やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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続きです。


(114)若手能力テストバトルロイヤル終了

安田の顔から牙が生え獣の顔に、体は膨張し4m程の筋骨隆々の巨体に変化していく。

そして、その怪しく光る赤い目で俺を見下ろしていた。

「ハイ・オーク……だと…」

 

安田は魔装術に取り込まれオークの上位種、ハイ・オークへと姿を変えた。

オークと姿恰好はほぼ同じだが、体の大きさが二回りほどデカい。

オークは上位種に成長するほど体が大きくなるというが……

 

本来、オークが上位種のハイ・オークに変化するには、他の生命を多量に喰らう必要がある。

ハイ・オークはランクB。Aに近いランクB+の魔獣だ。

 

安田だったハイ・オークはその場にあった霊槍を掴み、振り回し、俺の張った結界を破壊しようとする。

この程度の拘束結界術式じゃ、こいつは取り押さえられないか。

しかも、このバカ力だ。このままだと結界自体が破壊されてしまう。

 

……少々痛めつけて大人しくさせるしかない。

言霊と印を結び、さっき魔装術を纏った安田に対して使った退魔術式を拘束結界術式に組み込む。

 

「ぐふ!ぐふぐふん!」

ハイ・オークとなった安田は苦しそうな呻き声を上げるが、よけいに暴れ出した。

 

くそっ、このままじゃ結界が持たない。

俺はさらに霊力を注入して、退魔術式の出力を上げる。

 

「ぐふぉふぉふぉふぉ!?」

ハイ・オークの体の至る所から煙が上がり、その場で激しく苦しみだした。

やばい…これ以上やってしまうと、ハイ・オークと化した安田を滅してしまう。

俺は対魔術式の出力を下げる。

 

ハイ・オークは俺が退魔術式の出力を下げたその瞬間に、息を吹き返したかのように、槍を振るい結界に亀裂が入り、そのまま拘束結界術式が崩壊する。

 

「くそっ!」

しまった!出力を抑え過ぎたか。

 

「ぐぉおおおおーー!」

ハイ・オークは雄たけびを上げながら俺に、猛然と突進し、槍を振るってくる。

 

俺はそれを大きく右に飛び回避する。

 

いつの間にかハイ・オークは退魔術式の影響で焼けただれた皮膚が回復していた。

 

ハイ・オーク以上の上位種は回復力も高いと文献に書いてあったが、ここまで速いのか。

中途半端な攻撃は効果が無いという事か。

 

高めの札を持ってきておくべきだった。

10万~50万程度の札じゃ、こいつを拘束するほどの結界術式を展開出来ない。

 

……やはり、一撃で急所を…

俺は左手に霊気を集めて、霊波刀を生成しようとしたが、途中で解除する。

……だが、それだと滅してしまう可能性が高い。

 

こいつを大人しくさせる方法はないか?

せめて100万以上の札が5枚あれば、やり様があった。

今の俺の装備だと……どうすれば?

 

ハイ・オークは俺に敵意むき出しにして霊槍を振るってくる。

その単調だが破壊力がありそうな攻撃を避けながら、俺は思考するが、答えが出ない。

 

相手の動きは見えてるし、ハイ・オークの攻撃も破壊力はあるがそれほど速くない。

このまま、避け続けて、美神さんや美智恵さんが来るのを待った方がいい。

 

俺は回避に専念することを決める。

 

 

ハイ・オークは雄たけびを上げ、前傾姿勢で力をため、突進する構えを見せる。

俺は避ける体制を整える。

 

だが俺はそこで、30m後方の木陰にテスト参加者が居る事に気が付く。

くそっ、さっきまで辺りに誰も居なかったハズだ!誰だ!?

安田の取り巻きはとっくに逃げたはずだ。

俺はテスト参加者が巻き込まれないように、ハイ・オークの攻撃を避けながらテスト参加者がいない方へと誘導していたはずだ。

ほんのさっきまで、俺の霊気察知では周囲100mには人はいなかったハズだ。

 

なぜだ?

霊気を読み間違えた?いや、そんなはずは……

今はそんな事は後だ。

「あんた!ここは危ない!逃げろ!」

俺は後ろに振り返り、後方にいるテスト参加者に向かって大声で叫ぶ。

 

「あ…ああ……こ、腰が抜けて……立てない。た、助けてくれ!」

どうやら、たまたまここを通りかかっただけのテスト参加者の様だ。

しかも、この様子を見て腰を抜かしたようだ。

このままだと、ハイ・オークの突進に巻き込まれるぞ。

 

くそっ!

