93話を投稿させて頂きます。
今話に出てくる人の殆どが何かの生け贄になる予定の人達。
あっ、官房長官はアニメに出ています。探してみよう!!
子供はこども手当などで金のなる木だと皆が錯覚したら、高齢化社会は解決するのかな?
――――国会議事堂。
安アパートにて起きた暴動グループの集団殺人事件について予算委員会の審議が行われていた。
理由は、件の暴動グループの集団殺人事件の現場である民間の安アパートの襲撃時と思われる写真が出回っていることについてであった。
「総理、この前に起きた暴動グループの集団殺害事件に関連すると思われる写真が出回っているようですが、それについてはどう思うのでしょうか?」
そのため、野党議員がこの写真は何かと尋ね、総理にそう質問していた。
野党議員がそんな質問をした理由は、噂で言われている政府機関の人間が行ったことであるとも取れるような発言を総理自身の口から言わせ、あわよくば総理の支持率の低下、及び自衛隊や米軍の批判を強めようとしていた。
「……今現在、警察が捜査中とのことでありますので、お答えは差し控えさせて頂きます。」
そのため、総理は野党議員の思惑に乗らないように、そう返答するしかなかった。
「しかしながら、国民は特措法から続くこの事態に対し、激しく憂慮しております。……そのことを鑑みれば、何らかの対策を講じるべきではないでしょうか?」
だが、野党議員は引き下がることなくそう言って、暗に国会で特措法を強行採決した総理を批判していた。
「繰り返し申しますが、現職の総理大臣が捜査に関わるようなことを述べるのは、要らぬ誤解を生じさせることになりますので、お答えは現段階では差し控えさせて頂きます。」
だが、野党議員の追及に総理はそう答えることしかできなかったが、総理は内心、この受け答えでは国民は納得しないだろうと思っていた。
むしろ、テレビといった情報媒体は、喜んで自分と刀剣類管理局批判を繰り広げるであろうことは容易に想像ができた。そのうえ、治安出動を発令したことで経済が停滞してしまったこと、特に説明のないまま自衛隊が戦車等を使って暴動を鎮圧したことによる国内情勢の不安定化を招いたことで総理の支持率は下落を続けており、どうにか挽回したいという思いと焦りがあった。
加えて、政府に対する憎悪が国内で更に高まれば、また暴動みたいな流血沙汰が起きてしまう恐れがあり、もし、そうなってしまえば国民に大きな被害が及ぶかもしれないという恐怖もあった。
「……ですが、あの大惨事に国民は不安に駆られております。ともすれば、総理が何か行動を起こすべきではないでしょうか?」
「何度も言いますが、現職総理が捜査に関わる発言は差し控えさせて頂きます。」
そのため、総理は定形通りの答えをするしかなかった。しかし――――、
「ただ、言わせてもらいますと、この出回っている写真に写っている人物は顔を隠しており、誰なのかが判別できないため、暴動グループの集団殺害事件に関連する写真であると言われましても本当にその場所なのかは分からないので、本当にこの写真は暴動グループの集団殺害事件当夜なのかどうかは疑わしい物であると断じざるおえない代物であると述べさせて頂きます。」
自身の支持率が下がり続けていることに焦りと危機感、更なる暴動によって国民が流血を流すことに恐怖感を抱いていた総理は、私見を述べることにより、写真による騒動を治め、それを自分の手柄であると吹聴し、自身の支持率を上げることで騒動を沈静化させようとするものの、
「その発言は捜査に関わるような事ではないのか!?」
「何を以って違うと言えるんだ!?」
「これは、総理の私見でしかないだろう!?」
といったふうに、与野党の議員から批判されることとなったのである。
だが、総理が言っているように、暴動グループの集団殺人事件の現場である民間の安アパートの襲撃時と思われる写真に写っている人物は顔を隠しているため、誰であるのか判別できないうえ、アパートの一部分が写っているだけなので、この写真が暴動グループの集団殺害事件を写している物なのかは判別できない物であるのは、事実ではある。
「静粛に。……静粛に!!」
これにより、議場は又も騒然となり、議長が議員達にこれ以上騒がずに、静かにするよう命じていた。
とはいえ、総理は自分の失態を恥じていた。………先程の私見を述べたに過ぎない発言は、どう見ても政府に批判的なマスメディアにいいように利用されるだろうということは予想できるからである。
そして、総理が感じた懸念は的中するのであった。
新聞の発行部数が減少傾向にあり、危機感を募らせていた新聞各社が過激さを求めて切り取り報道を行い。それと同じく、広告収入の減少に危機感を抱いていたテレビ局と報道番組もそれに便乗し、現政権を批判する内容をテレビで放映するのであった。……その内容は、子役を使って、子供も現政権に拙いながらも不安を抱いているというふうに放映したのであった。
それだけに留まらず、動画共有サービス上にて広告収益による配当を得て活動している動画配信者達の中でも
――――首相官邸、総理執務室。
「………それで、この私に何か用かね?」
