【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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84話を投稿させて頂きます。

寿々花さんの家の"代々折神家に仕えていた"という元ネタはとじともの寿々花さんが初入隊時の台詞からです。
   
   


過去の遺り香

   

   

   

この日、市ヶ谷へ向かう朱音の護衛任務として来た可奈美と姫和、朱音と紫の希望によって呼ばれた優と、この市ヶ谷に匿われている紫、そして今回の会談内容を真希へ報告するために朱音に呼ばれた寿々花等が集まった防衛省の市ヶ谷にある一室には、冷たい空気と重い雰囲気が支配していた。

 

何故なら、優が紫のことを"目の前に居るおばさん"と言ったからである。

 

二十年前の大災厄、通称相模湾岸大災厄時には大荒魂を討伐する特務隊の隊長を務めており、これを鎮圧し平定した最強の刀使として今日に至るまで有名であり、そのうえ刀剣類管理局局長として管理局開発現場の技術レベルを急激に向上させ、刀使の戦力を増強させた最大の功労者として、今も刀使達から畏敬の念を送られている折神 紫を優は"おばさん"と(はばか)りなく呼ぶという、姫和ですら行わないであろう剛速球ばりの火の玉ストレートを投げていたのである。

その結果、ピシリと冷たい空気と重苦しい静寂がこの場を支配し、視線を感じた可奈美と姫和は視線を感じた方へと視線を向けると、寿々花が居た。

 

(………衛藤さん、十条さん?もう少し言葉をどうにかできませんこと?)

 

そして寿々花は笑顔で、可奈美と姫和に視線でこう訴えていた。

保護者が暴走を止めろと。

 

((本当にすいません!代わりに謝りますので許して下さい!!))

 

寿々花の視線をそう感じた可奈美と姫和は胃がキリキリする思いをしながら、優には見えない位置で必死に頭を下げて謝罪の意志を紫と寿々花に対して表していた。

 

「………何度も検査し、姉の身体からは荒魂は検知されませんでしたので荒魂ではありませんよ。それに、肉体年齢は17歳で止まったままですので、そう言ってはいけませんよ?」

「そうなんだ……。」

 

優は反省しているかの様に見え、可奈美と姫和はもうこれで紫のことを"おばさん"呼ばわりしないだろうと内心ホッとすると同時に胃痛が和らいでいった。

 

「でも、おばさんをおばさんてどうして言ってはいけないの?」

 

しかし、優は直ぐに疑問に思ったことを口にして尋ねていた。

何故、優は紫のことを名前で呼ばず"おばさん"と呼んでいるかと言うと、紫に会う少し前に、

 

『優よ!気を付けろ!!そいつは我より胸がデカイっていうだけで身勝手で頭の栄養が胸に行ってるからアホでエラソーで我より胸が大きいからド変態で……えーっとえっと、とにかく性格が捻じくれている嫌な女じゃぞぅ!?おばさんと呼んどけ!!』

 

タギツヒメが紫のことをデタラメに教え、“おばさん”呼びで充分だと言っていたからである。

しかし、優はタギツヒメの言っていることが理解できなかったのだが、タギツヒメが紫のことを敵視していることは分かったため、姫和とタギツヒメの敵である紫の名前を覚えずに“二本”か“おばさん”呼びで言うことを決めていた。

なお、タギツヒメが紫のことをデタラメに優に教えた理由は、紫の身体のある部分が自分より大きいことに嫉妬し、優がそれにゆーわく(タギツヒメ談)されないようにするため、優が紫のことを嫌うように誘導しただけという実にどうでもいい様な理由である。

 

「えっ、えっとぉ!紫様はどうやって克服したんですかっ!?」

 

そのため、可奈美は必死で優の言ったことを誤魔化すため、大声で話の進行を進めるというかなり強引なやり方で有耶無耶にしようとしていた。

 

「……克服したのではない。捨てられたのだ。荒魂に。」

「捨てられた……?」

 

紫の意外な答えに驚く可奈美。

捨てられたとはどういうことであろうかと意味を問うていた。

 

「タギツヒメが自らの意思で局長を排斥したのではないかと。」

「あの夜……ですか。」

 

朱音の補足に可奈美は四ヶ月前の折神家で起きた大荒魂との争いにて起きた三本の紅い奔流のことを思い出していた。

それと同時に、可奈美が視たあの現象は大荒魂が紫を排斥したということなのだろうと理解していた。

 

「……やっぱり、おばさん捨てられただけじゃん。」

 

紫と朱音の話しを聞いた優は、再び剛速球張りの火の玉ストレートを投げていた。しかも、言った内容が内容なだけに色々とセンシティブな内容と捉えられかねないことを言ってしまったために可奈美と姫和は再び胃がキリキリする思いをすることになる。

 

(………十条さん?衛藤さん?『言葉』ですわ?)

