やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

10 / 187
感想ありがとうとございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

というわけで、今回は、京都修学旅行編との繋ぎになります。


⑩GS資格免許

 

GS資格試験の翌日。

俺は普通に学校に通学した。

体は滅茶苦茶だるいが、動けないほどじゃない。

霊気霊力を限界ギリギリまで使い、大怪我までした代償だ。

 

放課後は、だるい体を引きずって、いつも通り奉仕部に顔を出す。

 

「うっす」

 

「こんにちは、比企谷くん。あなた何時もに増して目が腐ってるわね」

 

「……だいたいいつもこんなもんだろ」

俺は何時もの雪ノ下の毒舌をさらっと返す。

 

「ヒッキー、教室でも何時もに増してダルそうだったね。風邪でもひいた?」

由比ヶ浜は心配そうな顔をする。

っておい、何時もに増してって、俺はいつもダルそうにしているのか?

……ああ、そういえばだいたい俺はいつもダルそうにしてるな教室で。

 

「いいや、なんか疲労がたまってるだけだ」

 

「あなたが疲れがたまる様な事をするとは思えないのだけど」

 

「ヒッキー、何で昨日学校さぼったし」

 

「いや……あれが、これで……」

事情の知らせていないこいつ等に、GS試験を受けていたとは言えない。ましてや、雪ノ下の姉の陽乃さんと戦って、大怪我させられたとは……

 

「……比企谷くん。あなたアルバイトをしてるらしいわね」

不意に雪ノ下がこんなことを言ってきた。

まさか、陽乃さんがばらした?あの人、言わないって言ってたぞ!

 

「ヒッキーが学校休むなんておかしいから、小町ちゃんに聞いたら、アルバイトしてるって、なんかしまったーーとか言ってたし」

 

……小町ちゃん。GSの事は世間様には内緒だと家族で決めたよね。迂闊すぎませんかね?

犯人は家の身内だったか。まあ、GSのアルバイトとは言ってなさそうなのは幸いか。

 

「働くのが嫌いなあなたが、学校を休んでまで、何のアルバイトかしら」

 

「いや、あれだ。親の仕事の。そのなんだ。代わりに緊急にな」

なんか言い訳をと考えたが、うまい答えがでない。

 

「怪しい。ヒッキーよく金曜日は部活、早く帰るし」

由比ヶ浜はジトッとした目で俺を見る。

 

「金曜日の夕飯は俺の担当だからな。買い物もしないといけないしな」

 

「……そう言えば、そんな事も言っていたわね」

 

「ああ、俺の両親は共働きだからな。家に帰ってくるのも遅いし、夕飯は当番制なんだよ」

 

「うーー、でも昨日なんで休んだし」

由比ヶ浜はまだ疑っている様だ。

なに?俺が学校休んだら由比ヶ浜に何か不都合でもあるの?

学校でも教室でも空気な俺は、居ても居なくても一緒な気がするが……

 

「まあいいわ。それよりも依頼の件どうしましょう」

雪ノ下は俺をジッと見た後、話題を変える。

 

「それそれ!修学旅行で戸部っちの姫菜の告白の手伝い!」

由比ヶ浜の興味もこの依頼の件に移ったようだ。

俺は内心ホッとする。

 

「戸部が告白して、振られる。終わり」

俺は端的に事実を述べる。

修学旅行の班決めを行った日に、葉山と戸部が奉仕部に依頼に来たのだ。

依頼者は戸部だ。依頼内容は修学旅行中に戸部翔が海老名姫菜に告白して付き合えるようにしてほしいという内容だった。

由比ヶ浜の猛烈プッシュでこの依頼を受ける事になったのだが、俺は現実的に不可能だと思っている。

 

「ええ?振られる前提!?」

 

「そうね」

 

「ゆきのんも何気に酷くない?」

 

「それが世間一般的な見方だ。由比ヶ浜。戸部の良いところをいくつか上げてみてくれ」

 

