やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
なんだかんだとやってたら、こんなにあいてしまいました。

とりあえず、この前の続きです。





(111)若手能力テストバトルロイヤルその2

Cランク以下及び25歳以下若手対象の能力テストバトルロイヤルが開始されようとしていた。

開始前のカウントダウン中にこの広大なフィールド内で位置取りをしようと移動していたのだが、俺はどうやら他の参加者に狙われてるようだ。

10m以内に12人、遠巻きに20人程、俺を囲むようについてくる。

出る杭は打たれるとはいうものの、これはあからさま過ぎるだろ?

 

 

開始の合図と共に、示し合わせたかのように近くの連中が次々と襲い掛かって来た。

俺も開始と共に霊力で身体能力強化と霊視空間把握能力を発動させ襲撃に備える。

最初に襲って来た三人は神通棍を振るってくるが、俺は走るスピードをさらに加速させ振り切る。

次に仏教系なのか修験者なのかわからないが、4人が錫杖を振るい襲ってきた。

俺は速度を維持したまま小刻みに左右上下のフットワークを使い、それぞれの攻撃を避け、襲ってきた奴らを引き離す。

その後に霊体ボウガンやら札クナイなどが飛んできたが、それらは俺に届かず地面に突き刺さる。

 

俺は森の中に入り込み、木の上に飛び移り、さらに連中から遠ざかるように移動する。

俺の霊視空間把握能力でも50m以内には誰も居ない事を確認し、霊気を抑え隠密行動に移す。

どうやら襲ってくる連中をとりあえず撒いたようだ。

だが、今回のバトルロイヤルは霊具持ち込みOKだ。

暫くしたら見鬼くん(霊体センサー)で俺の位置がバレるだろう。

まあ、極小に霊気を抑えてるし、他の参加者もいるから、俺を特定するのにもそこそこ時間は掛かる。

 

これからどうしたものか。

俺の目的は飽くまでも参加者の中から、一連の霊能愉快犯の関係者を探す事なのだが。

まさか、俺を集団で狙ってくるとは思わなかった。

先に彼奴らが俺を狙う理由も探った方が良いのか?

それは後でいいか。予定通り先ずは霊能愉快犯の関係者洗いだな。

 

 

『比企谷くん。大丈夫でしたか?』

丁度キヌさんから通信が入る。

 

「連中は撒きました」

 

『流石ですね。あんなに霊能者が居る中を、あっさりと対処できるなんて……、比企谷君は暫くジッとしておいた方がいいですね。私は美神さんと美智恵さんの指示で、疑いがある人物と接触を図ります』

キヌさんに褒められるのは素直に嬉しいが、まあ、そんなに大した連中じゃなかったから、いくら人数が居ても苦にならない。あの程度で音を上げるようでは妙神山の修行にはついて行けないしな。

 

「大丈夫です。多少身動きがしづらいですが、問題ないです。ですが、俺は狙われてるのは変わらないんで、単独で行動します」

 

『わかりました。もし、比企谷君の霊視能力が必要な人が見つかればお知らせします。無理はしないでくださいね』

 

「はい」

 

キヌさんと通信を終えると直ぐに美神さんからも連絡があった。

しかも、何故か怒ってらっしゃる。

『比企谷!!あんた何で返り討ちにしなかった!!』

 

「いや、目的は愉快犯の関係者の洗い出しですから、わざわざ倒さなくても」

 

『あんた狙われたのよ!集団まで使って!』

 

「確かに想定外でしたが、まあ、予定通りの行動に移りますよ」

 

『そんな事はどうでもいいわ……ふふふふふっ、あいつらはあんたがこの美神令子の事務所の一員だと知って襲ってきたの。この意味わかるわよね。舐めた真似を。この美神令子にケンカを売ったも同然よね。うふふふふふっ』

美神さんは抑揚もなく静かに、笑い声を漏らしながらそう言った。

はっきり言って、怖い。

どうでもいいって、めちゃ大事な事なんですが?……完全に頭にきてるな美神さん。

この人の理論は不良と変わらない。

自分の舎弟が襲われ、自分の顔に泥を塗られたぐらいに思ってるのだろう。

 

「はぁ」

俺は気の無い返事をする。

だいたいこの後の美神さんが発する言葉は見当がつく。

 

『あいつら全員、ぼっこぼこにしなさい!!この美神令子にケンカを売った事を真っ白なベッドの上で後悔させてやれ!!これは命令よ!!』

やっぱり……、相当お怒りの様だ。

 

