【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

81 / 167
  
  
76話を投稿させて頂きます。

今回の甲斐おじさんは特に悪意がありません。
この話しを書いた理由は、刀使の最適な運用方法と“ぼくのかんがえたさいきょうぶたい”が刀剣類管理局といった公的機関に新設されるとどんな弊害が有るのだろうか?というのを個人的にシミュレーションしたかったのと、年の瀬の大災厄に対する装備を与えたかったというのが理由です。


一席さんのこと人気ナンバー1(笑)されることがあるけど、それを武器にしたらどれほどの脅威になることか………。
   
   
  


嚙み合わない者達

    

愛知県、某所――――。

ムカデ型の荒魂が出現したため、防衛省は155mmりゅう弾砲FH70と迫撃砲等による砲撃支援、ドアガン装備型のUH-1Jと軽装甲機動車による5.56mm機関銃と12.7mm機銃の掃射を行い応援の刀使が来るまでの遅滞戦闘と都市部への侵攻の阻止を試みていたためか、砲弾によるクレーター状の塹壕のような穴がそこかしこに有り、そのうえ薬莢が落ちているため、戦場跡のように見えなくもなかった。

 

だが、これら遅滞戦闘といった刀使への援護は自衛隊員等の慣熟訓練と期限切れの弾薬消費も兼ねていた。

 

そんな事情が有ることを知らず、戦場のようになった場所で刀使達はムカデ型の荒魂と対峙していた。

 

「佐久間!」

 

しかし、自衛隊の援護があったとはいえ、刀使の離職者の増大といったことによる人員不足と連日に続く膨大な任務量に彼女達の心身は疲労によって着実に蝕まれていた。

その証拠に、佐久間という名の実力の有る刀使は、ムカデ型の荒魂の頭突きに御刀で辛うじて防ぐものの、その勢いを止めることは叶わず、悲鳴を上げながら後ろにどうっと倒れていた。

 

「くぅっ……」

 

だが、佐久間は御刀をムカデ型の荒魂に向けて、どうにか抵抗の意志を示すものの此処でやられるだろうと覚悟していた。

しかし、佐久間は咄嗟に自衛隊の砲撃によってできた塹壕のような穴の中に隠れることで難を逃れることができた。その佐久間の身を案じた長船の刀使は佐久間が塹壕のような穴の中へ隠れたところを見て、安堵すると気持ちを切り替えて、目の前に居るムカデ型の荒魂に集中していた。

とはいえ、佐久間が所属する部隊を率いている部隊長は残った隊員達の残りの体力は既に多くはなく、これ以上の継戦は不可能であろうことは理解していた。

 

「佐久間はそこで退避!残りの者で討伐するぞっ!!」

 

そう確信はするものの、このムカデ型の荒魂の都市部への侵入を許してしまう訳にはいかないと判断した部隊長の刀使は、撤退を指示することができなかった。

となれば、自分がこの部隊を任せられている部隊長である以上、一番背中を見せる訳にはいかないだろうと判断し、負傷も覚悟のうえで囮となって部下の刀使達にこのムカデ型の荒魂を討ち取って貰い、自身の負傷を代償としてでも、部隊の損耗を減らそうと覚悟するが――――。

 

『何っ!?……分かった、展開中の特祭隊に告ぐ。本部からの即応部隊がヘリで急行中。後は彼等に任せて、直ちに後退せよ。繰り返す、直ちに後退せよ。』

 

突然の通信に驚きながらも、本部から増援が来たという一報に部隊長は、特別祭祀機動隊所属のAW139のヘリを二機視認すると安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

愛知県内に出現したムカデ型の荒魂を討伐完了後、ノロの回収と警護は現地の部隊に任せ、真希は次の特別災害予想区域に移動中のヘリに揺られながら思案していた。

確かに自分は、荒魂被害が関東に集中していることから、現地の刀使が足止めをしている間にS装備刀使部隊を航空機による集中的な機動運用により、頻発する荒魂事件に迅速に対処すると言い、甲斐から必要な物が有れば書類で提出して欲しいと言われ、真希的には何としても新型S装備の導入数を増やす必要が有った。そのため、

 

