再び始まる聖杯戦争。
それに呼び出されたのは、慎二だけではありません。
当然、あの女性もマスターとして呼ばれています。
カードデッキを受け取った慎二ですが、まだ英霊との契約が済んでいません。
そんな慎二の前に、襲い来る影が……
冬木市の新都にある言峰教会。
そこにこの地の霊脈の管理者である女性魔術師が訪れ、神父である“言峰綺礼(ことみね きれい)”に激しく問い掛けていた。
「いったいどういう事なの?」
「どうもこうも無い。聖杯戦争が、再び始まったというだけだ」
「だから!何でこの冬木でまた、聖杯戦争が始まるのかって聞いてんのよっ!」
その女性は遠坂家の六代目当主である、“遠坂凛(とおさか りん)”であった。
彼女は高校卒業後、魔術協会の総本山であるイギリスの時計塔に入学していた。それが一通の招待状により、急遽この地に呼び戻される事となった。それはもちろん衛宮士郎からの、今回の聖杯戦争への招待状であった。
「六年前、衛宮切嗣によって冬木の聖杯は完全に封印されたわ。もうこの地では、聖杯戦争は起こり得ないんじゃなかったの?」
「私に言われても困る。聖杯戦争を復活させたのは切嗣の息子……もっとも、実の息子では無いがその衛宮士郎だ。切嗣の封印を、何らかの手段で解除したのであろう?」
「それは無いわ!」
凛は、即答で言い切った。
「ふん……気付いていたか?」
「当然でしょ?私はこの地の霊脈の管理者よ!封印が解かれれば、直ぐに判るわ!この地の聖杯は、未だに封印されたままよ!」
「しかし、衛宮士郎の言う聖杯は本物だ。事実英霊が召喚され、その力を発揮出来ている。今迄の冬木の聖杯戦争のサーヴァントとは、大分システムが違うがな。更に冬木市全体に、“Unlimited Mirror World”等というとてつもない固有結界を発生させている。こんな事は、とても一人の魔術師に出来るレベルでは無い。それこそ、聖杯の力でも使わなければな」
「衛宮くんは、貴方の所にも来たの?」
「無論だ。今は任を解かれたが、元々私はこの地の聖杯戦争の監督役だからな」
「それで、聖堂教会には報告したの?」
「出来る筈が無かろう?実際には、この地の聖杯は封印されたままなのだ。何をどう説明するのだ?報告するのは、最低でも状況を把握出来てからになるだろう。それは、お前とて同じではないのか?」
「確かにそうよね?……お邪魔したわね」
そう言って、凛は教会を出て行こうとする。
「待て凛!お前も、この聖杯戦争に参加するのか?」
綺礼の言葉に、足を止めて振り返る凛。
「何?もう貴方は監督役じゃ無いんでしょ?報告の義務があるのかしら?」
「聖堂教会に属する者としては、状況は確認する義務があるのでな。」
「……私も同じよ。この地の管理者として、私抜きで勝手な事はさせないわ!」
そう言って凛は、赤いカードデッキを取り出して綺礼に向けて翳す。そしてそのまま、教会を後にするのだった。
冬木市の新都にある総合病院。
その一室で、間桐桜が眠っている。ベッドの脇の椅子には、項垂れた慎二が座っていた。
桜は、完全な昏睡状態だった。かろうじて生きてはいるものの、意識は全く無い。体全体にこれといって異常は無いのだが、生命力が極端に低下してしまっていた。病院でも手を尽くして調べたが、原因は解らず治療のしようも無かった。
「さ……桜……」
慎二は、まだ決心がつかなかった。
桜を助けるには、聖杯戦争に勝ち残って聖杯を手に入れるしかない。だがその為には、他の六人のマスターを殺さなければならない。正確には相手のカードデッキを破壊してクラスカードを奪えば良いのだが、戦闘は常にミラーワールド内で行われる。カードデッキが無くなればミラーワールドからは出られなくなり、その者は当然死ぬ事になってしまう。そしてその死闘を行う相手の内の一人は、紛れも無く自分の親友の衛宮士郎なのだ。
“桜は衛宮と戦う事が……衛宮を殺す事ができないと、自分が死ぬ道を選んだ……いや、ちょっと待て?そもそも、何で桜はこんな戦いに参加したんだ?いったい桜は、聖杯に何を望むつもりだったんだ?”
