85話を投稿させて頂きます。
……膝に矢を受けていたら遅れてしまいました。申し訳ない。
見た目は大人!(二十年間も生きているので。)
頭脳は子供!(アニメ本編23話の沙耶香の台詞から。)
その名は、大荒魂タギツヒメっ!!
……すいません。ちょっと書いてみたかっただけです。
「……それで、どうなのだ?」
「どうなのだとは、どうゆうことなのだ?」
可奈美と姫和の両名との会話を終えた紫は、タギツヒメ(正確には、身体は優で、意識がタギツヒメだが。)と最近の近況について話していた。
「……どうしてそんなに不機嫌なんだ?」
「ふきげんじゃないですー。」
紫は何が不満なのか尋ねるが、当のタギツヒメは明らかに不機嫌そうにしているのに、不機嫌ではないと小学生の様な受け答えをしていた。
その理由は……、
(あ"あ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"ぁ"っ!!デカイッ!!SUGOIDEKAI!!!ああ神様ぁっ、何故我だけ絶壁なのじゃあ。)
ある身体の一部が自分よりも大きいことを羨み、妬み、嫉み、悔やんでいたからである。
そうして、タギツヒメはそんなことで自分を創った、いや生んだ神を恨んでいたのであった。
(チクショーメ!!我より胸のデカイ奴は献血ポスターのキャラみたいに居なくなればいいのにぃっ!!)
そんな不穏なことを考えつつ、紫をとにかく敵視するタギツヒメ。
「……まあ、あれだ。彼はそんなことは興味無いと思うぞ。」
そして、タギツヒメとの会話で、タギツヒメは自分自身に自信が無いことに紫は気付いたので、アドバイスすることにした。
「ハァー……。お主という奴はアレか?アレなのか?天然という奴なのか?持つ者がそんなこと言ったところで何にも思わんどころか見下しておる様に感じるぞ我は。それに優は我が生涯の伴侶だということを皆分かっておるのか?なあなあなあ分かっておるのか?お主は分かるよな?何故我が胸の大きい奴を嫌うのは生涯の伴侶たる優はまだ子供であるからそんな目に毒の様な物を見せる訳にはいかんではないか?青少年の健全な育成のために努力しておるのに紫は局長なのだからその無駄にデカイ脂肪の固まりは搾って小さくする努力をすべきだと我は思うがなっ!!それと金持ちが『お金が無くても幸せ』と言うのと、貧乏人が『お金が無くても幸せ』と言うのでは全く違うのと同様に……我より、いや我と比べると少し、ほんのすこーーーーし大きいお主に言われても嬉しくないし煽られている気がするのだがっ!?コンチクショーーーーッ!!!」
「あ、ああ……。」
タギツヒメの身体の一部に対する早口による熱弁に紫は圧されたため、曖昧な返事をするしかなかった。
(……とはいえ、彼女がこうも変わるとは……彼のお陰だろうか。)
しかし、紫は自身に取り憑いた大荒魂の一柱であるタギツヒメがこんな子になるとは思わなかったので、感慨深かった。
何故なら、二十年前の大荒魂に取り憑かれていた紫は大荒魂と対話出来ていたが、人間への憎悪が強かった。しかし、紫が篝と美奈都のことが気になり、遠くから様子を眺めて安否を確認しに行ったのだが、結果的に優と大荒魂を引き合わせることとなってしまう。………そのときの大荒魂は初めて人間を愛してしまったことに衝撃を受けたのだろう。
――――人々を脅かす怪異である自分達が、神である自分達がただの子供を愛してしまったという解決し難い自己矛盾。
――――人は命のバトンを次の世代に引き継げるが、自分達荒魂にはそれが出来ないという事実に打ちひしがれる悲しさ。
――――自分達荒魂は時間を恐れないが、自分が愛してしまった者は寿命という時間の束縛が有るということ。
それらの情報が一気に大荒魂へと、そして紫の中へと一斉に流れたのだ。
そのときの倫理矛盾は凄まじく、二十年前に大災厄を引き起こした強力な大荒魂が自己を保てない程であったと紫は記憶し、強烈な印象を抱かせる程であった。その倫理矛盾を解決するために紫の中にはイチキシマヒメとタキリヒメ、そして本体が残り、倫理矛盾を起こす部分はタギツヒメとして分離したのだろうと推測していた。
「……そんなに不安なら、自分の思いの丈をぶつけたら良いではないか。」
そのため、紫はタギツヒメに素直に自分の気持ちを打ち明ければ良いだけではないかと言われる。
そう言われたタギツヒメは、紫の方へ顔を向けると、思いの丈をぶつけるのであった。
