魔法科高校の夜の天(そら)   作:山葵印

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第二話なのに主人公が殆どでない小説があるらしい()


第2話

「疲れたァ…」

「いきなりどうした?」

 

 いえなんでも、そう言って雄大は溜め息を吐く。第一高校通学二日目となった今日、案の定森崎の秒間16連打チャイムによって叩き起こされた雄大は昨日の事を思い出していた。…と言っても夜天の書を使うかどうか、という話をしていただけなのだが。

 基本的に夜天の書は火力がバカみたいに高い。それこそうっかりで『日本滅んじゃった☆』が実現できる程度には。『明らかに過剰火力だから持っていかない方が賢明だろう』という雄大と『誰か一人でも良いから連れていくべきだ』とレイジングハート以下夜天の騎士達が対立したのである。

 何時もは使わない多数決まで使って的確に雄大を追い詰めてくる彼女達に雄大が折れ、彼女達の内の一つを持っていくことを承諾したのである。

 ()()()()が、昨日の夜11時に行われた光景。そこから厳正なる聖戦(じゃんけん)で持っていくデバイスを決めるのに更に四時間。途中で雄大は寝たのだが、それでも疲労感は凄まじかった。

 

『ま、あたし達は騎士だからな。目の届かないところで主に危害が及ぶのは我慢ならないのさ』

『確かにそうかも知れませんけど…心配しすぎじゃないですかね』

 

 最終的に勝利した彼女…()()()()及び()()()()()()()()と脳内で会話する。魔法科高校は髪飾りなどの一部例外を除いてアクセサリの着用は禁止されている。

 今はワイシャツの下に仕込んであるとはいえ、昨日のように咎められると不味いことになるだろう。没収などされたら目も当てられない。それもデバイスを持っていきたくなかった理由のうちの一つなのだが、彼女達には何か考えがあるらしく。

 基本的に雄大本人よりもデバイス達の方が頭がいいので雄大は何も言わなかったが…

 

『ふふっ…家帰ったらはやて達に自慢してやろっと』

「不安だなぁ…」

「急にどうした雄大」

「いえなんでも」

 

 暗鬱とした思いを抱きつつ、雄大と森崎は登校するのだった…

 

─────────────────

 

「(うわーめっちゃ見られてる)」

 

 森崎と別れた後教室に到着した雄大は、多くの視線に晒される。何やら話をしていたであろう四人組も静まり返った教室を不審に思い、こちらを見て絶句している。

 

「(どーせ俺はチビですよー…)」

 

 雄大の身長はかなり低く、小学校三年生とほぼ同じ位でしかない。おおよそ高校生とは言えない容姿をもつ彼には、かなりキツい視線が浴びせられていたのだった。

 

「(やべえ…おうちかえりたい)」

『大丈夫だ雄大、あたしがいる』

 

 男前な騎士(尚中身は幼女)に慰められつつ、怒りを込めてキーボードを叩き履修登録を全て済ませた後、リュックを机の上に置いて中から本を取り出す。

 

「はい皆さん、席について下さーい」

 

 若干の騒がしさが戻った教室で本を読んでいると、教室のドアが開いて一人の女性が入ってきた。

 

「(担任の先生かな?)」

 

 本を閉じ、リュックサックを机から下ろして放り込む。教室には、戸惑いが充満していた。…とは言っても、さっき雄大が入ってきたとき程ではないが。その事に気付きメンタルに多大なるダメージを受けた雄大は心のなかでさめざめと涙を流しつつ、気付かれないように溜め息を吐く。

 女性は教室を見渡した後、

 

「はい、欠席者はいないようですね。それでは皆さん、入学、おめでとうございます」

 

『なあ雄大』

『なんでっしゃろ』

『この学校って担任は居なかった気がするんだが』

『マジですか?………マジっぽいですね』

 

 そんな風に脳内で会話している内に、女性が自己紹介する。どうやら彼女はこの学校のカウンセラーであるらしく、悩みやら何やらを聞いてくれると言うのだ。

 

「本校は皆さんが充実した学生生活を送ることができるよう、全力でサポートします。………という訳で、皆さん、よろしくお願いしますね」

 

