【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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94話を投稿させて頂きます。

一応言いますが、稲田朋美氏の「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」という発言をモデルにはしていますが、総理のモデルは稲田朋美氏ではありません。
     
    


名前を得た怪物達が奏でる間奏

   

  

中谷と官房長官に内密の話しがあると呼ばれた総理は、総理執務室内でその二名と会談した数日後、総理は殺害予告を受けたことを口実に刀剣類管理局に自身の警護を依頼。そのため、総理の警護には刀使が付くことになったのだが、国民の反応は冷ややかなものであり、支持率の回復には繋がらなかったどころか、更に下がってしまうのであった。

 

理由は、何故警視庁警備部のSPに警護を付けなかったのかといった意見が飛び交ったこともそうだが、荒魂対策の増額からくる予算確保のための度重なる増税と治安出動による物流などの停止が原因の経済への混乱と打撃、更には鎌倉での騒動をひた隠し続ける行動とそれに続く荒魂事件の増発といった現状により、現政権の支持率は下がり続けていることからも分かるように、国民は現職の総理への支持離れが多くなっていることもそうだが、決定的となったのは、

 

「治安出動による経済の混乱から更なる暴動に発展する可能性が有るため、国民の皆様には外出を控えてもらうよう外出禁止令の理解と協力をお願いします!私自身もそうですが、政権与党の総理大臣として指揮する刀剣類管理局、防衛省、自衛隊も同様にお願いしたいと思っております!」

 

という上記の発言を総理がしてしまい、それを問題視されてしまったのである。

 

刀使と自衛隊員が国民に武器を向けるという状況にしないようにするために、怒りを自制してほしいという趣旨の発言であり、総理はそのことを国民に呼びかけたの積もりなのだが、刀使と自衛隊を私物化しているかの様にも捉えることのできる発言であったために、国民は更に反発することとなったのである。

そのうえ、広告収入の減少に危機感を抱き、過激さを求めていたテレビ局がこれ幸いとばかりに上記の総理の発言の

 

『私自身もそうですが、政権与党の総理大臣として指揮する刀剣類管理局、防衛省、自衛隊も同様にお願いしたいと思っております!』

 

という部分だけを意図的に切り取って、煽る様に報道したのである。それだけに留まらず、新聞の発行部数が減少傾向にある新聞各社と何でも良いから再生回数を稼ぎたい性質(たち)の悪い動画配信者達もそれに便乗し、それらの情報が勢いよく流れる水の如く、一気に拡散していったのである。

 

そういった理由により、刀剣類管理局の局長代理を務める朱音にもテレビ局の取材が来たので、

 

「先日の総理の発言は国民の自制を促すものであったと認識しており、刀剣類管理局が特定の政党に協力するといったことはございません。」

 

という風に朱音は答えるしかなかった。

 

しかし、過激さを求めるテレビ局と新聞各社は

 

『刀剣類管理局が特定の政党に協力するといったことはございません。』

 

という部分だけ切り取って、報道させる事態に発展し、それだけに留まらず、再生数を稼ぎたい動画配信者の中にはそれを盲目的に信じ、過熱に配信する有り様であった。

 

そのうえ、米軍所属艦艇の奪取、都市部への不明機射出と横須賀湾での停電騒ぎ、並びに綾小路武芸学舎へのスパイ行為と折神家親衛隊の燕 結芽と皐月 夜見の二名がノロの投与していたことが発覚し、それをひた隠そうとする刀剣類管理局と政府のことを国民は全くと言っていいほどに信用しておらず、そればかりか政権与党とつるんでいると見ている者が居たのである。

 

そういったこともあり、テレビや動画配信サービスに映っている総理の警護をする刀使を見た国民の一人が、

 

「所詮、刀使も国家公務員でしかないんだな……。」

 

と呟き漏らしたことが切欠となったのかは不明だが、国民の刀使に対する見方が、人々に災いをもたらす異形の存在である荒魂の討伐を使命とし、霊験あらたかなる御刀の所持を任された『神薙の巫女』から、政府の指示に何も考えず、唯々諾々と従う『国家権力の犬』へと認識が変わりつつあった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、市ヶ谷に居るタキリヒメ側――――。

 

「――――以上が、現総理の状況であります。」

 

タキリヒメ派の議員は、失言を繰り返し、窮地に立たされている総理の近況をタキリヒメに報告していた。

 

「……ふむ。自身の警護に刀使を使うか。」

「タキリヒメ様、いかが致しましょう?」

 

