【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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88話を投稿させて頂きます。

みんなみんな、ひるもよるも、いのちがつきるまで、おどりちらかす。
はだのいろとか、すでにしんでるひととかかんけいなく、だれもがおどりはじめる。
ちきゅうというぶたいのうえで、すきかってなステップをきざみながらおどりくるう。
そして、きょうもちきゅうは、じしんがおきたようにゆれる。
   
   
   


組み合わせられた社交ダンス

   

北京、中華人民共和国国務院――――。

 

荒魂関連ではない事件に特祭隊を介入させてはならないという条約を緩和させる特措法が制定されるという情報を得た公安部長は、早速その妨害工作に入ろうとしていた。

 

「この特措法は破棄させるように動かさないとな。」

「部長、それは汪への復讐でしょうか?」

 

公安部長の方針に、部下は真意を尋ねていた。

 

「……それは違う。もし、刀剣類管理局と警察や自衛隊やらが手を組んで取り組むことが可能になれば、彼の少年の反応を元に特別災害予想区域を好きな場所に指定することが可能となる。……そうなれば、我が国の工作員の潜伏先を特別災害予想区域に指定して、人を遠ざけることができ、彼の少年等を送って暗殺が可能となる。それに、荒魂によって殺されたとも言えるしな。」

「……つまり、特別災害予想区域は特殊工作には良い環境であるということですか。」

「ああ、そういうことだ。恐らくだが、彼の少年がスペクトラムファインダーに反応したという話しを聞かないところから、そういうことなのだろう。……それに、彼の少年の戦闘能力は群馬山中にて実証済みなのだから、暗殺メンバーに加入させられるのは間違いない。そうなれば、我が国の工作員が何人束になって立ち向かおうとも人材の損失を被るだけだ。」

 

公安部長は、優の中に居る荒魂をスペクトラムファインダーに反応させ、特別災害予想区域を好きな場所に指定することが可能であれば、その場所を工作員や抵抗勢力といった隠れ家に指定し、優を含む暗殺チームを送ることができるからである。

そうなってしまえば、荒魂に対して有効となる武器を持たない工作員達に勝機は無く、ただ蹂躙されるだけであり、それを阻止するためにこの特措法を廃案へと持っていこうとしていた。

 

「だからこそ、以前から工作員として育てていた彼に武器を黒人運動の活動家に流してもらう。」

「……最近、何かと米国で騒がしている黒人運動のことでしょうか?」

「ああ、潜伏している我が国の工作員も扇動して、だ。」

 

つまり、野党の支援を受けた者が市長となっている市にて、銃器類の密輸が行われていたのだが、その内部工作の黒幕が公安部長であったということである。

そして、公安部長はスパイにした市長と黒人運動を利用して、日本国内を乱れされると同時に、国が分裂しているという状況を演出し、日本の現政権に対する国内外の支持を失わせることで、日本の世界に対する影響力を下げる内部工作活動を行っていた。

 

「それと、我が国の共産党員の動向にも気を付けておけ。」

「はっ?……!裸官のことでありましょうか?」

「そうだ。」

 

だが、公安部長にも危惧することがあった。

それは、共産党幹部の中には配偶者や子女等の家族を留学等の名目で外国に居住させる。もしくは出生地主義の国で行われている出産旅行によって儲けた子供をアンカーベイビーにさせると同時に国籍や市民権を親等が取得すると、国内で汚職等によって不正蓄財した財産を国籍や市民権を取得した外国に送金し、本人は政府官僚として単身で中国国内に留まっている者をことを裸官と呼ばれており、腐敗官僚の一種として中国国内においては問題視されていた。

単身赴任の逆の様な状態であり、本人の不祥事が発覚した際は、不正蓄財した財産も中国国外に在るため、差し押さえられないので、そのまま富を取られることなく家族が待っている外国へとすばやく国外逃亡することが出来るのである。そのため、少ない被害額でも一億元、最も多い被害額は数百億元にも達すると言われ、2011年に中国社会科学院が行った調査によると、1990年代中期以降に海外逃亡した政権幹部の人数は1万8000人、持ち出した金額は8000億元に上ると言われているため、それほどの巨額の富が国外に流出してしまう事が問題視されている理由の一つである。(とはいえ、近年は巧妙化されており、そのうえ中国の政治体制を鑑みれば、これは氷山の一角でしかないであろうが……。)

 

