ここは厄介払いの前線基地   作:イヌ魚

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 鉄血艦大好き指揮官で、鉄血艦とのほのぼの日常を描きたくて始めました。鉄血の子たち可愛い、可愛くない?


新米指揮官が着任したようです

「ここか……」

 

 本島から船に乗り数時間。到着したこじんまりとした島にポツンと存在する建造物。その門の前に俺は立っていた。

 

 ”第三十六補給基地”。看板にそう書かれている通り、ここは前線への補給基地の一つ。それも最前線一歩手前という割と危険そうな立地。補給基地という割に人の気配もない。ホントにここであってるのか……? そんな疑問を抱きつつボーっとしていると、奥から少女がこちらへ歩いてくるのが見えた。

 

「君は……?」

 

「第三十六補給基地へようこそ、指揮官閣下。私はZ23。ここの案内をさせて頂きます」

 

 ペコリと頭を下げ、少女――Z23は奥へと歩いていくのをしばし眺めていたが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、彼女を後を追いかけることにする。今日からここで勤務することになるのだから。

 

「まあ、なんとかなるだろ。きっと……」

 

 

 

「ここが指揮官室になります」

 

 Z23に案内されて辿り着いたはわりかし広めな一室。指揮官室とのことだが、辺り一面にダンボール箱が散乱しており完全に物置部屋と化してしまっている。

 

「こりゃ酷い……」

 

「半年は使用されていませんでしたから……申し訳ありません、本来なら私が掃除しておくべきだったのですが、ここへの配属が決まったのもつい先日でしたので……」

 

「ああ、そういえばそんな話だったっけ」

 

 二年程前にここの指揮官が不慮の事故で怪我を負って以降、ここは指揮官も艦船少女もいない物資倉庫と化していたらしいからな。そんなとこに配属されるとは、我ながら嘆かわしい――いや俺の場合は訳ありだから仕方ないにしろ、Z23だったか? 彼女には申し訳ない気持ちになる。俺の配属に合わせて秘書艦として配属されたのだろうから。

 

「ここじゃ話もできないし、どこかゆっくり話せる場所はないのか?」

 

「えっと、なら――」

 

「――あら、ようやく新しい指揮官がきたの?」

 

 Z23の言葉を遮るように、扉のほうから誰かが声をかけてきた。声の先には一人の少女。煌めく銀色の髪に一部分だけ赤のメッシュ、どことなくミステリアスな雰囲気を纏う彼女は、俺を見定めるような視線をこちらに投げかけている。

 

「あ、オイゲンさん。戻っていたんですね」

 

「ただいまニーミ。新しい指揮官がどんな奴か気になってね。でも、ふぅん……」

 

 オイゲン……ってことは彼女が鉄血の幸運艦として名高いプリンツ・オイゲンか。

 

「プリンツ・オイゲンだね。任官したてで右も左も分からない新米指揮官だけど、まあよろしく」

 

「よろしく。まあそんなに期待なんてしてないけどね」

 

「これは手厳しい」

 

 苦笑いを返したものの、どうやら歓迎されていないようだ。ま、任官したての新米が上司だし、まともな職場でもないし仕方ないか。ひとまずZ23の案内で俺達は場所を変えることにした。

 

 

「ここは……食堂か?」

 

「はい、現状機能しているのはここと物資倉庫と寮舎くらいなので……」

 

 Z23に案内されてやってきたのは食堂だった。大人数が入れそうなほどの広さだが、悲しいかなこの基地ではその広さが活用されることは当分ないだろう。

 

「まあ構わないか。それでえっと、君はZ23だったかな」

 

「はい。あ、呼びづらければニーミとお呼び下さい」

 

 ニーミ? そういやさっきオイゲンがZ23のことをニーミって呼んでたような……ニックネームだろうか。まあそっちのほうが呼びやすいか。

 

「じゃあニーミと呼ぼうか。ここの所属は二人だけ?」

 

