仮面ライダーメドゥーサ   作:JALBAS

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バーサーカーを倒すため、同盟関係を結ぶ慎二と凛。
まずはバーサーカーのマスターをつきとめるべく、調査を開始します。
そんな中、突然アサシンに狙われる慎二。
そのアサシンの正体は……




《 第四話 》

 

バーサーカーとの戦いの後、僕と遠坂は冬木大橋の近くの公園に来ていた。

僕達はベンチに腰掛け、お互いに情報を交換していた。

 

「ふうん……貴方、東京で衛宮くんと同じ大学だったの?」

「ああ、それを知ったのは研究室に入ってからだけどね……だけど、東京で再開した衛宮は全く人が変わっていた。あんなにお人よしだった男が、無口な冷血漢になっていて……」

「確かに……つい先日会った彼は、酷く無愛想な感じだったわね?氷のように、冷たい目をしていたわ……」

「遠坂は、昔から衛宮と交友があったのか?」

「貴方程じゃ無いわ。言葉を交わした事はあったけれど、二人だけで話した事は無かった。彼、生徒会長の柳洞(りゅうどう)君とも仲が良かったでしょ?私は何かと柳洞君と衝突していたから、その関係で顔を合わせる事も多かったの。ただ、親友の綾子からは良く彼の話を聞いたわ。貴方が言うように度を超したお人よしで、いつも他人の為にばかり動いてたって……今の彼は、全くそれとは正反対ね?」

「いったい、何があいつを変えてしまったのか?……妹の美遊ちゃんが、関係していると思っていたんだけど……」

「今日会った感じじゃ、彼女は関係無さそうね……それに、衛宮君があんな魔術師になっているなんて……」

「ん?……この地の管理者なのに、遠坂は衛宮の事はマークしていなかったのかい?」

「聖杯を封印した彼の養父はマークしていたけど、彼は本当の息子じゃ無かったし。衛宮切嗣も、彼を魔術師として育ててはいなかったから……実際学生時代も、彼からは全く魔力を感じなかったわ……」

「そうか……」

「そもそも、今何処に居るのよあいつ?聖杯戦争は始まったっていうのに、全然姿を現さないじゃない?現れたのは、カードデッキを渡された時だけよ!本当に戦う気があるの?」

 

突然遠坂は、凄い剣幕で僕に聞いて来る。

 

「い……いや、僕に聞かれても……」

「まあ、今はそんな事よりも、バーサーカーをどうするかね?」

「そもそも、バーサーカーの正体は誰なんだ?やっぱり魔術師なんだろう?」

「あんなゴツイ魔術師、この冬木には居ないわ!貴方が倒したキャスター同様、他所から来た魔術師かもしれないわね?」

「ならやっぱり六年前に、聖杯戦争の為に冬木に来ていたのかな?」

「?!」

 

僕がそう言うと、遠坂は何かを思い立ったように急に立ち上がった。

 

「……付いて来て」

「え?」

 

そう言って遠坂は、僕に背を向けてどんどん歩き出してしまう。

 

「ちょ……ちょっと待てよ!おい!遠坂!」

 

僕は、慌て彼女の後を追って行った。

 

 

 

 

遠坂に連れられて、僕は新都の言峰教会に来ていた。

礼拝堂に入ると、何か曰くがありそうな不気味な神父が僕達を迎えてくれた。

 

「今度は何用だ?凛?」

「情報交換よ。あれから何か判ったかしら?」

 

遠坂はこの神父と親しいようで、遠慮無しにずけずけと質問している。

 

「いや、特に無いな……そちらはどうだ?」

「マスターが二人判ったわ。一人は彼よ」

 

そう言って遠坂は、僕をその神父に紹介する。

 

「間桐……じゃ無かった、“城戸慎二”君よ」

「間桐?……そうか、間桐家の長男か?」

 

“間桐”と呼ばれるのが癇に障るので、僕は直ぐに否定した。

 