輸送防護車 

オスプレイ 

パックボット スカウト 

スキャンイーグル

スカイレンジャー        

新型S装備 40着以上

指揮車両(73式中型トラックを改造。)

 

等を要求した。

どう考えても甲斐は無理だと答えるだろうと思い、新型S装備以外の多くのヘリとUGVやUAVといった必要以上の装備が必要と書いて提出したのである。そうして、甲斐に一言無理と言わせてから、ならば新型S装備とオスプレイとスカイレンジャーだけでもと言って導入してもらおうと思っていた。(要は、真希なりにSTTの装備が89式と軽装甲機動車を導入した経緯を少し真似たのであり、輸送防護車や73式中型トラックを改造した指揮車両は当て馬でしかなかった。)

そうすることで、新型S装備とオスプレイやUAVといった航空機だけでも入手し、特別任務部隊を即応近代化させ、緊急事態と荒魂事件への対応の迅速化を狙ったのである。

 

…………なのに、甲斐はその全てを用意してくれたのだ。

 

有り難いことではあるのだが、輸送防護車や専用の指揮車両は今まで特別祭祀機動隊に配備されていた車輛とはワケが違うので、部品と構造の違いからくる慣れない整備の手間とそれを扱う者の再教育の必要性、更に輸送防護車と指揮車両専用の部品の管理等から、整備班の負担は増大することが目に見えていた。それに、新型S装備と航空ヘリの移動に合わせられないといった問題があるため、緊急事態と荒魂事件への対応の迅速化を目的とし、即応近代化を求めていた真希にとってはそれほど必要はなかった。(だが、その真意とは裏腹に、後にこの輸送防護車と指揮車両は活躍することとなるのだが、そんな予想は誰もできなかった。)この輸送防護車と専用の指揮車両を使う場面があるとしたら、思いつく限りでは箱根山戦のような大規模荒魂掃討作戦に使うぐらいしか思い浮かばないうえ、その大規模荒魂掃討作戦も自衛隊の支援を受けられることが確定しており、それを考慮すれば必要かどうか……。

だが、真希が欲しがっているオスプレイも導入したことのない装備であるため、整備班の負担は上がることが懸念されている。だが、オスプレイはその人員輸送能力の高さからくる幅広いスペースを利用して、暫定防御兵器システム(IDWS)等を搭載できることからガンシップ化と早期警戒機のEV-22を検討される程の拡張性の高さ、そして元からそのように設計されていた人員輸送能力を活かし、非戦闘員の避難にも使えるという幅広い運用が可能なのであり、将来性も有り、即応近代化を求める真希としては必須の装備品であると考えていた。

……そのため、真希としては新型S装備を着用した刀使達を航空ヘリ等で送り、迅速に展開するのが理想であるのであって、新型S装備とオスプレイといった新型輸送ヘリが特に重要で、その次にスキャンイーグルやパックボット スカウトといったUAVやUGVが欲しいのであった。そのため、輸送防護車や73式中型トラックを改造して新造した指揮車両は当て馬でしかなかったのである。

 

そんなことを思い出しながら、真希は甲斐に呼ばれ、その際に言われたことを思い出していた。

 

「かなり手間取ったが、どうにか用意できた。」

 

これだけの装備品をかなり手間取ったとだけ言って、涼しげに、且つ遅れて済まないと言う甲斐に、どうやって用意できたのか聞きたかったが、真希は止めておくことにした。

 

「それとだが、新たに来る新型S装備は折神家支給の携帯端末と有線で繋げばスペクトラムファインダーの機能がバイザーに表示されるようになったことで、スペクトラムファインダーの画面を見ながら荒魂を捜索すると片手が塞がれる問題を改善した物だ。先行配備したS装備もこちらに送ってくれれば、直ぐにでも改良できるだろう。……他に必要な物は有るかね?」

(更に複雑な機能が追加されている!!?)

 

要求通りの装備品が贈られ、そのうえ新型S装備の機能も追加されたことに真希は萎縮しながら答えるしかなかった。

 

「い……いえ、とんでもありません。手厚い支援に感謝の言葉しかありません。」

「そうか、それで私もお願いしたいことが有るのだが。」

(……つまり、この手厚い支援はそれを言うための布石?)