「それは流石に不味いんじゃないですか?そもそも目的は、此処の連中の中に愉快犯の仲間を探す事ですし、俺はそもそも実力をさらさないためにも、なるべく攻撃はしないようにと、霊力もかなり抑えるようにと美智恵さんに釘を刺されてるんですよ」

そう、美智恵さんからそう言う指示を貰っていた。

万が一、愉快犯の仲間や本人がこのバトルロイヤルに紛れていた場合を想定し、俺の実力をさらさないように言われていた。相手に不用意にこちらの情報を渡さないためだとか。

 

『ようは、霊能をさらさなきゃいいんじゃない!あんな連中ぐらい倒してきなさい!!二度と逆らえないようにコテンパンによ!!』

美神さんは本気だ。

しかも、霊能を使わずに倒せとか難易度高すぎだろ。

 

「流石にそれは難しいですよ。それに調査はどうするんですか?」

 

『私や横島の何を今迄見て来たの!!あんな連中ぐらい、霊能なんて使わずに倒せ!!そのついでに倒した相手の調査なりをすればいいじゃない!あんた器用なんだからそれぐらい出来るでしょ!!いいわね!!相手の鼻っ柱を完膚なきまでにへし折りなさい!!』

そう言って、ブチンと通話を切る美神さん。

相変わらず滅茶苦茶だ。

この人に倫理観とかそんなものを今更求めても意味が無い。

勝負ごとには異様にこだわるし、超負けず嫌いだし。

はぁ、こりゃやらないと、美神さんに後でとんでもない目にあいそうだ。

しかも、霊能を抑えたままでか……はぁ、という事は美神令子流や横島忠夫流でやれと。

俺に出来るのか?

俺はそう思いつつも連中を倒すプランを頭で練る。

なんだかんだと俺も相当美神さん達に毒されているようだ。

 

はぁ、なんか気が重い。

 

 

 

 

 

 

 

俺はとある準備を十分に行ってから、ワザと見つかる様に森の中で霊気を少々開放する。

こうすれば、俺を狙ってる連中が見鬼くん(霊体センサー)を使って俺を見つけてくれるだろう。

なんでそんな事をするかって?

それは……

 

ん?もう俺を見つけてくれたか。

俺の方に向かってくる奴が3人、5人、7人と……まだ集まって来るな。

どうやら、俺を襲って来た連中は連絡を取り合ってる様だな。

全員グルの可能性が高いか。

 

俺は森の際から、森の外の様子を伺うフリをする。

わざと連中に見つかりやすいようにだ。

 

「いたぞ!」

「追え!」

どうやら、俺を目視で見つけてくれたようだ。

 

俺は慌てたように、森の奥へと逃げ込む。

 

「ゾンビ男の癖に逃げ足だけは早いようだな!」

「森の中に逃げこんでも無駄だぞ!見鬼くんがお前を捉えてる!」

俺を狙って集まって来た25名程が追って来る。

 

そして、奴らは俺を追って森に入るが……

 

 

「ぐわわーーーーっ!」

「丸太が?飛んできた?」

「罠だ!……気をつけろ!?」

そう、森の中に入ると、木に吊り下げていた大きな丸太が、重力と遠心力にのって勢いよく侵入者に襲い掛かる。

これで4名脱落。

 

「げっ!」

「ぎゃーーーっ!」

「この卑怯だぞ!!」

次なる罠は括り罠、つるをロープに見立てて、そこに踏み込むとつるが足に絡み付き、勢いよく空中に引き上げられ、宙吊りになる仕組みだ。

それだけだと逃げられる可能性があるから、空中に引き上げられる途中で、ぶっとい木の枝に叩きつけ気絶させる仕組みだ。

これで5名脱落。

 

「がはっ!?」

「いたたたた、何だこれは?」

「こ、こんなもの!……う、動けない」

若木が四方八方からバネのようにはじき出され、通行した霊能者を強く打ち据え、さらに打ち出された木々に挟まれ身動きが取れなくなる。

これで4名追加だ。

 

 

そう、俺はこの短時間で罠を仕掛けていたのだ。

この2年間半、数々の罠を作るのを手伝わされていた。

木のつるや草からロープを作ったり、地面に穴を掘ったり……

どんだけ場数を経験したか。

 

俺は罠に嵌り身動きできなくなった連中にこそっと近づき、全員拘束する。

後ろ手に親指同士を結び足首を括る。それだけで人は動けなくなる。

そいつらを霊視して、愉快犯の仲間かを調べるのも怠らない。

その間も、俺の張った罠に引っかかって行く若手霊能者達。

 