タキリヒメ派の議員はそう言って、タキリヒメにどうすべきか尋ねていたが、彼の本心は総理の警護に刀使が付けば反発が強まることは予想できるので、この決定を差し止めるように指示して欲しいと思っていた。

だが、議員は敢えてそう言わず、もしかしたら自分よりも最善な答えをタキリヒメが出してくれるのではと期待し、そして試すかのように尋ねていたのである。

 

「……そうだな。私、いや我としてはまだ動くべきではないと見ているが、お前はそれだけでは納得すまい。」

「…………。」

 

タキリヒメの答えに議員は無言で答えていた。

それは、タキリヒメの問い掛けに対して肯定であると答えているのと同様であった。

 

「そうだな、あの男一人でこんなことを思い付くとは到底思えないのでな。……恐らくは誰かに促されるか、そう仕向けられて動いていたに違いないというのが、我の考えだ。」

 

タキリヒメは、総理のことを“あの男”と言って、議員に自身の考えを話し始めていた。

 

「あの男をそう仕向けたのは、何らかの大きな行動をするためであろう。そうでなければ、誰も止めないのは不自然だ。……恐らくは排除するための大義名分が必要といったところであろう。」

 

タキリヒメは、“あの男”と呼ぶ総理の警護に刀使を付かせたことに他の者が異議を唱えたり、差し止めようとしなかったのにはそうするべき理由があり、それは恐らくだが、刀使を政治利用したという理由か何かで総理を排除することでこの騒動を収めようという魂胆で動いていると推測していた。

 

「……なるほど、その男に全てを負い被せようということですか。」

「そうだとすれば、無暗やたらに妨害したところで敵を創るだけ、ならば、むしろその計略に一口噛ませてもらい、早期にこの騒動を終わらせることが肝要であろう?」

「そうして、我々が今後の交渉等でイニシアチブが取れるということですね?」

「ああ、そういうことだ。そうすることで我等が推し進めようとする政策の一つでも通すことができれば、我々が政界へと進出する際には大いに助かることだろう。」

 

自身の警護に刀使を付かせた総理に全ての責任を被せることで、この特措法から続く騒動を収めようとしているというタキリヒメの推測を聞いた議員は、それならば此方もそのクーデターに一枚噛むことによって、こちらが提案する政策等に協力してもらうといった特需と総理の身命よりもこの特措法から続く騒動を早期に収めることで経済の混乱を回復させる方がメリットとして大きいと判断した議員は、タキリヒメの考えに賛同したかのように頷いていた。

なお、推し進める政策というのは、荒魂と珠鋼と隠世に対する更なる研究の推進。国内の銃規制を緩める。ポリコレの“協力”といったところであった。

 

荒魂と珠鋼と隠世に対する更なる研究の推進を行う理由は、隠世の莫大なエネルギーを安定供給することで得られる利益もそうだが、荒魂と珠鋼と隠世に対して自身でも知らない知識や見解があるかもしれないと見ているからである。

それに、隠世に逃げ隠れ、人間が住むこの世界への憎悪を募らせているであろう本体は、いずれ世界を我が物にしようとする自身の最大の障害となることは目に見えているので、本体を排除するべく隠世の全貌を解明しようとしていた。

 

次にタキリヒメが国内の銃規制を緩めるのを推し進める理由は、防衛産業を民間市場に流すことによって、防衛装備の製造単価を下げると同時に近年問題視されている長引く不況と減少する受注から、防衛産業はコマツの自衛隊向け車両の新規開発事業からの撤退を例に挙げれば中小から順に確実に減少しており、欧州などに比べれば、未だ高い開発能力を維持してはいるのだが、何時まで高性能な国産装備を開発できるかは不明な状況下にあるため、防衛省は国際共同開発等を含めた新たな産業体制の有り方についての検討を行っている。

 

……のだが、アドーアの悲劇、海外製のアプリに情報を抜き取られる可能性が有った事件を経験している自衛隊は海外メーカー製に対する拭いがたい不信感を持つ者が一定数以上は居り、掛かる危急の際に信用できない物を持って行くのは危険であるといった声も多いため難航していた。そのうえ、タキリヒメは今や領海侵犯等を続ける中国やロシア等といった大国が近くに在る以上、国民に誰が敵国で、有事になりつつあるという意識を植え付けることによって勝利した北条時宗の例を挙げての説明(北条時宗が全ての神社・仏閣に敵国降伏の祈りをさせることで、民衆に異国からの攻撃を覚悟させたことである。)を議員等に話していた。