 

このとき、真希は甲斐のお願いという言葉にそう思いつつ、嫌な予感しかしなかった。

 

「特別任務部隊は今後、君が総指揮することになった。」

「……はっ?つまり、どういうことで?」

「何、そこまで気を張る必要は無い。君の武勲を考慮すれば妥当な人事だ。…それと、私としてもあまり編制のことは口に出したくはないのだが、鎌倉での騒動を解決した五名と此花 寿々花隊員。それに長船女学園の刀使を数名は抜擢するように。伍箇伝の精鋭中の精鋭の刀使が集まって編制され、新型S装備と無人機といった新型装備を使い、鎌倉で飛び散ったノロの回収と荒魂事件の早期の解決を目指すと公表して方が国民受けは良いだろう。」

 

つまり、鎌倉での騒動で大活躍し、一躍時の人となった可奈美達の名声を利用して、注目を集めようということかと理解した真希。政治的な理由が多分に含まれることは分かった。だが――――、

 

(……長船と鎌府も交えての共同作戦か。………指揮するのが一苦労しそうなことを。)

 

現在長船と鎌府は、横須賀湾にて朱音が鎌府の刀使に撃たれ、それに激昂した舞草の刀使達が乱闘騒ぎを起こし、刀剣類管理局の社会的地位が失墜した事件以降、鎌府の一部の者達は激昂した舞草の刀使達が長船の刀使であったことから長船を嫌悪しており、それに対し長船の一部の者達も朱音を撃った実行犯が鎌府の刀使であったことから嫌悪しており、その者達は互いに反目し合っていた。

そんな状況下の中で伍箇伝に所属する優柔な刀使を一つに集約した部隊を創設すると言われ、その部隊の指揮を任せられるのである。

上記の長船と鎌府の関係性から、他の部隊との連携によって真価を発揮する新型S装備を使う部隊なのに、現状いがみ合っており、真希や寿々花が執り成そうにも、長船側は真希と寿々花のことを元親衛隊ということで紫の部下としてしか見ておらず、鎌府側も長船との協調を断固として拒否しているという状態であった。

そんな状況下にあり、実力が有るとはいえ、実際は他校から寄せ集めただけで信頼関係の構築とは無縁のおよそ成功するとは思えない部隊。

 

「し……しかし、ぼ…(わたし)が指揮しても()いのでしょうか?恥ずかしいことですが、私は元親衛隊ということもあって管理局内には反発がありますし、甲斐陸将補が人事に介入したことがバレれば問題となります。それに私は一介の刀使です。そのような大部隊を指揮するには適切ではないと思われますが?それに、朱音局長代理と話を通しておかないとこの場で直ぐの返答はできかねません。」

 

僕と言いかけたところを私と言い直して、真希はやんわりと断ろうとしていた。

事実、寿々花もそうだが、舞草の重鎮からは反発されている。

 

「そこは心配要らん。邪魔な旧折神派と舞草の連中はこちらで黙らせておいた。それに、朱音局長代理も喜んでこの話を推してくれたから問題は無い。この数日後には、箱根山戦の荒魂掃討作戦の成功と新たな即応部隊の創設に尽力してくれたという功績で、多少無理矢理ではあるが局長直属の特別任務部隊の指揮官となる辞令が下るはずだ。」

 

だが、逃げ場は全て塞がれてしまっていたようであった。

最早、その部隊を指揮し、成功する以外無いかのようであったと、いや、そういうことであると真希は改めて思った。

 

(……もしかして、失敗させて防衛省の意向に従わせようとしているのか?)

 

甲斐は真希が率いることとなった特別任務部隊を失敗させると同時に真希や朱音達を失脚させ、特別任務部隊の失敗によって権威と権力を失った刀剣類管理局を防衛省の意のままに動かそうとしているのではないか?と疑っていた。しかし、

 

(いやぁ、苦労したな。……真希君は喜んでくれただろうか。)

 

当の甲斐はそれだけしか思っていなかった。

何故、彼が今回このような行動を取ったかというと、単純に真希が喜んでくれるだろうと思ったからであった。

 

