やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
では、続きです。
俺が振り返った先には、体長3メートルはあろうかという緑色筋骨隆々の豚面人型獣魔、オークが3体現れる。
俺の罠で、ダウンさせた安田が、懐から見た事も無い封印筒を取り出し、オークを解き放ったのだった。
まずい、安田は魔獣使いの適正は無かったはずだ。
ただでさえ、オークはコントロールが困難な魔獣だ。
オークをコントロールが出来ずに暴走するぞ。
俺はオークに向き直り、相手の動きを観察する。
オーク3体は辺りを見回し、その場を動かない。
どうやら、この状況を把握していないようだ。
思った通りだ。こいつ等は全くコントロールされていない。
俺はワザとオークが俺に気づきやすいように、前に出ると、オーク達は俺の存在に気が付き、ゆっくりとした足取りで向かってくる。
そのゴツイ手にはドデカイこん棒が握られていた。
単体ではCランク魔獣のオークは、本来群れを形成する知能を持った魔獣だ。
群れ形成したオークは下手をすると厄災級にまで、討伐難易度が上がる事もある。
群れることで、奴らは何倍もの力を発揮させることができる魔獣だ。
だが、目の前にはたった3体だ。
EランクやDランクのテスト参加者には荷が重いかもしれないが、3体程度ならば、霊力を抑えた状態の俺でも倒せるはずだ。
俺は懐から札を取り出しつつ、オーク達を罠にはめる算段を巡らせる。
だが……
倒れてる安田から、怪しい気配を感じる。
オークの先に倒れてる安田に視線を移す。
安田の手には、黒ずんだ精霊石のようなものが握られ、それを口にする。
すると、安田本人から禍々しい霊気が急激に膨らみだす。
暫くは動けないだろうダメージを負ってるはずの安田は何もなかった様に立ち上がり、何やら指先で正面の空間に描き出す。
なっ、魔法陣?安田は武士系の霊能者じゃなかったのか!?
しかも、見た事も無い魔法陣だ。
この感じ、何かヤバい。
俺はその場から後方に飛びのきながら、霊視能力と身体強化をもう一段階、二段階と開放し、
安田の様子を注視する。
形成された魔法陣から、魔法言語の光の帯が伸び、3体のオークに巻き付く。
「比企谷―――っ!!俺にこれを使わせたことを後悔させてやる!!」
安田の目は赤色に染まり、そして俺を睨みそう叫ぶ。
それと同時に3体のオークは黒い霧と化し、安田を覆う。
安田を覆う黒い霧は直ぐに消え去り、そこにはオークをそのまま形をなしたかのような鎧を着こんだ安田が現れる。
なっ!?まさか…魔装術か?
文献でしか見た事が無いが、多分そうだ。
確か魔装術の使用はGS協会に許可が必要な筈だ。
それ程危険度が高い術だからだ。
悪魔や魔獣の血を取り込み、魔装として身に着け、圧倒的な身体能力を手に入れる術だ。
取り込む悪魔によっては、その悪魔の能力すら使用可能となる。
自身の何倍もの力を得ることが出来る。
だが、リスクも大きい。
魔装術はその性質上、使用するだけで霊気を激しく消費する。
さらに悪魔や魔獣の血の力に負けない圧倒的な精神力が必要なのだ。
自身の霊気が尽きたり、悪魔や魔獣の血に負け精神が折れ、魔装術が暴走すると、悪魔の血に取り込まれ、自身が悪魔化や魔獣化してしまうのだ。
現在使用できるのは、横島師匠の友人で伊達雪之丞さんだけだと聞いている。
その禍々しい姿を見た安田の取り巻きは、この場を逃げ出す。
「比企谷、お前が悪いんだ。力が有り余って制御が出来ん。死んでも恨むなよ」
オークの魔装を纏った安田は俺に一気に迫り、手に持つ槍を振って来た。
さっきに比べ数段速い、これが魔装術の力か。
だが……、まだ遅い。
美神さんや横島師匠に比べれば、まだまだだ。
小竜姫様のあのスピードに比べれば、全く問題にならない。
俺は安田が振り下ろす槍を、難なく右ステップで避ける。
すると、安田が槍を振り下ろした先の地面が、その衝撃でクレーター状にへこむ。
成る程、力は随分と上がってる様だ。
取り込んだオークの特性だな。
俺は安田が槍を振り下ろした隙に、蹴りを一発くらわせ、さらに札に電撃を付与させ投げつける。
安田は多少体勢を崩した程度で、ダメージはそれほど受けていない。
耐久力も相当上昇してる様だ。
安田はさらに槍を連続で振るってくる。
俺はそれを避けながら、霊視能力を高め安田を観察する。
さっき安田が飲み込んだ黒ずんだ精霊石が、安田の魔装化をコントロールしているようだ。
いや、精霊石じゃないな。魔法石の一種か?それとも魔石そのものか?