「フフ……フフフフフフ、お前はそう言うのかっ!なら、話すが我が初めて生まれたというよりも、この現世に現れたときは人間に対する恨みつらみはあったが、此処が何処なのか分からなかったから、どうしたらええんか分からんかったんやぞぅっ!!?というよりも生まれて直ぐ、何か鬼の形相で刀持ってこっちに寄って来る奴等が集団で来たんやから最初『何やこいつらニンゲンコワッ。』とか思ってしまうわっ!!そんなこんなで二十年前の我等は『ニンゲンコワッ。』という印象しか抱かんかった訳やから対話とか無理やんとか思ってしまったのじゃぞっ!!そんな状況になったら、上手くお喋りできる訳なかろうがっ!!」
「……ああ、うん。そうなのか。」
タギツヒメの話を聞き、圧に押されながらも紫はタギツヒメはタギツヒメなりに苦悩していたことがあったのだということを理解していた。
……随所で、スラングと大阪弁が混じっているのは気になったが。
「そんな、そんな人とのお喋りが苦手な我に、それをやれと?……お主は我が玉砕する姿をそんなに見たいのかっ!!?今まで一つも人とまともに喋ったことがない我は『下等な人間風情。』とか、『我は神だぞ。』とか言って頑張って虚勢張ってた陰キャの我がっ、簡単に出来る訳なかろうがぁっ!!!ゆぅかあぁりいぃぃぃっ!!!……うっ、ゲェッホ!ゲホッ!!」
タギツヒメはテーブルを叩くという台パン行為をしながら、紫の名前を大声で叫んでいた。しかし、大きな声で叫んだことによって咽てしまう。
今日も自身の威厳やら何やらを自分の手で吹き飛ばしてしまうタギツヒメであった。
「リア充で、胸が大きくて、人と上手に喋れて、胸が大きくて、最強の刀使とか言われて持て囃されているリア充のお主には、どうせ、どーーうせ、分からんことやろっ!!」
タギツヒメは紫に対して、劣等感と嫉妬心丸出しの感情が有ると答え。
「どうせ、どーーせその無駄にデカイ脂肪の固まりで優を
「いや、私はそういった気持ちを抱いていないぞ。」
「はあっ!? お前、優に魅力が無いとでも言うのかぁっ!!?」
そのうえ、タギツヒメは紫がその無駄に大きい身体の一部を使って、優を誑かそうとしているのではないのか?とあらぬ疑いを掛けて、問い詰めて来たので、紫は正直にその気持ちを抱いていないと答えるのだが、何故かタギツヒメは好意を抱いている人を貶された様に感じ、紫を責めていた。
「……ああ、うん。私も言い方が悪かった。……確かに、彼は幼げさと可愛らしさがあり、充分魅力的ではあるが私の好みの男性には含まれないから安心してくれ。」
「はぁ?……何故じゃ、お前ホモか?ホモなんか?オイッ!!?」
肯定しても否定しても、タギツヒメがキレ散らかすという行動に、流石の紫も頭を抱えて疲れそうになるが、あることに気付く。
タギツヒメが紫に対して劣等感を抱いており、タギツヒメが優に対して好意を抱いている。
そして、紫と優が対話できる状況と、このタギツヒメの言動から予測できることから、気付いたのだ。
「……なるほどな。自分に自信が持てないから、優に私のことを毛嫌いさせる様なことを言わせたのか。」
「ファッ!?!?い、いや我、何の話か分っからんのぅ〜〜?」
タギツヒメは紫に対して“おばさん”呼びする様にと優を唆し、自分と優が仲良くならない様に仕組んでいたのだろうと紫は理解していた。それを指摘すると、タギツヒメは絵に描いた様な声を出して驚き、誰がどう見ても動揺しているのは明らかであったため、自白している様な物であったのだが、タギツヒメはそれに気が付いていなかった。
「……お前は直ぐ顔に出るから、分かり易いな。」
「うああああああん!!バレたあぁぁぁぁ!!」
紫が既に自白しているような物であると指摘すると、タギツヒメは台パン行為をしながら、泣いて悔しがっていた。
「グスン、ヒック……だって、だって紫は陰キャの我よりも胸大きいし、人と一杯お喋りして魅力有るし、そんなんだからリア充だし、ならそうすることでしか勝てないから、おばさん呼びさせて優に近付く女は排除したかっただけなのに、それすら看過されたら我に残ってる魅力的な物ってなんじゃっ!?」
タギツヒメが優に紫の事を“おばさん”呼びにしろと唆した理由は、早い話が自分よりも魅力的に見える紫と優の仲が良くなると紫に取られる様な気がしたからであり、仲良くならない様に“おばさん”呼びをさせていたとタギツヒメは自供していた。
「ああ、うん。……そうか。」
………まるで、子供みたいな行動をする大荒魂の一部であるタギツヒメになんとも言えない気持ちになる紫。