先程の予算委員会にて、暴動グループの集団殺害事件の捜査に関わるようなことを述べるという失態を演じ、その対応に苦慮していた総理は官房長官と防衛大臣の中谷に内密の話しがあると言われ、総理はこの二人を総理執務室に招いていた。
「……総理、実はこのような物が送られました。」
そんな心中にある総理に中谷はある物を提出していた。
「これは?」
中谷が出した紙切れ一つに、これは何かと尋ねる総理。
「貴方への殺害予告であります。」
それに対し、官房長官が中谷の代わりに答えていた。……総理の殺害予告であると。
「……私のか、ならば、そろそろ私も潮時というものだな。このタイミングで総理を辞職するのは、次の総理に申し訳が立たないが、これ以上の混乱をきたす前に最後の大仕事をしよう。」
「……総理。」
総理は官房長官からそれを聞くと、恐らく自分が強行採決した特措法等による混乱と自身の無能さのせいで、このような殺害予告が送られることになったのだと理解した。ならば、その責を取る形で総理大臣を辞職することでこの事態を沈静化させようとしていた。
だが、総理の心中は、自身がこの波瀾な状況下にしたにも関わらず、何の責任も果たさないまま次の臨時閣議において、辞任する意向であることを表明しようとしていることに、総理は自分だけ困難から逃げているような気持ちを抱いてしまったがために、己を恥じていた。
中谷は、その総理の哀愁が漂う後ろ姿に少し同情をしてしまうものの、それが表情に出て、総理の重荷にならないよう歯を食いしばっていた。
「……総理、今お辞めになられたとしましても、国民の不安は解消されません。それどころか、陰謀が有った等という要らぬ噂が蔓延ることでしょう。」
しかし、官房長官は総理の辞任への意向を止めようとしていた。
「何?では、これ以上にどうすべきだと言うのかね?自らの失態の責を取るために辞任を意向することを発表し、国民の不安を払拭させる他に何があると?」
「確かに、それがベターな方法ではあるのでしょうが、最善の方法ではないと思われます。殺害予告が有ったその日に総理自らがお辞めになったというのは、我が国の沽券に関わることでありますし、未だ残っている暴徒達が更に勢いづくかもしれません。とすれば、殺害予告が有ったことを公表し、不穏分子を一掃なさってから次の総理に引き継がれた方が我が国の体面は保つでしょうし、総理ご自身が懸念されている次の総理への引き継ぎも滞りなく行われることでしょう。」
「………ふむ。」
官房長官の提案に耳を傾ける総理。
「なら、もう少し続けるべきであるということか………。」
「はい。それが宜しいかと。……ですので、これからは市ヶ谷のように警備をもう少し厳重にすべきであると思われます。」
「警備か、……しかし、余り厳重にし過ぎるとそれはそれで反発を買いかねんな。」
そうして、官房長官の話しを聞いた総理は、支持率の低い自分が警備を厳重にし過ぎれば、それはそれで国民の反発を買いそうであると言って、それよりも何か良い方法が無いかと考えていた。
「警備……警備か。」
だが、総理はそこまで考えると、あることを思い付くのであった。それは、
「……そういえば、市ヶ谷周辺と朱音局長代理は刀使を警備や自身の警護として使っていたな。」
「そのように記憶しておりますが、何か?」
「……いや、私の警護に彼女等を使うのはどうだろうか?そうすれば、手出しできないだろうし、国民は私のことを見直すかもしれん。」
総理は警備に刀使を使うことで、未だ一部の国民から慕われている刀使等が自分を支持しているかのように錯覚させることで、自身の支持率の回復と共に国民の反発を和らげようとしていた。
その提案に官房長官は、
「……朱音局長代理が自身の警護と市ヶ谷周辺の警備にも刀使を使われていますので、何の問題もないかと思われますが………。」
「そうか!では、早速そのようにしよう!……今日は私の話も聞いてくれてありがとう。」
「いえ、総理の御心が幾許か休まったのであれば、私共も喜ばしい限りです。……それでは、職務に戻らせてもらいます。」
「ああ、頼む。」
中谷は総理に退室する旨を述べると、官房長官と共に総理執務室から退室するのであった。
そして――――、
「………これで良いかね?」
「ええ、全ては甲斐が手筈を整えておりますので、心配は御無用です。副総理からのご理解も得ましたので。」
官房長官と中谷は小声で何かの話しをしていた………。
そうして、この世の中は優と刀使といった子供達だけでなく、公共性を謳うテレビやインターネット上でも何も知らない子供達をダシにして、はした金や名声を得ようとする者が漸増の一途を辿るのであろうか。
………その先は、未だ見えないままであった。
一方、綾小路武芸学舎。
ソフィアは、ある人物と連絡を取っていた。
「……つまり、そちらは手駒が失いつつあるから、こちらの手引きが欲しいという訳ですか?」
『そうだ。これ以上、彼等に気付かれないよう援助している暴徒集団や扇動員が殺られると中東諸国との関係が拗れてしまう。そうなる前にこちらの人員を送りたい。』
ソフィアが連絡を取っているとある人物とは、北京に居る公安部長の命を受けた部下であった。
