士郎を探し、衛宮家を訪れる慎二。
そこで、懐かしい凛と再会します。
そして凛もマスターである事を知り、戦いになります。
ところが、そこにもう一人の敵が……
僕はライダーのサーヴァントと契約を交わし、その力を駆使してキャスターのマスターを倒した。これで僕も、正式にこの聖杯戦争に参加した事になってしまった。
だが僕はまだ、色々な意味でこの戦いに納得がいっていない。
衛宮は何故?このような形で聖杯戦争を復活させたのか?あいつの目的は何なのか?どうしてあいつは、あのように変わってしまったのか?そして今、あいつはいったい何処に居るのか?
そんな疑問を抱えながら、僕は衛宮の家の前まで来てしまっていた。
今衛宮は、果たしてこの家に居るのであろうか?妹の美遊ちゃんは、藤村先生の家で面倒を診てもらっていると聞いた。もし衛宮が居ないのなら、ここは空き家になっている事になるのだが……
「あら?もしかして、間桐くん?」
「えっ?」
そこで急に後ろから声を掛けられ、僕はゆっくりと後ろを向く。
「ああ、やっぱりそうだ……お久しぶりね」
その顔を、僕が忘れる筈は無い。
幼い時から僕は、ずっと彼女に憧れていた。しかし間桐家の長男という立場が枷となって、素直になれずいつも彼女とは少し距離を置いて接していた。
彼女はこの地の霊脈の管理者である、遠坂家の六代目当主“遠坂凛”だ。
「や……やあ……久しぶりだね、遠坂」
緊張して、声が少し上擦ってしまう。
「どうしたの?こんな所で……今は、東京に住んでいるって聞いていたけど……」
「あ……ああ……じ……実は、衛宮に呼び出されてさ……だけどあいつ、待ち合わせ場所に全然来なかったから……」
慌てて僕は、適当に話を取り繕った。
「ふうん……そうなの?」
その時何故か、一瞬遠坂の顔色が変わったような気がした。
「と……遠坂こそ、どうしてここに?君は確か、イギリスの時計塔に入学したって聞いていたけど……」
「私も……衛宮君に呼び出されたのよ」
「えっ?!」
何だって?……と……言う事は……
遠坂は一流の魔術師で、この地の管理者でもある。それを衛宮が呼び出したと言う事は、当然彼女も……
「ん?……どうかした?間桐くん?」
青ざめて黙り込む僕に、遠坂が疑念を抱いて来る。
「あ……い……いや……な……何でも無いよ……そ……それより、“間桐くん”は止めてくれないか?僕はもう、“間桐”じゃない」
「あっ……そっか!勘当同然で、家を飛び出したんだったわね?じゃあ、今のお名前は?」
「あ……ああ……城戸……城戸慎二だ」
「城戸?……う~ん、馴染めないわね……じゃあ、“慎二”って呼んでいい?」
「え?……べ……別に……いいけど……」
「そう?じゃあ、一緒に行きましょうか?慎二」
そう言って、遠坂は僕の手を取って歩き出す。
「お……おい!遠坂っ!」
つい照れてしまう僕には全くお構いなしに、遠坂はどんどん衛宮家の敷地内に入って行く。
こ……こいつ、こんな強引な性格だったのか?
学校では物静かな優等生で通していたけど、猫被っていたのか?
衛宮家の玄関の前まで僕を引き摺って来て、遠坂は何の躊躇いも無しに呼び鈴を鳴らす。
『は~い!』
すると中から、何か聞き覚えのある女の子の声が聞こえて来た。
え?……こ……この声って?
玄関の横開きの戸が開けられ、一人の女の子が顔を出した。その女の子は、遠坂の顔を見てきょとんとしてしまう。
「あ……あの?……どちら様でしょうか?」
僕の方は、その女の子の姿を見て思わず呆然となってしまっていた。
「いきなり失礼致します。私、遠坂凛と申し……」
遠坂が言い掛けたところで、女の子は彼女の後ろに居る僕に気付いて声を上げる。
「し……慎二さん?……慎二さんですよね?わあっ!お久し振りです!」
それは衛宮の妹、美遊ちゃんであった。
な……何で?!美遊ちゃんは寝たきりで、藤村先生の家に居るんじゃなかったの?
