8話目、投稿させて頂きます。
おや、舞衣ちゃんと可奈美ちゃんのようすが……?
1話で優くんが言っていた「うん…その、可奈ねーちゃんは一人にすると、心配だから……。」というのはこういうことらしいです。
そして、優くん生き残れることができるか?
舞衣は誤って優を斬ってしまい、カウンセリングを数回受けたあと、何事も無くいつも通りに荒魂を斬っていた。
しかし、出撃回数と撃破数が異様に伸びていたため、誤った報告ではないかと疑い江麻は調査したが、全て事実であるということを確認。直ぐさま再度カウンセリングを受けることになった。
「調子はどうだい、舞衣さん。ぐっすり眠れているかい?」
舞衣のカウンセリングを担当する精神科医はそう舞衣に聞いてきた。
「先生、最近はぐっすり眠れてますし、ご飯も美味しく食べれてますよ?いったい何を聞きたいんです?」
「最近君が仕事に過剰なまでに没頭していると聞いてね、トラウマを体験した多くの人はそうなる事が多いからちょっとした確認。」
舞衣はやはりかと思っていた。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を疑われているのだ。
「先生、単純な理由ですよ。私は親友の大切な弟を間違えて斬ってしまった。その事実は変わりませんけど、あの子は刀使が正義の味方だから大好きなんですよ?それなのに、刀使の一人である私がいつまでも悔やんだまま立ち止まっていたら、あの子と孫六兼元に怒られますよ。だから、自分の出来る限りの事をやっていたらそのように見えただけです。何も問題ありません。」
と舞衣は笑顔で答える。それを見た精神科医は「大変だね、君も。」と曖昧に答えるしかなかった。
「ですから、診断書には好きに書いて貰っても構いません。休む事も必要なのは解っていますから。」
精神科医は舞衣の顔を見るが変わったところはなかった。
それを聞いた後、精神科医は数回質問をして、何処か精神に異常が無いか調べて見るが、問題無さそうなので部屋に退室するよう伝えた。そして、退室した舞衣は思案していた。
(今日の先生は何だかしつこかったなあ、でも、なんとかいけるかな?荒魂を斬ることまで取り上げられたら、可奈美ちゃんと並び立てることができなくなるから、……それは止めて欲しいなぁ。)
舞衣はカウンセリングを数回受け、御刀を持てるようになったあと、試しに藁束を斬ってみたのである。すると、自分の剣が鋭くなっているような気がしたのだ。
そして、舞衣は人一人斬れば剣術の腕が一段上がるということを思い出し、荒魂を斬ってみたのである。荒魂を斬った感触が、優を斬った感触と似ていたため、舞衣は出撃回数を増やし、荒魂を斬っていった。最早、彼女にとって、荒魂は動く藁束のようなものとなっていた。
そして、彼女は気付かない、精神科医がしつこくなく、いつも通りだったということに……。
その後、舞衣の診断書には。――――
柳瀬 舞衣は可奈美、姫和の両名の追跡の途中、誤って一般人を斬ってしまい、心的外傷を負い御刀を持つことが億劫となっていたが、なんとか持つことが可能になるほど回復。その後の経過観察の結果、心的外傷体験は彼女の戦闘能力、判断力に悪い影響を与えていないと判断する。
むしろ、その体験が彼女を強くし、使命感を強く与えていると考えられる。前にも増して彼女は集中力、判断力が高まっており、そのうえ冷静である。
診断の結果、柳瀬 舞衣は身体的・精神的には全く問題が見受けられない。
診断結果;戦線復帰可能
と書かれていた。
雨の中、エレンと薫は今後のことを話し合っていた。
「薫はどう思いマシタ?あの三人?」
「能力的には問題ないし、ショックしたふりしたら状況を理解し撤退したのも悪くねぇ……けどなぁ、あのクソガキも連れて行って来いってどういう料簡だよ、あのおば…上司は。」