((ホントのホンットーにすみませんっ!!))

 

可奈美と姫和は土下座をするかの如く、先程よりも必死で深く頭を下げて謝罪していた。

その姿を見た寿々花は流石に不憫だと思ったのか、紫に慈悲を乞うことにした。

 

「紫様。」

「構わん。」

 

寿々花の申し出に紫は手を挙げて制して、怒っていないことを示していた。……むしろ、

 

(……このハッキリと物申すところが美奈都そっくりだな。)

 

紫は何故か美奈都のことを思い出し、懐かしんでいた。

 

「むしろ、衛藤の母……私の旧友であった美奈都そっくりの物言いだと思って懐かしんでいた。そういったところは美奈都そっくりだな。」

「はっ、はい。……紫様、ありがとうございます。」

 

それを聞き、内心ホッとする寿々花。そして、

 

(……衛藤さん、貴女のお母様はどんな方だったんですの!?)

 

寿々花は優をベースに美奈都を想像したため、新たな疑問を抱くのであった。

何故なら、紫の優みたいにハッキリと物を言うところが美奈都に似ているという意味でかなり端折りながら言ったことを、寿々花は美奈都が優みたいな性格の持ち主であると受け取ってしまったからである。

 

そのため、寿々花の頭の中では美奈都のことを二十年前当時の紫相手に104勝32敗という勝敗数を得る程の凄腕の刀使であるが、優みたいな性格であることから少々難のある人物像が出来上がってしまったのである。

……こうして、知らない所で美奈都は名誉を傷付けられていたのであった。

 

「あの夜、大荒魂と同化していた私はお前達に討たれた。諸共滅びる寸前だったが、奴はこの肉体を捨て、隠世へと必死で逃れて行った。荒魂を巻き散らしたのは追跡されないようにするためだ。……まあ、その子の言う通り、私は捨てられた存在だ。」

 

紫は自身に取り憑いていた大荒魂が優に怯えていたという部分を抜いて、形振り構わず逃げて行ったと答え、優の言う通り大荒魂に捨てられた存在であると自嘲気味に答えていた。

 

「だが、そうも言っていられない事態となった。」

「例の三女神のことでしょうか?」

「かつてタギツヒメだったものが3つに分裂した。朱音から聞いているとは思うが、三体とも自身の考えを持って自由に行動しているという極めて危険な状況だ。」

 

しかし、紫はそうも言ってられない事態となったと説明していた。

 

「……というかおば「そういえば私も聞きたいことがあるんですが貴女は此処で何を!?というか、何故此処に居るんです!?」」

 

また優が紫のことをおばさんと呼びそうになったのを察した姫和は、優の声を遮るように大きな声で紫は何故此処に匿われているのかと理由を尋ねていた。

そして、姫和も肝を冷やし、テンパっているのか紫のことをお前ではなく、貴女と呼んでいた。

 

「そうだな、……私は二十年前の真実を隠匿するためにノーチラス号に匿われる予定だったが、同盟国の米国、いやカンパニーといった一部の勢力が私の命を狙っているというかなり確度の高い情報が有り、此処に匿われることになった。」

 

紫が此処に居る理由の一つ。それは、米国のCIAから命を狙われているということであった。

 

「それは……間違い無いんですか?」

 

余りにもスケールが大きい話しを聞かされ、可奈美は思わず紫にそれは真実なのかと訊いてしまった。

 

「間違い無いだろう。……朱音、CIAの長官から舞草の協力を打診されたんだろう?」

「ええ、それで潜水艦ノーチラス号とトーマスさん達といった傭兵が派遣されました。」

「そのトーマスはな、私を暗殺する任も帯びていた。……そもそも二十年前の相模湾岸大災厄が起きた原因がノロをアメリカ本国に送ろうと輸送用のタンカーに満載した結果起きてしまった人災であったことは聞いているな?」