「……っ?!」
その時ふと、病室の窓を何かが過る。慌てて慎二はそちらを向くが、そこには何も映っていなかった。
“ん?……今、誰かが覗いていなかったか?”
慎二は立ち上がって、窓に寄って行く。窓からは、外の景色が見えて来る。
“……そんな筈無いよな?……ここ、四階だもんな……”
多分気のせいであると思い、慎二はそのままお手洗いに行く。
用を足してから手を洗おうと、慎二は洗面台の前に立つ。すると……
「?!」
目の前の鏡に、自分の姿が映る。それは当然なのだが、その背後に女性の姿が映っていた。薄紫色の長い髪をして、黒いボディコンスタイルの非常に色っぽい女性だ。ただ何故か自分の目を、目隠しで覆ってしまっている。
“えっ?……ここ男子トイレだぞ!”
慎二は驚いて振り向くが、後ろには誰も居なかった。
「なっ?……何っ?」
そこで再び前を向くが、鏡にはやはり慎二の後ろにその女性の姿が映っている。
「ま……まさか?……」
それが桜の呼び出したサーヴァントだと気付いた時、彼女は鏡の中から慎二に攻撃を仕掛けて来る。いきなり鏡の中の女性は、彼にナイフのような物を投げ付けて来た。それは鏡から飛び出して来て、慎二の眼前に迫っていた。
「うわあああああああああああっ!」
咄嗟に叫んで、慎二はその場に屈み込んだ。ナイフは慎二の頭を霞めて、勢い良く背後の壁に突き刺さる。その柄には鎖が付いていて、放たれた時と同等のスピードで素早く鏡の中に戻って行く。そして今度は、屈んだ慎二に向かって第二撃が放たれた。
「のぉわあああああああああっ!」
今度は真横に転がって、必死にその攻撃を躱す。ナイフはまた直ぐに鎖により引き戻され、また慎二が避けた先へと放たれて来る。
「ひっ!ひぃいいいいいいいいいっ!」
とにかく慎二は、ひたすら懸命に逃げ回った。だが狭いトイレの中なので、徐々に逃げ場が無くなり追い詰められていく。
「そ……そうだ!」
そこで慎二はカードデッキを取り出し、腹部に当てて装着する。
「へ……変身!」
そして何も描かれていないクラスカードを、デッキへとセットする。慎二の体が、灰色の軽装のバトルスーツに包まれてく。
「こうなりゃ一か八かだ!」
慎二はそのまま、鏡の中に飛び込んで行った。造りは全く外の世界と同じだが、ミラーワールドの中に入った慎二の前にはサーヴァントの女性の姿がはっきりとあった。
と、そこまでは良かったのだが、その先をどうしていいか慎二には判らなかった。
“えっと……け……契約って……どうするんだ?”