「うー、誰にでも話しかけて、結構面倒見がいいところとか……声が大きいとか」

由比ヶ浜は考えながら答える。

声が大きいとか、良いところか?マイナスだろ。

 

「次は雪ノ下だ」

 

「わたしは彼の事あまり知らないわ」

 

「どういう印象を持ったかだけでいい」

 

「会った印象だけでいいなら……なれなれしくてうっとおしい。何を言っているかわからない。ちゃんと日本語を話してほしいわ。あと、やかましい」

雪ノ下は思い出すしぐさをしながら、ゆっくり答えていく。

 

「……由比ヶ浜、もはや絶望的だ。よってこの依頼は終了だ」

ほらみろ、雪ノ下が正しい。

しかし、さすがは毒舌の女王。面とこれ言われちゃうと泣いちゃうまである。

 

「ゆきのんが厳しすぎるだけだし!」

 

「依頼を受けたのだし……そうならないように、出来るだけサポートしましょ」

雪ノ下は由比ヶ浜をなだめるが如くそう言った。

 

「ゆきのん!……ゆきのんありがとう!!」

由比ヶ浜は雪ノ下に抱き着く勢いで、肩を寄せる。

 

「ゆ、由比ヶ浜さんあまりくっつかないで」

 

「てへへへへ」

 

なんだかんだと、この二人は仲がいい。

まあ、絶望的だが、依頼を受けたことだし、やれることはやるか。

 

 

 

 

 

 

京都の修学旅行の前日

俺は三日ぶりに美神令子除霊事務所に訪れる。

 

「はい、これ」

事務所の所長席に座る美神さんから、免許証の様なものを渡される。

GS資格免許だ。

 

「これで比企谷くんも正式にゴーストスイーパーよ。まあ、一年間は見習い扱いだけどね。見習いとはいえやれることは全く一緒よ。心してかかりなさい」

 

「はい……っ」

おお、GS資格免許を遂にこの手に、これで見習いとはいえ、正式にGSを名乗れる。

ゴースト・スイーパー比企谷八幡参上!!悪事を働く妖怪変化め!覚悟しろ!月に替わってお仕置きよ!!

テンションが上がりすぎて、決めポーズと決め台詞をつい妄想してしまった。

 

「比企谷くん。おめでとうございます」

美神さんの隣でキヌさんがニコニコ笑顔で祝福してくれた。

キヌさんに言われると俄然やる気が出てくる。

 

「ありがとうございます」

 

GS資格免許をまじまじと見つめる。

右上にはでかでか黒字でCと書かれている。

 

「君は、二次試験で準優勝してるから、最初っからCランクよ。ちゃんと仕事して依頼をこなさないと、直ぐにDランクに落ちるわよ」

それを察した美神さんが説明をしてくれる。

 

いきなりCランクかよ。まじか

 

GS資格免許にはランク付がある。

これは結構重要な事なのだ。

ランクはそのGSの実力を示すもので、そのランクにあった依頼しか受けられない。法律でもそう制定されている。

実力不相応の依頼を受ければ、凄惨な結末が待っているからだ。

GSの仕事は常に死と危険の隣りあわせ。

それを回避するためにも、このランク付が制定されたのだ。

それもごく近年にだ。

いままでは、分不相応の依頼を受け、GSの死亡事故というものが結構多かったが、このランク付けシステムが制定されてからは、死亡事故は5分の1以下まで軽減されたのだ。

因みにこのシステムを作ったのは。美神さんのかーちゃん。美智恵さんだ。

あの人どんだけ有能なんだよ。しかもめちゃ強いし。

 

 

S~Fランクまで、ランク分けされる。GS資格試験に合格するとEランクから始まる。

優勝者と準優勝者はその実力を自動的に認められ、それぞれBランクとCランクからのスタートだ。

だからって、油断すると直ぐにランクを落とされる。

ここ2回ほどの優勝者と準優勝者はその半期にはランクを落とされたそうだ。

そのことが原因で、この優勝者と準優勝者のランク特典は廃止の意見も出ている。

 