「元な!……今は、僕はもう間桐とは関係無い!」

「ふむ……もう一人は誰だ?」

「もう彼が倒しちゃったけど、“アトラム・ガリアスタ”って言う六年前に魔術協会から聖杯戦争の為に派遣された魔術師よ」

「何?彼が?……そうか、まだ冬木に留まっていたのか?」

「あともう一つ、バーサーカーとも遭遇したわ。これがとんでもない巨体で、私達の倍以上の背丈だったわ」

「ほう?いったい、どんなマスターなのだ?」

「それが判らない……だから、貴方に聞きたいの」

「私に?……何をだ?」

「マスターになりそうな人物の心当たりを……六年前、貴方聖杯戦争の監督役だったでしょ?結果的に聖杯戦争は行われなかったけど、その候補者に心当たりがあるんじゃないかと思って」

「成程、そういう事か……確かに、候補者は何人か知っているが……」

「それを教えてくれない?」

「私がそれをお前に教えるのは、フェアでは無いのでは?」

 

そう言う神父に、遠坂は嫌らしい笑みを浮かべながら言う。

 

「何を今更……もう貴方、監督役じゃ無いんだから関係無いでしょ?それに、私は情報を提供したわ。魔術の世界は等価交換じゃ無かったかしら?」

「やれやれ、まんまと嵌められたか?……判った、教えよう」

「そうこなくっちゃ!」

 

僕は、呆れてそのやりとりを見ていた。

何と言うか、彼女はとてつも無くしたたかな女だ。物静かな優等生などと信じていた、自分が情け無くなって来た。

 

「もう一人、魔術協会から派遣された魔術師が居た。名は“バゼット・フラガ・マクミッツ”。だが彼女は、聖杯戦争が無くなるや否や他の任務で呼び戻された。以降、消息は分からない。まず、冬木に留まっているとは思われない」

「うん、うん」

「あとは、お前も良く知っていよう。遠坂、間桐……いや、“マキリ”と並ぶ、冬木の聖杯戦争を創り出した御三家のもうひとつ……」

「え?……まさか?アインツベルン?」

「そうだ。アインツベルン家が第五次聖杯戦争の為に用意した、マスターでありながら聖杯の器でもある存在、“イリヤスフィール・フォン・アインツベルン”」

「そいつが、まだ冬木に居るの?」

「本来ならば聖杯の器である彼女が、ここまで生き永らえる事は出来ない筈だった。だがどうやったのかは知らないが、彼女は今も生きている。成長し、お前達が通っていた学校に通っているようだ」

「え?……穂群原学園に?」

「そうだ。但し、聖杯の器としての機能は完全に失われている。もっとも今回の聖杯は、そのような物を必要としないようだがな?」

 

そこに、僕が口を挟む。

 

「そのイリヤスフィールって娘、凄い大女なのか?」

「いや……凛よりも小柄な少女だが?」

「はあ?それじゃあ、全然バーサーカーとは似ても似つかないじゃないか?」

「確かにな……だが、六年前アインツベルンが召喚しようとしていた英霊こそ、“バーサーカー”なのだ」

『何だって(ですって)?!』

 

思わず、僕と遠坂の声が被っていた。

 

 

 

 

教会からの帰り道、僕はずっと気になっていた事を遠坂に尋ねた。

 

「なあ遠坂?あの神父、魔術師なんじゃないのか?」

「あら?良く気付いたわね?」

「やっぱりそうか?……じゃあ、あいつもマスターかもしれないじゃないか?」

「ええ、間違い無くそうでしょうね?」

「なっ?……気付いていたのか?それで何で、こっちの情報を漏らしてんだよ!もしかしたら、あいつがバーサーカーかもしれないだろ?」

「いいえ、あいつはバーサーカーじゃないわ」

「な……何でそう言い切れるんだよ?」

「あいつがバーサーカーなら、あんな襲い方はしないわ。一人のところを狙って、確実に狩っていくでしょうね?でもそんな戦法、そもそもバーサーカーには適さない。おそらくあいつは、“アサシン”あたりしょう?」

 

その言葉は、ひどく納得がいった。

“暗殺者”、如何にもあの神父にぴったりな感じがする。

 

「そんな相手に隠し事なんて、するだけ無駄よ。ならそれをうまく使って、逆に情報を引き出してやるのよ」

 

