ここは厄介払いの前線基地   作:イヌ魚

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 (ヒッパーは初めてじゃ)ないです。ミリタリ知識足りないのでおかしな描写などあればビシバシ突っ込んで下さい。


初めての実戦!

『通信良好。艤装チェック……オーケー。アドミラル・ヒッパー出るわよ! 』

 

 闇に包まれた海へヒッパーが抜錨する。問題がなければ数分後に例の部隊と接触するだろう。

 

「すまない指揮官、遅れた」

 

 連絡してしばらく、ワスカランが駆けこんでくる。手短に状況を説明し、室内待機を命じる。ワスカランは工作艦だ、戦闘向きではない。偵察だけならヒッパーだけで問題はないだろうから、もしもに備えておきたい。

 

「敵の所属は分かる?」

 

「いや、このポンコツ機材じゃなあ……こんなとこでも厄介払い先にされちゃ敵わないな」

 

 足りない物が多すぎる……また本部への要望が増えてしまったわけだ。

 

「……あれはセイレーンだね」

 

「えっ、分かるのか?」

 

「なんとなく……間違ってたらゴメン」

 

 なんとなくってことは確証はないわけだ。つまり直感? けどただの直感にしては迷いがなかったように見える。聞いておきたいが、今はそんな場合じゃないな。

 

「念のため、いつでも出れるようにしておいてくれ。ヒッパー、そっちの様子は?」

 

了解(ヤー)!」

 

『もうじき目標が視認できる距離――見えた!』

 

 

 

 漆黒の帳が降りた海を私は駆ける。目標はすぐ目の前、アイツは偵察と言ったが報告でも遠目から見ても大した規模じゃない。重巡クラスがいるならともかく、駆逐や軽巡に負ける私じゃないっての。

 

「見えた! 暗くて所属までは分かんないけど量産型駆逐二隻と量産型軽巡一隻」

 

『そうか――所属は分からないんだな』

 

「目視ではね。けど仕掛ければすぐに分かるわ、どうする?」

 

 まだ私には気付いていない。先手を取れば相手の反応で大体掴める。セイレーンか、ただの賊か――それとも――

 

「今なら先手を取れるわよ」

 

『探照灯や照明弾はないか? 相手の所属が知りたい』

 

「それじゃ私の位置が丸わかりじゃない! てか偵察ですらないじゃない!」

 

 コイツ、やっぱりバカなんじゃないの? ああもう、こんな奴の指揮なんて仰ぐ必要ない。一応警告だけ出してとっとと片づけてしまおう。軽巡はともかく駆逐の魚雷はマズイ。この暗闇じゃ雷跡を見逃す可能性もある。

 

『可能なら知っておきたいんだ。それに他に――』

 

「ああもう煩い! あのくらいなんてことないの! こっちから仕掛ける!」

 

『あっ、おいっ!』

 

 マヌケの指揮なんて必要ないわ。さっさと片づけてしまえばいいのよ。

 

「そこの三隻! 所属を言いなさい! 返答しないなら実力行使に移るわよ!」

 

 ――応答なし。どこの連中か知らないけど応じないのなら敵ね。艤装を構え、戦闘機動で敵船団へ駆ける! 接近したことで分かった、あれはセイレーンだ。なら手加減する必要はないわね。

 

「先手必勝! 撃ちまくれ!」

 

 手持ちの連装砲と艤装の砲塔が一斉に火を噴く。狙いは駆逐艦二隻。ほんの僅かの後、鉄を砕く音と共に一隻が燃え上がる。もう一隻には至近弾にしかならなかった。

 

「まずは一隻――くぅぅ!」

 

 勿論相手もやられっぱなしじゃない。砲撃から私の位置を掴んだのか、軽巡から砲弾が降り注ぐ。高速機動は苦手なせいで多数の砲弾が身体や艤装に掠っていく。幸いなことに私は重巡、装甲は厚いし何より――

 

「この……誰が抵抗していいって言ってんの!」

 

 艤装を前面に展開、それと同時に私の力を放出する――守護の盾。いかなる砲弾からも私を守る絶対防御。これがあるんだ、抜けさせはしないっ! 再度砲撃! 一気に殲滅してやるっ!