このランク付け、年2回査定がある。

GS資格免許を取得してるものは、個人または会社から、受けた依頼とその報告書、それ以外に霊や妖怪と接触し対応時の報告書を日本GS協会に提出しなければならない。

日本GS協会は母体である環境省の担当官僚とオカルトGメン日本支部所長、国際オカルトGメンの上層部メンバーが査定し、ランクの上下を決めるらしい。

まあ、オカルトGメンの上層部メンバーとはもろ、美神美智恵さんなんだが……あの人、まじでどんだけこの業界に影響力持ってるんだよ。

 

そんなわけで、このランク付は今や全世界で通用するのだ。

だから、海外から、特殊な依頼を受けることもある。

 

全世界を見ても、Sランク、AランクのGSは希少な存在だ。

在籍人数は日本がトップなのだそうだ。

 

 

美神さんは最上ランクのSランクだから、美神令子除霊事務所はすべての依頼を受けることができる。

 

まあ、Sランクの仕事なんてめったに来ない。俺が美神令子除霊事務所でアルバイトで入ってからは1回だけあったそうだけど、俺は危険だという理由で、その依頼には参加していない。

美神さんがそう言うぐらいなんだから、相当やばい案件だったのだろう。

 

 

「ところで、横島師匠は?どこに?」

 

「ああ、あいつはちょっと別件で出張よ」

 

「そうなんですか」

横島師匠にGS資格免許を見てもらいたかったのだが……

横島師匠がこんな感じで、出張するのは、過去に何回かあった。

いずれも理由は教えて貰えなかった。

横島師匠ではないと、まずい案件でもあるのだろうか?

それともセクハラで訴えられて、それの対応だろうか?

 

「それと、俺は明日から3日間、修学旅行で京都なんです」

 

「そういえば、そんなことを言っていたわね。君、行かない方がいいわよ。ぜったいなんかとんでもない目に合うから」

美神さんは再度俺に忠告する。

 

「行きたくはないんですが、流石に学校の行事なんで理由も無しにさぼる訳には……」

 

「比企谷くん、これお守りです。私の実家のお守りなんです。何も起こらないようにとおまじないしておきました」

うう、なんて優しいんだキヌさん。家の家族や奉仕部の連中にも分けてあげたい。

しかも、このお守り、霊気を感じる。……なんだこれ?初めての雰囲気だな。

きっとキヌさんが何らかの術式のおまじないを込めてくれたに違いない。

俺はキヌさんからお守りを3つ貰った。

 

「GS資格免許を持っていきなさい。神通棍といくつかの札は貸してあげるわ。自分の身は自分で守るのよ。……せいぜい、気をつけなさい」

美神さん。何だかんだと言って心配してくれてるようだ。

まあ、札とかを飽く迄も貸すだけであって、くれるわけではないのは、美神さんらしいが……

 

 

京都でなんか巻き込まれるのは確定なのか?

とんでもない目ってなんだ?

俺の占いだと、最悪死とかでてたが……

 

やっぱ、修学旅行休もうかな……

 

 

 

 

俺は家に帰って自室で、貰ったばかりのGS資格免許を片手に…………

 

「ちょっとイタズラが過ぎたようだな!!この外道妖怪!このゴーストスイーパー八幡様が成敗してくれる!!」

 

俺はそう言って、材木座的な恥ずかしいポージングを取って、1人悦に入っていたのだが……………

 

ガチャリ

 

「………お兄ちゃんどったの?頭でも打った?……病院行く?」

小町にバッチリ見られてました。

 

 

俺はその夜、あまりの恥ずかしさに、1人ベッドの上で悶絶してたのは、仕方がないことだろう。




次は京都修学旅行編です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。