「……いや、まあ。だが、君はフリードマン博士から知能が高いと言われたことがあるだろう?なら、それを駆使して、今からでも学べば良いではないか?」
だが紫は、そんなタギツヒメを段々と見ていられなかったのか、タギツヒメに助言をしていた。
「ハッ!!……そういえば、そう言われておったな。確か、荒魂はノロと結合すればするほど"知性"を獲得し、高度な知能を有するとか人類を超えた知能を持つとか言っておったのう。」
そして、このタギツヒメは“神”だとか、“〜を超える”とかいう厨ニ的なフレーズが大好きな精神年齢、もとい二十年間も生きているが心はそんなお年頃であり、表情をコロコロと変えるぐらい素直に喜んでいたのであった。
……紫は、そんなタギツヒメを見て、コイツが一番安全そうだと理解した。
「お主、良い奴じゃのう。そう言えば我は人より遥かに超える知能が備わっていたんじゃっ!!それさえ駆使すれば、優をメロメロにさせることはできるのう。」
だが、このタギツヒメが高い知能を有していると自分で言っているところを見ると、遥かにアホッぽく見えたのだが、それは心の内に秘めておくことにしようと紫はこのときに思った。
「そんじゃ、我は忙しいから、優と交代するからよろしくな。またな〜。」
「……ああ、またな。」
紫はどっと疲れたと思いながら、優の意識がタギツヒメから優に代わるところを見守っていた。……しかし、
「……で、ヒメちゃんと何話してたの?」
紫は、優に今も敵視されていたままであったことに変わりないのとを忘れていた。
(ゆぅかあぁりいぃぃぃっ!!今思い出したが、コミュニケーション能力は知能ではなく、対話した経験によって磨かれるものではないかっ!!?騙しおったなあぁぁぁぁっ!!!)
そして、その数日後、タギツヒメはコミュニケーション能力は対話した経験に基づく物であることに気付き、嘆いていたことは紫は知る由もないことであった。
同時刻、総理官邸内――――。
三木一等陸佐から内密の話しがあると言われた総理は、三木を内密に首相官邸に呼んだのだが、もたらされた情報に途惑うばかりであった。
「……それは、確かなことなのかね?」
野党の支援を受けた者が市長となっている市にて、銃器類の密輸が行われており、その密輸に市長と刀剣類管理局の綾小路が深く関わっている(正確に言えば、ソフィア達が中心となって学長達には知らせず、勝手に行っているのだが、そこまで三木は知らされていなかった。)ということ。
そして、それら銃器は活動家等の手に既に渡っており、暴動といったことに使われることは容易に想像ができ、国が分裂しているという状況を演出し、国内外からの非難の声を大きくさせ、内閣の支持率を下げさせるという工作を行おうとしていること。
そのうえ、それら不法入国者等を扇動しているのは、軍籍を隠し、表向きは学生として登録され、大学や共同研究所に潜伏している中国といった敵対勢力の工作員である可能性が高いということ。
どれか、一つでも公になれば、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題以降現政府への信頼が無い国内状況においては大騒動が起きる話であり、国内の混乱は熾烈を極める物ばかりであった。そのうえ、その混乱によって在留外国人と本土の人間の対立は更に深まることとなるかもしれないと思った総理は頭を悩まし、ただただ迷い子の様に困惑するしかなかった。
「……はっ。これらの情報は陸幕が調べ上げた物であり、DIA(アメリカ国防情報局)からも同様の懸念が有るとして有益な情報をもたらされたことにより、かなり確度の高い情報であると見ております。」
三木は、表情を崩すことなくただ淡々と事実のみを述べるかのように語っていた。
そのため、三木の話しに説得力が増したのか、こういった事態の対処に弱い総理は現実に暴動が起きるのではと思い、危機感と焦燥感を募らせていくだけであった。
「総理、事実であれ虚偽であれ、我々は国民の安全と繁栄を約束している以上、これを見過ごすことはできません。」
「………しかし、なあ。」
それと同時に、これ以上刀剣類管理局と防衛省の権限を拡大させるべきなのか、そして自分が初の自衛隊の治安出動を命じ、流血沙汰を起こした総理として、歴史にその名を遺すことになるかもしれないということに恐れを感じており、これらの迷いが総理自身の決断を鈍らせていた。
事実、三木の話しを聞いても、未だに決断出来ないままであった。