エレンの問いに薫は疑問と自らの評価を伝える。
「あのクソガキどう考えても狂犬だろ、何か枷付けないと危ねえぞ。」
薫の言葉にねねも「ねー!」と言って、抗議しているようだった。ただし、薫の本音はこれから起こるであろう戦いにあの子まで巻き込むのはどうだろうと思っていた。
「……まあ、分からなくも無いですけどネェ。」
エレンは前の戦闘を思い出していた。あの小さい子供…名前は優であったろうか、相棒の薫よりも背が小さく歳も9歳の筈なのに樹木を持ち上げて投げることをしたうえ、ねねを何の躊躇いも無く危害を加えたことになにか言いようの無い寒気を感じていた。今までもねねのことを荒魂呼ばわりしていた人は居たが、あそこまで危害を加える“人間”は初めて見たのだから。
「……とりあえずはまぁ、あの二人と合流しまして、トーマスおじさんと一緒に帰りマショ。」
「……そうだな、それが良い。そのあとは、休暇を取ろう。」
エレンの発言に薫は賛同し、可奈美達を迎えに行く。あのクソガキは気に入らないし、巻き込みたくないが、上司命令なので黙って従うことにした。
一方、廃屋に隠れていた可奈美達は、雨が上がったので外に出ていた。
「雨も止んだし、行こう優ちゃん、姫和ちゃん。」
「ああ。」
姫和はこのあと、どうすれば良いのか考えていた。あのままこの二人を帰しても、無事平穏という訳にはならないかも知れない。鎌府の刀使と長船の刀使が戦闘を報告し、紫が優の正体に少なからず気付いている可能性が高く、帰ってしまえば手紙に書かれていた折神家の人体実験に使われるかも知れないと考えていたのだ。
――――自分は一体どうすれば良いのだろう。
姫和は母の仇を討つために今まで努力してきた、荒魂は荒魂だと思っていた、人斬り近いことをやる覚悟を持っていた。…だが、それを成すためにはあの子を……優を殺さなければならない。そして、巻き込んでしまった、……もう帰れないところまで。
その事実を姫和が追い詰めていた。そこまでの覚悟が足りなかったと言えばそこまでだろう。だが、子供殺しの外道に堕ちることになるかも知れないなど、誰が想像できる、誰が危惧する。
姫和は可奈美の方をチラリと見る。廃屋の中に居た時に「でも、姫和ちゃんが優ちゃんを殺したら、……どうしよっか?……」と聞かれ、姫和は「……まだ、荒魂じゃない。スペクトラム計に反応はない。……」と答えるしかなかった。なら、スペクトラム計に反応があれば私は殺すのか?……あの子を?何故?可奈美が言っていたように荒魂だから?化け物だから?
(…………違う、違う!!あの子は荒魂なんかじゃない。私の母を立派な刀使だと言ってくれた。私のことを醜い復習鬼ではなく、正義の味方と言ってくれた。チョコミントのことを不味いとは言わなかった。……そんな、そんな子を殺す事が刀使としての務めなのか?それなら、どっちが化け物なんだ!!母さん……父さん、教えてよ。私は正しいことをしているの?)
姫和は心の整理が一つもつかなかった。紫を倒せば、全て終わると思っていた。けど、違っていた、進んだ先にはあの子が居た。
『荒魂化した人はもはや人ではない、稀に記憶を残し、言葉を話す個体もいるが荒魂は荒魂だ。』
ふと、自分の言葉を思い出す。じゃあ、他人を化け物扱いするお前は何なんだ?
『刀使が御刀で斬って祓う、それしか救う手段はない。』
そのために、子供を殺すのが、良くしてくれた人を苦しめるのが素晴らしい手段なんだな?
『私達刀使は人々に代わり祖先の業を背負い、鎮め続ける巫女だ。だが、これから私がやろうとしている事は荒魂退治かもしれないが、限りなく人斬りに近い。』
自分で良い事を言っているつもりか?大層な覚悟だ。なら、今近くに居る自分を慕ってくれる恩人の弟を冷たい刃で赤い海に沈めてやればいい。いや、鎮めてやればいいんじゃないか?祖先の業を背負う立派な巫女さん?
