「はぁ、今日もこれなのね」
「文句言わずに頑張りましょう」
「あはは。ボクは海を走れるから好きだけどね」
海を駆ける三人の少女。ヴィルヘルム・ハイドカンプ、ヘルマン・キュンネ、カール・ガルスタ―の三人だ。彼女らは最近の日課となっている委託任務に従事している真っ最中である。
「でも毎日毎日こればっかりよ? 流石に飽きてきたわ」
口を尖らせているのはヴィル。彼女の言う通り、三十六基地メンバーの任務といえば委託に出るか暇潰しをするかの二択だ。窓際基地だけあって本当に暇である。
「これも立派な任務です。気を抜かずに行きましょう」
キュンネは真面目。どんな任務も百点を出せるように精一杯頑張る。
「でもキュンネ、こう毎日毎日これじゃ何のために転属したのか」
「でも転属してこなければずっとドックで待ちぼうけでしたよ?」
「それはっ! ……分かってるけど……」
「――よしっ! じゃあこうしようっ!」
カールはいつも元気一杯、委託任務にも別に不満は無さそう。そんなカールからある提案がなされ――
「一日外出権?」
「そう!」
なんだそりゃ? それじゃまるで俺がこの子達を縛り付けてるみたいじゃないか。これはつまり、休日がほしいってことだろう。確かに、休日なんて碌になかったからそうなってもおかしくはない。ほぼ毎日昼過ぎには業務が終わってるクソ暇基地だけどね。
「まあそれくらい構わないよ、休日もあげれてなかったし。でも、うーん」
「何か問題でも?」
「アンタまさか、休日寄越さないつもり?」
ヴィルが睨んでくるが決してそんなつもりではない。ほしいというのならいくらでもくれてやるくらいの気持ちでいる。
「問題があるとすれば、この基地周辺には海しかないってことだ」
「「「あぁー……」」」
そう、そうなのだ。休日? むしろ毎日が半ドンだ。そしてここは何もない窓際基地――かといって、このまま諦めてくれと言うのは憚られるな……あ、そういえば本部近くに新しくシーパークが出来たと聞いたな、そこに誘うか――
「三人共、ちょっと提案があるんだけど――」
というわけで翌日。“ちょっとした条件”と引き換えに本部近くの無人島に遊びにやってきた。え? シーパークじゃないのかって? 艦船少女の利用は許可できないとか言われたからな。でもまあ、こっちのほうが人目を気にしなくて済むから良かったかもしれない。
「指揮官、何をしてるんです?」
「そうだよ! 早く遊ぼうよー!」
普段と違いスク水姿で水掛けあいをしているキュンネとカール。ヴィルは日陰で休んでいるが、これまたスク水。小さいスク水少女三人を連れまわす男とか最近だと通報されかねない案件だ。そういう意味でも良かったかもしれない。
「はいはい、もう少ししたらな。ヴィルは遊ばないのか?」
「日焼け止め塗ったらね。てかアンタもいい趣味してるわね、スク水なんて」
「これしかなかった。なんでも潜水艦少女用に試作したやつなんだと」
まあその中の規格落ち品だが、まあ水遊びする分には普通のスクール水着と何も変わらない。なんでスクール水着なのかは俺も知らん。
「ほら指揮官っ、早く行こう!」
ふと陰が差したと思ったらカールが俺の手を引っ張っていた。どうやらいつまで経っても俺が来ないことに痺れを切らしたらしい。にしても相変わらず元気だよなカールは。
「分かった、分かったから! でも俺は水着じゃないから!」
「じゃあ砂浜で追い駆けっこだね! ボク一度やってみたかったんだ! よしっ、指揮官が鬼ね!」
そういうとカールはタタっと駆け出してしまった。鬼ごっこ、鬼ごっこ? 砂浜で追い駆けっこってたら普通は……まあいいか。せっかくだしいくらでも付き合ってやるとするかっ!
「はぁ、はぁ……疲れた……」
あのあとキュンネやヴィルを巻き込んでひたすら遊んだ。結局水かけにも参加させられて全身びしょ濡れだ。三人は元々水着だからいいが、俺の場合は……早く乾けばいいが。
「いやー遊んだ遊んだ!」
「指揮官、大丈夫ですか?」
カールはご満悦みたいだ。反してキュンネは俺の心配ばかり。せっかくの休日なんだからもっと楽しんでくれれば良かったのだが、まあ俺にも非はあるからなんとも言えない。
「うぅ、せっかく日焼け止め塗ったのに……」
ああ、まあ……あれだけ水がかかれば致し方ないな。男の俺にはよく分からんが、気落ちするのは分かる。
「でも楽しかっただろ?」
「それは……うん。あっ! べ、別にアンタに感謝なんてしてないからねっ!」
はいはい感謝ありがとう。ヒッパーといいヴィルといい素直になれない子なんだな。最初はただ嫌われてるんだと思ったよ。
「キュンネもそんなに気にしないで。今日の休日は何点かな?」
「そうですね……七十点です」
七十点か、及第点だな。今度はもっといい休日をあげれればいいのだが。ボートへ向かって歩き始めると、突然誰かが抱き着いてきた/
「えへへー」
これは、カールか? 濡れるからやめとけって。あと女の子に抱き着かれるのちょっと恥ずかしい……遠くでキュンネとヴィルが顔真っ赤にしてこっちを見ている。まあその感情は全く違うようだが。
「カール?」
「今日は楽しかった! 本当に! それに指揮官はいつもボク達のことを気にかけてくれるし、指揮官のところに来て本当に良かった!」
「お、おう」
そう言って貰えるのは純粋に嬉しいな。少しこっぱずかしいが。でも笑顔のカールはまた可愛いな……
「ねえ指揮官」
「ん?」
「指揮官のこと、お兄ちゃんって呼んでもいい?」
「お兄ちゃん?」
お兄ちゃん。お兄ちゃんか……一人っ子だったから新鮮な響きだな。艦船少女は見た目通りの精神年齢らしいし。
「うん、指揮官はなんていうかお兄ちゃんって感じなんだ。それに、その方が仲良しみたいじゃない? ダメかな?」
「――いや、いいよ」
「やったっ、ありがとお兄ちゃん!」
……これはこれで、恥ずかしいというかなんというか、でもこういうのもいいな。
実質カール回じゃねえか、相変わらず短いし……
Z駆逐娘ズの回のくもりだったんだけど自分の中でキャラが固まってないとこうなるのか。次回があるのならもっとまともなモノにしないとなー。
あ、バレバレだけど三人の中だとカールが一番好き