 

紫にそう言われ、可奈美と姫和は頷いていた。

 

「私はそういった事実を知っているため、米国にとってみれば厄介な事実を知っている者ということになる。それ故に、私の排除と刀剣類管理局を米国寄りの組織にするため、舞草を援助していたのだ。」

 

今の紫は、二十年前の相模湾岸大災厄の真実という米国の暗い歴史の一部分を知っている重要人物でもある。

それ故に、紫の排除と刀剣類管理局を米国寄りの組織とするためにCIAは舞草を援助していたと答えていた。

 

「だからこそ、今も米国籍の潜水艦に居ることは危険だと判断され、市ヶ谷に匿われている。……それと、米国に対するカードを政府が保持しておきたいのと同時にタキリヒメの警護と監視も兼ねて此処に匿われている。」

「……つまり、紫様は今現在は最も安全な場所に匿われている。ということですよね?」

 

紫は今も米国籍である潜水艦内に居ると何時何時にどういった危害が加えられるか分からないのと、日本政府が米国政府に対する政治上のカードを保持する必要が有ること、それにタキリヒメを監視し警護する者が必要だったことから自衛隊の市ヶ谷に匿われていて、此処なら安全であることを可奈美達に説明していた。

しかし、可奈美は暗に此処に居ても安全なのかと紫に訊いていた。

 

「恐らくは……米国に対するカードとして有効な間は生かしてはくれるだろう。」

 

可奈美にそう訊かれた紫は、顔を伏せながら答えていた。

 

「……だとしましたら、彼の少年を此処に呼んで大丈夫だったのでしょうか?紫様。」

 

優はCIAから雇われているトーマスと共に行動していることが多いため、此処に呼んで大丈夫だったのか?と尋ねる寿々花。

 

「大丈夫だ。……衛藤はこの話しを聞いて、私が此処に居ることを内緒にしてくれるか?」

「あっ……はい。」

「そうか、内緒にしてくれるか。なら、君も内緒にしてくれるな?」

 

寿々花にそう聞かれた紫は、可奈美に紫が市ヶ谷に居ることを内密にすると言わせてから、優に可奈美と一緒に内緒にしてくれるかどうか尋ねていた。

 

「……分かった。」

「これで、問題ない。」

 

そうすることによって、優の口を噤ませることができたと言う紫。

 

「それに、防衛省の市ヶ谷に何か仕掛けることは先ず無いだろう。下手をすれば同盟国との間に国際問題が生ずることとなる。それは米国政府としても避けたいはずだ。……それと、私としてもこの子と君達にどうしても話さなければならないことがあったからな。」

 

そして、紫としても優と可奈美達に会って話しておかねばならないことがあると言っていた。

 

「……紫様、それは分かれた所謂三女神に関することですか?」

「そうだ。当面の危険度で高いのはタキリヒメではあるが、隠世へと逃れた本体とは別にもう一柱のイチキシマヒメの所在が不明なのが気掛かりだ。」

 

寿々花は自分達が此処へ呼ばれた理由がタキリヒメやイチキシマヒメ等を総称した三女神のことに関する話しなのかと尋ねられ、その通りだと答える紫。

 

「確かにイチキシマヒメも大荒魂から分かれた一柱ですが、それほどまでに危惧せねばならないのですか?」

「ああ、そうだ。……荒魂で人体を強化する技術はイチキシマヒメがもたらせたものだ。故にイチキシマヒメが何処に囚われているか、何処に協力するかによって状況が一変する。」

 

紫はノロのアンプルの情報が外部に漏れることによって、荒魂で強化された人間が増えてしまうことを危惧していた。

もし、外部に漏れ第三勢力(例を挙げれば、国際的なテロ組織やテロ支援国家といったところである。)にノロのアンプルの情報が知れ渡れば、どのような扱われ方をするかは分からないのだ。

最悪、優のように攫われ行く当ての無い少年兵達が投与され、兵士として有用であると判断されれば、そういった子供達が活躍する世の中となる可能性が有るのだ。故にイチキシマヒメの確保は重要な事であった。

 