本当にしたたかな女だ、遠坂凛。

 

「まずは、イリヤスフィールについて調べましょ!」

 

その時僕は、突然桜の事を思い出した。良く考えたら、今日はまだ病院に行っていなかった。

 

「わ……悪い!遠坂!……それ、明日にしてもらえないか?」

「え?……どうして?」

「い……いや……病院に……さ……桜の所に行ってやらないと……」

 

そう言った途端、遠坂の顔色が変わった。

 

「えっ?……桜がどうかしたの?!」

 

 

 

 

僕は遠坂を連れて、桜の病室に来ていた。

 

「……桜……」

 

目覚める事の無い桜を、遠坂は辛そうにじっと見詰めている。

うっかりしていた。

桜を間桐家に養女に出したのは、遠坂家だ。だから桜は、遠坂の実の妹なのだ。

しばらく無言で桜を見詰めていた遠坂だったが、ようやく顔を上げて口を開いた。

 

「……慎二……貴方の戦う理由は、桜なのね?」

「え?……あ……ああ……」

「そう……だからって、手加減はしないから……」

 

遠坂は潤んだ瞳を僕に向けてそう言うと、そのまま病室を出て行ってしまった。

彼女が帰った後も、僕は桜の横にしばらく座ってじっとその顔を見詰めていた。

ただいくら待っても、桜が目覚める事は無い。それでも僕は、彼女の傍に居てやりたかった。六年もの間、ずっと離れ離れになっていたのだから……

 

 

日が沈むまで桜の横に居て、ようやく僕は病室を後にした。

人気の消えた通路を進んで階段を降り、病院の夜間出入口から外に出た時、僕は急に背後に強烈な殺気を感じてしまう。

 

「……っ?!」

 

慌てて振り向いた僕の目に、異様な人影が飛び込んで来る。病院のガラス戸の奥から、そいつはじっと僕を睨み付けていた。痩せ細った長身で全身を濃紺のバトルプロテクターに包み、顔には白い骸骨のような仮面を嵌めている。

 

“ま……まさか?……アサシン?!”

 

そいつはいきなり、何か黒い物を僕に投げ付けて来た。間近に近付いて、それがナイフである事が分かった。

 

「のぉわああああああああああっ!」

 

僕は真横に転げるようにして、何とかそのナイフを躱す。そしてすかさずカードデッキを取り出し、腹部に当てて装着する。

 

「へ……変身っ!!」

『Install……Rider!Medusa!』

 

クラスカードをセットして仮面ライダーに変身して、僕は病院のガラス戸の中に飛び込んで行った。

 

 

ミラーワールドに飛び込んで来たライダーに対し、アサシンは引き続き投げナイフで攻撃を仕掛けて来た。

 

「ちっ!……」

 

ライダーをそれを巧みに躱しながら、攻撃用のカードをデッキにセットする。

 

『Attack Vent!』

 

鎖付きの鉄杭を両腕に装着し、アサシンの攻撃の合間を縫って今度はライダーがアサシンを攻撃する。

 

「……」

 

アサシンは何も言葉を発する事無く、辺りを縦横無尽に飛び回ってライダーの鉄杭を躱していく。

 

「こ……このおおおおおっ!」

 

間合いを詰めようとしても、アサシンは直ぐに飛び退いてしまう。常にライダーと距離を置いて、決して近付いて来ようとはしなかった。肉弾戦では分が悪い事が分かっているのか、徹底して離れてナイフを投げ続けていた。

その内にアサシンは、一枚のカード取り出してデッキにセットした。

 

『Hide Vent!』

 

その途端、突然アサシンの姿がその場から消失する。

 

「な?……何っ?」

 

驚いてライダーは辺りを見回すが、アサシンは姿どころかその気配はすらも完全に消してしまっていた。

 

「ど……何処だ?……何処に行った?」

 

そしてそれ以降は、もうライダーに向けてナイフが飛んで来る事も無くなってしまう。

 

「ちっ!……逃げられたのか?」

 

 

 

 

僕は元の世界に戻って変身を解き、再び帰路についていた。

歩きながら、さっきのアサシンの事を考えていた。

 

あの長身……昼間会った神父に近かった……やっぱり、あいつがアサシンか?