……実際の目的は、銃規制を緩めることで銃社会とし、人間同士の撃ち合いと争いを助長させ、荒魂に対する憎悪を人間にシフトさせると同時に人間の数を減らし、荒魂を危険という認識を緩めることにあるのだが、タキリヒメは流石にそのことを議員達には話さなかった。

 

最後にタキリヒメがポリコレの“協力”と言って推し進めようとする理由は、差別是正活動であるポリコレを利用し、荒魂も人間社会で活躍させるべきという論へと誘導させることが目的である。そうすることで自分を批判する者は差別主義者(外人にはレイシストと批判する。)と言って批判し、言論を封殺すると同時に社会的に抹殺させることで、最終的には自らの地盤を固め、盤石にすることが狙いである。

そして、ポリコレの"推進"ではなく、"協力"としている理由は、ポリコレの活動をする者の中には物を破壊したりといった過激な行動を行う者が居り(この点についてタキリヒメは、荒魂より凶暴だと思ったそうである。)、その者達を勢いづかせることによって暴れさせ、国内の治安を乱れさせると同時に現政権の支持を失わせ、人間同士の争いを演出し、この国のトップに人間を据えることで争い事が生ずるならと思わせることで荒魂であるタキリヒメがこの国のトップになると宣言すれば、自分のことを支持する者達が増え、この国を支配しようと考えていた。

無論、タキリヒメが国の実権を握った後は、ポリコレの活動をする者達の中に居る過激な行動を取る者達と人を襲う荒魂は犯罪者として、紅衛兵やドイツ国会議事堂放火事件時のコミュニスト(共産主義者)達の末路の如く処分することにはなっている。

 

そういったこともあって、ポリコレの"推進"ではなく、(一時的な)"協力"として、使い潰そうとしていたのである。

 

だが、「人間への支配欲」を原動力とするタキリヒメは、ポリコレといった差別是正の活動について妙な気分で見ていた。

例えば差別是正のために女性やLGBTの議員を一定数増やすとか議論していると聞くが、それならば人類に仇なすと言われ続けていた荒魂も「差別是正」と何処かの街頭で訴えていたら、能力に関係無くなれるのだろうか?もし、そうだとしたら………。

 

(空しいなぁ………。)

 

とタキリヒメは零すのであった。

『人間への支配欲』を原動力とするタキリヒメにとって、国政選挙は特定の個人がどれだけの大衆を巻き込めるかの一大イベントでしかなく、自分の一挙手一投足で社会がどれほど大きく動く様を見て、己自身の欲望である『人間への支配欲』というものを充足させることができる物としてでしか見ていなかったのである。

そのうえ、タキリヒメは自身の欲望である『人間への支配欲』を充たすために自身の手で敵を倒すのは好きではなく、他人を扇動して邪魔な相手を排除するのが好きなのであるため、美弥を鍛えていたし、自身は人間にも寛容であるとアピールするために傍に置いていた。

そのような考えを持つためか、自身がこの国の支配するために行った工作が原因で起きた騒動で相模湾岸大災厄以上の被害が出る事になったとしても、タキリヒメはそれを苦に思うどころか、自慢気にこう思うのである。

 

――――私の方がヒトラーやスターリンよりも多くの人間を殺せた。人一人殺すのに人一人以上は動かす必要があるのだから、多くの人間を殺すことは多くの人間を動員することと同じことである。となれば、多くの人間を動かしたということは社会を動かしたことと同意義である。よって、支配者としても私の方が相応しい。そのうえ、タギツヒメと名乗る大荒魂よりも多くの人間を殺せたのだから、やはり私は隠世に隠れ潜む臆病者の本体よりも、上位の存在なのであると――――。

 

多くの人間と社会を自分の思う通りに動き回る事に喜びを感じるというこのタキリヒメが持つ冷酷な残忍性は、一緒に居る美弥もタキリヒメを支持する議員にも気付かれていないのである。

 

ただし、タキリヒメは、国政選挙は特定の個人がどれだけの大衆を巻き込めるかの一大イベントという考えを持つため、選挙は公平でないと気が済まない性質(たち)でもある。何故なら、自らの地盤を固めるために国民と国家が一体となった強固な国を創るという望みを叶えることもそうだが、自身の一挙手一投足で社会が大きく動く様が見ることで『人間への支配欲』が充たされるからである。故に、昨今の"女性"だからとか"荒魂"だからという動機の小さい理由で国の議員に選ばれるのは何の張り合いもない物でしかないとタキリヒメは考えていた。