何にしろ、やばそうな一品だ。
しかし、魔装化が出来るアイテムなんてものは聞いた事が無い。
しかもさっきのオークもだ。あんなものをどうやって手に入れた?
「どうした!?防戦一方か?それともGS資格試験と同じで、持久戦狙いか?」
安田は槍を振るいながら、俺に余裕の笑みを見せる。
「いいや、これで終わりだ」
俺は拘束結界術式を展開させる。
先程のオークが3体現れた段階で、オークを倒すために、咄嗟に5枚の札を地面に罠として投下し仕掛けていた。
そして、安田をこの場所へ、攻撃を避けながら誘導する。
安田が踏み込んだ場所に向かって、仕掛けた札が反応し、安田を中心とした五芒星結界術式が発動し、安田を円柱状の結界が覆う。
「ぐっ!」
安田は動きを止める。
これだけだと、拘束だけの効果しかない。
しかも、札だけの簡易結界だ。
オークの魔装術でブーストしたあの馬鹿力で暴れられると、結界はそう長くは持たないだろう。
俺は、その結界に言霊に乗せた印を結び、更に対魔術式を追加する。
「魔の物を浄化せよ!」
「ぐはっ!ぐあああああああっ!」
安田は全身に電撃が走ったかのように痙攣し苦しみだす。
当然だ。安田の魔装術は魔獣オーク3体を使い形成した物だ。
核は、魔石の様だが、安田の霊力と霊体構造を依代としている。
その状態だと、依代となった安田本体にも魔獣用の対魔術式も影響する。
魔装術を発動させてる限りはダメージを受け続ける事になる。
まあ、本来の完全な魔装術にこの程度の物が効果が有るかは疑問だが、俺の霊視で確認したこの状態だと、安田の魔装術には効果的だろう。
「魔装術を解け。ダメージを受け続けるぞ」
俺は安田にそう勧告する。
実際、魔装術を解けば、安田はダメージを受けなくなる。
退魔術式の効果は唯の人間には影響しない。
「ぐうううっ、出来ない」
苦痛に歪んだ顔で安田は俺の勧告を拒否した。
「このままダメージを受け続けると、暴走するぞ!解除しろ!」
「そ、そうじゃない…か、解除のやり方を知らないんだ!」
安田は涙目の情けない顔でこんな事を叫ぶ。
はぁ?解除のやり方を知らない?
そんな訳がないだろ?発動出来たなら解除ができて当然だ。
今までだって、魔装術を使ってたんだろ?だったら、当然解除だって出来ていたんだろ?
何かのブラフか?
「冗談も大概にしろ!何か?あんたは解除できない様な代物を使ったとでも言うのか?早く解除しろ!暴走するぞ!」
俺は安田に対して語気を強め、解除を促す。
「ぐっ、冗談じゃないんだ!今まで、霊力が尽きかけたら勝手に解除が出来たんだ!……うううううっ」
まじかよ。この目、この雰囲気は冗談じゃなさそうだ。
自分で解除できないような代物に何故手を出したんだ!?
