「平和だ」
「平和ですね」
例の指令が下ってから早一週間。毎日偵察艦隊を繰り出しているが人型セイレーンどころかセイレーン艦隊の尻尾すら掴めていない。この海域にセイレーンが潜んでいるのは間違いないはずなのだが。ああ、それにしてもニーミのコーヒーは本当に美味しい。
「アーク・ロイヤル隊帰還したぞ。む? それはニーミのコーヒーか。私にも淹れてくれないか?」
「インスタントですけど、それでいいなら」
「是非!」
うーん、アーク・ロイヤルは相変わらずだな。定期的に六十一に戻っているようだが、それでもまだ手伝ってくれるのは本当に助かる。ウチにはまともな主力艦艇がいないからなあ。
ちなみにアーク・ロイヤル隊というのは臨時編成した第二艦隊のことで、勝手にそう呼んでいるに過ぎない。編成はキュンネ、カール、ヴィルとアーク・ロイヤル。一応バランスを考えてのつもりだ。まあアーク・ロイヤルの要望が多分に含まれているのだが。そして第一艦隊はニーミとローンとワスカランの三人だ。ヒッパーとオイゲンは留守番。偵察任務に重巡はそんなに必要ない。というかローンも別に必要ないんだが、まあこれには理由がある。
「それじゃ特に報告するようなことはなかったってことか?」
「ん? いやセイレーンの偵察部隊を発見したぞ」
「コーヒー飲む前にそれを報告しろっ!」
なんで報告よりニーミ先生のコーヒーを優先するんだよ……駆逐への愛が成す所業なのか? いやそうじゃなくとっとと報告をして貰わないと。
「じゃあこのポイントにセイレーン艦隊がいたんだな?」
第一艦隊のメンバーとアーク・ロイヤルを集めて
「そうだ。量産型駆逐艦――
Pawnとは連合がセイレーン量産型に付けたコードネームだ。連合はこの戦いをチェス感覚でやってんのか? まあコードネームがあるのは呼びやすくて便利だけどさ。
「第一艦隊を出す。第二艦隊は戻ってきて早々で悪いけど念のため退路の確保をしておいてくれ」
「承知した。しかし大丈夫なのか? Z23はともかく残りの二人は実戦経験がないのだろう?」
「まあ実戦経験を積ませるってのも目的の一つだしね」
実際ワスカランは実戦経験ないしな。ローンは……記録に残ってないだけで暴れたことがあったりする。“
「第一艦隊出撃準備! ワスカランは後方から支援、ニーミはワスカランの直掩を頼む」
「
「了解しました。ですがそれだとローンさん一人で戦うことになりますが」
「いいんだ、艤装の実戦テストを兼ねてるからな。それで、ローン」
ローンに目をやる。彼女も俺を見ている。よし、問題はなさそうだ。なら命令を出さないとな――燻っているだろうお前の意思を、感情を、俺が解放させてやる――
「命令だ――潰せ」
「はい」
そう答えたローンは、幸せそうに笑っていた――
鋭利な爪、堅固なる腕、反り返った尻尾に異端染みた翼。尻尾の先には敵を撃ち砕かんとする毒の砲塔がしきりに首を左右に振っている。まるで狂暴な蠍――それがローンの艤装だ。
同じ重巡のヒッパーの艤装と違いあまりにも禍々しいそれは、まるでローンの狂暴性を反映したかのようだ。その艤装を喜々として身に纏う姿は玩具を与えられた無邪気な子供だ。
「どうだ? いけるか?」
「はい、問題ありません」
艤装の最終チェックが終わったらしい。あまり時間を無駄にすると偵察艦隊を逃してしまうかもしれない。それはよくない、報告通りならまだこちらには気付いていないはずだし、一気に片づけてしまいたいところだ。
「俺はこのオンボロに乗って待っててやる。一応、指揮やらなんやらはするが――ニーミもワスカランも、気を付けてな。そしてローン、好きにやってこい」
俺に出来るのは信じて送り出してやることだけ。戦場へ赴く彼女らをただただ見送ることしか出来ない。
水面を駆ける。ただただ敵を目指して。
ニーミちゃんとワスカランちゃんは後方で待機――実質私一人だけで戦えだなんて、指揮官も酷いことをするのね。ふふ……
誰かの指揮下で戦うことは初めてですけど、これといって感慨は湧いてこない。強いていうなら彼――指揮官の下で戦えることに喜びを感じているかもしれない。でもそれだけ――いつものように倒し、いつものように砕き、いつものように潰すだけ。それに変わりはないでしょう?
戦うことは好き。ううん、敵を壊すことが好き――艦砲で敵を切り裂いて、木っ端微塵に壊した残骸を見るのが好き。この手で敵を殴り潰し引き裂く感触が――あぁ、好きなの――でもそれを怖がられ、恐れられ、異常者だと蔑まれ……私はそんなにおかしいの? だって私達は兵器。敵を倒すことが私の存在価値なの。だから倒して、倒して、倒して、倒して……
「レーダーに反応が……あれが例のセイレーン艦隊ですね」
水平線の向こうに覗くセイレーン艦隊。確か報告では駆逐が三隻でしたね……あら、私の姿を見つけたのかしら。慌てて反転し始めて。そうですよね、駆逐艦如きが重巡洋艦の私に真正面から挑まないですよね。それとも、他に何か狙いがあるのでしょうか? でも、だぁめ
「ふふ、私のことを見て逃げようとするなんて、まさか逃げられるとでも思っているんですかぁ~?」
艤装展開。尾先の砲塔が首をもたげる。あちらからは狙えなくても、既にあなた達は私の射程内ですよ?