「国外に富を隠し持っている党員。いえ、特に日本の資産を買っていたり米国へ資金を流している党員を派閥に関係無く調べよということでしょうか?」

「そうだ。彼等がスパイに早変わりしてしまう可能性も有る以上、放置することはできん。」

「最近は北海道の水資源を購入する者が多かったですからね。その資源がノロと荒魂の影響で値下がりするのを快く思う者は居ないでしょうから、横槍を入れてくる奴が居るということですね。」

 

そして、裸官を問題視するもう一つの理由は、家族が国外に移住していることには変わらないため、その家族の動向が外国勢力によって握られてしまえば、党員の幹部でもある裸官が外国勢力に弱みを握られてしまうことになってしまうので、政策決定の場にて外国勢力の影響を受けてしまうため、中国の国家方針が誤った方向へ向かうことになる恐れがあることが問題視されているもう一つの理由であった。

実際、2014年中国共産党の調査により、全国で県級以上の3200人余りが特定され、内約1000人が降格処分されている。(無論、氷山の一角でしかないかも知れないが……。)

 

だが、公安部長と部下が懸念していたのは、共産党員の中に北海道といった日本の水資源等を購入している者が居り、荒魂の影響によって購入した日本の水資源等の価値が暴落することを恐れ、荒魂を唯一討伐できる刀使の活動の制限を緩和させる特措法を支持する側に回ることを懸念していた。

 

「そうだ、彼等が敵になると厄介だ。彼等を“説得”できる材料を収拾しておいてくれ。」

「了解です。」

 

公安部長の指示に、部下は快い返事と共に行動を開始していた。

 

 

……とはいえ、出産旅行で産まれたアンカーベイビーは、身体の大きい者達のエゴイズムによって形作られた役目を背負わされ、それを遂行させられているということに、誰も気付こうとさえしなかった。

 

 

――――何時から新たな命は、神から“授かる”や“恵まれる”ものではなく、人が“産む”か“作る”ものへと変わってしまったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――先日の特措法制定による反発は大きく、一部抗議活動を見せるデモ集団の中には、「我々を犯罪者扱いにした行為と不法行為を許さない。」という声明を出したこともあり、不穏な動きを見せ始める者が現れました。事態を重く見た警察当局は機動隊を派遣し、事態の収拾を図りましたが、なおも緊張した状態は続いています。なお、画面下のテロップに表示されている該当付近には近寄らず、外に出ないよう政府は呼びかけておりますので、誤ってまたは何らかの理由で外に出てしまった方は機動隊の指示に従い、暴動に加わらないよう慎重に行動してください。』

 

国会にて行われた予算委員会での特措法に関する集中審議の後、黒人に対する差別是正を訴える抗議活動をする者達を中心に特措法に反発する集団が「与党が行っている専横を許すな。」という名目の元、抗議活動という名の大騒ぎを起こしていた。

 

『――――速報です。今朝方から続いていた民衆と警察の睨み合いは暴動へと発展した模様です。…えー、詳しい事は分かっておりませんが、暴動に巻き込まれないよう、細心の注意を払って、慎重に行動することを忘れないでください。』

 

しかし、北京に居る公安部長が送り込んだ工作員による扇動もあって、大騒ぎで治まるはずがなく、機動隊の放水車がRPG-7の直撃を受け、大破したことから熱くなった暴徒達の行動は、暴動へと大きく発展していったのである。

 

「それで、暴動は?何処で、今はどれぐらいの規模で起きているのかね?」

 

そのため、首相官邸は騒然とし、総理大臣は関係閣僚を集めていた。

 

「多くの地域は既に沈静化へと向かっておりますが、関東の8区と12区だけが……何と申しますか。」

「収拾の目途も立っていないという事だな?」

「何分、暴徒の中には対戦車ミサイルといった本格的な武装をしておりますので、警察では中々……。」

 

総理の質問に官房長官は沈静化できていない地区を答え、現在の状況を伝えていた。

 

「……最早、警察では対応できない事態へと発展しているのだな?」

 

そして、総理のこの一言に対して関係閣僚は沈黙してしまい、総理が言った警察では対応できない状況となったことが事実であることを如実に表していた。

米国にて、黒人が不当な逮捕をされたことが発端となって起きた黒人差別撤廃運動の火は、最大の同盟国である日本にも波及。低賃金に喘ぐ非正規労働者と荒魂被害によって業務を停止した会社に勤め、その収入源を頼りにしていた労働者。そして、それらを当てにして、どうにか食い繋いでいた外国人労働者。更には、国民には知らせていないが中国人留学生と偽った工作員が扇動し、騒ぎを大きくさせていたのであった。