「当面の危険度で言えばタキリヒメが一番危険ではあるが、本質的な危険度で高いのはイチキシマヒメである以上、ノロのアンプルの情報を握っている奴を放置したままにはしておけん。……此花は引き続き皐月夜見とイチキシマヒメの捜索も頼む。あと、この会談内容を獅童にも伝えておいてくれ。」

「承知致しました。それを聞けば紫様が今もご無事であることをお喜びになると思います。」

 

そのため、紫は寿々花に夜見とイチキシマヒメの捜索を命じていた。

理由は寿々花が京都の名家の令嬢であり、その名家は代々折神家に仕えていたという経緯があるために信用ができ、そのうえ登校用のハリアーを用意できたり、高級車を何度も替えたりするぐらいに経済的余裕の有る裕福な家でもあるので縁故の有る私立探偵等を数名ほどスパイ活動に従事させるだけで、表向き刀剣類管理局本部とは関係の無い人間が綾小路武芸学舎といった危険な所へ密かに内偵することが可能であったからこそ、紫は寿々花に命じていた。

 

「……頼む。それと十条と衛藤、少し良いか?」

「あ……はいっ!!」

「!…………。」

 

紫に呼ばれた可奈美と姫和はビクっと反応しながら、可奈美は返事をし、姫和は無言で頷くだけであった。

 

「あと、優は後で私と話すことがあるから少し待っていてくれ。」

「………。」

 

そして紫は、可奈美と姫和との会話が終わったら、次は優と話すから待ってほしいと優に伝えると、優は姫和と同じく無言で頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫が姫和と可奈美、そして自身を含む三人だけで話したいことがあると言って朱音と優、そして寿々花を退室させていた。

 

「……座れ。」

 

そして紫は、可奈美と姫和に座って話そうと言っていた。

 

「……今も「あの、紫様っ!!」……何だ?」

 

紫は、姫和と可奈美に母親のことについて自身が行ったことを許せないかどうか聞こうとしたが、その前に可奈美の大きな声によって遮られてしまったため、紫は可奈美から発言させることにした。すると、

 

「あ、あの、その、先程の優ちゃんの言っていたことは何と言いますか、その、まだ9歳の子供ですのでまだ物の分別が付いていないというか何というかそうですね……え~~っと。」

「その、何と……言いますか子供の言う事ですから余り気にしないで……良いと思います。」

 

可奈美はしどろもどろになりながら、姫和も言いにくそうに何とか間を空けつつも敬語を使って、両者共に優の"おばさん"呼びに対する弁明を必死で行っていた。

 

「「……その、すいませんでしたぁ!!後でちゃんと言っておきますんで許してくださいっ!!!」」

 

しかし、可奈美と姫和の二人は、結局優の紫に対する暴言を許して欲しいと頭を必死に下げて願い出ていた。

 

「……ああ、うん、まあ何だ、それは構わない。……子供の言うことだ。」

 

紫は、先ずは自分がこの二人の母について謝罪を行なおうとしていた矢先に、その謝罪しようとしていた両名が先に謝罪してきたという事態に可笑しな事が起きている様に見え、何とも言えない気持ちにさせられていた。

 

「本当ですかっ!?」

 

可奈美は顔を破顔させながら、聞き返していた。

 

「ありがとう……ありがとう。」

 

そして、姫和は頭を下げつつ、何度も感謝の言葉を述べていた。

 

「さて、私も本題に入らせてもらうが……今も私が許せないか?」

 

紫はどうにかいつもの調子に戻ると、可奈美と姫和に母の事で許せないかと尋ねていた。

 

「えっ……いや、その、紫様は私とこうして話すのはこれが初めてですよね?」

「……急に何の話しだ?」

 

可奈美と姫和は、優の紫に対する暴言をどうやって許してもらおうかということで頭が一杯だったのと、そんな両者の状態に気付かぬまま紫は母のことで許せないかどうかと付けずに聞かなかったことにより、姫和と可奈美の両名は何の話しか分からなかった。

 

「いや……うん、まあ、そうだな、私も本題を抜いて話し、伝わり辛い言い方で話したのが悪かったな。………篝や美奈都のことだ。」

「あっ………。」

 

紫に、亡き母篝のことで今も許せないかどうか聞かれた姫和は動揺していた。

理由は、一度優のために復讐を捨てた自分が今更どうこう言う資格は無いだろうという考えが過ったからである。そのため、

 

