技名を叫んでから殴る、蹴る、切る、穿つ、縛る、撃つヒーローアカデミア 作:やはり綾鷹
って、エロいよね(中学生脳)
「動くなああ!!動けば人質の首が花火みたいに空飛ぶぞぉ!」
超常社会に沸き出る、一つの黒い染み。人ならざる超常能力を用い、犯罪に手を染める悪党。
そして今、『7』のマークが輝くコンビニのレジ奥に、THE・
敵の超常能力ーー個性は『刃獣』。体の一部が鋭利な刃物に変容した、様々な獣を生み出し、使役する個性だ。空には刃の鳥が、店内と店外には牛、馬、鶏、犬、猫などの様々な刃獣が群れをなし、ヒーロー達の店内への侵入を阻む。加えて人質となった店員の首元には、巨大な鷲が刃の翼を当てている。
近づく事は難しく、たとえ近づけても店員の命はない。
「ん〜ふふ、そうだ、それでいいんだよ。道あけろ!こいつが殺されたくないし、お前らも死にたくねえだろ!?ヒーロー!」
意地の悪い笑みを浮かべ、人質をとったまま悠々と
チャンスと思い動くヒーローがいたが、しかしその動きは一瞬で止まる。なぜなら、
(くそ…!また逃しちまうのかよ…ッ!)
(誰か、誰でもいいから現状を打破できる個性を持ったヒーローはいないのか!?)
市民の安全を脅かす犯罪者が、正義のヒーローである自分たちの前を悠々と、まるで食後の散歩か何かのように通り過ぎていく。
守りたくてなった憧れのヒーロー。しかし現実は厳しく、守ることができなかった。
悔しくないはずがなく、ヒーロー達は歯を食いしばり、拳を固く握り、ただただ己の無力さに体を震わせる。
「っふ、ふふふ。あーはははははは!!!ヒーローって、弱ぇえええええ!!!!」
配下の獣を引き連れ、無人の野を歩くその姿は、ヒーローを下した悪の王のように見えた。
その時だった。
「待ちたまえ」
「……あん?」
そのうちマスクとサングラスのほうが、敵に疑問を投げかける。
「申し訳ないが、今の状況を教えて欲しい。これは、一体なんなんだ。どうして君は不思議な動物たちを連れ、ヒーロー達に頭を下げさせ歩いている。君は、そんなに偉いのかね」
「クラウス。君、純粋にもほどがあるよ」
どうやらマスクの大男は、よこの傷顔と違い現状を全く理解していないらしい。
そんな空気の全く読めていない言動に、ヒーロー達はみな男を睨みつけ、青い顔をして顔を勢いよく左右に振る。余計なことをせず、下がっていてくれと言いたげな顔で。
「…ああ、そう。そうなんだよ。俺、偉いんだよね。だからヒーローの皆さんがこうして道を作ってくれてるわけ」
しかし
「なるほど…そうでしたか。して、一体何をなされているので? ヒーローにここまでさせるなど、いくら俗世に疎い私でも名前くらいは知っていると思うのですが…」
「あえて言うなら、そうだなあ…強盗王だよ。
「な…っ!?」
「させると思うかよ!」
ヒーロー達がホッとしたのもつかの間、
だが
「ああ、別に動いてもいいぜ。でも、人質はまだ俺の手元にあるんだぜ?あのガキを救いたいならそうしたらいいが、そうしたら人質は死ぬ。どっちの命を選ぶか、よ〜〜く考えとけ」
「っ、てんめぇ…!どこまで腐ってんだ!!このクズが!!」
「…あーあ、ヒーローさんがそんな汚ねえこと言っちゃあいけねえよ。幻滅だ。幻滅だなぁ、あーあ、ガッカリだわ。もうそんなヒーローいらねえよ。食っちまえ」
その瞬間、刃獣達が一斉に行動を開始する。空から急降下する刃鳥の群れ。刃の尾、角、爪、牙を鈍く光らせ飛びかかってくる大小様々な獣達。
「やべ…っ!」
「こんの野郎!」
「総員戦闘態勢にーー」
「動いてもいいけどよぉ!!人質忘れてねえかぁ!?おい!!」
「ーーっ!」
動けば人質が死に、動かなければ自分たちの命がない。
「っ、くっそおぉぉぉ!!!!」
自分の命か、人質の命か。