北京に居る公安部長がソフィアと連絡を取ろうとした理由は、中東の過激派のテロリスト達がトーマス達等によって、一つ一つ潰されているため、過激派のテロリストを送っている中東諸国は中国に対して懐疑的になり、中国に人材の補填を名目に多くの物質的援助を求め始めていた。
そんな中東諸国と中国の関係が拗れてつつある状況下において、日本の水資源や土地等を購入している裸官等によって糾弾されていた公安部長の立場は次第に追い詰められるようになっていったのである。
そういった理由もあり、刀剣類管理局の内部情報をこちらに流してくれるソフィアに連絡を取っていた。
『これ以上、こちらの損失を大きくさせたくない。……それに、そちらにもメリットはあるだろう?』
「……まあ確かに、私の方も準備が万端という訳でもありませんので。」
お互いに利となる話しであろうと公安部長の部下に言われたソフィアは自身の苦しい内情を隠すこともできないのだろうと判断すると、北京に居る公安部長の工作に協力することを決めた。
「それで、どうするお積りで?」
『部長は総理に殺害予告を送り、警備を厳重にさせる名目を与え、刀使を警護に付かせる。……あの男がやりたくなくとも、他の者がそうするだろうとのことだ。』
先ずは、総理に殺害予告を送り、総理と議員達に恐怖を植え付け、刀使をその者達の警護に付かせようとしていた。
『それと同時に、黒人運動を扇動して国会の周りを包囲させ、国会周辺で暴れさせるのが目的のようだ。上手く行けば刀使にも被害が出て、今後の政権運用にも支障が出るうえ、今回の特措法について否定的な考えを持つ者が増えることだろう。……そうなれば、現政権の行いに反対的な者を総理に据えることで特措法を破棄させることが目的だ。それに、現政権の行いに反対的な者は我が国に良い顔をする者達でもあるからな。』
その理由は、刀使達を警護に付かせることで暴徒達による被害を被らせると共に、現政権の批判を高め、現政権が強行採決にて行わせた特措法の法案の破棄を公約に掲げることになる野党を支援することで特措法を無くそうとしていた。
そのうえ、現政権の行いに反対的な者は中国に融和的な考えを持つ者であることを言っていたが、ソフィアはそれが目的であることを容易に想像できた。
なお、これはソフィアには話していないことだが、扇動する方法も五毛党などを使って、インターネット上のコメント欄や電子掲示板といった場所で行われる『やらせ書き込み』や学生と身分を偽り黒人運動のデモに参加するといった方法であった。
「ハハ、現役の刀使相手に話すような内容の話しとは思えませんね?」
『部長は君のことを信用できるから、話せられると仰っていたんだ。君も部長の様にこの関係は壊したくないだろう?』
その企みを聞いたソフィアは、暗に刀剣類管理局に告発するぞと脅し、更なる利益と情報を得ようとしていたが、公安部長の部下は相手にすることなくこう返していた。
「……癪な言い方をしますがそれは事実ですし、今は貴方方に協力することにしましょう。」
『ああ、こちらこそ宜しく頼むよ。』
公安部長の部下はそれだけ言うと、通話を切るのであった。
そうして、ソフィアは室内に居る穂積に今後のことについて話すことにした。
「という訳だ。工作員共の協力をすることになった。」
「……それについては手筈を整えております。ロシアも日本と中国が争ってくれた方が何かと都合が良いそうで。」
「ふむ、あそこはまだ火種を解消していないということか。」
「ええ、クリミアとかで欧州の活動が活発になっているとか何とか。」
「ふむ、何処も火種を抱えているということだな。……まあ、良い事ではあるが。」
そうして、ソフィアはロシア側の援助を使って、中国の工作員を引き入れようとしていた。
「……しかし穂積、常々疑問に思うのだが。」
「何でしょうか?」
そして、ソフィアは疑問だった。
「どんな人間かも分からない見ず知らずの人のために、どうして
世界中に広まる黒人運動のデモ集団の中には、学生と身分を偽って国内に潜入した中国のスパイが運動に参加しているが、それは工作活動の一環であるということにソフィアは理解できていた。
だが、黒人運動の中には、中国のスパイや中東の過激派グループ以外の者も参加しており、しかも無料で、工作員以上に熱心に活動している者が居るということに、善意といったものを無用の長物としているソフィアは彼等のような者は不自然であり、不思議な存在として映っていた。
………何故、何の利益も損得勘定も無く、熱心に活動するのかと。
「多分、自分のことを優しい人だから、とか思っているんじゃないですか?知りませんけど。」
「なるほどな。……優しい人か、暴れてる彼等は面白いことをするな。」
多分、自分のことを優しい人だと思っているんでしょうね。と何処か他人事の様に言う穂積の話しを聞いたソフィアは、散々好き勝手に暴れているのに自身のことを優しい人だと思い込んでいるのかと嗤いそうになるのをどうにか堪えていた。
そして、ソフィアは自分では到底理解できないものであるとも理解していた。
後、支持されてない人の一存で、女子中学生である刀使に自身の警護をやらせたとしたらその国民はどう思うでしょうか?
次回、それをタキリヒメさんが少しだけ解説する予定。