「おわーーっ!」

「いたたたっ……」

「な、なんだ?」

「落とし穴?いつの間にこんなものが?」

そして、得意中の大得意の落とし穴に落ちる若手霊能者連中。

7名追加だ。

 

落とし穴なんてとか思ってる奴こそ引っかかる。

霊能力者は自分の霊能に頼る傾向がある。霊気を追ってるから、霊気もなにもないこんな単純な罠にかかりやすい。

動物霊や動物型妖怪も同じ傾向にある。

だが、奴らはもっと警戒心があるから、バレないように罠の精度には十分気をつけなくちゃならない。こいつら程度だったらこれで十分だ。

まあ、美神さんや横島師匠や唐巣神父には、こんな罠は引っかからないだろう。

一流どころになると警戒心も半端ない。ああ見えて、全方向すべてに気を配っている。

俺の罠程度なら、美神さんは木の枝一本ですべて解除してしまうだろう。

 

俺は落とし穴に落ちた連中の上から、土をかぶせ、体3分の2ぐらい埋める。

そうすれば、連中は身動きがとれなくなる。

「ゾンビ男!卑怯だぞ!!」

「霊能で勝負しろ!!」

「横島のような事を!!」

落とし穴と土に埋まった連中が俺に罵声を浴びせる。

 

「この落とし穴、平安京エイリアンの術って言うらしいぞ。理由は知らないけどな。こんな単純な罠にかかる方が悪い。霊能に頼り過ぎなんだよ」

実際、落とし穴に致死性の毒針や毒池、針山なんて仕掛けてあったら、此処の連中は既にこの世にいないだろう。

俺がこう言うと、連中は悔しそうな顔を滲ませる。

まあ、これに懲りて、今後は罠の警戒もすることだ。

 

美神さん、これで満足ですか?

どうせこの様子をドローンで見て、あくどい笑顔を漏らしてるんだろうな。黙ってれば、美人なんだが……。

俺も横島師匠と同じく悪評がたちそうだな。

そういえば、俺も罠にどれだけ引っかかったか………、美神さんは俺にワザとトラップを踏ませたりするし。……罠を解除するために。

 

 

罠は確かに有効だが、事前準備が必要だ。

相手が警戒心が高い連中や、大物になればなるほどな。

単純な罠以外に、大掛かりな術式を介したりと。

だが、この程度の罠だったら30分もあれば十分準備が出来る。

横島師匠なんて穴を掘るのが滅茶苦茶早い、1秒間に1メートルは掘れるじゃないか?

多分、ロードランナーやミスタードリラー並みに早い。

 

その後、罠に引っかかった連中に、次々と退場のコールが掛かる。

 

罠にかかった連中に、愉快犯の仲間らしき連中はいなかったな。

そりゃそうか、この程度の罠に引っかかる連中が、オカルトGメンや美神さん達の捜査網から逃れる事なんて到底できないだろうし、クリスマスのガルムを召喚させるトラップや、異界の門やそれに仕掛けられていた遅効性トラップなんてものを、人知れず仕掛けられる奴らがこの程度の罠に引っかかるはずが無い。

 

 

罠にかからなかった俺を狙ってる連中が、残り6~7名ってところか、あの安田って人とそのお仲間か。そもそも森に入ってこなかったし、俺の誘いには乗らなかった。

流石は2年前のGS資格試験優勝者ってところか。

 

「比企谷!出て来いよ!罠なんてものは俺には効かない。俺と霊能を使って堂々と勝負しろ!」

安田って人が、俺がいる森に向かって大声でそう叫ぶ。

 

なんだ?この人、熱血漫画の主人公か何か?

はぁ、正々堂々と勝負出来ないんだよ俺は。

しかも、そっちはお仲間率いてるのに正々堂々とは、どういう了見だ?

まさか、一対一で勝負するという事なのか?

 

どうしたものか……。

美神さんに判断を仰ぐか……いや、捻りつぶせと言われるのが落ちだな。

まあ、霊能を使わずに戦う方法は何も罠だけじゃない。

むしろ美神さんはそっちの方が得意だったりする。

バトルロイヤルって戦いにもってこいの方法だ。

 

 

俺は思考を巡らせながら森の外へ出る。

 




漸く、続けられそうです。
一度つまずいちゃうと、なかなか再開が難しくて……
なんだかんだと、他に気が移っちゃいました。


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