 女性が微笑みながら柔らかい表情でそう言うと、教室の雰囲気が一気に緩んだ。

 

「(サポート、か…)」

 

 魔法を扱う上で、想子(サイオン)や処理能力等と同じ位重要なもの。それは『術者本人の精神状態』である。いくら術者の技量が優れていようと人間である以上動揺はするし、トラウマがあったっておかしくはない。しかし魔法師(魔法を扱う人々のこと)は今や貴重な存在だから、トラウマ等で使い物にならなくなっては困るのだろう。

 只でさえ魔法師排斥運動が一世紀経った今でも続いているような状況だ、『魔法師はこれからの社会に必要である』という事を証明し続けなければならないのである。

 

 そんなことを考えていると朝のSHRが終わり、クラスメートが疎らに立ち上がり、見学へと向かう。雄大も立ち上がり、リュックサックを背負って工房へと向かおうとする。

 

「なあなあ」

「…何でしょうか?」

 

 しかし、雄大はクラスメートの男子に呼び止められた。雄大の友人である森崎よりも身長が高い、さっきの四人組のうちの一人。そんな彼が、心配したように口を開く。

 

「…飛び級してる訳じゃないよな?」

「誰が小学生ですかッ!?」

「言ってねえよ!?…悪い悪い、俺はレオ、西城(さいじょう)レオンハルトだ」

「…まあ、いいでしょう。僕は雄大、森崎雄大(もりさきゆうだい)です、よろしくお願いします」

 

 本人はガンを飛ばしているつもりなのだが、身長差の関係でただの上目遣いにしか見えない。レオンハルトは苦笑すると、話し始める。

 

「所で雄大は何処を見学するつもりなんだ?」

「僕ですか?僕は工房です、魔工技師志望なので」

「お前もか?」

()?」

 

 首をこてん、と傾げる雄大。行動が完全に小動物と化している彼にレオは吹き出しかけるが、それを何とか気合いで押し(とど)める。

 

「…何か今失礼な事考えませんでした?」

「そうか?気のせいだろ」

 

 そんなことを言い合っていた二人だったが、レオが指で教室のドア辺りにいた三人組、正確にはその内の一人である少年を指差した。

 

「アイツ、司波達也(しばたつや)って名前なんだが、アイツも雄大と同じ魔工技師志望なんだ」

「本人の居ないところで勝手に紹介されるのは、あまり気分の良いものじゃないんだがな…司波達也だ、よろしく」

「私は千葉(ちば)エリカ。エリカでいいわよ…それとアンタ。勝手に人を紹介してどうすんのよ?これだから単細胞は…」

「あんだと!?」

 

 レオの指差した三人が雄大のいる方へと歩いてきた。その中でもエリカと名乗った少女が、レオと言い合いを始めてしまう。それを達也は呆れた目で、もう一人の少女はオロオロとしながら見ていた。

 

「まあまあお二人とも、落ち着いて下さいな」

「「…分かったよ(わ)」」

「(仲良しかな?)では改めまして。森崎雄大です」

「え、えっと柴田美月(しばたみつき)です…」

「はい、よろしくお願いします」

 

 互いに自己紹介を終えたところで、雄大達は工房へと向かう。その途中、エリカが雄大に話しかけてきた。

 

「ねえ雄大。アンタの()()ってさ、ひょっとしてあの『森崎一門』の森崎なの?」

「ええまあ…それが何か?」

「やっぱり!じゃあさ、『クイック・ドロウ』とか『ドロウレス』とかも使えたりするの?」

「『ドロウレス』は厳しいですけど…『クイック・ドロウ』位なら僕も使えますよ」

「なあ、『クイック・ドロウ』ってなんだ?」

「そんな事も知らないの?」

「まあまあエリカさん落ち着いて。…『クイック・ドロウ』は森崎一門が体系化した技術のことです。例えば…」

 

 そう雄大が呟いた次の瞬間、彼はエリカの背後に移動していた。

 