僕がマスターだと知って、早速暗殺しようとして来たのか?

どうする?遠坂に相談するか?

しかし、遠坂とはバーサーカーを倒すための同盟だ。アサシンは管轄外か?

 

 

僕は悩んだ末、その足で言峰教会に乗り込んだ。今後寝首を掻かれるくらいなら、今夜中に決着を付けた方がいいと思ったからだ。

言峰神父は、まるで何事も無かったかのように僕を迎え入れる。

 

「どうかしたかな?間桐慎二……いや失礼、城戸慎二だったかな?」

「どうしたかじゃ無い!いきなり襲い掛かって来やがって!やるなら、ここで決着を付けようぜ!」

 

熱くなっている僕に対して、言峰はあくまで冷静だった。

 

「襲い掛かった?決着?……何の事だ?」

「とぼけるな!あんたがアサシンなんだろう?」

「私がアサシン?……何故そうなる?」

「な……何故って……」

 

そう言われると、返答に困ってしまう。

“遠坂が言ったから”なんてのは、何の根拠にもならない。実際に、アサシンの正体を見た訳でも無い。証拠は何も無かった。

 

「これでも私は聖職者だ。神に誓って断言しよう、私はアサシンでは無い!」

「そ……そうか……いきなり、済まなかった……」

 

僕は、そう答えるしか無かった。

言峰が信用できる人間だと思った訳では無いが、その言葉には嘘が無いように思われたからだ。

 

「邪魔したな……」

 

僕が仕方なく帰ろうとすると……

 

「待て!」

 

言峰が、僕を呼び止められた。

 

「先程は忘れていた……というか、既に間桐家のマスターがお前だと聞いていたので無関係と思ったが、もう一人マスター候補が居た……正に、アサシンにぴったりと言う男がな」

「なっ……何だって?……誰だ?そいつは?」

「お前の祖父……間桐家の当主“間桐臓硯”だ!」

「何っ?!」

 

 

 

 

僕は教会を出た後、六年ぶりに間桐邸を訪れた。六年前は、もう二度とこの屋敷に戻る事は無いと決めていたのだが……

呼び鈴も鳴らさずに、どんどんと屋敷の奥へと入って行く。リビングに入ると爺さんが……いや、間桐臓硯が奥のソファに腰掛けて僕を待っていた。

 

「くっくっくっ……間桐を捨てた者が、この屋敷に何用じゃ?」

「回りくどいのは嫌いだから、単刀直入に聞くぞ。爺さん、あんたがアサシンか?」

「ふん、言峰にでも聞いて来たのか?あの似非神父が、余計な事を言いおって……」

 

臓硯は懐から濃紺のカードデッキを取り出して、僕に翳して見せて来た。それを見た瞬間、僕の脳裏にある事実が思い浮かんだ。

 

「そうか?それで判った……桜をこの聖杯戦争に参加させたのは、あんただな?」

「確かにそうじゃが……それは、桜の意志でもあるのじゃぞ」

「何だと?」

「桜には、聖杯に望む明確な願いがあった」

「な……何だ?それは?」

「くっくっくっ……判らぬか?それはそうよのぉ……お前達はお互い相手の事を気遣っている癖に、相手の本当の気持ちには気付いておらなんだからのぉ……」

「相手の……本当の気持ちだと?」

「お主は桜の為を想ってこの家を出たつもりじゃろうが、それを知ったあやつがその後どうなったと思う?」

「何っ?」

「塞ぎ込んで、慟哭に落ちたのじゃよ。自分のせいで、お主を不幸にしてしまったと考えてな」

 

その言葉に、僕は例えようの無い衝撃を受けてしまう。

 

「な……何だって?じ……じゃあ、桜の願いって言うのは?」

「お主の幸せに、決まっておるじゃろう?」

「ば……馬鹿なっ?!ぼ……僕は……桜の為にと思って……」

 

僕はその場に蹲って、項垂れてしまった。

 

そうだ!どうしてその事を考えなかった?

