「はぁ……」
溜め息を吐きつつ手にしていた書類を丸めゴミ箱へ投げ捨てる。一応コレ本部からの書類なんだけどもうどうでもいいから捨てたのだ。内容はごく単純。この前ニーミとオイゲンに聞いた要望を実現するため、本部に戦術教室と工廠を造る許可と資材を要求したわけだが、ものの見事に却下された。その知らせである。
「指揮官、コーヒーを淹れま……その様子だとダメだったみたいですね」
開けっ放しの扉の先から、ティーカップを持ちながらニーミが現れる。わざわざコーヒーを淹れてくれるなど秘書艦として頑張ってくれているようだ。ちなみに我が指揮官室には机と書棚しかなく、気軽にコーヒーを飲むことすらできず一々食堂まで足を伸ばすことになる。
「ごめん、ひょっとしたら要望に応えられないかもしれない」
「いいです、元々あまり期待してませんでしたから」
ぐっ……確かに応えられていないが面と向かって言われるのはキツイ。いや待て、ここで諦めていたらいつまでたっても評価は変わらないぞ……
「期待してもらえなかったのは残念だが、まあ期待されるような指揮官でもないからな。まあもう少し食い下がってみるつもりさ、とりあえず工作艦でも回してもらえないか聞いてみるとしよう」
「あ、いえ、指揮官に期待してなかったわけではなく――工作艦?」
「そう、工作艦」
せめて工作艦がいればこの基地で艤装のメンテナンスや簡単な機材の作成ができるだろう。まさかメンテ用の機材すらなかったのは想定外だった。あと、工作艦の協力があれば申し訳程度の戦術教室や工廠も造れるのでは? という甘い考えもあったりする。ただ問題があって――
「でも、連合に登録されている工作艦は重桜の明石とユニオンのヴェスタルだけです。両名とも既に他所へ配属されているのでは?」
「そうなんだよなあ」
そう、問題というのは工作艦そのものの数だ。暇を持て余している工作艦などいるはずがない。だが近くによるついでに寄ってくれたりするかもしれない、うん。
「指揮官、戻ったわよ」
必死に自己弁護している間にまた来客が来たらしい。見なくても分かる、オイゲンだ。彼女には要望通りに近くの鎮守府にお願いして派遣戦力として一時的に向こうで戦ってもらっていた。まあ前の配属先だったようでスムーズに事が運んでよかった。そうか、もう帰ってくる日だったか。
「お疲れ様オイゲン。どうだった?」
「別に、相も変わらず平凡だったわ。そうだ、指揮官にお土産があるわ」
お土産? 重桜海軍カレーのレトルトとかだろうか。だったらいいな、レトルトでもあれは美味しんだ。って、オイゲンの奴部屋の外を見て何して……んん?
「ほら、入った入った」
「ちょっ、押さないで下さいっ!」
「ほら早く早くっ!」
「ああもう、騒がないでよ」
……部屋に入ってくるオイゲン。その後ろから入ってくる少女が三人。なに? お土産ってコレ? は? あ、でもよく見ると三人ともお揃いの軍服を着てる。これは確か……
「紹介するわ指揮官。Z駆逐艦のZ19、Z20、Z21よ。向こうから引き取ってきたの」
引き取ってきたって……合意の上なんだろうな……オイゲンに目を向けるがあとは知らんとばかりにこちらを無視してニーミにコーヒーの催促をしてやがる。
「あ、あの指揮官っ!」
「うおっ!?」
声に振り向くと、三人組の一人が顔をこっちにずいっと寄せていた。確か、Z19だったか……?
「着任の報告をしたいのですが」
「あ、ああ悪い。お願いするよ」
コホンっと息をたてビシっと敬礼をするZ19。どうやらニーミと同じく真面目な子らしいな。にしてもさっきはびっくりした。
「鉄血のZクラス駆逐艦、Z19。第三十六補給基地に着任致しました!」
「同じくZクラス駆逐艦のZ20だよ、よろしくね指揮官っ」
「同じくZクラス駆逐艦、Z21。まあ、お願いするわ」
三人共ニーミと同じZクラス駆逐艦か。ん? てか今着任っていった? 一時的に預かるとかではなく?