俺は結界術式の端に触れ、退魔術式のみを停止させる。
万が一のために拘束結界術式はそのまま残してある。
「うっ……」
安田は拘束結界術式の中で、ぐったりと地面に倒れた。
だが、オークの魔装術は解けていない。
まあ、安田自体の霊気はもうわずかしか残っていない。
本人の話が本当であれば、魔装術は直に解けるだろう。
……こいつはもしかすると、もしかするな。
霊災テロの愉快犯になんらかの繋がりがある可能性が大だ。
オークなんて魔獣を使役すること自体聞いたことが無い。
そのオークを西洋の魔獣使いでもない武士系の霊能者が持ってる自体おかしい。
それと、安田が口にした魔石みたいな石だ。オークを強引に取り込んで魔装術化させる魔道具なんて、聞いた事が無い。
魔装術自体も高難易度の術であり、GS協会の許可が無きゃ使用できない代物だ。
俺は安田の様子を伺いながら、その場で術符を使って美神さんに通話をする。
「美神さん、見てましたか?」
『見てたわよ。オークに魔装術ねえ…かなり怪しいわね』
「はい、俺もそう思います」
『ママに代わるわ』
美神さんはそう言うと、美智恵さんが通信に出る。
『比企谷くん、よくやってくれました。彼は霊災テロの犯人に繋がりが有りそうね。既に、彼が所属してる事務所にオカルトGメンを派遣したわ』
「そうですか、安田と戦って話した印象だと、仲間というよりも、いつの間にか利用されていたって感じがします」
『そう…。しかしながら霊力を抑えた状態だというのに、魔装術を使った相手に見事な術儀ね』
「そうですか?それと、バトルロイヤルはそのまま続行ですか?安田はどうします?」
『安田君を君が抑えてくれたお陰で、他のテスト参加者には影響は出なかったわ。バトルロイヤルは続行よ。君はまだいける?』
「これぐらいは大丈夫です」
『……ほんと、君は今からでもオカGに欲しいわ。安田君については、スタッフを拘束に向かわせます』
「そ、そうですか。……」
こんな所で勧誘はやめて欲しい。隣には俺の雇い主で、貴方の娘さんが居るんですが。
今ので美神さんの機嫌が悪くなっただろうな。
こんな事を思いながら美智恵さんとの会話を終わらせようとした。
だが……
「あがっ…あががががっ!がっががっ」
俺の拘束結界術式の中でぐったりしてた安田が急に苦しみだす。
なんだ?何が起こってる?
そういえば、安田は霊気が残っていないのに、魔装術が解けてないぞ。
どういうことだ?
俺は霊視で、安田を注視する。
安田の魔装術の鎧が安田の肉体と融合しだしているだと!暴走……?
なんだ?どういうことだ?安田の奴は、霊気が切れると魔装術が解けると言っていたぞ!
いや、本来魔装術は術者の霊気や精神が限界に達すると暴走するはずなんだ!
じゃあ、本人は今までは霊気が切れてなぜ魔装術が解けていたと言っていた。嘘はついていないはずだ。今迄は大丈夫で、今回はなぜだ?
そもそも安田は魔装術をコントロールしていない。あの魔石がコンロトールを……
俺は安田の腹の中にある魔石を確認しようとするが、魔石は無かった。
いや、砕け散っていた。
くそ!完全に暴走状態だ!
「美智恵さん!魔装術が暴走状態に!安田を取り込もうとしてます!」
俺はまだ通話が切れていない術符に叫ぶ。
『魔装術が暴走!?オーク3体を依り代の……比企谷君下がりなさい。私と令子が行くわ……いいえ、私達が行くまでに足止めを、霊力の開放を許可します』
そう言葉を残し、美智恵さんからの通信が切れる。
目の前では、見る見るうちに魔装術の鎧に取り込まれ、そして安田の体は膨張しだす。
既に意識が無いのか、安田からのうめき声は聞こえくなった。
「くっ!俺じゃ、何もできないのかよ!」
俺は魔装術の暴走を止めるすべを知らない。俺の目の前で徐々に魔装術に取り込まれ、魔獣へと変化していく……くそっ!見てる事しかできないのか!?
俺は霊気を開放し、安田を覆ってる拘束結界術式の強化を施すために、追加術式を言霊と印で紡ぎ出す。
安田の口から長い牙生え、体は4m程の筋骨隆々の緑色の巨体に変化した。
そして、その赤い目で俺を見下ろしていた。
「ハイ・オーク……だと…」
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