ヒーローとして動くか、人として動くか。
どちらを取っても、何かを失う。
「––––エスメラルダ式血凍道。
目の前にまで迫っていた「死」は、全て凍りついた。
刃獣は全て凍りつき、鳥たちは凍ったまま落下したせいで砕けている。大型の獣はまだ意識があるが、小型の獣になると意識ごと体の芯まで凍っている。
先程まで、殺伐とした空気が漂っていた現場が、今では可視化された冷気と獣の氷像で彩られた不思議な銀世界に変貌していた。
「…お、おれの、おれの可愛い動物たちが……誰の仕業だよオイ…!ああ…!?」
理解の追いつかない現状に、
だが、周りのヒーローが捕縛せんと動き出す前に、敵は怒りの炎を燃やし始めた。そして誰が答えるわけでもない疑問を、怒りのままに吐き出す。
「僕だよ、僕。仕事なもんでね」
本来なら、誰も答えなかったし、答えられるはずもない敵の独り言のような疑問。仮にこの景色を作ったヒーローがいたとしても、まず敵を刺激するわけにもいかないので答えはしないだろう。
だが、答える者がいた。
それは、後方のコンビニ前でコーヒー缶片手に立っている、傷顔の男だった。
「てめぇかぁあぁああああ!!!『刀獣・特大』!!!」
象は大きな地響きを立てて降り立つと、怒りに染まった瞳で大男を見据え、身の毛もよだつような怒号を発した。
「テメエは絶対に殺すぞクソがぁ!!! 行けぇエレちゃん!! あいつをすり潰せ!!切りきざめ!!とにかく殺せええええ!!!」
『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎–––––ッッッ!!!』
「––––ブレングリード流血闘術。押して参る」
象の最高速度は40から50キロだ。大型の獣の中では鈍重なほうではあるが、人間からしてみると爆速で突っ込んでくる巨大な弾でしかない。しかも初速からわずか数秒で最高速度に達するため、それこそ速度を上げるような個性がなければ避け切ることはできないだろう。
だからこそ、
どう動こうが、お前の個性では対応できないと。たとえ凍らせようとしても、その前に象はお前を殺すと、悠長にほざいていろと、そう思っていたのだ。
だが、違った。
大男は、いつから装着していたのか、銀に輝く十字架を模したメリケンサックのようなものを左手に装着していた。
「ブレングリード流血闘術、117式。
拳を振りかぶる男。左手に装着された十字架型のメリケンサックから溢れた大量の血。そして、その血で形成された、巨大で禍々しい紅い髑髏の十字架を。
『––––––』
悲鳴はなかった。何かを叫ぶ前に、象は消えた。自分以上に大きく、自分以上に硬く、自分以上に早い、紅い十字架に押しつぶされた。
象は力比べをする間もなく、競ることもなく、正面から一気に押しつぶされた。何十メートル、何百メートルも先のマンションまで叩き込まれ、粉々に砕かれた。
「……うそだろ……おれの…えれちゃん……」
状況や態度から見て、あの象が
人質もいなくなり、厄介な刃獣もいなくなった今、ヒーローが一斉に取り囲み、
そんなヒーローが処理に追われる中、大男は今しがたやってきた警察に保護されている、先程まで人質に取られていた店員の元へと急いでいた。
「お怪我はありませんか」
「え、あ、はい。その…ありがとうございました!」
「お気になさらず。これもヒーローとしての仕事です。ほら、クラウス。安否も確認できたんだし、早く行くぞ。今日は会食の予定があるだろう」
「ああ、そうだった。それではこれで」
「ま、待ってください!!……その、よ、よろしければ、ヒーロー名を教えてもらえないでしょうか…?」
二人は、少し考えた後に答えた。
「私はクラウス。ヒーロー名も、本名もクラウスです」