僕が桜の事を想っているのと同様に、桜も僕の事を想ってくれていた筈だ。そんな僕が自分の為に間桐家から勘当同然で追い出されたと知れば、どれだけ彼女が傷付いてしまうか?

必要以上に自分を責めて、おそらく自分が許せなくなってしまったのではないか?

そんな時に聖杯戦争の事を知れば、思わずそれに縋ってしまってもおかしく無いだろう?

 

酷く衝撃を受けている僕に、臓硯は更に追い打ちを掛けるように言って来る。

 

「お主たちは、本当に滑稽じゃったわ。気遣う相手のために自分が犠牲になる、それが自分を想う相手にとってどれだけの痛みになるか、全く気付いていおらなかった……まあそれが、儂にはかえって好都合じゃったがな?」

「こ……好都合?」

 

その言葉に、僕は顔を上げて臓硯を睨み付ける。

 

「桜が慟哭に沈めば沈むほど、儂の思い通りに染まって行くからのぉ……傀儡にするのは容易じゃったわい」

「く……傀儡だと?……ふ……ふざけるな!桜はお前の道具じゃ無い!」

「道具じゃよ!そうで無ければ、わざわざ養子にしたりはせん!」

「何?……ま……間桐の……この家の跡取りの為じゃ無かったのか?」

「跡取り?……別にそのような者はもう必要無い。要は、儂が生き続ければ良いのじゃからな?」

「なっ?……何だって?」

 

そして僕は臓硯から、今迄聞かされていなかった間桐家の真実を聞かされた。

今目の前に居る臓硯は、正確には僕の祖父では無かった。もっと何代も前の祖先にあたる。彼の本名は“マキリ・ゾォルケン”。かつてこの地に移り住んだ、冬木の聖杯戦争を生み出した御三家の一人だったのだ。

臓硯は何百年も生き続ける為にその身を蟲に変え、他者を喰らう事でここまで生き続けて来ていた。もはや人間では無く“妖怪”と言っていい。ただそうやって他人を喰らう“生”の維持も限界に来ていて、崩壊のサイクルが異常に早くなって来ていた。

 

「そ……それじゃあ……あんたが聖杯に望むのは?」

「そう……儂の望みは若返りと不老不死よ!このような直ぐに腐り出す肉体では無く、昔のような生気溢れる体を永遠に得る事じゃ!」

「こ……この妖怪がっ!あんたの思い通りにはさせないぞ!」

 

この男は狂っている……こんな奴に、絶対に聖杯は渡せない!

元々愛想は尽きていたが、今の話で完全に踏ん切りが付いた。もはやこの男は身内でも何でも無い。今ここで、確実に倒しておかなければならない化物だ!

 

「変身!!」

 

慎二はカードデッキに、ライダーのクラスカードをセットする。

 

『Install……Rider!Medusa!』

 

濃い紫のバトルプロテクターが慎二の体に装着され、慎二は仮面ライダーに変身する。

 

「ほっほっほっ……変身!!」

 

臓硯もカードデッキを腹部に取り付け、暗殺者の絵の描かれた“アサシン”のクラスカードをセットする。

 

『Install……Assassin!Hassan!』

 

濃紺のバトルプロテクターが臓硯の体に装着されていくが、同時にその体型も変化していく。小柄な腰の曲がった老人の体型から、長身の痩せ細った体型に変化する。そして、白い骸骨の面の付いた仮面が頭部を覆う。

 

「そうか……契約した英霊によって、体型が変化する場合もあるのか?」

「ふっ……元々桜は、儂が敗れた時の保険だったんじゃがな?慎二、お主では保険にならん!ここで死ぬが良い!」

「そうはいくか!死ぬのは貴様の方だ!臓硯!」

 

共にリビングの窓に飛び込んで行く、ライダーとアサシン。そうして二人は、ミラーワールドのリビングに姿を現す。そして直ぐにリビングのガラス窓を開け、庭に飛び出して戦闘を開始した。

だがアサシンは、やはり常に距離を取ってライダーに近付いて来なかった。

 

「キィイイイイイイッ!」

 