戸惑う慎二に、サーヴァントは再び攻撃して来る。
「ぐわああああああああっ!」
サーヴァントの放ったナイフが、慎二の左腕に突き刺さった。軽装のバトルスーツ程度では、超人的な力を持つ英霊の攻撃を防ぎ切れなかった。
更に攻撃を加えようとするサーヴァントに、慎二が叫ぶ。
「ま……待ってくれ!……ぼ……僕と……契約してくれ!」
するとサーヴァントは一旦攻撃を止めて、静かに慎二に言い放つ。
「何故?私が貴方と契約しなければならないのですか?」
「えっ?」
「私を召喚したのは桜です。貴方では無い……」
「だ……だから!……ぼ……僕が、桜の代わりにマスターになったんだ!そ……そういう訳だから……」
「それは、貴方の都合でしょう?私には関係ありません!」
「へっ?」
再び、彼女は慎二を襲って来る。鎖付の杭のようなナイフが、またも慎二目掛けて飛んで来た。
「うわあああああああああああっ!」
慎二は必死になって飛び避け、ドアを開けて転げるように廊下に飛び出す。サーヴァントもそれを追って廊下に飛び出し、また慎二に攻撃を浴びせて来る。
「ひぃえええええええええええっ!」
とりあえず慎二は、逃げるしか無かった。元々戦闘の経験等は無いし、戦いたくとも未契約状態では何の攻撃手段も持っていなかった。
廊下を駆け抜けて、階段を駆け下りて、病院の外まで逃げ出して来る慎二。ただミラーワールド内なので、外に出ても周りには人っ子一人居ない……と、思われたのだが……
「何だ?まだ英霊と契約していない、間抜けなマスターが居たのか?」
何処からともなく、そんな声がする。
「えっ?」
慎二は、慌てて辺りを見回した。しかし、何処にも人の姿は無い。
「何処を見ている?ここだよ!」
その声は、上の方から聞こえて来ていた。慎二は顔を上げ、空を見上げてまた驚いた。
「なっ?!……」
上空には昆虫のような仮面で顔を覆い、緑色のバトルプロテクターに身を包み、蝶のような羽を広げた何者かが浮かんでいた。
「お……お前も……マスターなのか?」
「そうだ……私のクラスカードは“キャスター”。英霊の力を宿して変身しているから……そうだな、“仮面キャスター”とでも言ったところか?」
「か……仮面……キャスター?」
「無契約のマスターを襲うのはルールに反するかもしれんが、このような好機を見逃すほど私もお人好しでは無いのでね……死んでもらうぞ!小僧!」
キャスターは浮遊したまま、一枚のカードを腹部のデッキにセットする。
『Shoot Vent!』
電子音に続き、キャスターの周囲に幾つもの魔方陣が出現する。そしてその魔法陣から、無数の光弾が慎二に向かって放たれた。
「うわあああああああああっ!」
慎二は慌てて、その光弾を避けて走り出す。光弾は地面に食い込んで、彼の周りに次々と大きな爆煙を噴き上げていく。慎二はまたしても、必死になって逃げ回る羽目となってしまう。
「な……何で僕が?……こ……こんな目に……」
光弾はひとつひとつが凄まじい威力で、命中した箇所は大きく抉られてしまっている。今の慎二の貧弱な軽装では、直撃を喰らえばひとたまりも無いだろう。
「う……うわっ!」
しかし運悪く、慎二は躓いて派手に転倒してしまう。
「ふっ……そこまでだな?死ねっ!」
俯せに倒れ込んでしまった慎二に、遂に光弾が命中する。彼はそれを受けて、凄まじい爆炎に包まれてしまった。
「ぎゃああああああああああっ!」
だが大きな爆炎が晴れた時、慎二の体は消滅してはいなかった。
地面に突っ伏して倒れたままであるが、まだ五体は満足で意識も残っていた。
「うっ……ううう……」
今のバトルスーツは貧弱な軽装ではあるが、かろうじて慎二の命だけは護ってくれたようだ。もっとも、キャスターがまだ本気で無かったという事もあるのだが……
キャスターは、そんな慎二の前にゆっくりと降り立った。
「……っ」
慎二は、無言で倒れたままだ。
「ふん!まだ息があるようだな?……どうだ?話によっては、助けてやらん事も無いぞ?」
「……な……何?」
「カードデッキをこちらに渡せ。素直に敗北を認めれば、命だけは助けてやろう」
「ば……ばかを言うな……こ……ここで、カードデッキを失えば……」