御前試合の大会二連覇という名声、その後も親衛隊として数多くの荒魂討伐任務をこなし、今回の箱根山における荒魂掃討作戦も他の部隊を指揮しつつ成功させたこと。そして、真希よりも年上のSTTの隊員達が何の疑問も抱かずに真希の指示に従っているところから異性同性を問わず慕われているのが伺え、荒魂掃討作戦以降は他の自衛官からも評価が高い真希が提言することならと甲斐は信頼し、要求通りの装備品を苦労しながらも、なんとか調達したのである。

 

つまり、真希達を職責から遠ざけ、内部工作する意志は甲斐には無かった。

 

どうしてこうなったかと言えば、甲斐は二十年前は江ノ島にて陸自の部隊を率いていたときに荒魂に襲われた際、刀使の部隊に助けられたこともあって刀使に対して悪感情を抱いていなかったことと、真希が提言するS装備刀使による即応性の高い部隊が成功すれば、防衛省が構想する多次元統合防衛力の実証性が証明され、それらを推し進める防衛省も評価されるということとなる。そういった理由も有って甲斐は真希のことを高く評価していたし、必要な装備をどうにか集めていた。

そのため、甲斐は真希のことを御前試合の大会二連覇と親衛隊として数多くの荒魂討伐任務をこなし、年上のSTT隊員等から年下の真希に指示されることに不満を抱いていないことからも、高い実績とカリスマ性が有るということ。

加えて、他の部隊との合同作戦でもある箱根山における荒魂掃討作戦を無事成功させたといった点を鑑みると、真希のことをUAVといった無人機を必要とする先見性を持ち、意見が有れば上役でも堂々と述べる潔さ、そして何よりも他の部隊を難なく指揮することから指揮官としては申し分無いほどの人材であり、このまま一刀使のまま埋もれさせるのは勿体無いとして、甲斐は真希のことをやたらと高く評価していた。

 

しかし、真希自身のそれらのカリスマ性の自己評価は『自分の指示に従っているのは、自分が指揮官であるから。』という低い評価である。そのうえ、彼は朴念仁なため、寿々花始め他の刀使達から好意を得ており、そのような感情を向けられていることに全く気付いていない。

 

つまり、真希に好感を抱いている甲斐のことを気付かなかった朴念仁の真希が引き起こした一幕であったのだ。

そうとは露知らずに真希は甲斐を疑っていたが、

 

(……いや、そんなことをする理由も無いし、味方を疑うのは良くないだろう。全く僕らしくもない。甲斐陸将補、申し訳ありません。)

 

……それに、冷静に考えれば甲斐も特別任務部隊の即応部隊構想の話しに乗っているのだから、失敗すれば甲斐にも責任を問われることになると理解しつつ、心の中で改めて謝罪する真希。

とはいえ、優が今現在どのように扱われているかが判明したら、その謝罪を取り消す程に嫌悪の目を甲斐に向けることとなるだろうが……。

 

「…ま、まさに我が世の春ですね。……分かりました。謹んでお引き受け致します。」

 

だが、多くの支援をして貰い、ここまでお膳立てをしてくれた相手の願いを無下にすることなど出来ない真希は、若干引きつった笑いをしながら特別任務部隊の指揮官の任を引き受ける旨を甲斐に伝えていた。

 

(……どうして?どうしてこうなったぁ!?)

 

しかし、真希の胸中は、先程の発言とは真逆で狼狽していた。

 

何故なら、新型S装備と各種無人兵器を多く配備してもらい即応部隊を創設するはずが、出身校がバラバラで連携も難しく、協調性も無いに等しいであろう部隊を指揮することが決まり、それをこなすのは困難であろうことが予測できるからである。

もしも自分が任された特別任務部隊に何か不手際が有ろうものなら、朱音と甲斐の責任は問われることとなり、新型S装備と無人機の配備等で掛かった費用が無駄金になったと批判され、ただでさえ刀剣類管理局への低い国民の信用は更に低下してしまうことになる。