「………今は、そんなことを言っている状況ではないので。」

 

と姫和は言って、答えをはぐらかしていた。

 

「……そうか、だが十条、衛藤、済まなかった。」

「紫様……。」

「……。」

 

紫の謝意に可奈美は目を見開いて反応していた。

そして、何も言えない姫和は黙って俯き、その紫の行動に心がひび割れたかの様に痛むばかりであった。

 

「二十年前、大災厄のあの日特務隊の隊長を務めた私はお前達の母親と共に最後の戦いに臨んだ。私の役目は現世にしがみつく大荒魂を隠世へ押し込み、穴を塞ぐことだった。そうすれば大荒魂は篝と共に幽世の底へ落ち散り散りになって消えていた。だが、大荒魂は消滅を免れる術を模索した。二人を助ける代わりに私と同化することを提案してきたのだ。そのとき友人達を失いたくなかった私は何千人もの犠牲者を出した荒魂を受け入れ……そして後は、お前達の知っている通りだ。美奈都も篝も救えず、一人だけおめおめと死に損なったままだ。」

 

そうして、紫は語る。

二十年前のことを、自分が何をして、何をしでかしたか、そして何を遺していったかを………。

心を許した友人を失うことを恐れた紫は、何千人もの犠牲者を出した荒魂を受け入れたのだと手を強く握り締めながら答えていた。

 

「でも……うちのお母さんは死ぬまで幸せそうでしたよ。死ぬまでってなんか変な言い方ですけど、剣術だっていっぱい教えてくれましたし、刀使の仕事を誇りに思うって。」

「可奈美の……お母さんが……?」

 

しかし、可奈美は美奈都を救えなかったと言う紫に美奈都は死ぬまで幸せそうだったと返答していた。

 

「……そうか。」

 

危険な状況から生き残ったことにより生ずるPTSDの一種サバイバーズ・ギルトに陥っていたことに紫は気付いていなかったが、可奈美の“美奈都が死ぬまで幸せそうだった”という何の意図も無いただ自分が感じたことを言葉にして伝え、その言葉が伝わった紫は幾許か救われたような気がした。

 

……ありがとう。

 

そのため、紫は小さき声で可奈美に感謝の言葉を述べていた。

 

その後は、篝と美奈都は刀使の力を半ば失い内側から大荒魂を封じたものの、本来篝が背負うはずだった半分を美奈都が受け持った影響で篝と美奈都の二人は現世と隠世という二つの世界に、同時に存在する稀な存在となり、その際に持っていた御刀千鳥と小烏丸にも同じことが起こったと紫は話していた。

紫の話しを聞いた可奈美と姫和の二人は、時々ある共鳴はそれが理由だったのかと驚くと同時に妙に納得してしまった。

 

……しかし、

 

(……やはり、私は臆病だ。)

 

紫は最後まで言えなかったことを思い出し、自身のことを臆病者だと評していた。

先程、朱音が言っていた通り、紫の肉体年齢は大荒魂の影響により17歳で止まったままである。だとすれば、大荒魂であるタギツヒメに取り憑かれている優も例外ではなく取り憑かれた歳で止まったままである。つまり、タギツヒメを取り除かない限り優はずっとその歳のままであり、子を成せないのだと。素質や宿命を連綿と受け継くことが許されない存在であることを伝えられなかった。

そのことに気付かぬままの方が良いのか、伝えるべきなのかを迷った紫は、結局は最後まで可奈美に言えなかったのであった。

 

 

 

 

 

……ピーター・パンは大人になれない。

ネバーランドに移り住んだ者は年を取らなくなり、移り住んだ時の姿のままで過ごすことになるのだから。

   

   

   




   
   
あと、私立探偵をスパイに仕立てるというのは、マンガ白竜の大企業に雇われた私立探偵が実は殺し屋という設定の話しをモデルにしております。


そして、今の優の状況は、
政府からは殺し屋のように扱われ、外国勢力からはエネルギー源として見られ、そのうえ9歳かそれ以下の年齢のままなので、子を成すことが出来ません。なので、姫和がアニメ本編の24話で言っていた「ノロは繋がる輪から外れた孤独な存在だ。」が真実であればそういうことになります。
  
   
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