吐き気を催しながら、必死に抗っていた。
ある格闘技経験者は、田村装備開発の講師から聞いた話を元にしています。
夜見が出せる小型の荒魂って、言うなれば実弾兵器や妨害電波で撃墜できない小型ドローンみたいな物だな、とか思っていました。そのため、間接標準射撃や偵察といったことに使えるうえ、あとは国外にて活動する際にはサイレント・インベーションに使えそうだなと思いましたね。
あと、次回、汪死す。