姫和はかつての自分の決意が、冷たい刃となって自分に返って来ているようだった。そのことが姫和を重く圧し掛かっていた。
「や~~っと、見つけマシタァ。……こんなところで、仲良く雨宿りしていたのデスネ。」
「さっきの!」
その声に振り向くと、つい先ほど森の中で戦っていた長船の二人だった。それに可奈美達は気付くと身構えるが……。
「オメデトウゴザイマ~~ス。」
「お前らを舞草に歓迎しまーす。」
突然、そのようなことを言われ、キョトンとする可奈美と姫和。
「「…………えっ?…………」」
しかし、姫和は少し色々あったので少しイラつきながら答える。
「ふざけるな!これ以上邪魔をするのなら!!」
「ダイジョーブ、そんなに急がなくても石廊崎は逃げまセンよ。」
「あの、エレンさんと薫ちゃんでしたよね?合格ってどういう意味ですか?それに、どうしてそこへ向かっていると……。」
可奈美は疑問を口にする。それに薫は同い年であると反論する。
「待て!俺はエレンとタメだぞ!!」
「あっ、私はエレンちゃんが良いデース!」
「うん、エレンちゃん、薫ちゃん。」
それを聞いた薫はうな垂れる。そして、エレンの半分くらい身長があれば良いのになぁと。
「畜生、確定しちまった。」
そのため、うな垂れている薫。しかし、
「可奈ねーちゃん、アレは味方ってこと?」
優は可奈美にそう聞き、可奈美は「そうだよ。」と答える。
「エレンおねーちゃんと薫おねーちゃんとは仲良くしないといけないとね。」
薫は優の言葉に素早く反応し、一気に近付く。
「いっ、……今のもう一回。」
「薫おねーちゃん。」
そう言われた薫は優の手を強く握る。そして、ただ一言。
「ありがとう……。ありがとう。」
薫はこの場で一人だけ、年上扱いしてくれることに涙目で少し喜び、抱擁をし、感動していた。…姫和は睨んでいたが。
そんな薫に代わって、エレンは可奈美の疑問に答える。
「合格とは文字通りの意味ネー。お二人は舞草のテストに合格しまシタ。私達舞草は折神 紫率いる変革派に抗い御刀と刀使の在るべき姿を取り戻すべく行動する組織デス。ですので、三人とも舞草へ歓迎しマス。」
「折神家に抵抗する組織……それじゃあ姫和ちゃんと目的は一緒ってこと?」
「YES!その通りデース。」
「やったね、姫和ちゃん味方が増えるよ。」
可奈美は喜ぶが、姫和は……。
「“舞草”か……Finemanに聞き覚えは?」
「あのアバターは趣味が悪いから止めろと言ってマスね。」
姫和は、エレンという娘はFinemanという幹部と親しい仲であることは解ったが、情報を聞き出すため、色々聞いてみる。
「なるほど、お前達は試験官というわけか。……そんな人をいいように試すような連中を誰が信用する?」
「それは……痛いところを言われましたネェ。」
「文句はあのオバ…上司に言え。」
エレンは困ったような仕草をし、薫は自分達の上役に言えと反論する。
「それに、穢れである荒魂を刀使が使役するだと?それでは折神 紫と同じじゃないか!」
姫和はねねには荒魂呼ばわりし、優は荒魂扱いしないという矛盾には気付かず、このような発言をしていた。
「ノープロブレムです、見てください。」
エレンはそう言って、スペクトラムファインダーを見せ反応が無いことを可奈美達に見せる。
「何?……スペクトラム計が反応しない?……私のもだと?」
「ねねは確かに荒魂デスが、同時に祢々切丸の代々継承者と常に共に在る益子家の守護獣でもありマス。」
「オレは守られた覚えは無いが……。」
薫に辛辣なことを言われ、『ええっ!?』っという顔をしながら薫を見るねね。それを聞いた姫和は……。
(そうか……荒魂が人を守るか……。)
そうだ、スペクトラム計に反応が無ければ何も問題ない、荒魂じゃない。一つの例、ねねを見てそう思い、安堵する姫和だったが。
「未だ荒魂や隠世については不明点も多く解明のためにも、ねねは特殊なケースとして上から認められているんデス。」
「そうか、だいたい解った。では“三人とも歓迎する。”とはどういうことだ?刀使は二人しか居ないぞ?」
それを聞いた姫和は“三人とも舞草へ歓迎する。”というエレンの発言を思い出し、何故“三人”なのだろうとふと思った、9歳の子供をどうするのかと。もしかして、何かの実験に利用されるだけではないかと疑っていた。
「ああ、俺も知らんが上司が連れて行けと言うんだよ。」
姫和はこのとき確信した。こいつらには何一つ知らせず、命令した上司が優を研究室か何処かへ連れて行こうとしているだろうと思った姫和は御刀に手をかけるが――――。
「見て、姫和ちゃん。この子とっても可愛いよ!」
しかし、姫和は呆気に取られる。ねねというのが、可奈美の胸元に抱きついていたのだ。それに気付き優の方を見た姫和は。
「ねっ、ねっ!可奈ねーちゃん、可奈ねーちゃん!僕にも触らせて、触らせて!」
可奈美の回りをグルグル回る無邪気な子供が居るのを知った。しかし、ねねは尻尾を踏まれたことと、耳を引っ張られたことを思い出し『ヒイィ……。』という表情をしながら、更に可奈美の胸元にうずくまる。