そのうえ、昨今の情勢を鑑みると、通常兵器で刀使の支援を行うSTT隊員等に対テロ訓練と救命止血法やSABACA(分かり易く言うと、自分(この場合はSTT隊員)で手当て、仲間同士で手当て、民間人で助けようという三つの決まりを守ろうということ。)といった戦傷医療に対する訓練を施していることから、社会の安寧化を目指していた。何故ならば、昨今問題視されているグレーゾーン事態やハイブリッド戦争は常に現地の武装勢力、所謂テロリストや民兵、犯罪集団を巻き込んでから行動を起こしているのであり、政府や刀剣類管理局といった公的機関が国民の支持を無くしてしまえば、それら現地の武装勢力と化した暴徒や犯罪集団といったものに手を貸す輩が増え、更に社会が混乱し、荒魂討伐どころではなくなる可能性も有るのだ。となれば、公的機関である刀剣類管理局としても国民からの支持は必要なのである。

 

………そのため、このような状況下で特別任務部隊を指揮するということは新たに配備された装備への深い理解と運用法と整備体制の確立、所属する刀使の出身校の比率を均一するといった配慮が必要となる。そうしなければ、特定の伍箇伝への優遇反対といったことが騒がれたり、ストレスが原因で昨今話題となった小学校の教諭が騒がせた職場イジメとかが発生する(悲しいことに職場の雰囲気が悪くなれば、イジメといった問題が発生するのである。)可能性が有るうえ、各出身校の刀使達が様々な思惑を抱きながら、戦線に赴くことが必然的に多くなる部隊に配属され、度重なる戦闘のストレスで非行に走ってしまえば、これまた世間を騒がす社会問題となってしまうため、職場改善といったことは必須項目であり、当面の問題になるだろうということが予想されていた。

………後は、長船の刀使がこちらの指示に従ってくれるかどうかである。

 

「真希くん。古波蔵 エレンと益子 薫の両隊員と長船の刀使を加えるため、伍箇伝の刀使を集めた複雑な編制で大変だろうが頑張ってくれ。何か要りようがあれば、私も協力しよう。」

 

甲斐は期待している真希が居るせいなのか、少し顔を綻ばせながらそう答えていたが、他人の好意に超鈍感な真希は全く気付いていなかった。

先程の甲斐の発言『……古波蔵 エレンと益子 薫の両隊員と長船の刀使を加えるため、複雑な編制で大変だろうが頑張ってくれ。』と言われたことに何か気付いたことがあり、反応したからである。

 

「……分かりました。ご厚意感謝致します。それでは、私はこれにて。」

 

真希は、これ以上何かを言われる前にサッサと退室することにした。

そして、甲斐の発言に気付いた真希は、長船の刀使はエレンか薫に一任させれば良いかと考えて、コキ使おうとしていた。つまり、……ブラック上司と薫に言われそうなことを行おうとしていたのであった。

 

「武運を祈る。」

 

そんな真希を見て、甲斐は一言そう添えて、後ろ姿を見守るように見送っていた。

 

 

 

 

 

こうして、現在真希は新型S装備を装着した刀使をヘリやUAVといった各種支援装備(とは言っても、オスプレイといった新型装備は慣熟訓練中であり、現在は戦力化されるまでは荒魂討伐任務等で使用できないが。)を利用した特別任務部隊の実証性を確立すべく、そして一日でも早く国民が安心して暮らせるように今日もヘリに揺られながら、次の脅威度が高い荒魂観測地域へと向かい、明日も明後日も戦場で、月月火水木金金の精神で真希達は働いていた。

 

そのため、真希は出世するものの、自分の蒔いた種が原因で、それに苦慮することになるのであった。

  

   

  




   
   
今話で書かれていた……89式と軽装甲機動車を導入した経緯を少し真似たというのは、9話の冒頭に書かれていることです。
あと、指揮車両の外見はFCCSみたいな物だと思って頂ければ、良いと思います。

SABACAは、

SA=Self-Aid  負傷者自身による救護
BA=Buddy-Aid  戦闘員相互による救護
CA=Civilian-Aid  戦闘員による市民への救護提供

という三つの理念のことです。(出典先:「イラストでまなぶ! 戦闘外傷救護(増補改訂版)」)
今回、出典先にさせてもらった「イラストでまなぶ! 戦闘外傷救護(増補改訂版)」はSABACA以外にも豊富過ぎるうえ、極めて実践的な救命法がイラストと文章によって、読むのが苦手な人でも分かり易く解説してくれているので、個人的に一見する価値は十二分に有ると思う素晴らしい書籍であると実感しております。


次回、タキリヒメさん登場。
   
   
   

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。