「消滅してしまうか?……それは心配するな。私が、お前を元の世界に連れ戻ってやる」
「な……に……」
「信用出来んか?だが、拒んでもここで殺されるだけだ。それならば、信じるしか無いと思うがな?」
確かにこの状況下では、要求を呑まなければ絶対に助からない。だがしばしの沈黙の後、慎二は顔を上げて言い切った。
「こ……断る……」
「何だと?このまま、私に殺されたいと言うのか?」
「それも……ご……ごめんだ……」
「はあ?」
「ぼ……僕は……負けられ……ない……」
慎二はそう言いながら、何とか体を起こす。まだ立ち上がれはしないが、跪いた姿勢でキャスターを鋭く睨み付けながら続ける。
「さ……桜を……桜を助ける……そのためには……僕は、絶対に負けられないんだ!」
「ほざくな!そんなザマで、どうやって私に勝とうというのだ?そんなに死にたいのなら、今直ぐに殺してやる!」
キャスターは周囲に再び魔法陣を発生させ、慎二に向けて容赦無く光弾を放って来る。
「……っ?!」
今の慎二には、もうそれを躱す事も出来なかった。固く目を閉じて、悔しさに唇を噛みしめる慎二。
しかしその時……
「何っ?!」
光弾が命中する直前に、突如黒い影が横切って慎二を連れ去って行く。目標を失った光弾群は、地面だけを抉ってその場に大きな爆煙を噴き上げた。
「き……貴様は?……何者だ?!」
キャスターは即座にその黒い影を視認し、そこに目掛けて更なる光弾を放つ。しかしその影は非常に素早く、巧みに光弾を躱して病院の裏手の方に逃げ去ってしまう。
「ちっ!……逃すかっ!」
慌ててキャスターは、その影を追って再び上空へと飛び上がって行く。
病院の裏手を少し進んで、草むらの陰に入った所で黒い影は慎二をその場に降ろした。
「うっ……うわっ!」
慎二は尻餅をついた姿勢で、ゆっくりと自分を助けてくれた者の姿を見上げる。
「お……お前は?!」
それは先程慎二を襲った、髪の長いボディコン姿の女性サーヴァントだった。
「な……何で?……僕を……」
彼女はもう敵意は見せずに、穏やかに慎二に問い掛けて来る。
「先程の言葉は、本当ですか?」
「え?……先程の……言葉?」
「桜を……助けると……」
「あ……ああ……ほ……本当だ!桜は僕の、たった一人の妹なんだ……ぜ……絶対に助ける!……し……死なせてたまるもんかっ!」
ほぼやけくそ気味に、慎二はそう吠えた。
「そうですか……ならば、目的は一致しました。貴方と契約を結びましょう!」
「へっ?」
そう言うと同時に、サーヴァントの体が激しく輝き出す。光はたちまち彼女の全身を包み込み、更に広がって慎二までも包み込んでしまう。
「うわっ!……な……何だっ?!」
その光が治まると同時に、慎二の変身が一旦解かれてしまう。そして慎二の右手の甲に令呪が刻まれ、その掌には“騎乗兵”の絵が描かれたクラスカードが乗せられていた。
「こ……これは?……ら……ライダーのクラスカードか?」
更に慎二の腰に装着されたカードデッキの色が、濃い紫色に変わっていた。
「こ……これで……僕は……ライダーの力を使え……うわあああああああっ!」
そう言い掛けた所で、凄まじい爆風に吹き飛ばされてしまう慎二。
「くっ……」
何とか立ち上がった彼の前に、再びキャスターが姿を現した。
「見つけたぞ!こぞ……何っ?!」
キャスターは、慎二のベルトの色が変わっている事に気付く。
「お前……契約を果たしたのか?」
すかさず慎二は、ライダーのクラスカードをデッキにセットしながら叫ぶ。
「変身!!」
『Install……Rider!Medusa!』
電子音のメッセージと共に、カードデッキを起点に慎二の体に濃い紫のバトルプロテクターが装着されていく。最後に頭部をコブラの頭を模った仮面が包み、巨大なバイザーがその眼部を覆った。
「仮面……ライダー……だと?!」
契約を交わし英霊の力の宿った鎧を纏った慎二は、“仮面ライダー”となったのだ。言うなれば、仮面ライダー・メドゥーサである。
「行くぞっ!」
仮面ライダーは、仮面キャスターに向かって突進して行く。
「ぬうっ!……く……喰らえっ!」
キャスターは再び周囲に魔法陣を発生させ、無数の光弾をライダーに放つ。だがライダーは素早い動きで光弾を悉く躱し、一気に間合いを詰めて来た。