「「「!?」」」

「こういう風に移動するための足運びだとか、視線の反らし方だとか。相手よりも素早くCADを抜く事に特化した技術…そんな感じですね」

「全員の瞬きするタイミングが合わさった瞬間に背後に移動したのか…大した観察力だ」

「タネを一瞬で見破る君も大概ですけどね」

 

 肩を竦める達也に、雄大が苦笑を浮かべる。他の三人はポカンとしていたが、やがてレオが感嘆の意味を込めて溜め息を吐いた。

 

「すっげえなあ…そんな体なのに」

「何時もだったら殴ってますけど魔法師同士の戦闘では()()()()()()()()のなら体格は関係ありませんから。」

 

 魔法師同士の戦闘は、早くCADを抜いた方が勝つと言っても過言ではない。『だったら誰よりも早くCADを抜けば良いだろ!』という脳筋の発想によって半世紀近くもの間培われてきた技術、その結晶が今の森崎一門の有名さを示している。雄大はCADの操作技術は並以上であると自負しているが、それはあくまで普通の精神状態の話であり、森崎一門の真髄である『常にCADを抜ける状態にしておく』というステージにいる駿との実力はかなりの隔たりがあると言って良いだろう。

 魔法師として及第点だろうと、森崎一門においては関係のないもの。ボディーガードを生業(なりわい)としている以上、実力に妥協は許されない。駿はその点中学校から業務を手伝っているから、雄大の何倍も高い実力を持っているのである。

 …まあ彼らの場合()()()()()()()()()()()()のだが、今は関係のない話だと言って良いだろう。

 

─────────────────

 

「…」

 

 司波達也は、その光景に絶句していた。あまりにも人間の理解の範疇を超えているであろうその光景は、彼の…ひいては残りの三人である千葉エリカ、西城レオンハルト、柴田美月の思考を停止させるには充分だった。

 

「お、お兄様。これは…」

 

 隣の少女…自分の妹である司波深雪も驚愕を浮かべながら達也にそう話しかけてくる。達也は頷いて、呟いた。

 

「雄大がこんな大食いだとはな…」

 

 彼らの前にいたのは、()()()()()()()()凄まじい勢いで食べ続ける雄大の姿だった。周りにはギャラリーが立っており、彼の事を見守っている。

 

 事の始まりは工房の見学が終わった後。達也達一行は食堂へ向かう事となり、そこで一科生とのちょっとしたトラブルが起こったのだ。

 『二科生なんて一科生のスペアでしかない』と言うその生徒にレオが憤り、一触即発の雰囲気となったところで──

 

『あれ?どうしたんですか皆さん』

 

 『食堂特製‼メガ盛りチャーハン‼(800g)』を抱えた雄大がやって来たのである。席を立とうとしていた達也だけでなく、レオも一科生も、全ての人間の時間が停止した。『?』と小動物のように首をこてん、と傾げる雄大だが、今度のレオに吹き出す気力は無かった。

 

『な、なあ雄大』

『何ですかレオ君』

『それ…全部食うのか?』

『食べれないものを注文するほどお金持ちでもないので。それに、後数皿は食べられ(いけ)ますよ?』

 

『バカな!?』

 

 思わず、と言った感じの声が一科生から漏れる。そして雄大は明らかに自らのお腹、それどころかそこら辺の大食いチャンピオンのそれですら入らなさそうなチャーハンを机に置き、レンゲを取って手を合わせたのだった──

 

 

「…(もぐもぐ)」

 

 そんな訳で、雄大は既に()()()に突入したチャーハンを一心不乱に食べ進めていたのだった。因みに一科生は先程からいない。当然だろう。目の前に大食らいの見た目小学生がいるのだから誰だって距離はとりたくなる。現に司波達也だってめちゃめちゃ距離をとりたいのだから。彼がこの場所にいる理由は、(ひとえ)に彼の妹、司波深雪がこの場所を離れようとしないからである。

 

「(お、お兄さまの横にこんなに長く合法的に居れるなんて…!)」

 

「…ハァ」

 

 一科生が居なくなって嬉しいのか、こんな見てるだけでお腹一杯になりそうな光景を見て辛いのか、そのどちらに自らの感情が傾いているか分からないまま、達也は溜め息を溢すのだった──