「試作203mmSKC三連装砲――
砲撃の反動に続き硝煙の匂いが私を包む。この匂いを嗅ぐと、私は戦場にいるんだって実感できるから好き。
そして響く轟音。どうやら初撃は上手くいったようですね。煙をあげ、炎を身に纏いながら駆逐艦が一隻沈んでゆく――
「あは」
沈めた。倒した。潰した。壊した――そう、この感覚。しばらく忘れていたこの感覚。これを味わうために、私は――
「もっと……もっと私に壊させてよぉ!」
もう我慢できない! 機関全速! 敵を追い立てる!
「あは、あはは」
砲塔が火を噴く。サブアームのバインダーの火砲が乱れ撃つ。逃げ惑う敵を見るのは楽しいのだけど、次第にイラつきが増してくる――なんで抵抗するの? 大人しく沈みなさいよ! 私の手を煩わせないでっ!!
「
放つ、放つ、放つ。敵へと走りながら撃ちまくる。乱れ撃つ。もっと壊さないと。だって、壊さないと私の存在意義はなくなってしまうから――だから、だから――
「壊れ壊れ壊れ壊れ……壊れろぉ!!」
私が、壊してあげるの――
気が付けば既にセイレーンの姿はなく、ただのガラクタがその辺りに散らばっていた。あぁ、これを私が……
「殲滅完了。指揮官、見ててくれた?」
『ああ、よくやってくれた。さ、帰ってこい』
指揮官も褒めてくれたし、今日はいい日ね。でも、私個人としてはもっと歯応えの相手と戦いたかったのだけど……でも仕方ありません、今回は戻り……あら?
「レーダーに反応……? 何かしら、この大型の反応は……」
『どうした?』
「大型セイレーンの反応があります」
『なに!? ニーミ先生、アークロイヤル、そっちはどうだ?』
『私とワスカランさんは特には』
『こちらも確認できない』
私だけが捉えている? だとするとこれは敵の本体。ううん、もしかしたら例の人型の可能性も? うふふ――
「指揮官、私あれを潰してきますね」
『待てローン! 今回は撤退だ! これ以上距離が離れると通信も安定しないんだぞ!?』
「私なら勝てますよ? だから――待っててね、指揮官」
『――――っ!!』
声が聞こえなくなるのは寂しいけれど、大丈夫です。私が、あれを潰してきますから。あとで怒られるかしら? でもあれを倒せばきっと褒めてくれますよね? 方角はこっちだった。距離的にはそろそろのはず。
「見つけた……って、これは……」
反応の先にあったのは、確かに件の人型セイレーンが。それに報告にあった通り飛行しているのも確かみたいですね。けど、なんといいますか
「巨大な……エイ?」
それはまるで巨大なエイ。それも妙に武装しているみたい。砲塔のようなものが見えますね……なんにせよ今がチャンスですね。しっかりと、お相手をしてあげなければ。
「
……外れましたか。それにこっちの位置もバレてしまいましたね。それに狙いにくくてて……でも人型ならいくらでもやりようはあるんですよ? そのためにまずそこから叩き落してあげないとね。
「だから……こっちを見なさいよっ!!」
砲撃をいくら叩き込んでも奴は私を気にもとめていない。なぜ遠くを見ているの? 後ろにはニーミさんとワスカランさんと指揮官しかいませんよ? あなたの敵は私なんですよ? ダメ、水面からじゃ有効打を与えられない……なんとか引き摺り降ろさないと……あら?
「砲塔が光って……高熱量反応……?」
何をする気か知らないけど、傷つける程度で私が止まると思わないことです。砲塔に狙いを定めて――
「っ!?」
セイレーンの砲塔が火を噴いた。ううん、まるで光の柱……まさか、レーザー!? でも、私ではなく狙いは遥か後方に――何を狙っているの? だって後方には……後方には
「――指揮官?」
嫌な予感がした――だから振り返ってしまった。見てしまった――指揮官のCPボートに突き刺さる光を――
「あ……」
爆散してゆく様を――
「あああぁぁぁあああああ!!!!!」
爆発オチなんてサイテー! 戦闘描写難しい。ほんまヘタクソで泣きそう……ライトノベルでも読み漁って勉強しようかな……
にしてもコイツローン扱えてないな? もっと発狂させろって突っ込まれそうな気がする。
ところで月末に鉄血イベントが復刻されるそうですね。今のところ追加されるのはUボート一隻のようです。死んでも手に入れてやる(鉄の意志)。ニックネームはココナちゃんになるのかな? U-81は……あーちゃんとかどうっすかね?(他力本願)。何にせよ楽しみ半分資金不足で絶望する未来半分ってところですな。