アサシンは奇妙な奇声を上げながら、投げナイフでライダーを攻撃して来る。夜の暗がりを利用して、黒塗りのナイフを投げ付けて来ていた。

 

『Attack Vent!』

 

ライダーは鎖付きの鉄杭を装備し、黒塗りのナイフを悉くそれで弾き返す。

 

「うおおおおおおおおおおっ!」

 

更にはその鉄杭でアサシンを攻撃するが、アサシンは素早く庭を跳び回ってこれを躱している。

 

「こ……このおおおおおっ!」

「キィイイイイイイイイッ!」

 

ライダーは何とか間合いを詰めようと突進して行くが、アサシンは盛んに逃げ回っている為一向にの距離を縮められない。

 

「くそっ!これじゃ埒が明かない……」

 

するとそこで、アサシンは前回と同じカードをデッキにセットした。

 

『Hide Vent!』

 

直後にアサシンは、再びその姿を消してしまう。

 

「くっ!……またか?」

 

ライダーは動きを止め、精神を集中させてアサシンの気配を追う。しかし何処にも、アサシンの気配も感じられない。

 

“また逃げたのか?……いや、奴は僕を殺すと言った。ならば、まだこの場に居る筈だ……こちらの隙を突いて、必ず仕掛けて来る!その一瞬を狙うしか無い!”

 

しばしの静寂……そして突然、ライダーの背後にアサシンが姿を現した。

 

「?!」

 

直ぐに反応し、振り返るライダー。

しかしアサシンは、即座にデッキに決め技のカードをセットする。

 

『Final Vent!……Zabaniya!』

 

アサシンの右腕のプロテクターが外れ、中からオレンジ色に光る腕が現れる。

 

「……っ!」

 

その腕に只ならぬ危険を感じたライダーは、慌てて後方に飛び避ける。

 

「キィイイイイイイイイッ!」

 

だがその腕は、異様な程に長く伸びた。ライダーは避けきる事が出来ず、その一撃を胸に受けてしまう。

 

「し……しまっ……」

 

やられたかと思われたが、そのアサシンの攻撃に威力は全く無かった。オレンジ色に光るアサシンの腕は、ライダーのプロテクターに難無く弾き返されてしまった。

 

「何だ?……見掛け倒しか?」

 

拍子抜けするライダーだが、アサシンの元に戻ったオレンジの腕を見て驚く。

 

「……っ?!」

 

その右手の掌には、何故か剥き出しの心臓が乗せられていた。

 

「あれは?……ま……まずいっ!」

 

瞬時にアサシンの技を察知したライダーは、慌てて決め技のカードをデッキにセットする。

 

『Final Vent!……Qubeley!』

「はあっはっはっはっ!無駄じゃ!今の儂には、目が存在せん!」

 

アサシンは左手で、顔面にある骸骨の仮面を外す。そこには目どころか、顔自体が存在していなかった。

ライダーのバイザーが開き、魔眼が眩い輝きを放つ。しかし目が存在しないアサシンが、その光を目の当たりにする事は無い。

 

「ふん……愚か者め!これで終いじゃ!」

 

そう言ってアサシンは、コピーしたライダーの心臓を握り潰す……

 

「なっ?……何じゃとっ?!」

 

ところがアサシンは、その心臓を握り潰す事が出来なかった。それどころか、指先ひとつ動かせない。

 

「愚か者は貴様だ!目があろうが無かろうが関係無い!その存在を認識した時点で、既に石化の魔眼の魔力に掛かっているんだよ!」

「ば……馬鹿な?!」

「ライダーキック!!」

「や……やめろおおおおおおおっ!」

 

ライダーは大きく跳び上って、アサシンに向けてキックを放つ。火の玉となったライダーが、アサシンに向かって突撃する。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「ぎゃあああああああああああああっ!」

 

激しい爆炎と共に、断末魔の叫びを上げるアサシン。

燃え盛る炎の中から、ライダーはゆっくりと歩み出て来る。そうして振り返った彼の手には、アサシンのクラスカードが握られていた。

未だに燃え盛る炎の中に、バトルプロテクターを失った臓硯の姿があった。その腹部のカードデッキは、爆ぜるように砕け散ってしまう。

 