どうしてここに居るの?何で、こんなに元気なんだ?
「や……やあ……ひ……久し……ぶり……」
訳が分からず、僕はうまく言葉が出て来なかった。
「あっ!し……失礼しました!と……遠坂さんと言われますと、この地の霊脈の管理をなさっている……」
「ええ!その遠坂です」
いきなり僕の方に声を掛けてしまった美遊ちゃんは、慌てて遠坂に詫びを入れる。遠坂の方はそんな事は少しも気にしていない様子で、かつて学校でそうであったような余所行きの笑顔を崩していない。
とりあえず僕と遠坂は、そのまま居間へと通された。遠坂家は冬木では有名だから、面識は無いが美遊ちゃんも当然知っている。僕は衛宮の親友だったから、美遊ちゃんとも親交が深い。そんな訳で、是非上がって行って下さいという話になったのだ。
「あらぁ?遠坂さん?それに慎二くん?本当に久しぶりね!」
居間には、藤村先生も居た。
藤村先生は僕と衛宮、もちろん遠坂もそうだが、皆が通っていた“穂群原(ほむらはら)学園”の教師だ。衛宮が幼い頃からこの家に出入りしていて、衛宮や美遊ちゃんの姉代わりでもある。だから東京の大学に進学する時、衛宮は藤村先生に美遊ちゃんを託した。
しかし予想通り、衛宮はここには居なかった。
僕だけで無く遠坂の事も知っている藤村先生が居たので、つい昔話に花が咲いてしまう。
しばしの間、他愛も無い談笑が続く。中々、今の衛宮の事を切り出せる雰囲気にならなかった。
そんな時、美遊ちゃんの方から切り出して来た。
「ねえ慎二さん?お兄ちゃんは、一緒じゃ無いんですか?」
「え?」
「慎二さんや遠坂さんも帰って来てるなら、お兄ちゃんも一緒かなって思っちゃって……」
「いや……それはこっちが……うぐっ!」
そう言い掛けた時、テーブルの下で遠坂に下腹部を蹴られてしまう。
「何だ?衛宮くんは、帰って無いんですね?」
相変わらずの作り笑顔で、遠坂は言葉を返す。そして横目で、僕を鋭く睨み付けた。
“空気を読みなさい!”
遠坂の目が、僕にそう訴え掛けていた。
「私達も、この家の門の前で偶然会ったんですよ。久しぶりに故郷に戻って来たので、懐かしい衛宮くんの顔でも見たいなと思ったんです」
遠坂は、うまくその場を取り繕う。さすが、猫被りの女王だ。僕の方も、それに話を合わせていく。
「あ……あいつ最近、殆ど研究室に顔を出さなくてさ……ぼ……僕も……しばらく会っていないんだよ……」
「そうなんですか……お兄ちゃん、ここしばらくは全く家に帰って来ないんです。一年くらい前からは、何の連絡もくれなくなっちゃって……」
「本当よねぇ……こんな可愛い妹を一年間もほったらかして、いったい何やってのよ!あのバカ士郎は!」
美遊ちゃんの言葉に続いて、藤村先生が文句を言う。
一年前?……じゃあ、あいつが失踪した事を美遊ちゃん達は知らないんだ。未だに、東京に居ると思っているんだ。という事は、冬木に戻って来ている事も知らないのか?