 

─────────────────

 

 さて、放課後である。あの後四皿目に差し掛かろうとして森崎の素早いツッコミにより撃沈(決まり手:手刀)した雄大だったが、気を取り直して午後の授業、先日雄大を咎めた七草真由美(さえぐさまゆみ)生徒会長の射撃魔法の訓練を見学したり、森崎駿が達也達に謝罪すると言った一幕があり、今に至る。

 

「何かあったんですかね」

「かもなあ」

 

 校門で騒ぎが起こっているのか人が集まっている。雄大と森崎がそんな会話を交わし、人混みの横を通りすぎようとした。

 

「いい加減にしてください!」

 

 ()()()が聞こえたのは、そんな時だった。雄大は何処かで聞いたことのあるような声だなあと呑気に思い、駿は表情を真剣なものに変え一回だけ跳躍した。

 

「──ッ!?雄大先にいくぞ‼」

「え、ちょ、待ってくださいよ駿‼わぷっ!?ご、ごめんなさい、通してくださーい!ちょ、やめ、ヤメロォーッ‼」

 

 友人の悲鳴を聞き流し、森崎駿は素早い動作で人混みの間を縫っていく。野次馬達の上から見たのは、雄大のクラスメートである柴田美月が声を荒げている姿だった。

 

「(一体何があった!?あんなに一科生が集まってるなんて…)」

 

「入学したばかりの今、ブルームであるあなた達が、一体どれ程優れてると言うんですか!?」

 

 ──マズイ。森崎は歯噛みした。まず、この高校には一科生と二科生がいる。そして基本的には一科生の方に成績がよい生徒が選ばれる為、一科生の事を花冠(ブルーム)、二科生の事を雑草(ウィード)と呼び差別するという伝統があり、それが今も根付いているのだ。

 『森崎』からすれば情報システム上の強さと実践における強さは別物であり、それだけで二科生の事をウィードと蔑む気にはなれなかった。…()()()()に勝ち越せてない、と言うのも大きいだろうが。

 それはそれとして、殆どの一科生は二科生の事を見下し、蔑んでいる。嫌悪していると言っても良いだろう。そんな見下している相手に正論でやり込められてしまった。故に、頭に血が上ってCADへ手がいってしまうのも、ある意味当然のことだと言えてしまうのである。

 

「だったら見せてやる‼これが一科と二科の──「そこまでだ‼」

 

 大声を出して全員の注意を一旦引き、地を踏み締め魔法を発動。素早く加速して一科生、そして特化型CADを抜こうとしていた二科生の二人の間に割って入った。

 

「言っておくが…校内では決められた場所以外での魔法使用は禁じられている。それは一科生も例外じゃない。それに、他人へCADを向けるな。犯罪行為と取られるかも知れんぞ?」

「も、森崎!?」

 

 約一名を除いて、驚きの目が彼へと集中する。森崎は頭を押さえて溜め息を吐いた。

 

「自分の実力に自信を持つのは結構な事だが…それが慢心にならないようにな」

 

 その言葉に、一科生の何人かが苦々しい顔をする。二科生へとCADを向けていた少年に至っては、顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。

 

「皆、落ち着いて‼」

 

 一科生の内一人、気弱そうな少女がそう声を上げCADを起動させた。それに気付いた森崎が制服のズボン。そこにあった特化型CADの引き金(トリガー)をひこうとしたところで──

 

「!?」

 

 ()()()()()()()。発動されることなく放出されたサイオンが粒子となって光るように消えていく。

 

「そこまでです!」

 

 凛とした声だった。その声の主は右手を此方に向けながら歩いてくる。森崎は、己の表情がひきつっていくのを感じた。何故ならば、その人物は──

 

「さ、七草生徒会長!?」

 

 第一高校生徒会長、七草真由美その人であったからだ。

 全ての人間が、その場に停止していた。十師族…日本の魔法師を纏める家々の中でもトップクラスの知名度を誇る『七草(さえぐさ)』。とは言っても、彼らを押し留めていたのはそれだけではない。彼女の美貌、それはまさに妖精に相応しいと言えるほどに美しい。また、その場にいたのが全て並より上の魔法師であったこともそれに拍車をかけていたと言って良いだろう。活性したサイオンが彼女を包み、どことなく幻想的な雰囲気を醸し出していた。そしてその横から、一人の少女が歩みでる。