「……自衛隊の治安出動ではなく、警察のみで事態の収拾は出来ないのかね?」
総理は警察力だけで、どうにか事態を平和的に解決できないか、三木に相談していた。
「総理、それは難しいでしょう。対戦車ミサイルや銃火器等によって武装された集団を逮捕を前提とした我が国の警察力だけで抑え込むのは非常に困難。万一、機動隊員等が重傷を負えば、国民に恐怖を与える結果となり、その恐怖が呼び水となって新たな未曾有の大混乱がこの国を襲うこととなります。そのうえ、そのような事態に発展した場合の予測される人的損害は推定10万人以上となり、被害総額は三千億円。そんな最中で昨今増加している荒魂事件も同時に発生すれば、刀剣類管理局の活動が制限されている今の状態では予測される以上の被害を我が国が被る事となるのは必定です。そうなれば国内の経済事情は悪化、この惨憺たる結果を招いた政府に国内からはその無為無策ぶりを非難する声が上がり、諸外国からも激しい叱責を受けることとなるでしょう。」
総理に尋ねられた三木は、この暴動によって起こる予測した推定被害と人的被害を淡々と答えていた。
「総理、このまま手をこまねいていては私が先程申し上げた話は現実に取って代わり、無辜の民がその危害を受けることとなってしまいます。どうか、自衛隊の治安出動と刀剣類管理局に課せられた条例を緩和させる特措法をご決断下さい。今、現在起こりつつあるこの未曾有の国難から国民を守ることができるのは総理の英断だけです!!」
そして三木は声を大きくし、感情を込めて総理を説得していた。この未曾有の国難に対処すべく、自衛隊の治安出動と刀剣類管理局に課せられた条例を緩和させることができるのは、総理だけであり、無辜の民を守ることができるのは総理の署名だけであると。
三木にそう説得された総理は、国民が未曾有の国難にさらされて、被害が出るならと思い、自衛隊の治安出動の命令書と刀剣類管理局に課せられた条例を緩和させる特措法にサインをしていた。
市ヶ谷、防衛省――――。
「三木一等陸佐が総理の説得に成功したそうだ。」
「……そうか。」
甲斐と中谷は自衛隊の治安出動の命令書と特措法の制定が確実となったことに喜んでいた。
この決定により、今まで刀剣類管理局の協力には特別災害予想区域に入るため、“自主派遣”や“災害派遣”の名目で出動していた自衛隊が、この暴動を利用した“治安出動”の命令を足掛かりとして、防衛省の任務の内容と権限は飛躍的に広がるからである。
「……刀剣類管理局には苦労を掛けるだろうな。」
中谷は、甲斐と共にここまで仕組んでいたにも関わらず、素知らぬ振りをしながら甲斐に尋ねていた。
「まあな、刀剣類管理局と自衛隊の共同作戦。新型S装備のデータリンクシステムの戦闘データの提供。群馬山中と江仁屋離島における非合法活動。そして今回の自衛隊の治安出動。……どれも、迷惑を掛けてしまったしな。」
甲斐もそれに同調していた。
そして、銃器の密輸は警察等に情報を提示し、動かせば事前に差し止めることは可能であったのだが、自衛隊の治安出動を総理に決定させるべく、放置していたことは三木に隠していた。
「しかし、総理の説得に三木を送ったのは正解だったな。」
「ああ、我々だと警戒するだけに終わりそうだからな。」
そして、総理を説得するのに三木を送った理由は若く、鉄面皮ではあるが熱意の有る者を送ったというのが真相であり、それが功を奏したことにほくそ笑んでいた。
甲斐と中谷が、三木と同じことを言っても、疑念を抱かれるからである。
「全てはお前さんの想定通りという訳か。……しかし、これが日本の夜明けとなれば良いのだがな。」
「まだ気は抜けんよ。」
中谷は、甲斐の想定通りに事態が動いていることに喜ぶものの、甲斐は一抹の不安を感じながら事態を視ていた。
『速報です。今日未明、刀剣類管理局に課せられた荒魂関連ではない事件に特祭隊を介入させてはならないという条約を緩和させる特措法等が強行採決される模様です。』
そして、これを機に事態は大きく動き、予想外の方向へと向かって行くのであった。
銃器密輸は日本に押収された銃器類とアメリカがモデルです。
次回、神様に、
「荒魂関連ではない事件に特祭隊を介入させてはならないという条例が施行されます。一般に藤原美奈都の名はこの事件で知られています。」
「その条例も折神紫体制時代に、徐々に特措法などで緩く緩和されていきました。」
という つぶやき もとい啓示を授かりましたので、書こうかどうか迷っていた物が書けそうです。