以降は、衛宮の事を美遊ちゃんに色々と聞かれた。
しかし失踪の事や聖杯戦争の事を話す事は出来ないので、かなり口を濁した会話になってしまった。そんな後味の悪い思いのまま、僕らは衛宮家を後にするのだった。
衛宮家を出てしばらく歩き続けて行くと、交差点に差し掛かったところで突然遠坂が僕に言って来た。
「慎二……貴方も、マスターだったのね?」
「……っ?!」
遠坂の言葉に、僕は動揺を隠せない。
しかし、この場は何とか取り繕おうと慌てて否定する。
「な……何の事だ?ま……マスターって?……ああ……もしかして、“聖杯戦争”とかいうやつの話かい?そんなものは、とっくの昔に無くなっているじゃないか……そもそも、僕には魔術回路が無い。僕がマスターになんかなれないのは、君が一番良く知ってるだろう?」
すると遠坂は、笑みを消した真剣な目で僕を見詰めて言って来る。
「確かに、六年前はそうだったわね?……でもそれじゃあ、今の貴方から魔力を感じるのはどうしてなのかしら?隠しているつもりかもしれないけど、私には誤魔化せないわよ……それに、貴方は衛宮くんに呼ばれて来たんでしょ?じゃあ、その理由は私と同じ筈よね?」
そう言って遠坂は、バッグからある物を取り出して僕に向けて翳した。それは、赤いカードデッキだった。
「か……カードデッキ?!……や……やはり遠坂?君は……」
「そう!私もマスターの一人よ!」
慎二と凛は、しばらくの間そのまま睨み合っていた。先にその沈黙を破ったのは、当然凛の方だった。
「じゃあ、始めましょうか?」
「ま……待てよ!遠坂!……ほ……本当に、僕と戦う気なのか?」
「当然でしょ?マスター同士戦うのが、聖杯戦争よ!」
「だ……だけど僕は……き……君と戦うなんて……」
「衛宮くんが貴方を呼んだって事は、貴方を間桐の後継者としてマスターに決めたって事よ!遠坂と間桐は、昔から聖杯戦争で必ず戦う運命にあるのよ!覚悟を決めなさい!慎二!」
凛がカードデッキを腹部に当てると、赤いベルトが飛び出してデッキを彼女の腹部に固定する。そこで凛は“槍兵”の絵が描かれているカードを取り出し、叫びながらデッキへとセットした。
「変身!!」
『Install……Lancer!Cu Chulainn!』
ベルトを起点に赤いバトルプロテクターが、凛の体へと装着される。頭部を覆う仮面には、彼女のトレードマークであるツインテールの髪が棚引いている。
「くっ……変身!!」
慎二も仕方なく、デッキにクラスカードをセットする。
『Install……Rider!Medusa!』
紫色のバトルプロテクターがその体を包み込み、慎二は仮面ライダーへと姿を変えた。
「そう?貴方のクラスはライダーなのね?じゃあ、行くわよ!」
そう言って仮面ランサーとなった凛は、手近なカーブミラーの中に飛び込んで行く。
「ええい!……くそっ!」
ライダーもそれに続き、身近なカーブミラーの中に飛び込んだ。
二人は現実世界と同じカーブミラーから飛び出し、全く同じ景色のミラーワールドに降り立った。人も騒音も無い静寂な固有結界の中で、ライダーとランサーが対峙する。
まずはランサーが一枚のカードを取り出して、腹部のデッキへとセットした。
『Lance Vent!』
するとランサーの手に、深紅の槍が現れた。
「行くわよっ!」
ランサーはライダーに突進して来て、素早く槍で突いて来る。
「ま……待てよ!遠坂!……待てって!」
ライダーはまだ戦う決心がついていないようだが、ランサーは一切容赦しない。彼に向けて怒涛の突きを放って来る。ライダーはそれを懸命に避けていたが、直ぐに壁際に追い込まれてしまう。
「はああああああああああっ!」
そこに、ランサーの渾身の一突きが炸裂する。
「うわあああああああああっ!」
ライダーは何とか跳び避けてそれを躱したが、背後にあった壁は木端微塵に砕け散っていた。
「どうしたの?逃げてるだけじゃ勝てないわよ!」
「くそっ!……やるしか無いのか?」
このままでは殺されると、ライダーも覚悟を決めてカードをセットする。
『Attack Vent!』
ライダーの両手に、鎖付の鉄杭が現れる。
「はああああああああああっ!」
「うおおおおおおおおおおっ!」
迫り来る槍を巧みに交わして、ライダーは鉄杭をランサーに向けて放つ。ランサーは槍を使って難無くその鉄杭を弾き、すかさずまた鋭い突きをライダーに放つ。
「やああああああああああっ!」
「とおおおおおおおおおおっ!」
ライダーも素早い動きで後方に飛び避け、間合いを取ってまた鉄杭を放つ。
しばらくはこの繰り返しで、戦況は拮抗してしまっていた。
“これじゃ埒が明かない!”