そういった者達が集まり暴動へと発展してしまったため、その対応を思索するために関係閣僚が首相官邸に集まっていた。

 

「三木一等陸佐が言っていた通りになったか……。」

 

総理は、三木が言っていた暴動が現に起こった事により、何の罪も無い国民と最前線に送られることでその防波堤となる自衛官と警察官等の血が流れることに、心苦しさを感じながらも、関係閣僚等を前にして大きな決断をする。

 

「分かった。警察では収拾できない事態へと発展した以上、方法は一つしかあるまい……。」

 

総理の突然の大きな一声に、どのようなことを述べるのか、関係閣僚は固唾を飲んで見守っていた。

 

「自衛隊による治安出動を発令する。」

 

自衛隊による治安出動を発令すると言い出したことに、関係閣僚は仰天していた。

今、そのような事をしたとして、関係書類の作成から部隊配置まで行い完了したときには、既に暴動は大きくなっており、自衛隊でも沈静化可能かどうか?というところまで来ているので、とても間に合うとは思えなかったからである。

 

「し……しかし、今からでは書類の作成から部隊の展開を考えると、とても間に合いません。」

「もう既に、自衛隊の部隊の展開は整えている。」

「既に!?既にとはどういう事ですか!!?」

 

総理の自衛隊を既に展開しているという発言に、目を白黒させながら驚く法務大臣。

何故なら、現職の総理大臣が自らの権限を超えた超法規的な手段を行使していると発言しているようなものであり、最早法務省の領分を超えていたからである。

 

「……群馬山中での件もあったからな。私が予防配備しておいたのだ。だが、自衛隊では荒魂の対処が難しい。それ故に、嘗て二十年前の大災厄を解決した英雄であり、当時局長であった紫の草案を元にした特措法を強行採決したのだ。」

 

紫が通そうとしていた特措法を総理は通そうとしていると言うが、彼は決して紫の味方ではなかった。

彼が、紫のことを二十年前の大災厄を解決した英雄と言って、当時局長であった紫が通そうとしていた特措法を強行採決で自分が通そうとしていると強調して話した理由は関係閣僚を説得するためでもあるが、仮に幼い少女でもある刀使に被害が出た際は、それを通そうとしていた紫に全責任を押し付けるために強調しただけである。

とどのつまり、彼は説得材料として、そして保身のために紫の名を利用していただけであったのだ。

 

 

……その決断が、自身にどのような結末を迎えるか分からぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、暴徒と機動隊が争う関東の8区は騒然としていた。

 

銃声――――、怒号――――、破砕音―――。

 

それらの音と風、人々の声が関東の8区に奏でられていて、此処が危険であると訴えているかのようであった。

事実、暴動の熱で興奮している暴徒は空き缶や瓶、そこらに落ちている石といった物を投げたり、手に持っている棒や金属バット、果ては箒などを振り回して防弾盾を持つ機動隊の行動を阻んでいた。そのうえ、催涙弾を放つ催涙ガス筒で抑えようとしても、興奮している暴徒には効かないのか、それとも数が多すぎるせいか、あまり効果が無いようにしか見えなかった。

そんな混沌とした関東の8区に派遣された機動隊の小隊長は、部下からの危急の報告を受けていた。

 

「第三小隊が暴徒に包囲され、身動きが取れないとのことです!!」

「救援に向かった射撃隊はどうした?」

「暴徒の中に機関銃を装備した者が居り、身動きが取れないようです!!」

 

焦った口調の部下からの報告に、小隊長は救出に向かった射撃隊はどうなったのかと尋ねると、暴徒の一部に突撃銃といった本格的な武器で武装している者達が居り、その者達による制圧射撃に身動きが取れない状況であった。

 

「くそ、増援はまだなのか!?」

 

小隊長は焦りが出始めたのか、部下の前で機動隊の増援が来ないことに苛立っていた。

何故、第三小隊が包囲され、小隊長が焦り初めているのかと言うと、先ず暴徒達の数に任せた強襲にやられてしまった第三小隊は撤退するものの、撤退中に第三小隊の隊員一名が足を撃たれ、取り残されしまったため、暴徒達による集団リンチを受けてしまっていた。