「……嫌われちゃった。」
しょんぼりとする優を見たねねは悪いと思ったのか、優に近付く。
「!……良いの?」
優にそう言われ、ねねは「ネネー。」と返事する。肯定と捉えた優はねねを優しく撫でていた。そのときのねねは正に至福の顔をし、極楽という気持ちを出していた。
「凄いデスね、ねねはビッグなバストを持つ女性が大好きなのデスけど……。」
「将来胸がでかくなる女の可能性を嗅ぎ分ける程の巨乳好きが?……まさか、ソッチ方面に行く訳ねぇしな。即堕ち2コマみてぇーだな。」
そして、更に撫でて貰う為、優の胸元に飛びつき安らいでいた。ふと、姫和の胸を見るが、見込みがないと思ったのかそっぽ向く。
「……あとで覚えてろ。」
意図を理解した姫和は怒りを表す。そして――――。
「あっ!…可奈ねーちゃん、姫和おねーちゃん荒魂に囲まれてる。」
「「!?」」
可奈美と姫和は身構えるが、薫とエレンは何を言っているか解らなかった。しかし、このあとのねねの反応で直ぐさま反応する。
「ネネーーー!!」
その声と同時にねねは優から離れ、可奈美達は大群の小型の荒魂に襲われるが、全員散開し難を逃れる。エレンは皆とはぐれてしまうが、冷静に事態を対処していた。
「はぁ、みんなと離れ離れになりましたネー。……妙に統制の取れた荒魂、スペクトラムファインダーに反応なし、折神家から支給された最新式なのデスが……。ということは真っ黒ということデショウか、せっかくS装備を持ち出して誘い込んだ訳デスから、何か決定的な証拠さえあれば良いのですけど。」
エレンは少し思案し、何か閃いたかのように手をポンと叩く。
「これで行きマショウ!」
それだけ言うと、エレンは夜の森を駆けていった。
一方、可奈美達は、
「追って来ない?……どういうことだ?」
「わかんない。けど、私達ここまで追い立てられたような……?」
「エレンちゃん達、大丈夫かな?」
「さあ、これは奴等の差し金かも知れんしな。」
優を攫うために……とは言わずに。
「やっぱり、信用できない?だったら、利用しちゃえば良いと思うよ。」
「え?」
「ほら、姫和ちゃんの目的に必要ならそうするべきだと思うし、それに私もそのつもりで連れて来たんでしょ?」
そして、可奈美自身も優の安寧のために、姫和を利用している。紫が元凶の可能性が高いため。
(本当に……能天気なふりして、油断ならないと言うか。)
姫和は可奈美にそんな感想を抱いていた。とっくに利用されていることに気付かず。
「でも、私や優ちゃんのこと少しは……。」
しかし、可奈美はこの場に優が居ないことに気付く。そして、
「優ちゃんが居ない……また、私、一人…………お母さん……そんなの……嫌……。」
可奈美は思い出していた……。母が死んで、一人で泣いていたときのことを。
(もう……一人は嫌だ…………。)
小刻みに震える可奈美を見た姫和は声を懸けようとするが、
「探そう!!優ちゃんを!!今、直ぐに!!!」
可奈美は姫和の肩を強く掴み、鬼気迫る表情と大きな声でそう言われた姫和は、
「わっ、……分かった。」
としか答えられなかった。姫和は可奈美に対して、何処か危ういところが有るように感じていた。
優は小型の荒魂に連れ去られた先には、親衛隊の真希と寿々花が居た。
「流石は夜見、良い仕事だ。」
「無事、あの子を“人質”にして衛藤 可奈美を投降させる。もしくは“脅迫”して十条 姫和を捕らえさせる。…ここまでは順調ですわね。」
「寿々花、言葉が悪いぞ。“人質”じゃない、“保護”だ。それに、“脅迫”じゃない、“協力”して貰うんだ。」
寿々花と真希は、夜見の能力で可奈美達を分断、優を孤立させ、真希と寿々花が優を捕らえた後、可奈美に姫和を捕らえさせるという作戦であった。
「……誰?」
優は親衛隊の二人と対峙していたが、至ってマイペースであった。
「親衛隊第二席、此花 寿々花ですわ。まあ、諦めて一緒に「ああ、二本のおまけの人達か。」……。」
紫のことを二本と言い、親衛隊のことをおまけと言ってきたことに、寿々花は明らかに怒気を放っていたが、真希に抑えられる。
「寿々花、子供の言うことだ気にするな。……案ずることはない、君を安全な場所に――――。」
「可奈ねーちゃんに知らない人達に付いて行っちゃダメって言われてるからムリ。」
真希は冷静に付いて来るように言うが、拒否される。
「真希さん、ああいうワガママな子は折檻してでも連れて行かないと。」
「……そうだな、少し痛いが我慢してくれ。」
真希と寿々花は峰打ちで気絶させてから連れて行こうと思考を切り替えた。
※性懲りもなく続けるおまけ『 利用 』
可奈美「やっぱり私も一瞬で三段階の迅移に達したいなぁ……。」
姫和「だからダメだ。…我が家の秘技だと何度も言ってるだろう。」
可奈美「じゃあ、私が十条 可奈美になれば良いんだよね。……気に入った、家に来て弟を《ハートマン軍曹》して良いよ。」
姫和(ド……ドクズゥ!!)