そう考えたライダーは、思い切って間合いを詰めようとする。当然ランサーは鋭く突いて来るが、その攻撃を紙一重で交わしてライダーはランサーの懐に飛び込んだ。
「うおおおおおおおおおおっ!」
そこでランサーの腹部に、怒涛の如きパンチの連打を浴びせる。
「きゃあああああああああっ!」
腹部に激しい火花を飛び散らせて、ランサーは大きく後方に弾き飛ばされて地面に叩きつけられた。
「くうっ!……や……やるじゃない?」
だがそれ程大きなダメージは受けなかったようで、ランサーは直ぐに起き上がって来た。
「それじゃあこっちも、そろそろ本気を出させてもらおうかしら?」
ランサーの魔力が高まっていき、全身から赤いオーラが立ち昇っていく。
“ちっ!……余計に火をつけてしまったのか?”
ライダーは、つい熱くなってしまった事を後悔する。
だがその時……
「うわっ?!」
「なっ?……何っ?!」
突然、地面が大きく振動を始めた。
「地震かっ?!」
ついそう叫ぶライダーだが、それは有り得ない事であった。固有結界の中には、通常空間のような自然現象は一切発生しない。
『……っ?!』
その振動の原因は、直ぐに二人の前に現れる。
ライダーとランサーが対峙している遥か彼方から、巨大な影が迫って来た。身の丈は彼等の倍以上はあるだろうか?褐色の鎧を纏っていて、その全身にまるで血管が浮き出ているような赤い筋が張り巡らされている。それはあたかも血が流れているかのように、時間差で赤く点滅を繰り返している。その頭部を覆う巨大な仮面の目も、同じように赤く輝いていた。
「な……何だ?……あのデカブツは?」
「ま……まさか?……バーサーカー?!」
『GUOOOOOOOOOOOOOOOO!』
その巨人……バーサーカーは、二人の側まで歩み寄って来たところでおよそ人のものとは思われないような雄叫びを上げる。そして手に持った巨大な斧剣を振り上げて、ライダー達に向かって突進を始めて来る。
「く……来るわよ!」
「ち……ちぃいいいいいいっ!」
ライダーはすかさず鎖付の鉄杭を放つが、そんな物はバーサーカーの鎧にいとも簡単に弾かれてしまう。
「何だとっ?!」
そして巨大斧剣が、ライダーに向けて振り降ろされた。
「くぅううううううううっ!」
ライダーは前に転がるようにしてそれを躱し、バーカーサーの懐に入り込む。
「うおおおおおおおおおおっ!」
そこで先程よりも力を込めて、怒涛の連打をバーサーカーの下腹部にぶち込んだ。
だが、バーサーカーには全く応えた様子が無かった。
「なっ?!……何とも……無いの?」
そして左手で、軽くライダーを払い除けてしまう。
『GUOOOOOOOOOOOOO!』
「うわあああああああああっ!」
たったそれだけでライダーは派手に弾き飛ばされ、近くの壁に激しく叩きつけられてしまう。
「ぐふっ!……こ……こいつ……桁違いだ……」
次にバーサーカーは、ランサーに向かって来る。
「こ……このおおおおおおおおおおっ!」
ランサーは魔力を込めて、槍で思い切りバーカーサーを突いて行くが……
「えっ?!……う……うそっ?」
その渾身の突きも、片手で難無く受け止められてしまう。更にバーサーカーは、槍を掴んだまま腕を大きく振り回した。
「きゃああああああああああああっ!」
槍ごと派手に振り回された後、ランサーも壁へと投げ付けられてしまう。
「あはあああああああああああんっ!」
「こ……この野郎おおおおおおおっ!」
再びライダーが突進して行くが、今度はバーサーカーの巨大斧剣を避け切れずにその身に剣撃を受けてしまう。
「ぐぅはあああああああああああああっ!」
胸部から激しい火花を飛び散らせて、弾き飛ばされたライダーはまたも壁に叩きつけられてしまった。
「だ……だめ……まるで……大人と子供ね?……半端な攻撃は効かない上に……あ……あいつの普通の攻撃全てが……こっちの必殺に近い威力だわ……」
よろけながら立ち上がり、ランサーは覚悟を決める。
「……他の敵が見ている前では、使いたく無かったけど……そうも言ってられないわね?」
ランサーは決め技のカードを取り出して、デッキへとセットする。