「うおおおおおおおおおおおっ!」
そしてキャスターに向かって、渾身のパンチを放った。
「ぐぅはあああああああああっ!」
胸に激しい火花が飛び散らせ、キャスターは派手に後方に弾き飛ばされてしまう。そうして数メートル先の地面に、思い切り叩きつけられた。
「くうううううっ……な……何てパワーだ?……に……肉弾戦では……こっちが不利か?……」
キャスターはよろけながらも立ち上がり、再び羽を広げて上空に飛び上がった。
「よ……よくもやってくれたな?お返しだ!今度は手加減抜きで行くぞ!」
キャスターの背後に、先程の倍の大きさの魔方陣群が出現する。その魔法陣群から、より強力な光弾の雨がライダーに向けて放たれた。
「ふんっ!」
しかしライダーは目まぐるしく位置を変え、全ての光弾を難無く躱してしまう。
「お……おのれっ!」
そして今度は、ライダーの方が仕掛ける。一枚のカードを取り出して、デッキへとセットする。
『Attack Vent!』
電子音に続き、ライダーの両手に鎖のついた鉄杭が現れる。ライダーはそれを、上空のキャスターに向けて交互に放った。
「とおおおおおおおおおおっ!」
「ぐぅわああああああああっ!」
一本は何とか躱したが、もう一本に片方の羽を砕かれてキャスターは地面に落下してしまう。
「くぅううううううっ!」
キャスターは何とか起き上がったが、そこに間髪入れずライダーが突進して行く。一気に間合いを詰めたライダーは、キャスターに向けて怒涛のパンチを浴びせて来た。
「はあああああああああああああっ!」
「がぁはあああああああああああっ!」
全身に激しい火花を飛び散らせ、ほぼ棒立ちのサンドバック状態と化してしまうキャスター。そうして最後に強烈な一撃を受けて、またも派手に弾き飛ばされてしまった。
「がぁはあああああああああああああっ!」
キャスターは先程よりも遠くまで吹き飛ばされ、頭部から地面に落下して倒れ込んだ。
「ぐっ……う……ううう……」
さすがに今度は、直ぐに起き上がる事は出来なかった。
「さっきの言葉を、お前に返そう……大人しくクラスカードとカードデッキを渡せば、命だけは助ける」
ライダーは、未だに倒れたままのキャスターに言い放つ。
「な……なん……だと?……」
「もう勝負はついた……出来れば僕は、人殺しはしたくない」
「ふ……ふざけるなっ!……わ……私が……負けるかああああああああっ!」
怒りで気力を取り戻したのか、キャスターはふらつきながらも何とか立ち上がる。
「こ……この程度で……勝った気になるな!……い……今!……私のとっておきを喰らわせてやるっ!」
キャスターは決め技のカードを取り出して、よろけながらもデッキへとセットする。
『Final Shoot Vent!』
今度はキャスターの手前に、今迄には無かった巨大な魔方陣が出現する。そこにキャスターの全魔力が集中していき、魔法陣が激しく輝き出していく。
「くっ!馬鹿め!……ならば仕方無い!」
ライダーも必殺のカードを取り出し、すかさずデッキへとセットする。
『Final Vent!……Qubeley!』
電子音と共に、ライダーの顔部を覆ったバイザーが開く。そこに現れた魔眼が、眩いまでの輝きを放った。
「なっ?!……」
それによって巨大魔方陣が消滅したばかりか、キャスターの動きが完全に止まってしまう。
「ど……どうなって?……う……うごけ……ない……」
まるで石化したかの如く固まって、キャスターは全く身動き出来なくなってしまった。
「ライダーキック!!」
そう叫んで、ライダーはキャスターに向かって駆け出しながら大きく跳び上がった。上空で体勢を変えて、左足を曲げて右足を大きく前方に突き出した。跳躍の頂点から降下を始めると速度が加速され、足が空気を発火させて激しい炎を巻き起こす。その炎はライダーの全身に広がり、火の玉と化したライダーがキャスターに激突していく。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
「ぎぃやあああああああああああっ!」
キャスターが立っていた一帯が、凄まじいまでの爆炎に包まれてしまう。