リンチを受ける第三小隊の隊員の姿を見た刀使の一人が義憤に駆られ、単独でその隊員を御刀の力を信じて救出しようとするも、激情で興奮しているうえ、運の悪いことに最初に殴ったのがガタイの良い暴徒であったため、少女の腕力による鉄の棒の峰打ちで倒せる訳がなく、その刀使は人の雪崩に飲まれるかのように、やがては棒や金属バットの暴力の数の多さに負け、その隊員と同様に殴られ、蹴られ、袋叩きにされていた。

しかし、第三小隊と特祭隊も取り残される状況になってしまった第三小隊の隊員と刀使を救出することもできず、今まで手をこまねいていた訳ではなかった。第三小隊とその刀使が所属していた特祭隊(刀使とSTT隊員が配属されている部隊)の隊員等がその暴徒達を奇襲。その結果、暴行を受け続け、取り残されることになってしまった刀使と第三小隊の隊員を救出することに成功するが、元々数で負けていたので、次第に第三小隊は押され始める形となり、近くにあった廃ビルの中に隠れ、機動隊員は防弾盾で刀使は御刀で暴徒のこれ以上の廃ビルへの侵入を防ぎつつ、STT隊員等は手に持つ銃で制圧射撃し、銃やRPG-7を持つ暴徒の動きを封じて、どうにか防備を固めて救出を待っていた。

 

しかし、RPG-7や銃を撃つ暴徒の数が多かったせいか、全て対処しきれなかったらしく、第三小隊等が隠れていた廃ビルにはRPG-7や銃によって出来た穴が増えつつあった。そのような危機的な状況下にある第三小隊と特祭隊を救出すべく、機動隊の指揮官は狙撃銃や催涙ガス筒を装備した射撃隊を増援として送るものの、その射撃隊は暴徒が持つ機関銃の制圧射撃による妨害を受け、動きを封じられていた。

 

そういったこともあって、機動隊の小隊長は更なる増援を要請していたが、来ないことに焦っていた。

 

「陸自の部隊!増援だっ!!」

 

機動隊の隊員は、総理の指令を受け増援に来た陸自の10式戦車と96式装輪装甲車を見るやいなや喜んでいた。

しかし、増援に来た陸自の部隊を見た機動隊の小隊長は自分等で解決できなかったことと、これから起こることに渋い顔をしながらそれを見るしかできなかったことに歯痒さを感じていた。

だが、この場に薫が居れば、忌々し気にこう答えていただろう。

 

江仁屋離島で試験運用されていた高機動型パワードスーツにS装備のバイザーらしき物を着けた装備を増援の自衛隊員達が纏っていたと……。

 

『作戦計画通り、B小隊はAからDブロックの制圧、C小隊は航空部隊と共に第三小隊等の救援に向かえ。』

『了解、B小隊はAからDブロックを制圧する。』

『了解、C小隊もこのまま廃ビルに向かう。』

 

各小隊の指揮通信を担当するA小隊が作戦計画通りに行動するよう指示すると、B小隊はAからDブロックの暴徒の掃討に向け10式戦車と96式装輪装甲車と共に作戦行動を開始し、C小隊も10式戦車と96式装輪装甲車とUH-60JA2機とCH-47J1機という編成の航空部隊と共に孤立した第三小隊と特祭隊の救出に向かっていた。

また、UH-60JA2機とCH-47J1機、さらにOH-1改といった編成の航空部隊は、孤立し銃撃を受けながら救援を待つ第三小隊等に対して対人狙撃銃と64式7.62mm狙撃銃による航空支援をするために、一足先に向かっていた。だが、何故12.7mm重機関銃M2や5.56mm機関銃MINIMIをキャビンドアとガナーズドアに搭載しておらず、対人狙撃銃と64式7.62mm狙撃銃を使っていた理由は過剰防衛という批判を避けるためでもある。(だが、本当の理由は、自衛隊に納入する12.7mm重機関銃M2や5.56mm機関銃MINIMIの製造を担当する会社が起こしたデータ改竄等の問題により、精度が低く、余り信頼できない銃を持ちたくないというのが本音である。)

それと、10式戦車が今回の治安出動に選ばれた理由は、高機動パワードスーツとUAVとの情報共有はどれ程の戦略・戦術的効果が有るのか、ゲリコマ対策として造られた10式戦車はどれ程の能力を有しているのかという知見を得るためである。

 

『B小隊、スキャンイーグルがそちらの担当するブロックにてRPG-7を持っている者を捉えた。B-2がこの第一優先目標を排除せよ。』

「了解。」

 