俺はハイ・オークの突進を阻むために、霊力を高め、身体能力を上げる。

右手に霊気の盾サイキックソーサーを、左手に霊波刀を展開し構える。

 

勢いよく突進してくるオークの顔面にサイキックソーサーを投げつけ、爆破させる。

ダメージ狙いじゃない。爆破による煙幕で、視界を一瞬封じただけだ。

視界が悪い状況にお構いなく突進してくるハイ・オークをギリギリに左にさけつつ、ハイ・オークの丸太のような左足を霊波刀で切りつける。

切り落とすまでは行かないまでも、半分は抉ったはずだ。

これで突進の勢いは殺せただろう。

 

ハイ・オークは突進の勢い余り、右に転がるように倒れる。

俺は懐から10万の札を5枚取り出し、倒れてるハイ・オークの周囲地面に囲むように投げつけ、再び簡易拘束結界術式を展開させる。

 

ハイ・オークはのそりと立ち上がる。

すでに、俺が切りつけた左足の傷は再生していた。

俺を見据え、また結界を破壊しようと暴れ出す。

 

直ぐにまた、結界は破壊されるだろう。

だが、それでいい。

僅かの時間だが時間を稼げた。

 

そして、ハイ・オークはまた拘束結界を破壊した……

それと同時に、俺の背後から二つの人影が通り過ぎる。

 

「ふん」

「止まりなさい!」

 

俺の背後から現れた髪の長い美女は神通棍を鞭の形状に変え、ハイ・オークに打ち据えると、ハイ・オークの体中が痙攣する。その後に顔立ちがよく似た年上の女性が続き、札を投げつけ、ハイ・オークの額に貼り付けさせる。

ハイ・オークは痙攣しながら倒れ、周囲には強力な結界が発動し、完璧に拘束された。

ほんの一瞬の出来事だった。

そう、美神さんと美智恵さんが来てくれたのだ。

 

ふう、時間稼ぎは成功だな。

それにしても、いつ見ても美神さんや美智恵さんの攻撃は凄まじい。

連携も息もピッタリだ。

 

しばらくして、GS協会の職員などが駆け付け、ハイ・オークに変化した安田に入念に封印を施し、運び出す。

 

「彼、何らかの関係性はありそうね。ここから霊災愉快犯の尻尾でも捕まえられればいいのだけど」

美智恵さんは運び出されるハイ・オークと変化した安田を見ながら俺に声をかけてくれる。

 

「……そうですね。……安田って人は、元に戻るんでしょう?」

「魔物に変化して間もないのが幸いしたわ。ただ元に戻すには相当時間は掛るわね。尋問もしないといけないし、なるべく早く戻せるように全力を尽くすわ」

「そうですか……バトルロイヤルテストの方はどうするんですか?」

「一時中止をアナウンスしてるわ。一時間後に再開よ。比企谷君はまだいけるかしら?」

「まあ、装備を補充したいところですが……また、さっきのようなのが出たら、流石にCランク装備じゃ対処しきれないですし……」

「そうね。条件付きで許可します。引き続きお願いね」

「わかりました」

どうやら、まだこのバトルロイヤルは続けるらしい。

まだ、他に怪しい奴がいるか見つけないといけないという事か……いや、安田がこんな事になったってことを、霊災愉快犯の仲間だったら知ってるだろうから、逃げ出した可能性もあるだろう。逆に逃げ出したら、自分は関係者ですってばらす様なものか。

まあ、体面上だけでも続けないといけないって言うのが正直のところだろう。

 

「それにしても比企谷君流石ね。テスト参加者を巻き込まず、被害者もゼロで足止めとはね」

 

「いえ、ちょっと失敗して、一人巻き込んじゃって……って?」

美智恵さんは褒めてくれたが、一人巻き込んでしまったのだが……あれ?さっきの巻き込んだテスト参加者はどこだ?さっきまでそこで腰をぬかしていたはずなんだが。

俺は辺りを見回すが、どこにも居なかった。

そう言えば、さっきのテスト参加者の人、俺の霊視探知にもぎりぎりまで引っかからなかったし、プロのゴーストスイーパーにしては霊気が薄かったが……

 