『Final Vent!……Gei Boruku!』
ランサーの槍が、赤く激しく輝き出す。ランサーは両手で槍を構えて、姿勢を低くして魔力を増大させる。
「はああああああああああああっ!」
そうしてバーサーカーに向かい、猛突進を開始する。その速度はどんどん加速され、ランサー自身が光に包まれる。まさしく光の矢と化したランサーは、高速でバーサーカーの胸を一気に貫いた。
『GIYAAAAAAAAAAAAAAAA!』
バーサーカーを貫いた光の矢は、数メートル後方で止まってランサーの姿へと戻る。
断末魔の叫びを上げたバーサーカーは、膝を落として頭を垂れる。全身を覆っていた血のような赤い筋は光を失い、仮面の目も暗転してしまう。
「やった……のか?」
ようやく立ち上がったライダーは、呆然とそれを見詰めていた。
「えっ?!」
ところがランサーの方は、首を傾げていた。バーサーカーを倒したのであれば、彼女の手にクラスカードが出現する筈である。しかしランサーの手には、まだバーサーカーのクラスカードは得られていなかった。
「なっ?……何だと?!」
その光景を見て、ライダーはまたも驚きの声を上げる。
『GU……GUUU……』
何と一度完全に停止したバーサーカーの体が、再び動き出したのだ。全身にまた赤い筋が血管のように流れ出し、仮面の目にも赤い光が戻る。更にはランサーの槍に貫かれて出来た胸の大穴が、見る見る内に塞がって行くのだ。
「さ……再生しているの?」
これを見て、ランサーも驚愕する。
ものの数秒で、バーサーカーは元通りに再生してしまった。
『GUOOOOOOOOOOOOOOO!』
元に戻ったバーサーカーは、雄叫びを上げてまたライダーに突進して来る。
「くそっ!ならばっ!」
ライダーも、決め技のカードをデッキにセットする。
『Final Vent!……Qubeley!』
ライダーのバイザーが開き、魔眼が眩い輝きを放つ。それによってバーサーカーの突進が止まり、その場で固まったようになってしまう。
『GU……UUU……』
「ライダーキック!!」
ライダーは駆け出してから大きく跳躍し、バーサーカーに向けてキックを放つ。その身を火の玉と化して、ライダーはバーサーカーに突撃した。
『GIYAAAAAAAAAAAAAAAA!』
激しい爆炎に包み込まれ、再び断末魔の叫びを上げるバーサーカー。
その爆炎の中からゆっくりと歩き出て来たライダーは、足を止めて後方を振り向く。
「……っ?!」
しかしそのライダーの手の中にも、バーサーカーのクラスカードは出現しなかった。
爆炎が治まると、そこには膝を落としたバーサーカーの姿があった。先程同様完全に動作は停止していて、目の光も失われている。だがその身を包む鎧は、全く消滅してはいなかった。もしバーサーカーが倒されたのであれば、真っ先に鎧が消滅している筈である。
「ま……まさか……」
『GU……GUUU……』
動揺するライダーとランサーの前で、バーサーカーはまたも息を吹き返し再生して元の状態に戻ってしまった。
「ふ……不死身なの?」
圧倒的に強い上に不死身では、全く手の付けようが無い。絶望感に圧し潰されそうになり掛けたところで、ライダーは体の異変に気付く。
「?!」
自分の指先から、塵のようなものが噴き出し始めている。戦闘が長引き過ぎた為に、体が消滅をし出していた。
「ま……まずい!急いでミラーワールドから出るんだ!」
ライダーはランサーに向かってそう叫び、手近なカーブミラーに飛び込んで行く。ランサーもその言葉を受けて、慌てて近くの無傷なカーブミラーに飛び込んだ。
ライダーとランサーは、相次いで現実世界の同じ場所に戻って来る。バーカーサーも二人を追って来るかと少し警戒していたが、しばらく待ってもバーサーカーだけは同じ場所には現れなかった。
『……』
ライダーとランサーはそれからまた少しの間睨み合っていたが、ランサーの方が変身を解いて凛の姿に戻る。それを見て、ライダーも変身を解いて慎二の姿へと戻った。
慎二が元の姿に戻ったところで、凛は少し笑みを浮かべながら彼に話し掛けて来る。