 

 

「これで終わり? 雑魚だったわね」

 

 最後に残ったセイレーン軽巡が爆炎と共に沈んでいく。殲滅完了。まあこんなところね。そうだ、一応あのバカに報告しないと。

 

「こちらヒッパ―。敵船団を殲滅したわ」

 

『よくやってくれた。だがなヒッパー、指示には従ってくれよ』

 

「ハァ? 誰がアンタの意味不明な指示なんて――」

 

 ――突然、風切り音が、聞こえた――

 

「あ、ぐ……」

 

 そう思った時には既に遅かった。右肩から焼けるような痛いが走り、艤装から煙りが上がってきて……徹甲弾1? どこから……痛みに耐えつつ顔を上げると遠く前方、射程ギリギリといったところに船影が見えた……

 

(失敗した、他にもいたなんて……しかもこの距離、重巡。最悪戦艦クラスかも……)

 

 早く後退しなければいけないのに、痛みで身体が動かない……嫌、こんなとこで沈みたくなんてないのに……ゴメン、ブリュッヒャー。ゴメン、オイゲン――

 

(ゴメン、バカ指揮官――)

 

――再度風切り音が響く――モーターの音が聞こえる……そして、きっと次の瞬間には私は炎と轟音に包まれ……

 

――バシャア!!

 

(……水? なんで水が降りかかって……)

 

 一拍置いて轟音がやってくる。言葉通り、鋼鉄を切り裂く徹甲弾が……あれ?

 

「私、無事じゃない……?」

 

「バカっ!! 呆けてないで早く乗れ!!」

 

 頭上からバカ指揮官の声がする……それに目の前にはバカ指揮官と乗ってたボートが……って!

 

「あ、アンタバカじゃないの!? そのオンボロボートで前線に出てくるなんて! てか被弾してるじゃないの!」

 

「そう思うなら早く乗れ! 次撃たれたら死ぬぞ!」

 

 次? そうだ私、敵重巡の砲撃を食らって、それで――コイツが、守ってくれたの……? と、とにかく今は指示に従うわ。バカ指揮官の言う通り、次撃たれたら本当に沈みかねない。

 

「乗ったわ、出して!」

 

「よし、このまま反転――伏せろっ!」

 

 考えるより先に身体が動いた。身を屈めて伏せる――どうやら間に合わなかったようね。きっともうすぐ――すぐに轟音が辺り一面に響いた――後方から――

 

「どうなってるのよ、全く……ちょっと、指揮官!」

 

「俺も分からねえよ! 敵セイレーン重巡が撃たれたってことしかな!」

 

「まさか、そんな……」

 

 そう呟いたとき、遥か上空を飛ぶ何かに気づいた。あれは確か――でも、私の意識も途切れてきて――

 

 

「最低限のデータ収集だけして帰投する。ワスカラン、ボートの応急処置を頼む」

 

了解(ヤー)……指揮官、どう思う?」

 

「どうもこうも……重巡を一撃で吹き飛ばしたんだ、戦艦クラス。もしくは砲艦かポケット戦艦でもなければ無理だ」

 

 どういうわけかセイレーンは轟沈した。だが付近に味方はいないはず、同士討ちなんてことはセイレーンに限ってない。とするとまさか……

 

「指揮官、あれを!」

 

 上空を見上げたワスカランの叫びに応じ暗闇へ目を向ける。そこには確かに飛行機が見えた。

 

「艦載機!? マズイ、対空配置!」

 

了解(ヤー)!」

 

 艤装を展開するワスカラン。戦闘能力皆無に等しい。それでも最低限レベルの対空能力は持っている。どのみち他に手立てもない、今はワスカランに頼るしかない……

 

 ………………………………………………

 