「ええ、丁度私とニーミは攻略班から外されていたからね」

 

 椅子に腰かけつつ面倒そうにオイゲンが答える。本来なら叱るべきところだが、ひとまず置いておくことにしよう……その横でニーミが困った素振りを見せているが、まあいいか。

 

「俺も面倒は嫌いだから本題から入ろうかな。二人とも聞いてると思うけど、この基地に配属されたのは俺。任官仕立てのぺーぺーだ。はっきり言っておくけど、厄介払いのついでさ」

 

 実際俺の同期はもっとまともな基地か鎮守府に配属されたらしいからなー。まあ、厄介払いですんで良かったともいえるくらいのことやっちまったからなあ。

 

「そのせいで秘書艦に任命されたことも、この基地配属になったことも申し訳ないと思ってる。前の配属地がどうだったかは知らないがここよりマシだったからだろうから。と、いうわけで転属希望はいつでも言ってくれ、必ず――とは約束できないが出来る限りの希望は聞くつもりだ。なんなら今からでもいいよ」

 

 これは配属先が決まったと同時に考えていたことだ。補給基地なら主任務は艦隊への物資補給だ。なら必ずしも艦船少女がいる必要はないだろう。無理矢理配属され望まぬ職場で働いてもらうよりずっといい、はず。

 

 ……返事がないと思ってたら二人ともぽかんとした顔でこっちを見ていた。え、俺そんなに変なこと言ったかな?

 

「どうした? もしかして、話聞いてなかったとか?」

 

「い、いえ、聞いてましたけど……」

 

「アンタ、どういうつもりなの? 私達は兵器よ? ただ命令すればいいだけ。兵器に意見を求めてどうするの?」

 

「どうもこうも、君達は兵器である前に意思を持った女の子だろ? 人間とは違うだろうけど、意思があるならそれを尊重すべきだと思うだけさ」

 

 けどこの様子から察するに、彼女らを兵器や駒としてのみ扱う指揮官が多いってことか。いや実際士官学校ではそう習ったし、教官達にもそういう扱いをする人達は多かった。実際俺も”彼女”に会わなければそうなっていたかも知れない……

 

「この考えが一般的じゃないのは分かってる。それがここにきた理由の一端でもあるわけだけど、変える気はないから。まあそういうわけだから、嫌になったらいつでも指揮官室に来てくれ。あ、今日はもう休んでいいよ。どうせ碌に仕事もないんだけどさ」

 

 それだけ言い俺は指揮官室へ戻ることにした。何はともかく、まずはあの部屋をなんとかしないと。あのままじゃ寝る場所すらなさそうだ……

 

 

 

「……変わった指揮官ですね」

 

 彼が去っていったあとも、私とオイゲンさんは食堂でしばしぽかんとしてしまっていた。でもそれは仕方ないことです、なんせ彼は本当に変わった指揮官だったのですから。これからがちょっと心配です。

 

「事情があってここに配属されたんでしょうけど、一体何をしたんでしょうね?」

 

「さあ? でも正直兵器扱いしないのは嬉しいわ――壊れなければ、だけど」

 

 ――それも心配事の一つですね。私達を兵器扱いするのは合理性以外にも理由がありますから。それにしてもここが嫌なら転属させてやるというのは初めて聞きましたね。まあ私はどこでもいいんですけど。

 

「それで、オイゲンさんはどうするんです? 前線に戻りますか? 確か前の鎮守府にはお姉さんもいましたよね?」

 

「私は残るわ。指揮官、面白そうだから。さ、私達も戻りましょ? まだ寮舎の掃除も終わってないんだし」

 

「あっ、はいっ」

 

 それだけ言うとオイゲンさんは先に行ってしまいました……その表情がちょっとだけ楽しそうに見えた気がするのは気のせい、でしょうか……?




 ニーミ先生改造おめでとおおおぉぉぉ!! この時を待っていたんだ!!(嘘) みんなも待ってたでしょ? でしょ?
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