そのうえ、SNS等で国民の声が発信されやすくなった現代において、それらの声を利用しようという考え方が広まりつつある現代戦で争うこととなる昨今、民意が反映されにくくなり、国内に不満が溜まり、国内に不安要素が在る国家は、モンゴル襲来時に内憂外患の状態であったホラズム・シャー朝、武士の不満によって滅びた鎌倉幕府、ロシア革命時のロシア帝国といった例を挙げるとキリがないが、彼らは総じて滅ぶ運命にあったのは紛れようもない事実であるともタキリヒメは理解していた。

 

故に、昨今の"女性"だからとか"荒魂"だからという理由で要職や国の議員に選ばれるのは内部に不満を溜める物でしかなく、タキリヒメの好みではなかったのである。

故に、タキリヒメは本心では昨今のポリコレの事が大嫌いであり、社会にとって有害でしかなく要らざる物であると考えていて、自分にとって都合の良い利用できる捨て駒のような物としか認識していなかった。

とはいえ、自身が人から恐れられている荒魂である以上、そのポリコレという物を利用して、自身は人道に配慮した荒魂であると、荒魂にもそういう者が存在するのだとパラダイムシフトを起こさなければならないとタキリヒメは考えているので、それらを配慮した発言もしなければならないのは、自身が嫌うポリコレに支配されているような気がしたので、腸が煮えくり返る思いであった。

 

……そのため、自分が支配者になった暁には、ポリコレといった面倒な連中は散々利用した挙句、徹底的に弾圧する腹積もりであった。

 

「委細承知しました。それでは、その様に。」

「うむ、頼んだぞ。」

 

タキリヒメはそんなことを考えていることを議員に悟られぬよう、議員の声に応えるタキリヒメ。そして、タキリヒメは総理への対応を全てタキリヒメ派の議員達に一任することにした。

こうして、タキリヒメは議員との会合を終えるのであった。

 

「………えーっと、何の話か分からなかったんだけど。」

 

そして、同席していた美弥はタキリヒメにこう漏らし、説明を求めたのであった。

 

「……そうだな。我が国政選挙に打って出る前の準備の様なものだと思えば分かり易かろう?」

「……全然。」

 

一応、国家公務員である刀使の美弥がそう言ってあっけらかんと答える様を見たタキリヒメは、この政治に無関心だが、一応は国家公務員である娘の行く末を心配し、こう詰問するのであった。

 

「………いや、自分の国に関することだろう?何故分からんのだ!?」

「えっ、いや、私まだ選挙とか考える歳じゃないし。」

「年齢など関係あるかっ!!我がどれだけ人権やら、国籍やら求めても、未だ手に入れておらぬというのに………。」

「えっ、な、何かゴメン………。」

 

頭を抱えるタキリヒメを見た美弥は、申し訳なさそうに謝るのであった。

 

「……ヨシ、決めたぞ。」

「え?な、何が!?」

 

タキリヒメの一言に美弥は嫌な予感がしたものの、何を決めたのか聞いてしまった。

 

「お前に私が手ずから勉学を教えよう。」

「!…あ~、私剣術で大変だから、勉強とかは良いかな!」

 

タキリヒメに自らが勉学を教えようと提案するが、美弥は剣術を言い訳にして、逃げようとしていた。

 

「何を言うか!!勉学というのは剣術にも、遊びにも活用できるのだぞ!!……それに、学業だけが勉学ではない。学業以外の勉学をすればするほど見える世界も広がるぞ?国政選挙の在り方や国はどうやって成り立っているかとかな?多分、そんな些細なことすらも学ばなかったら、今も『我はタキリヒメ。霧に迷う者を導く神なり。』とか、壊れたラジオか販売員の定型文(さしすせそ)みたいなことをずっと言っていると思うぞ、我は。」

 

しかし、タキリヒメは逃がす気はなく、美弥を引き止めていた。

 

「というよりもだ。今も『霧に迷う者を導く神なり。』とか言っている自称神が居たら聞いてみたいわ。お前の頭の中の辞書には有償契約と市場原理というものは存在しないのかと!他人に話しを聞いてもらうには工夫とそれに見合った苦労が必要であると!というか冷静に考えてみろ、自称神と名乗る奴が目の前に突然現れたら普通は困惑するだろ?仮に自称神と名乗るよく分からない奴にも『ハハ―ッ!』と水戸黄門みたいに即座に平伏したら、コントだとしか思えんぞっ!?我はっ!!?もう少しビジネスモデルというか、神を名乗るのなら思慮深い判断をするという考えには至らんのか!!?」

 

熱く叫ぶように語るタキリヒメを見た美弥は、

 

(コイツ、自分のライフを払って口撃しているだと……?)