するとその爆炎の中から、ゆっくりとライダーが歩み出て来た。彼の右手には、キャスターのクラスカードが握られていた。
数メートル離れた所でライダーは立ち止まり、爆炎の方へと向きを変える。激しい炎が治まっていった後には、変身が解けて衣服も体もボロボロになった一人の外国人の男が蹲っていた。
「お前は?……冬木の人間では無いな?」
「そ……そうだ……わ……わたしは……が……ガリ……アスタ……ろ……六年……前……魔術協会……から……だ……第五次……聖杯戦争の……ため……に……」
男の腹部では、カードデッキから激しい火花が飛び交っていた。そのデッキは直ぐに小さく爆ぜて、そのまま消滅してしまう。
「こ……こんど……こそ……せ……せいはい……を……この……て……に…………」
そこまで言って、男の体は崩れていく。煙のように……いや、塵のように消滅していった。
「……」
その様子を、ライダーはしばし無言で見詰めていた。
「ん?……」
そこでふと、ラーダーは自分の体も消滅し始めているのに気付く。指の先から、細かい塵のような物が噴き出し始めていた。
「や……やばいっ!」
ライダーは慌てて辺りを見回し、手近な窓を見付けてそこへ飛び込んだ。
「……っ?!」
病院の窓から飛び出して来たライダーは、その場に着地する。周囲には普通に騒音が戻っており、元の世界である事を実感する。そこでライダーは変身を解いて、元の慎二の姿に戻った。その右手にライダーのクラスカード、左手には奪ったキャスターのクラスカードを持ち、慎二は小さく呟いた。
「ぼ……僕はついに……ひ……人を……っ?!」
そこで突然、慎二は自分を見詰める視線の存在に気付く。慌てて振り返り、今飛び出して来た窓へと目を向けると……
「え……衛宮っ?!」
窓の中に……と言っても病院の室内では無く、窓ガラスの向こうのミラーワールドの中に、士郎の姿があった。
「ようやく契約を済ませたようだな?……ならば、後は戦うだけだ……」
そう言って、士郎の姿はミラーワールドの奥へと消えて行く。
「ま……待て!……衛宮っ!……変身っ!!」
慎二は再び仮面ライダーに変身して、ミラーワールドの中に飛び込んで行った。
だがしかし、もうその場には士郎の姿は無かった。
「衛宮っ!おい!何処だ?……衛宮あああああああああっ!」
その後いくら探しても、ライダーは士郎を見つける事は出来なかった。
< 仮面ライダー・メドゥーサ……次回予告 >
「あら?もしかして、間桐くん?」
「や……やあ……久しぶりだね、遠坂」
「ねえ慎二さん?お兄ちゃんは、一緒じゃ無いんですか?」
「え?」
「慎二さんや遠坂さんも帰って来てるなら、お兄ちゃんも一緒かなって思っちゃって……」
「ま……待てよ!遠坂!……ほ……本当に、僕と戦う気なのか?」
「遠坂と間桐は、昔から聖杯戦争で必ず戦う運命にあるのよ!覚悟を決めなさい!慎二!」
「な……何だ?……あのデカブツは?」
「ま……まさか?……バーサーカー?!」
『GUOOOOOOOOOOOOOOOO!』
『戦わなければ、生き残れない!』
そんな訳で、メドゥーサと契約を果たした慎二は、晴れて“仮面ライダー・メドゥーサ”となったのでした。龍騎じゃなくて王蛇に近いので、正義の味方というより悪役っぽいですが……
そして仮面ライダーの決め技は、やっぱり“ライダーキック”しか無いでしょう。
ここは外せません!
石化の魔眼で相手の動きを止めて、魔力を足に集中させてキックで敵を粉砕する。(超電磁竜巻~超電磁スピンの流れみたいな)
しかし、英霊のメドゥーサの出番は、これで終わりなんです。
以降は慎二の道具と化します……すみません。
Fate原作のUBWルートでは、ライダー陣営はキャスター陣営に早々に潰されますが、そのリベンジを果たしました。(なんちゃって)
ちなみに、ライダーのクラスカードを使っているのは慎二だけだから、“仮面ライダー”は慎二だけです。
キャスターは“仮面キャスター”なので、士郎は“仮面セイバー”ですね。(仮面ライダー・セイバーではありません)
では凛は?……“仮面アーチャー”ではありません。話の都合上、英霊エミヤはこの話には出て来ませんので。
第二話も内容はほぼ変わりませんが、全体を書き直しました。