「仕掛けてこないな……」

「あれは戦闘機だよ、すぐに攻撃隊がやってくる。だから指揮官は安全なところに……」

 

 周囲を旋回する戦闘機を睨みながら時間だけが過ぎていき――漆黒の空に突如光が灯った。

 

「十時方向、照明弾だ!」

 

「照明弾だぁ!?」

 

 だが確かに不自然な灯りだ。旋回していた戦闘機が十時方向へ去っていく。恐らく、あそこに空母でもいるのだろう。灯りの下には人影が二つ。片方は禍々しい砲塔と飛行甲板を持つ者。恐らくあれが空母か。そしてもう片方は旗を掲げ――灯りが消える直前、二人がこちらを向いたような気がした。

 

「――――戦闘終了、オンボロの応急処置に移ってくれ。終わり次第今度こそ帰投だ」

 

「しかしまだ敵が」

 

「大丈夫だ、仕掛けてはこない――仮に仕掛けるなら既にやっているだろ?」

 

 突然の命令に敵を見逃す発言。普通なら文句の一つでも出そうだがワスカランは素直に従ってくれた。

 

了解(ヤ-)。だが指揮官、あれは一体……」

 

「――“偉大なる鉄血(グロース・アイゼンブルート)”」

 

 

 

「Me-155Aの格納を確認した」

 

「そうか。なら帰投する」

 

 横に立つ彼女の報告を聞き踵を翻す。もうここにいる理由はなくなった。ここには先ほど私が撃破した重巡を含めたセイレーン部隊の追撃で来ただけだ。連合の部隊がいることは想定外だったのだけれど――

 

「ふむ……あれが卿の言っていた指揮官か」

 

 私のすぐ横を走りながら彼女が問う――そう、彼だった。まさかこんな前線近くにいるとは思っていなかった。でもあの場をなんとか切り抜けられたようね……

 

「中々豪胆な者のようだ。身を挺して艦船少女を守るとは」

 

「彼は艦船少女の意思を尊重している。きっとあの子とも良好な関係を築いているのでしょう」

 

 素直になれずつい口が出てしまうあの子がすんなりと指示に従っていたように見えた。にしても、無茶がすぎるようだけど……

 

「そのことで一つ気になることがある」

 

「何かしら」

 

「彼の者のボートの中に見慣れぬ艦船少女がいた。歪な魂の持ち主。我と違い、未完ではなく歪められた存在というべきか」

 

 そう、そんな存在を造りだしてしまったのか、連合は……例の計画のこともある、より詳細な情報がほしいところではあるのだけれど――

 

「“伯爵”、彼のボートを追うことは可能?」

 

「不可能だ、既に距離がありすぎる。が、次の機会があれば出来よう」

 

 次――手札はある。が、それを切るべきか否か……

 

「何を悩む、“宰相”殿。我らは理想を追い求める狂人。卿はその頂点に立っているのだ。ならば卿の判断に是非を問うことはない。進む、それしかないのだ」

 

「そうか、そうだな……帰投する。ハイル・デム・ファーターラント。ジーク・グロース・アイゼンブルート!」




 ヒッパーちゃん大活躍! バカバカマヌケ言わせることが出来て大満足。やっぱヒッパーの罵倒は、最高やなって。

・Me-155A
(ス)クラップ戦闘機。クソ雑魚。素直にヘルキャットかコルセア積んで、どうぞ。装填速度最速という利点があったがそれさえも産廃兵器スカイロケットに持ってかれてしまった。

・ドイツ語
無駄にカッコイイ。ヤーはルビ振ってるからええでしょ。ハイル・デム・ファーターラントは祖国万歳。ジークは勝利。

・宰相殿
イッタイナニキュウセンカンイチバンカンナンダ……

・伯爵
ドイツ語で伯爵はグラーフ。グラーフとつく鉄血といえばグラーフ・ツェッペリンとアドミラル・グラーフ・シュペーがいる。ちなみにアドミラルは提督の意。つまりツェッペリン伯爵とシュペー伯爵提督となる。
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