「よろしく三人とも。それでまず確認するけどZ19、今着任って言った?」
「? はい。オイゲンさんから人手不足で指揮官が悩んでいると聞いたので」
オイゲンめ、やってくれる……いや人手不足なのは確かだし嬉しいことではあるけど、転属手続きをすっ飛ばしてるんだよなぁ。本部に報告しないといけないが、ただでさえ嫌われてそうだし嫌みの一つでも言われそうだな……
「その気持ちは嬉しいんだが、えっとZ20、Z21も同様なのか?」
「あっ、ボクのことはカールでいいよ。そのようが呼びやすいでしょ?」
この子はZ20か。明るいグリーンのサイドテール。今にもぴょんぴょん跳ねそうなくらい元気一杯って感じだ。というか上着羽織ってないからスポブラが見えてるんだけど……いやそれはいいから。
「Z20、カール・ガルスタ―だったか。確かにカールのが呼びやすいが、いいのか?」
「うんっ!」
本人もそう言ってるわけだし、ならいいか。それによく考えればニーミのこともニックネームで呼んでるわけだしな。
「ヘルマン・キュンネです。出来ればキュンネとお呼び下さい」
「私はヴィルヘルム・ハイドカンプ。好きに呼んで」
ふわふわしてそうな黒髪ロングのZ19、ヘルマン・キュンネはやっぱり真面目な子っぽい。大して薄紫の左右にちょっと結ってあるこの子がZ21、ヴィルヘルム・ハイドカンプか。口調もだけど、目つきもちょっとキツイ子だな。そして三人共お揃いの軍服と軍帽を身に着けている。ニーミのとか違い黒で統一されているんだな。
「よろしくキュンネ、ヴィルヘルム……んー、ヴィルヘルムって女の子っぽくないし、ヴィルでもいい?」
正直ヴィルって名前の女の子もそういないだろうけど、まあまだマシってことでここは一つ。
「話を戻すが、三人共ここに転属希望ってことでいいのか?」
「うん、そうだよ」
どうやら聞き間違いではないようだ。
「その気持ちはとても嬉しいんだけど、この基地には現在碌な施設が整っていない。それは聞いてる?」
「はい。食堂と寮舎しかないと聞いています」
……事実とはいえ改めて聞かされるととんでもないところだなここは。食って寝ることしかできないじゃねえか。ただまあ、何も知らされないままこんなところに~ってことにはならなそうだ。
「それが分かっててここに来たのなら、勿論歓迎させてもらうよ。ようこそ第三十六補給基地へ、よろしくお願いするよ、三人共。ニーミ、彼女達を寮舎に案内してくれないか?」
「了解しました。さ、ついてきて下さい」
ニーミの後に続き指揮官室から出ていく三人を見送り終えると、未だ部屋の中でゆったりしているオイゲンへと向き直る。
「で? どういうつもり?」
「あら、私は人手不足で困ってる指揮官を助けてあげようとしただけよ?」
唇に手を当てクスクス笑っているオイゲンを見ると怒る気も失せる……まあ実際助かったし、別に悪戯する気でもないわけだし。でも正規の手続きくらいとって貰わないと困るのも確かだ。
「次からは事前に連絡しろよ?」
「善処するわ」
これは凝りてないな、確実に。まあ退屈させるよりはいいか、どうせ真面目にしてたって仕事ないし。
「それじゃ私今からお風呂入るから。指揮官、一緒に入らない?」
「……からかうのよせ」
一瞬ドキっとしてしまった……バレてなければいいが、オイゲンはいつもと変わらない笑みを浮かべ去っていった……
Z駆逐艦かわいい……かわいくない?
ぷにぷにしてそうで抱っこしたい。
キュンネは顔を赤らめつつもジッとしてそう。
カールはめっちゃはしゃぎそう。
ヴィルは真っ赤になってポカポカ殴ってきそう。殴って。
惜しむらくはスキルが皆同じで中々普段使いし辛いってとこ。でもちゅき