「僕はクラウスのサイドキック。同じく、ヒーロー名も本名もスターフェイズさ」
言い忘れていたが、これは、敵っぽいヒーロー第一位、大型事務所『ライブラ』を束ねるヒーローであるNo.3ヒーロークラウス・V・ラインヘルツのような男の、ちょっと変わった物語である。
▶︎
私の名前はクラウス・V・ラインヘルツ。年齢は28歳で既婚者、趣味は園芸、職業はヒーローだ。
ここまででわかる人はわかるだろうが、私は転生者である。
生前、普通に生きて普通に老衰してこの世を去り、仏様に出会ってお願いを聞いてもらってここにいる。仏様からは「普通70近く生きたら極楽でのんびりする事を願うのに、君はわざわざ転生したいだなんて変わってるね」と言われた。知らんよそんなん。
だって、これはずっと夢だったのだ。第二の人生とか絶対に楽しいに決まっていると、生きていた頃はずっと思っていた。
なぜかと言うと、人生経験が全く違うからだ。
私の精神年齢は28+76歳。老獪で老練な、身体能力が馬鹿高いとんでもおじいちゃんなのだ。今の私のポジションは、漫画に出てくるめちゃくちゃ強いおじいちゃんキャラクターなのだと断言できる。
人よりも人生を一回多く歩んでいるのだ。社会の生き方や効率のいい勉強法、処世術などは熟知している。
それに加えて、この世界には『個性』というものがある。私がもともと生きていた世界では飽くまで妄想でしかなかったアレが、この世界では普通に使える。しかもそれを利用した、国民的職業まで用意されている。
利用する以外に手がない。
というか、利用云々を置いて、普通に憧れる。
ヒーローとか、ぶっちゃけ私のためだけにあるような職業じゃん。
人生ベリベリイージーモード。
アイアンマンにでもなろうかなーオホホホホ。
そう思っていた時期が私にもありました。
いざこの世界を生きると、面倒くさい事がとても多い。
まず、私の体。基本スペックがアホみたいに高いという事はとてもいいことだ。しかし、問題は顔と持って生まれた不運。
どういうわけか、私の周りでは面倒な事件が多発し、それに巻き込まれてしまう。なんやかんやとそれを解決すると、周りが勝手に勘違いして私を奉まつる。
気づいたら、私はいつの間にか事務所をたちあげて社長になっていた。
次に、個性。
もー、本当に、面倒くさい。私の個性は『血闘』。これは、私が60代のときに流行った漫画、血界戦線の主要キャラが使っていた能力だ。クラウスもこの漫画のキャラクターである。
血闘術の種類は様々で、ブレングリード流血闘術、エスメラルダ式血凍道、斗流血法、954血弾格闘技などのさまざまな流派に別れた血闘術がある。基本戦闘にも使えるが、本来の役目は対吸血鬼用の戦闘術。特別な術式を付与した血液を送り込むことで、遺伝子レベルでぶち殺す吸血鬼絶対殺す技だ。
私はこれを、個性として受け継いだ。
使える流派はブレングリード流血闘術。詳しいことは一切わかっていないが、時間操作系統に属する血闘術だ。
確かに強い。強い分、疲れる。血をドバドバ出すわけだし、 輸血パックを持ち歩いたりとにかく血液になるものばかりを食べている。
しかも、使い過ぎたら死ぬ。貧血でも人は死ぬんだって。知ってた。
そんなこんなで悪戦苦闘し、なんとか今は安定した生活を送れている。
しかし、敵顔に加えてこの体格。+扱う個性が血液と、世間からはとても怖がられている。
ああ、一体どうしてこうなったのか。
私はただ、平和にイージーに過ごしたかっただけなのに。
「クラウス、仕事だ」
はいはい、今行きますよスティーブン。正義を執行しなくちゃね。
今日も今日とて、私は胃を痛めながらヒーロー活動に専念するのであった。
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