「比企谷!」

俺はいきなり後ろから美神さんに頭を平手で叩かれる。

 

「痛っ、なにするんですか美神さん?」

 

「あんた、また躊躇したでしょ!」

 

「いや、流石に元人なんで……」

 

「たくっ、そんなんじゃいつか足元をすくわれるわよ。いーい、相手が悪魔や妖魔になって襲ってきた段階で、倒すべき敵になるのよ。あんただって見た事があるでしょ!自ら望んで悪魔や妖魔になって、私達を襲ってくる連中を!」

美神さんが言いたい事は分かる。俺も仕事で二度程、悪魔や妖怪に自ら望んで変化した奴を見た事がある。そして、人を襲っていた……。

そいつらは、外道に落ちて倒すべき相手で、人間の敵になった連中だ。

だが……安田は自ら望んで変化したわけじゃない…と思う。

 

「確かにそうですが……」

 

「……術符であんたらの様子を聞いてたわ。あの安田って奴が、自ら望んでオークになった感じじゃなかった。だけど、そんなのは関係ないわ。悪魔や妖怪になって人を襲えば、もうそいつは誰だろうと、人間の敵、私達の敵なのよ!今回は大丈夫だったかもしれない。だけど、こんな事で感情を揺らして、いちいち躊躇すれば、今度はあんたが命を落とすかもしれない。あんたが躊躇したせいで、他に犠牲がでるかもしれないのよ!あんたは普段は冷静なくせに、肝心なところで甘い!この業界をなめてるんなら、やめてしまえ!」

 

「………すみません」

俺は美神さんに頭を下げる。

美神さんの言う通りだ。

俺は知らず知らずに天狗になっていたのかもしれない。

ハイ・オークがまだ何か隠し玉を持っていたらどうなっていたか……。

悪魔や妖怪は迅速に倒さなければならない。じりじり時間をかければ、奴らは何をしでかすかわからない。未知の攻撃だったり、未知の魔術だったり、対処しきれないものも使ってくるかもしれない……

俺はあの時、もう一歩踏み込むべきだった。

だが……

 

「あらそう、令子の所を首になったのならオカGに明日からでも来てもらおうかしら?」

美智恵さんはあっけらかんとそんな事を言う。

 

「ママ!!ちゃかさないでよ!言葉のあやよ、あや!」

 

「あら残念。私からしたら、今回は証拠がこうして残った事には大助かりです。でも令子が言う事はもっともよ。時と場合によってはそう言う事は大いにあるわ。その時は躊躇してはいけません」

 

「はい、心に留めておきます」

 

「ふん。今度から気をつけなさい」

美神さんはそういって、そっぽを向き、戻って行った。

 

「比企谷君。令子も心配なのよ。君も一応令子の弟子だから」

美智恵さんは俺の耳元でそう囁いて、助かったわと言いながら、美神さんの後に続き会場の審査員席に戻って行った。

 

はぁ、甘いか……。

 

 

この後、バトルロイヤルは再開したが、肝心の霊災愉快犯の仲間は結局見つからなかった。

 

安田については、本人所属の事務所や所属ゴーストスイーパーに捜査の手が入ったが、霊災愉快犯や、オークの封印筒や魔装術について関係するようなものが何も出てこなかった。

安田が単独で行った事の様だが……肝心の安田は魔獣に身を窶したままで、証言が得られない状態では捜査は難航しているそうだ。

 

……人から悪魔や妖怪に身を窶すか。

俺はあの時のハイ・オークへと変貌する安田の様子を思い出す。

もし、今度こんな場面に出会ったのなら、躊躇なく対処できるのだろうか?

もし、身内や知り合いが……家族やあいつらが………

 

俺はそれ以上答えが出なかった。

 





この章は今後のお話の種まきのような感じでした。

やっと次の章に行けます。
次の章のタイトルは『弟子編』にしようかな……いや……いいタイトルが思いつきません。

因みに前回のアンケート結果ですが。

【参考にさせていただきたく皆さんにご質問です。GS美神の横島君以外の男性陣でお気に入りキャラは?】
ドクター・カオス 180 / 38%
唐巣神父     103 / 22%
伊達雪之丞    142 / 30%
ピート       26 / 6%
タイガー      18 / 4%

1位はドクター・カオス
2位は雪之丞は人気ですね。
神父も大健闘!
ピート……タイガー…………(涙)
原作でも後半ほぼ出番なかったし……
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