スキャンイーグルによって捉えたRPG-7を持つ暴徒のことを第一優先目標と呼び、その第一優先目標が居る位置の情報をB小隊の自衛隊員が纏っている高機動型パワードスーツに送り、第一優先目標が何処に居るのか分かるようにバイザーに表示されていた。そのため、B小隊のB-2と呼ばれた自衛隊員は随伴する96式装輪装甲車を破壊される前に第一優先目標の排除をしなければならないので、バイザーに表示される第一優先目標の位置にACOG付きの89式を向けて、待ち構えることにした。

 

「ここを戦場にするナ!出てケ!!」

 

すると、その第一優先目標は、そんな片言な叫び声を上げながら、戦車を持ち出したことを非難しながら、RPG-7でビルの上からB小隊に狙いを定めようとするが、引き金を引く前に銃口を向け待ち構えていたB-2によって腹に1発、胴体に2発も当てられたことにより、身体の力を失った第一優先目標はビルの上から運悪く頭から落ちてしまったため、首の骨も折れてしまい、絶命してしまう。

それと、これはB小隊もRPG-7を撃とうとした者にも分からないことではあるが、この暴徒達が使っているRPG-7は密輸で入手した物であるため、不発弾も混じっている粗悪品であり、そのうえ弾頭後部のフィン(尾翼)が風の影響を受けやすいので離れた場所に当てるのは難しいものである。そのため、仮に撃てたとしても当たりもしない定めが待っていた。

 

『A小隊、第三小隊等が居る廃ビルの場所へ到着した。これより、近接航空支援を行う。』

『了解、こちらも敵勢力の行動パターンを解析した。RPG-7は二つ、AK-47は4つだ。』

 

UH-60JA2機とCH-47J1機といったヘリだけの航空部隊は、C小隊よりも先んじて第三小隊等が居る廃ビル上空へと到達。RPG-7と各種銃器を持つ暴徒を優先して排除し、地面に落ちた銃器も一応は可能な限り(群衆の足元に落ちて、視認できない場合は撃てないため。)、狙撃で破壊し、拾って使えない様にしていた。

このような事が出来た理由は、UH-60JAとCH-47Jに乗る自衛隊員達も高機動型パワードスーツを着用し、OH-1改とスキャンイーグルといった偵察機からの情報支援があったからであり、決して対人狙撃銃と64式7.62mm狙撃銃、そして航空部隊のヘリに乗っている自衛隊員達だけの力ではなかった。

 

もしも、この高機動型パワードスーツが無く、群衆の中から銃撃でもされれば、容易に銃器を持った暴徒を無力化出来ず、航空部隊は第三小隊等の居る場所へと救援に向かうことはできなかっただろう。とはいえ、廃ビルに取り残された状況にある第三小隊等は最も厄介であったRPG-7による爆撃と銃撃の頻度が少なくなったことで流れはこちらに傾きつつあると理解し、これ以上暴徒共が廃ビル内に入らないように奮闘していた。そして、その苦労が報われたかのようにC小隊も第三小隊等が居る廃ビルに到着していた。

 

高機動型パワードスーツと航空ヘリ、更には10式戦車とUAVがC4ISRによって緊密に連携された部隊。その一方で最大の武器とそれを取り扱う兵を失いつつある暴徒達。

 

こうなってしまえば、唯一の対抗手段である銃とRPG-7が失われつつある暴徒達は、手に残っている金属バットや棒で戦車と真っ向勝負する気は無いらしく、武器を捨てて逃げるか、降伏するしかなかった。

 

最早、暴徒達に集団としての機能は失いつつあった。

 

「……あの群衆を潰走させている。」

 

あの凶悪な暴徒達をいとも簡単に潰走まで追いやっている――――。

 

目の前に広がるその事実に、ただただ驚愕するしかなかった機動隊の小隊長であった。

    

  

   




  
    
OBSOLETEがすごく面白い。
フルCGアニメだけど……内容がミリタリー好きの人にはたまらない内容で常にお腹いっぱいでした。

とじとも世界でもエグゾフレームみたいなのが欲しいよう……。スクエニさんスクエニさん、最近コラボが多いですが、ペドラーがそう言ってもダメですか?……ダメですよね。



でも最近は刀使ノ巫女でも予算が足らないからなのか、それともアニメーターの負担軽減のためなのかは知らないけれど、ちょこちょこCGを使っているところが散見されるので、アニメーターさんの負担が減るならCGアニメだからと言って偏見することなく、最近の攻殻やMSIGLOOのようにフルCGか一部CGを使っているアニメが普及しても良いんじゃね?

とか最近は思ってたりします。
    
   
   

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