「お……おの……れ……」

 

臓硯は醜い老人の姿から、無数の蟲の姿に変わり、更に焼かれて塵となっていく。

 

「くくく……だが……わしはまだ……死なん……今回は……だめ……でも……」

「何っ?」

 

そのような意味深な言葉を残しながら、臓硯は消滅していった。

 

「……」

 

ライダーはしばらくその場に佇み考え込んでいたが、急に何かを思い立ったのかガラス窓の中へと飛び込んで行った。

 

 

 

 

新都にある病院の、桜が眠る病室。

その窓から突然、ライダーが飛び出して来る。

ライダーは桜のベッドの横に立つと、一枚のカードを取り出した。それは、キャスターのクラスカードだった。ライダーはそのカードを、デッキへとセットする。

 

『Borrow Vent!……Caster!Rule Breaker!』

 

電子音と共にライダーの右手に、歪な形をした短剣が現れる。

 

「むんっ!」

 

何を思ったのかライダーは、その短剣を桜の心臓目掛けて突き刺した。

だが剣を刺されても、桜の胸からは血が噴き出す事は無かった。その代わりに……

 

『ぐっ!……ぐぅううううう……』

 

突如くぐもった呻き声が病室内に響き渡り、桜の胸から一匹の羽の生えた蟲が湧き出して来た。ライダーはすかさず、その蟲を左手で掴み上げる。

 

『ぐぅふううううっ!』

 

そして、握る手に力を込めていく。

 

『や……やめろぉおおおお……わ……儂を殺せば……ま……間桐の血は……永遠に……絶たれて……しまうぞおおお……』

 

蟲から出ているのは、臓硯の声であった。臓硯は万一の為に、核となる蟲を桜の体内に潜ませていたのだった。ライダーはキャスターの能力を借り受ける事によって、それを桜の体から追い出したのだ。

 

「間桐の血など、もう既に絶たれている!……お前はもう人間じゃ無い!狂った幻想に取り憑かれた、ただの亡霊だ!」

 

ライダーは、一気に蟲を握り潰した。

 

『うぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………』

 

これにより臓硯は、今度こそ完全に息絶えるのだった。

ライダーは変身を解き、慎二の姿に戻る。そのまま、目を覚まさない桜を見詰めながら呟く。

 

「す……済まなかった……桜……僕は……お前の苦しみを、何にも判っちゃいなかった……」

 

慎二の目からは、大粒の涙が流れ出す。

慎二は、唯々泣くだけだった。

 

 

 

 

< 仮面ライダーメドゥーサ……次回予告 >

 

「ようこそおいで下さいました。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです」

「遠坂家六代目当主、遠坂凛です」

 

 

「私……その当時の記憶が無いんです。この冬木に来てから、聖杯が封印されるまでの記憶が……」

『……』

 

 

「い……イリヤ?」

「イリヤジャ……ナイ……ワ……ワタシハ……クロエ!」

 

 

「同時に必殺技を決めれば、その威力は何倍にも跳ね上がるわ!」

『Survive!……Pegasus Cyclone!』

 

 

「ふん、死に損ないが……疾く、塵になるがよい!」

 

 

『戦わなければ、生き残れない!』

 

 






HFルートでは中ボス的存在の臓硯ですが、この話ではここで脱落です。
主役が慎二なら、やはりこの爺との対決は外せません。
何となく、ゼロの雁夜と臓硯のやりとりに被ってしまったかもしれませんが……
最後は、掟破りのルールブレイカー借用。
せっかくキャスターのカード持ってるんだから、流用しないと。

ザバーニーヤは心臓コピーできても潰せなきゃ意味が無いから、ライダーは真アサシンにとっては天敵になり得るのかな?



全体を書き直していますが、合わせて慎二と臓硯のやり取りを見直しました。
慎二が桜の気持ちに気付いて落ち込む下りを入れたのと、臓硯に対して明確な憎悪を抱くような流れにしました。
最後の部分も、どうして桜の中に臓硯の核が潜んでいたのかを気付ける流れにしました。
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