 

「風紀委員長の渡辺だ。1-Aと1-Eの生徒達だな?事情を聞く。着いてこい」

 

 いっそ冷たいと言えるような声で彼女…渡辺摩利(わたなべまり)がそう言う。誰もが動けない中、ただ一人。司波達也は摩利に訝しげな視線を向けられつつも前へ出た。

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました。」

「悪ふざけだと?」

 

 「はい」と頷き、森崎駿へ視線を送る。彼が軽く親指を立てたのを視界の端に捉えつつ、達也は話始めた。

 

「先程()()()に頼んだんですよ『ドロウレスを見せてほしい』と。森崎一門はクイックドロウだけでなくドロウレスも有名ですから」

「それは本当か森崎?」

「─はい。僕ら森崎一門はボディーガードの家系ですから、出来るだけ実戦的なものをお見せしようかと思いまして」

「なるほど…では、そこの女子生徒が魔法を行使しようとしていたのは?」

「それは─「彼女が使用しようとしていたのは殺傷性のない閃光魔法ですよ、失明もしないほどのね」

 

 摩利の言葉に対する返答に一瞬詰まりかけていた駿の代わりに、達也がそう答える。その瞬間、渡辺摩利がすっと目を細めた。

 

「ほう…君は、展開されている起動式を読み取ることができるようだな」

()()は苦手ですが、()()は得意ですので」

「…どうやら誤魔化すのも得意のようだ」

 

 尚も達也を射抜くような眼差しを向けていた摩利だったが、ここで森崎と深雪が前へ出た。

 

「お兄さまの言うとおり、本当にちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わさせてしまい申し訳ありません」

「先程も申し上げましたが、ボディーガードとして、より実戦的な形式で披露した方が良いかと思いまして。クラスメートが()()()()()()()をしてくれて助かりました」

 

 そう深雪は頭を下げて言い、森崎が嘯く。「まあまあ」と真由美が摩利を押し留め、達也の方を振り返った。

 

「いいじゃない摩利。達也くん。本当に行き違いだったのよね?」

「…ええ」

 

 名前で呼ばれていることにツッコめないまま、真面目くさった表情で達也が頷くと、真由美はどことなく得意げに見える笑顔を浮かべた。

 

「生徒同士での教え合う事はとても良いことですが、魔法の行使に関しては細かい制限があります。授業でそれに関連することを習うまでは、魔法関連は自重しておくべきでしょう」

「──会長もこうおっしゃられてることだし、今回は不問としよう。以後気をつけるように」

 

 全員が頭を下げ、真由美と摩利は歩き出す。しかし、途中で摩利が振り返って言った。

 

「そういえば、君の名前を聞いていないな」

「……1-E、司波達也です」

「覚えておこう」

 

 そう言って、今度こそ摩利は去っていくのだった…

 

「…すまんな」

 

 摩利が去り、一科生が森崎達を睨んで去っていった後。唐突に森崎がそう切り出した。

 

「目をつけられただろう、司波達也」

「構わない。…遅かれ早かれこうなっていただろうしな」

「そうか…改めて名乗ろう。俺は森崎駿。森崎の本家に連なる者だ」

「司波達也だ。よろしく頼む」

「ああ…だがその前に」

 

 森崎が唐突に振り替える。そこには誰も──否。そこには()がいた。

 

「きゅ~…」

 

 目を回して倒れている、森崎雄大が。

 

「あいつを回収しなきゃな」

「…大丈夫なのか?」

「お湯でもかけておけば治るだろう」

「だ、誰がカップ麺ですか…ガクッ」

 

 こうして、彼らの二日目は終わった。なおこのあと、森崎駿が雄大を抱えて帰ったことは言うまでもない。




予想外にも高評価を頂き恐縮の限りです。次回からようやく主人公が頑張り出しますので、今しばらくの間お待ち下さい。
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