「……ねえ慎二?ちょっと提案があるんだけど?」
「え?……」
「しばらくの間、同盟を結ばない?」
「な……何だって?」
凛の考えが良く分からず、慎二は戸惑っている。
「まさかバーサーカーが、あれ程の化け物だとは思わなかったわ……あんな不死身の怪物、とても一人じゃ倒せそうに無いわ。だからバーサーカーを倒すまでの間だけど、お互い協力し合わない?」
「あ……ああ……か……構わないよ」
慎二は、迷わず合意する。
元々彼は、凛と戦う事には大きな抵抗があった。一時的にとはいえ、彼女と味方同士になれるのはかえって好都合だった。
慎二と凛の居る場所から、衛宮家を挟んで反対側の交差点。
そのカーブミラーから、バーサーカーが飛び出して来る。
『GU……GUUU……』
その体が激しく輝き出したかと思うと、バーカーサーも変身が解けていく。ただその仕組みは、慎二達のものとは大きく異なっていた。
全身を覆っていた巨大な鎧は、それ自体がロボットのパーツのようになっていた。それらが組み合わさる事によって、あたかも巨人のようにカモフラージュしていたのだ。全てのパーツが外されて現れたマスターの本体は、小柄な高校生くらいの女の子に過ぎなかった。
それは長くしなやかな銀色の髪をして、ルビーのような赤い瞳を持つ少女であった。ただその少女の赤い瞳は、どこか普通では無く正気を失っているかのようであった。
「……」
しばらくすると、その少女の表情が変わっていく。正気を失っていたかのような焦点の定まっていない瞳は、ごく普通の女の子の瞳へと戻っていった。
「え?……あ……あれ?」
少女は不思議そうに、辺りを見回している。
「ここ、家の裏手じゃない?……何で私、こんな所にいるんだろう?……い……いけない!約束の時間に遅れちゃう!」
少女はそう叫ぶと、慌てて走り出して行く。
そうして彼女は衛宮家の正門の方に回り込んで、門を駆け抜けて玄関の前まで辿り着く。その場で少し息を整えてから、ゆっくりとそこにある呼び鈴を鳴らす。
『は~い!』
中から声がして、横開きの戸が勢い良く開かれる。そこに現れた同い年程の少女に、その女の子は両手を合わせて頭を下げながら言う。
「ご……ごめん!美遊!少し遅れちゃった!」
「いらっしゃい!イリヤ!全然大丈夫だから、早く上がって!」
「うん!」
イリヤと呼ばれたその少女は、美遊に促されるままに衛宮家の中へと入って行くのだった。
< 仮面ライダーメドゥーサ……次回予告 >
「そもそも、バーサーカーの正体は誰なんだ?やっぱり魔術師なんだろう?」
「あんなゴツイ魔術師、この冬木には居ないわ!」
「六年前アインツベルンが召喚しようとしていた英霊こそ、“バーサーカー”なのだ」
「もしかしたら、あいつがバーサーカーかもしれないだろ?」
「おそらくあいつは、“アサシン”あたりしょう?」
「そうか?それで判った……桜をこの聖杯戦争に参加させたのは、あんただな?」
『戦わなければ、生き残れない!』
はい、ランサーとバーサーカーの登場です。
凛は、アーチャーでは無くランサーと契約しました。他のFateシリーズでもやっていますし、アーチャー以外ではやっぱりランサーですよね。
鎧の色はやはり“赤”。
何せ、“赤い悪魔”ですからね。
バーサーカーは当然イリヤ。
でも、いろいろと謎の多い設定にしています。戦闘時は、完全に狂戦士化しているので殆ど自我がありません。更に外観が巨人なので、変身するところを見ないと誰も正体に気付きません。
“プリズマ☆イリヤ”の設定も被せているので、イリヤは美遊の親友です。二人とも十七歳に成長していますので、仲良く穂群原学園に通っています。
担任は、当然大河です。
冬木の聖杯戦争が無くなったので、マスターにされる事も無く器としての機能も無くなっています。そのため、普通に成長できているという設定です。
全般を書き直したのに加えて、慎二達と美游の会話にちょっと辻褄が合わない部分があったので修正しました。
大まかな流れは変わりませんが、後半の戦闘シーンも多少書き足しています。