 

タキリヒメ自身にブーメランが戻って来ていると思っていた。

しかし、そんな美弥の心中を知ってか知らずか、尚もタキリヒメは熱く語っていた。

 

「だが考えてみろ!お前の言う剣術にだって指南書があるのだから読み書きは必要だし、ゲームといった遊びも取り扱い説明書もあるのだから読み書きは必須であろうがっ!!……それに、創意工夫をする知恵を持てば、遊び方も剣術の戦術も増えるのだから、今やゲームや剣術といった娯楽のために、自分の人生を楽しむためにも勉学は必須であろう!!それに見える世界も増える!!悪いことばかりではない!!なのに、お前ときたら剣術には勉学が不必要であると説く。……今の世の中、インテルネッツやら、スマホやらでも、青空の下でも勉学ができるというのにそれを活用せんでどうする?どうせお前のことだ、勉学にも使え、インテルネッツも繋げられる素晴らしい文明の利器でもある携帯端末のスマホに使うことは、精々訳分からんゲームに、キャバクラに貢ぐおっさんみたいに課金することぐらいであろう?違うか?」

「そ、そそそそそんなことないし!ちゃんと成績は悪くないし!!」

 

タキリヒメの指摘に美弥は図星であったのか、顔を赤らめながら否定していた。

 

「いいや、お前は分かっておらん。勉学というのは学校教育のことだけではない。事実、我は街へ繰り出して人々の意見を聞かなかったら今も『人という未熟な種は所詮虫や獣と同じ。』とか言ってそうな気がするのだ。……今思うと寒気がする。我が取引とか交渉とか理解していないどころか、コミュニケーションが苦手なんだろうなという印象を与える奴になっているのは容易に想像できるぞ。というよりも自称神は海を割ったり、何かのご利益を信者達に与えたりすることとかできないのか?と我は訊いてみたいがな。」

「……あっ、うん。」

 

タキリヒメの話を聞いていた美弥は、タキリヒメの言う通り、もしタキリヒメが人のことについて勉学をしなかったら『人という未熟な種は所詮虫や獣と同じ。』と宣うであろうことは美弥も容易に想像できた。

何故なら、タキリヒメと最初に出会ったとき、タキリヒメは『……我はタキリヒメ。霧に迷う者を導く神なり。』と言ったことを覚えていたため、簡単に想像できたからである。

 

「まあ、これも全て、美弥が『我はタキリヒメ。霧に迷う者を導く神なり。』と言った我を真剣に受け取らず、小馬鹿にするように言ってくれたお陰で我は人を従わせるには恫喝だけではダメだと気付かせてくれたことには感謝しておる。勉学は本以外でも享受することが出来るのだと。だからこそ、我が手ずからお前に勉学を教えようと言うのだ。感謝するのだぞ?」

 

タキリヒメにそう言われた美弥は、冷える思いをした。

 

(コ、コイツ……、あの事をまだ根に持っているのか?)

 

何故なら美弥は、タキリヒメが『我はタキリヒメ。霧に迷う者を導く神なり。』と言ったとき、ハイハイと言って相手にしなかったことを根に持っており、その仕返しをしようとしているのでは?と勘繰っていた。

 

そのため、危険を察知した美弥は全力で、

 

「……いやいやいやいやいや、そんなこと気にしなくて良いよ!……本当にっ!!」

 

回避しようとした。しかし、

 

「何を言うか!我の従者がアホとか我の沽券に関わることだぞ。だからこそ、我が手ずから勉学を教えようと言うのだ!!それの何が不満なのだ。」

「っていうか、私はアンタの従者になった覚えないから!!というより、いい加減小間使いから昇格させてよ!」

 

そんなこんなでタキリヒメと美弥は、今日も騒がしく過ごすのであった。

    

   

  




    
   
三女神は御刀じゃなくて、昨今の情勢を鑑みると最恐兵器であるポリコレ棒を持った方が強そう。


「キエエエエ!!差別は絶対に許しません。人間側はもっと荒魂を理解して尊重し、受け入れて配慮や保護をすべきです!!!」
「荒魂だからという理由で、日々就職や日常でも差別を受けています!!」
「荒魂は人間にされた仕打ちが原因で暴れているんですから、企業も荒魂に合わせて、職場環境を改善すれば良いんです。そんなものは全て荒魂の個性です!何時までも短所なところをグズグズ言ってないで、彼らの長所を活かしてあげれば良いんです!!」
「欧米ではぁ~~」
「荒魂は現世で生きにくさを感じているんですよ!?」


だって、こういうのをダイバーシティっていうんですよね?
   
   

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